コラム/エッセイ

チームオンコロジーへの道

Essay: Road to TeamOncology

チーム医療と無口な私

薬剤師:橋口 宏司

橋口 宏司 Koji Hashiguchi

薬剤師

横浜南共済病院外来化学療法センター Yokohama Minami Kyousai Hospital

唐突ですが、私はどちらかと言うと(いや、かなり)無口な性格です。人からはよく、何を考えているのか分からないと言われます。カンファレンスや会議では、発言しようかどうしようか迷っているうちに終わってしまい、「あー、また何も言わずに終わってしまったな…」と思うことが今までたくさんありました。

今回は自分と同じような無口な仲間に向けて、エッセイを書いてみようと思います。

内的指向とは何か?

スイスの心理学者カール・G・ユングによると、人は外交指向(Eタイプ)と内向指向(Iタイプ)に分けることができるそうです。Eタイプの人はいろいろな出来事など外の世界に関心を持ち、人との交流を好み自分を表現する傾向があるそうです。一方、Iタイプは内に生じる思索や体験など内の世界に関心を持ち、一人でいることを好み、自分を表現することが少ない傾向にあると言われています。

内的指向は悪いことか?

私は、まさにこのIタイプ。みんなとワイワイ騒ぐより、一人でじっくり一つのことに打ち込むことが大好きです。人と交流するのはあまり得意ではないし、自分のこの性格には何となく劣等感を感じます。しかし、ある時出会った一つの動画(下記TEDビデオ)に大変勇気づけられました。

スーザン・ケイン 「内向的な人が秘めている力」(TEDビデオ)

彼女はプレゼンテーションの中で、内的・外的指向に優劣があるわけでなく、社会にはそのどちらもが必要であると語っています。私のこの内的な指向も時として強みになることがある。それが分かったことで少し自信に繋がりました。

チーム医療と内的指向

とは言え、内的指向だからといって他の人と交わらずに一人で黙々と考え事をしている訳にはいきません。チームの中の、外にパワーを発散し喋りまくるEタイプの人達とも一緒に活動する術を身に付ける必要があります。

勇気を持って一歩踏み出してみる

自分の思いや考えを言葉にして発しなければ、他の人には伝わらないことはよく分かります。しかし、やはり無口な私にとってこれは大変なことです。では、何が自分を言葉にして発するように駆り立てるのでしょう?

それは、最良の医療を提供したいという自分のビジョン(夢)がそうさせているのだと感じています。自分の夢を実現したいという情熱と少しの勇気が、言葉を発せさせているというだけでなく、チームの中で私が活動する原動力にもなっているのだと感じています。

頭の中にスイッチを持とう

Iタイプの私にとって、一日中Eタイプの人間として振る舞うことは大変疲れることです。私は頭の中にIタイプ、Eタイプと書かれた大きなスイッチをイメージしています。必要に応じてカチッと音がしてEタイプへのスイッチが入る、そういう風にできたら良いなと思っています。

いろいろな人がいるからチームは楽しい!

チームオンコロジーの留学研修(Japanese Medical Exchange (JME) Program)などを通して、チームとして様々な人達と活動するためのチームワークやリーダーシップなどを学び、実践してきました。一人では思いつかないことでもチームで考えれば素晴らしいアイディアが思いついたり、一人では到底達成できないことでもチームで取り組めば達成できたり、チームで活動することの素晴らしさや楽しさに気付かせて貰ったのも、このチームオンコロジーの研修でした。

自分と同じような無口なIタイプの人へ。あなたの力がチームには必要です。少しの勇気がチームを大きく前進させます。一緒に頑張りましょう。

そして、自分とは真逆なよく喋るEタイプの人へ。無口な私達に少しだけ発言するチャンスを下さい。なかなか言葉には出さないけれど、きっと凄いアイディアを持っていますよ!

(2012年11月執筆)

ちょこっと写真、ちょこっとコメントMy interest at a glance:

私の趣味はエレキベースです。

「無口な私は音楽で自分を表現します!」と言うには程遠い腕前ですが、時間を見つけてコツコツと練習しています。

楽しい仲間と心を一つにして演奏するのは、チーム医療にも通じるところがあるかなと感じています。

(2012年11月執筆)

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