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EDUCATIONAL SEMINAR
MDA見学(2010年夏)
玉井  博也 (慶應義塾大学医学部 ) 2010/11/09
はじめまして。
慶應義塾大学医学部5年の玉井博也と申します。

この夏(書き込みが遅くなってしまい本当にすみません)、2週間に渡り、上野先生のもとで、MDアンダーソンがんセンターを見学させていただきました。

医学知識と英語力不足のため、やりとりされる内容を理解するのに大変苦労しましたが、テキサスの強烈な日差しと緑豊かで、開放的な雰囲気、そして何よりとても親切で活気に満ちたMDアンダーソンの人達に元気をもらい、2週間充実した日々を過ごすことができました。

何の実績もない一医学生に全米No1の評価を受けるがんセンターを見学する機会を与えて下さっただけでなく、医療者としての将来について親身になって考えて下さる、上野先生に本当に感謝しています。

そして、今回の訪問を応援してくださった方々や先輩・友人、温かく迎えてくださったMDアンダーソンのスタッフの方々、どうもありがとうございました。


日本の医療現場もこの4月からのぞき始めたばかりの学生ですが、MDアンダーソンを見学させていただき、「はっ」とさせられる事がしばしばありました。

その「はっ」とした理由は
・「自分が想定すらしていなかった」
・「日本でも、日常生活では実現されている事柄なのに、医療現場では実現されていない事だった」
・「(私の知る)日本の医療現場では実現されていないけれど、自分が患者や家族であったならば絶対にこうしてほしいと思った」
など様々でした。

ここから先は具体的に病院の様子を紹介しながら、心に残った事を書いて行きたいと思います。


その前に、簡単に1週間の日程を書いておきます。
[月]
・入院患者(入院予定、退院済みの患者さんを含む)についてのカンファレンス(Impatient meeting)
・病棟回診(Stem Cell Trans.チーム,患者数約25名,4~5時間)(Round)
[火]
・病棟回診
・Breast Cancer Clinic(外来、5人程、約3時間)
[水]
・プロトコルミーティング
・病棟回診
[木]
・Breast Oncology Meeting
・病棟回診
・ラボ ミーティング
[金]
・病棟回診
【回診編】
玉井  博也 (慶應義塾大学医学部 ) 2010/11/09
回診(Round)風景は日本と一番違うところだと思います。そして、自分が患者だったら絶対にMDアンダーソン流の回診をしてもらいたい、と強く感じました。

●回診では毎日staffを含めたチームが、十分な時間をかけて患者さんと接していた。

回診は毎日午前中いっぱいと使って行います。25名程の患者に対し、4~5時間かかります。
ここでは、検査の結果とその結果が持つ意味、現在の状況、今後の見通し等について非常に丁寧に患者さんに説明していました。これはものすごい事だと思います。

私が知っている日本の回診は、若手のレジデントが朝数分会いに来て簡単に診察をしたり処置をしたかと思えば、週1回、見たこともない教授が突然何十人もの医師を連れてベッドサイドに押しかける、といった様子です。


●そしてこの回診にはチーフスタッフやフェローだけでなく、Advanced Practice Nurse(APN)やCrinical Pharmacist、Toxicity等のマネージメントスタッフなど、6,7人が常に一緒に動いていた。

私が知っている日本における「チーム」は、確かに複数の業種や専門科の人間で構成されてはいますが、同時に行動する時間は極めて少なく、紙面上でのやりとりや、至急の事がらに関しては電話でやりとりする、というのがせいぜいです。むろん、日本の医療スタッフ手を抜いているわけではなく、チームとは別に膨大な業務を抱えていて、物理的に時間を合わせて行動するのが非常に困難なのです。

よく連携の取れたチームで動いている様子を、患者自身が見る事ができる、というのはとても大事な事なのではないかと思います。医療の質というのは、やはり患者さん側からの側面が大きく、いくら技術が向上し、治療成績がよくなっても、患者自身が納得し満足する事がなければ、ダメなのだ、と感じました。


●患者本人・家族は自身の病状についてup to dateな情報を持っている。

回診では検査の結果等が出たら、患者自身にもすぐに伝えられていました。
これはとても重要であり、チーム医療では基本となる事柄だと思います。もし本人が自身に関する情報を知らないと、周囲の医療従事者はどこまで話してよいのか分からず、無難な受け答えで終始し、自らが自分の専門性を生かして積極的に患者と関わろうとしないと思います。


●回診以外の日常業務ではAPNが中心となって患者の対応にあたっている。

病院の方針としてレジデントは取らないので、実務はAPNがしているそうです。Fellowがどれくらい日常業務に関わるかはそのFellow次第で、比較的自由度が高いそうです。


●薬の説明は臨床薬剤師が。

実際回診の際にも、新しくリツキシマブという薬を使い始める際に、医師ではなく臨床薬剤師が細かな薬の説明をベッドサイドでしていました。チーム内での役割分担は明確なようです。


●患者はとてもよく質問する。

やりとりの最後にAnyQuestions?と聞くと、1週目の初め(その2週間の担当のstaffと会って間もない頃)や入院直後だとかなりの確率で質問が飛んで来ていました。そして、その質問内容はとても明確である事が多かったと感じました。

このやりとりはあたりまえの様にされていましたが、
・医療関係者が十分分かりやすく説明する事
・患者側も明確に質問する事
・医療従事者はその質問に対する答えをぶれずに答える事
が必要ですし、何より、質問しやすい雰囲気や十分な時間も無くてはなりません。

特に印象に残ったのは患者の質問力です。医療従事者はプロとしてやっているので、トレーニングを受けているのだろう、と思います。患者側はアメリカ社会で生活していく上で質問力が鍛えられているのでしょうか?


●入院患者用の全ての病室は個室で、基本的にはシャワー・トイレが個々に付いている。また、病室で家族が一緒に過ごせる。

病室はすべて個室で、中は広々としていてベッドも大きく、感染の問題がある場合を除いてバス・トイレ付の部屋でした。患者用のベッドとは別にソファーもあり、家族が一緒に落ち着いて過ごせ、また泊まる事もできます。一人でいるときは静かで寂しそうな患者さんが、家族が来て賑やかになってとてもうれしそうな表情をしているのを見ると、こういったハード面の大切さも実感しました。

食事に関してはベッドにメニューがあり、好きなものを選べば給仕の格好をした人が食事を持ってきてくれるようでした。


●病室は患者の個性であふれていた。

ドアを開けると、友人からのメッセージが壁一面に張られていたり、楽器が置いてあったり、聖書の一節が張られてあったり、と非常に個性的でした。個室だからこそできる事なのでしょうが、日本では、あまり強烈な個性を放つ個室は無いような気がします。


●カルテは手書きの部分も多かった。

てっきりすべて電子カルテになっているかと思っていたのですが、回診時は手書きの作業もありました。カルテ自体もはさまっている紙で分厚くなっていました。これには少し驚きました。
【Breast Cancer Clinic編】
玉井 博也 (慶應義塾大学医学部 ) 2010/11/15
●患者の自身の病気に対する知識は非常に豊富

人によってはノートをつけていて、診察の際に疑問を全てぶつけてきていた。実際、この患者さんへの対応は1時間以上かかりました。患者さんは、何を質問したらよいのか、よく準備してあったように思います。上野先生はその質問に1つ1つ丁寧に分かりやすく説明しており、私はその姿勢にとても感動しました。物理的に時間がある、という事が前提にはなっていると思いますが、この患者・医療従事者の間の洗練された質問のやりとりにはMDアンダーソン滞在中、何度も驚かされました。

上野先生曰く、その時は大変だが、結局は患者さんに納得して医療を受けてもらう事がお互いにとってよい、との事だった。実際、医療訴訟が非常に多いアメリカですが、上野先生自身はほとんどそういったトラブルに見舞われた経験はない、との事でした。


●診察結果は電話機に向かってディクテーション

一番最初に見た時はとても驚きました。診察後パソコンに文字を打ち込むかと思いきや、途中で受話器を取ってものすごいスピードでしゃべり続けていました。後で専門の職員が文字に書き起こしてくれるのでしょう。後で他の医療スタッフが診察結果を知りたいと思った時、書き起こした文章を読むのでなく、ディクテーションそのものを聞く事はできるのでしょうか?今度上野先生に聞いてみます。


●Observerがいるので見学させてほしい、と言った後、嫌がる患者さんが一人もいなかった。

私は日本で臨床実習をしていて、「学生の教育のために…」と聞くと嫌な顔をする方もいらっしゃいますし、実際に遠慮してほしい、と断る方もいらっしゃいます。また、学生である事を特に伝えていない事もあり、そんな時はビクビクしながら実習をしなければなりません。MDアンダーソンではどの患者さんもとてもフレンドリーに話しかけて下さり、先生は非常に信頼されている、と感じると共に、患者さん側に教育に対する理解があるように感じました。


●PA(Physician Assistant)が初めに診察をする

日本では忙しい外来でも医師が多くの事をこなしますが、基本的な診察・検査等はPAが行い、後に医師が患者と話に行き、追加で診察を行うようです。


●抗がん剤のオーダーは何度もチェックを受ける

診察後、抗がん剤を投与される患者さんのオーダーはNurse Practitioner→Pharmacist→調剤師というように何度もチェックを受け、最終的にOncology Nurseによって投与されます。どの国でも、過去の調剤ミスや患者の取り違え等のエラーは起きていると思います。二度と起こらないように何重にも予防線が張られていました。


●外来のクリニックでは動線がよく考えられている。

患者と医療関係者の動線は別々に作られています。また、例えば、患者さんが診察を終えた後抗がん剤治療を受ける、という際にはすぐ近くのエレベータで上がるだけ、というように移動が必要最低限で済むように考えられていました。

日本でも新しい病院ではあたりまえなのかも知れません。(新しくない病院にいるので)、こういった当たり前の事が当たり前にされているといいな、と思います。


●クリニックの扉には色々な花の名前がついている

私がお邪魔したクリニックはFressiaという扉でした。番号だけだと温かみがないですし、覚えにくいので、これはいいと思いました。(日本だと菊とかはやめた方がいいかもしれません)

【ラボ編】
玉井 博也 (慶應義塾大学医学部 ) 2010/11/15
●ラボの大きさ(狭さ)は日本とあまり変わらない

病院の規模やゆったりとした作りは私が知っている日本の病院とは全く別物でしたが、ラボの作りは日本のものと大きくは違わなかったように思います。これにはすごく驚きました。少し覗いただけなので、こんな事を言ったら後で怒られるかもしれませんが。よく考えると、狭いほうが動き回るロスが少ないのでしょう…


●ラボの人たちはとてもフランク

ひょっこりお邪魔しましたが、皆さん暖かく迎えてくれました。病棟より多国籍で、個性にあふれていたように思います。ちなみに、日本から来ている先生もいらっしゃり、日本を出発して以来始めてまともに日本語を話しました。また、ジェ○○○先生、キムチの話や結婚生活について語ってくださりありがとうございました。


●プレゼンテーションの仕方は大切

ラボミーティングや予演会等では内容についてだけでなく、どのような順番でどんな事を話したら聞き手が興味を持つのか、等踏み込んでプレゼンテーションが練られていました。


●ラボは少し覗いただけだとよく分からない

半日見ただけだったので、どのようにして研究が進んで形になって行くのか分らないまま終わってしまったのは残念でした。色々な方と楽しく話して帰って来てしまったので、もう少し聞いてみればよかったです。
【その他病院施設】
玉井 博也 (慶應義塾大学医学部 ) 2010/11/15
●ボランティアが非常に多い。

ギフトショップで働く人々はボランティアである、と書いてありました。また、ボランティア活動を進めるパンフレットも病院のあちこちに揃っていました。MainBuildingのロビーではコーヒーやチョコレートのサービスをしている人達にも出くわしました。

病院の建物はホテルのようなのですが、サービス面ではホテルのサービスとは少し違うようです。仕事として丁寧に接するのとは違った温かみにあふれていて、とても居心地のよい空間でした。Give&Takeの考え方で、Surviverや家族が積極的に病院にかかわってくれる事で、スタッフだけでは作り出す事のできないホッとする空間が作り出されているのではないでしょうか。


●患者さんやその家族のための施設が多い。

特にがんに関する様々な書籍がそろった自由に使える図書館や広々とした休憩スペースや、所々に置いてある椅子など、堅苦しくなく使えるスペースが多かったです。

患者が満足する医療を受ける、という事はとても大切だと思います。医療技術がいくら進歩してもその時点での医療で解決できない問題は必ずあります。しかし患者の満足度は医療技術だけによる訳ではないのはもちろんで、環境や人間関係等の要素も大きいはずです。施設面での改善も怠らない姿勢が、MDアンダーソンが全米No1の評価を受ける所以なのでしょう。


●病棟の壁に患者さんからのお礼のメッセージが書いてある。

病棟の壁に“We (ハート) our nurse” のボードがあり、メッセージであふれていました。これは働いているスタッフとしては嬉しいはずです。このようなメッセージボードが一枚あるだけで、スタッフの力を引き出してくれます。ちょっとした事で患者さんも、働くスタッフも、そして通りがかりにボードを見た人も幸せな気持ちになれます。


●病院内にチャペルがあり、宗教を問わず使う事ができる。また、ムスリム用のお祈りの部屋もある。

チャペルと言っても特定の宗教用ではありません。キリスト教、ユダヤ教、ヒンドゥー教、イスラム教、仏教、神道、シーク教、バハイ、ジャイナ教 などが書かれていました。世界中から患者が集まって来る事と、がん専門病院という性質上、このようなチャペルは必要だと感じました。


●ピンクの大理石

MDアンダーソンの初期の建物はピンクの大理石の外観です。当時テキサスでこの大理石が採れていたからなのだそうです。新しい建物は流石に大理石ではありませんが、ピンクカラーで統一されています。降り注ぐ強烈な日差しに照らされたピンクの建物を見ると、気持ちも晴れ渡ります。


●敷地内の建物はスカイブリッジで結ばれている。

外はものすごく暑いので、歩いている人はほとんどいません(私は到着翌日に3時間程、ダウンタウンまで歩き回りましたが…)。敷地内の建物もクーラーの効いたスカイブリッジで移動します。話を聞くのと実際に目にするのはまったく別で、このスカイブリッジ、とてつもなく巨大で、歩くと10分以上かかります。でも大丈夫、中を空港にあるような小型の車が走っていて、端から端まで運んでくれるのです。
1万5千人ものスタッフが働く巨大病院のスカイブリッジにふさわしい代物でした。


●敷地内のタワー上層階に医療関係者用の図書館がある。

眺めが最高で広々とした造りなので、気分転換になります。とても静かで、勉強するにも寝るにもとてもよい環境でした。但し、敷地が広すぎて図書館へ辿り着くまでに10分くらいかかってしまう事が玉に瑕。閉館は19時で少し早いように感じましたが、実際その時間になると病院内にもあまり人はいませんでした。


●充実カフェテリア

病院内にはCafe AndersonやWaterfall Cafe, Cool Beans Cafe and Backeryなど、ご飯を食べるところがいくつかありました。メニューはたくさんあって、好きなものを選べるので、2週間では食べつくせません。サラダバーで好きなだけ野菜を食べられました。出発前は食事の心配をしていたので、これは嬉しかったです。肉は柔らかいのにボリュームもあり、大満足でした(ちなみに帰国時には2kg太りました)。
【番外編】
玉井 博也 (慶應義塾大学医学部 ) 2010/11/15
●ハーマンパーク、ライス大学

MDアンダーソンを含むメディカルセンターの近くにはハーマンパークという大きな公園があり、中には動物園やMuseum of Nature Science、日本庭園などもあります。とても緑豊かで広々した公園で、リスが走っているのを目にする事ができます。Museum of Nature Scienceの中にはプラネタリウムや3Dシアター、バタフライセンター等があり、子供たちで大賑わいでした。週末になるとほとんどが家族連れで、日本との生活スタイルの違いを実感しました。

ライス大学はハーマンパークとは違い、緑が生い茂っており、木洩れ日が気持ちのよい場所です。周囲はランニングコースになっており、多くの人が走っていました(ので私も一緒に混じって走りました)。日が暮れるのが20時くらいなので、日に当たっている時間が長かったです。


●車、メトロレール

やはり、どこへ行くにも車に乗って行くようで、歩いている人はほとんどいません。日本と比べ、ピックアップトラックや4WDなど、大型車が多く、スピードも速いので、歩く時には気が抜けません。バスやメトロレールという路面電車が走っているので、車が無くても移動はできます。ホテルのサービスでショッピングモールや有名な施設等へは無料シャトルがあり、重宝しました。とは言っても、ヒューストン自体が広大なので、生活するには車がないと困る場面が多そうです。


●ヒューストンのダウンタウン

ダウンタウンには高層ビルがいくつも建っており、見晴らしのよいハーマンパークから見ると圧巻です。特にJPモルガン・チェース・タワーは下から見上げると首を痛めてしまいそうになります。他にもミニッツ・メイド・パークやトヨタセンターなどのスポーツ施設もあります。


●横断歩道を渡るためには信号機についているボタンを押す

到着したばかりの時はとても困りました。道路の向こう側へ渡るのに、信号機についている機械がセンサーだと思い込み、何度も信号機のポールの前を往復していました。ただの押しボタンですので、初めて行く方は気をつけてください(普通間違わないとは思いますが…)


●朝ホテルの中で知らない人と挨拶するのはよい習慣。

朝、気持ちよく挨拶されると、よい一日のスタートが切れます。日本では朝は通勤ラッシュ、戦いの時間なので、ヒューストン滞在中はゆったりとした気持ちで朝を過ごせました。とてもよい習慣だと思います。


●秘書のデ○ラはROYCEのチョコレートチップスが好き。


【最後に】
玉井 博也 (慶應義塾大学医学部 ) 2010/11/15

とにかく親切な人々に囲まれて、2週間充実した日々を過ごす事ができました。
日本にいる時にも、アメリカ医療の話を耳にする事はありましたが、実際に行ってみて最も心に残ったのは、「人の温かみ」だったと思います。日本とアメリカでは医療制度や文化等、様々な違いはあるかと思いますが、患者さんも、スタッフも、「居心地がいい」、と感じて生き生きしていられるような病院が本来あるべき姿なのでは、と感じます。

取りとめのない文章を最後まで読んでいただいてありがとうございました。
どんな事でもかまいませんのでコメントいただけると幸いです。よろしくお願いします。
Re:MDA見学(2010年夏)
野木 雅代 (東京医科大学病院) 2010/11/15
玉井 様

 はじめまして。都内病院で看護師をしている野木と申します。玉井さんのMDアンダーソンレポート、楽しく拝見させていただきました。

 私は、2009年の春に見学をさせていただいたのですが、玉井さんのレポートを読み、懐かしく、本当に細かい部分まで思い出し、またアノ喜びに浸る事ができました!

 本当に、大きくて、大勢いて、そして心が温かい施設ですよね。

 帰国後の熱い思いを、大切にしたいと考えていましたが、
いつのまにか日本の生活に慣れてしまった自分がいました。
今回、玉井さんのレポートを読ませていただき、また頑張ろう!と思いました。
ありがとうございます。

 今回、MDAで学んだ、得た、最高の経験を、ぜひ将来の臨床で役立てて下さい。
応援しています!


 
Re:MDA見学(2010年夏)
田口 (大阪府立成人病センター) 2010/11/16
玉井さん、詳細なレポートありがとうございました。
大阪で看護師をしております田口といいます。
玉井さんのような医学生の方が、MDACCで体験されたり感じられたことを発信して下さることはとても意義があると思います。
職種の枠を超えて患者さん中心の医療をともに考えていけたらいいですね。機会がありましたら是非、看護学生とも体験されたことを共有して下さい。
Re:MDA見学(2010年夏)
吉田 庸子(国立国際医療研究センター病院) 2010/11/16
玉井さん

はじめまして。3年前の夏、大学5年生の夏にMDAを1週間見学させていただいたことがあり、現在研修医2年目の吉田と申します。
投稿を読ませていただいて玉井さんのモチベーションの高さ、充実感が伝わってきて本当に尊敬しました。

自分もあれから実はもう3年もたつのかと思わされましたが、MDAでの見学の日々を、実は今でも1日も忘れたことはありません。玉井さんも書かれていたように、それくらいMDAでの日々はインパクトが強く、また目標にするポイントが多かったのだと思います。

あのときは学生で、まだヒヨッコながら現実に働いてみて感じていること、玉井さんの投稿を読んで思い当ったことをいくつか書かせていただきます。

MDA見学をしたおかげで、この2年間の研修中、毎日患者さんにとって一番良いことは何か、チーム医療、エビデンスを意識しながら診療できていることがとても貴重なことだと思っています。

私はまだ研修医なのでどの職種の方にも教えていただき助けていただくことばかりなのですが、やはりコミュニケーションの大切さを痛感します。カンファだけじゃなく日々の些細なやりとりをとっても各スタッフの方とのコミュニケーションによって患者さんに対する医療・ケアの質と安全性が左右されると感じることが多いです。多職種合同のカンファはどの科でもあるけれど多くないのが少し残念ですが、研修医として感じるのは実は研修医は患者さんのことで一番多職種の人とやりとりをする立場なので、チームオンコロジーで学ぶことを活かす場面は多いのではないかと思います。これを研修医が終わって将来カンファを開ける立場になったときに還元できればいいなと感じています。

回診について感じたことは、科や医長によってかなり差があると思うのですが、玉井さんがおっしゃるようにスタッフ全員がじっくり時間をかけて回診することは私も経験はほぼないです。最初は大人数が集まっていてもピッチが鳴って呼ばれたり、検査があったり、外来があったりでどんどん人が減っていくのが現実です。日本の(自分の施設の?)現実として、市中病院であることもありますがレジデントや医師の仕事がとても多いように感じます。具体的には専門性の高い手技や検査業務に加えて数多くの病棟患者さんの受け持ちを同時並行していることが多いこと、おそらくMDAではPAやNsができることを医師がしなくてはいけないことが多いことが理由かと感じます。よく、回診にちゃんとつきたいんだけど時間がなくて、自分の患者さん以外の回診についていると日常業務も病棟も全く回らないから不可能だという言葉をよく聞きます。結局最後は医長と研修医のみ…という図も多いです。
日米ではスタイルや回診の目的も違うのかもしれないので一概に良し悪しは言えませんが。回診する意図を明確にすることとそれを共有することは必要かなと感じます。

エビデンスについてMDA見学と上野先生とのかかわりの中で強く意識づけされたものでしたが、自分の患者さんの治療方針を考える上でこんなにもわからないことが多いものかと頭を悩ませる毎日です。自分の処方や説明の根拠を確認する作業は想像以上に辛く、時間のかかるものでとても苦労しています。実際小さい対応を含めてエビデンスが確立されていないことも日常では山ほどあり、すべての物事にエビデンスが確立される訳ではないですが患者さんにとって一番良いことを考えるために日々勉強を重ねないとと思わされます。

モチベーションについて、一番大切なことかもしれませんが、正直なことをいうとこれは学生の時のほうが自分のビジョンを強く意識できていた気がします。恥ずかしながら今は前述のようなことで頭も体もいっぱいで、日々の患者さんの対応とそれができるようになるための勉強で自分の中が埋まっているような気がします。そして研修をかさね選択肢が増えたり患者さんからでてくる課題に出会うと、自分の方向性やビジョンにまた揺らぎがでてきて優柔不断になってしまった気がします。これは私が乗り越えないといけない課題ですが、この中でもうっすら昔抱いていた夢や描いていたビジョンという概念があるおかげで持ちこたえていられるなら救いかも知れません。研修医が終わって、この2年間で出会った人や言葉から感じたことを胸にまたビジョンを描き、MDAのスタッフの方々のように強いまなざしで輝いて働けるよう目指したいと思います。

つらつらと取りとめのないことを書きましたが、確実に言えることはMDA見学とチームオンコロジーのワークショップに参加させていただいたことは自分の財産であり日々にいい影響を与えているということです。私はこれを周りにも還元できるよう今後努力しなければいけないと思います。

玉井さんはとても貴重な経験をされ、これから多くの患者さんや医療スタッフに出会われると思います。その中でMDAで学ばれたことやチームオンコロジーで感じたことを意識しているだけでこの先玉井さんの視野は広くて、患者さんや周りの人にできることは増えるのではないかと思います。玉井さんの今後のご活躍をお祈りしています。
Re:MDA見学(2010年夏)
久保雄一 (慶應義塾大学医学部 ) 2010/11/17
玉井さん

慶應義塾大学医学部6年生の久保雄一です。MDA見学のレポート面白く読ませていただきました。自分が現在アメリカへの短期留学を計画中ということもあり、大変参考になったのと同時に、モチベーションを高められました。

最近卒業後の進路などとからめてよく考えるのですが、一口に医療と言っても、それが行われる体系やコンセプトは環境や従事する人々によって大きく異なるものなんですね。そして自分達が医療者として働く際にその仕事の質を向上させるためには、自分や自分の所属する職場以外の環境や人々の考えに直接触れて、選択肢を増やしていく事が大事なのだろうと感じています。ですから玉井さんが2週間の経験をレポートしてくださったのには尊敬と感謝の念を抱くのと同時に、自分も様々な経験を積み、それを発信していける人間になりたいと考えさせられました。

また別の機会にでもお互いを刺激し合い、視野が拡がるようなお話ができれば良いですね。
野木 さん
玉井 博也 (慶應義塾大学医学部 ) 2010/11/18

さっそく読んでいただき、どうもありがとうございます。
こんなレポートでも「また頑張ろう!」と思っていただけると、とても嬉しいです。

私は2年程前、大学の選択カリキュラムで、MDAにいらした佐谷秀行先生の研究室にお邪魔しました。そこで佐谷先生に写真を見せていただいたのがMDAを知るきっかけでした。

以降、大学の1つ先輩の大西さんや村上さんの帰国後の充実した様子を傍目に見ながら過ごしておりましたが、自分が行ってみて初めて、なぜ帰国後にあんなにも楽しそうにMDAを語るのか、理解できた気がします。

今回感じた事を卒業後も忘れずに、少しでも日本の医療に役立てるように頑張ります!
田口 さん
玉井 博也 (慶應義塾大学医学部 ) 2010/11/18
はじめまして。
どうもありがとうございます。

「職種の枠を超えて患者さん中心の医療をともに考え」るというのは本当に大事な事だと感じました。

私のいるキャンパスでは医学部、看護学部、薬学部が同じ病院で実習していても殆ど交流がありません。このまま卒後も同じ関係が続いてしまうと、バラバラに動く事が当たり前になってしまうのでは、と危機感を持っています。

看護や薬学部の友人にも是非MDAの事を知ってもらいたいと思っています(きっと近いうちにコメントを書き込んでくれると思います)。
吉田 先生
玉井 博也 (慶應義塾大学医学部 ) 2010/11/18
はじめまして。

書込みどうもありがとうございます。

5年生の夏でしたらちょうど同じ時期ですね。
3年というとすぐ先なので、先生の書いて下さった文章を読んで、とてもリアルに感じると共に、緊張感を持ちました。

●コミュニケーションについて
「実は研修医は患者さんのことで一番多職種の人とやりとりをする立場なので、チームオンコロジーで学ぶことを活かす場面は多いのではないか」

チーム医療と聞くと、専門職の間での、というイメージを勝手に付けてしまっていましたが、確かに、研修医の時こそ否応なく他職種の人とやりとりするので、その時に積極的にチームオンコロジーで学んだ事が生かせるんですね。

「各スタッフの方とのコミュニケーションによって患者さんに対する医療・ケアの質と安全性が左右される」

スタッフ間でコミュニケーションをとるのがよい、というのは多くの方が感じている事だと重います。しかし、医療においては、コミュニュケーションをとれるかどうかが患者さんの人生に大きな影響を与えます。だからこそ、コミュニケーションをとるのが「よい」のではなく「必要」であり、そのため、コミュニケーションを「スキル」として身に付ける必要があるのだ、と思います。これも自分が臨床現場で働き始めてから、忘れずに心に留めておかなくてはならない事だと感じます。

●回診について
医療スタッフは、側から見ていても、本当に忙しいと思うので、PAやAPNのいない日本でMDA流の回診をすぐに実現するのは難しいと思います。

少し話しがそれてしまいますが、大学にいると部屋に入りきらない程の人数で押しかける回診もあります(後ろの方にいると何も見えないですし、何も聞こえません)。きっと意図はあるのだろうと思いますが、本当に患者さんのためになるのか、患者さんが嫌がっていないか、という方がよほど重要だろうと思います。

先生のおっしゃるように、回診する意図を明確にし、それを共有する事は今の日本でも実現可能だろう、と重います。

実際に働いているスタッフが、自分たちがチームとして動いていると感じられ、患者さんもチームで自分を診てくれている、と感じることができる、というのはチーム医療実現の第1歩なのかな、と思います。

●エビデンスについて
このエビデンスという事が、今回の訪問ではあまり実感が沸かず、曖昧なまま終わってしまった所だと感じています。

上野先生の外来でも、患者さんはその治療がどれくらい効果があるのかを聞いてきます。その時、過去の研究で、何%に聞いたのか、具体的な数値を出して答えている姿はとても印象的でした。

実際自分で治療方針を決める場面を想定してみると、エビデンスのあるものを選びたいというのはもちろんですが、限られた時間の中でエビデンスを探すのは本当に大変だろうと想像できます。
まずはエビデンスがあるのか無いのか、あるならばどのような結果なのか、という事を認識する事は、新たなエビデンス確立に向けた次の臨床研究にもつながるのだろう、とも思います。

治療の選択肢が出てきた際には、面倒臭がらずにエビデンスを調べる癖をつけないと、ズルズル行ってしまう気がします。気をつけたいです。

●モチベーションについて
恥ずかしながら、私は考えれば考える程、あれもこれも実現したい、と思い最終的にビジョンが抽象的になってしまいます。

先生は学生時代に自分のビジョンを強く意識していた、との事で羨ましいです。

先生は日々の研修の中で方向性やビジョンに揺らぎが出る、との事ですが、揺らぎが出るという事は最その都度ビジョンを考えている、という事で、要所要所で自分のビジョンを見つめなおす事が大事なんだと思います。

私もなかなかビジョンが明確にならないから、とそのままにしないで、何度でも自分のビジョンを考え直す機会を持たなくては、と思いました。


今回感じた事や学んだことは思い出にせずに、いつも自分の心にvividなまま持ち続けたいと思います!
何年か経って自分の書いた記事を読んで(気恥ずかしくなるかも知れませんが)、最初に受けた感動や驚きを少しでも思い出す事ができたら、と思っています。

吉田先生、お忙しい中丁寧にアドバイスいただき、どうもありがとうございます。自分が現場で働いている時に、今回の事をどう生かせるのか、具体的にイメージし、考える事ができました。

ちょうど明日から福岡でのワークショップを見学させていただくので、とても楽しみにしています。
久保 さん
玉井 博也 (慶應義塾大学医学部 ) 2010/11/18
どうもありがとうございます。

帰国後、MDAでの活動にとても興味を持っていただいたのですが、具体的な様子をお話できないままだったので、レポートを読んでいただけてとても嬉しいです。

アメリカへの短期留学にあたり、モチベーションを高めていただいた、との事でとても光栄です。
(モチベーションを高めたのは私でなくMDAなのは認識しておりますが…せっかくなのでお礼を言わせていただきました)

自分が普段当たり前にしている環境から抜け出して、色々な環境や人々に触れる、という事は、とても大切だと感じます。それは初めに予想していた事以外の様々な事が自分に強く訴えかける事が少なくないからです。
私もMDAに行く前はどうしても、医療のシステム的な事柄ばかりに目がいっていました。しかし、実際に行ってみると、一番心に残ったのは、生き生きしてとても温かなMDAの雰囲気で、その雰囲気があるからこそ、色々なシステムや仕組みが意味のある物になるのだと思います。

久保さんが短期留学から帰国した際には、ぜひ、感じたこと、心に残った事を聞かせていただけると嬉しいです。
楽しみにしています。