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EDUCATIONAL SEMINAR
Japanese Medical Exchange program 2012 現地リポート
IKU(?)
2012/04/21
おはようございます。ただいま、ヒューストンは4月21日の朝9時です。
いよいよ、MDA研修がはじまりました。
昨日は初日で、オリエンテーションやwelcome party などがありました。
はじめてMDAを訪れ、その規模の大きさに圧倒され、
チームメンバーとはアメリカと日本の医療システムの違いについて語り合う一日となりました。
国民に対し、「公平」な医療を提供している日本(国民皆保険など)。。。
国民に対し、「平等」な医療を提供しているアメリカ(社会的に成功している人が高額が医療を受ける)。。。
どちらが、国民にため、また国の成長・発達に繋がっていくのだろうか??深く考えた一日でした。
いよいよ、MDA研修がはじまりました。
昨日は初日で、オリエンテーションやwelcome party などがありました。
はじめてMDAを訪れ、その規模の大きさに圧倒され、
チームメンバーとはアメリカと日本の医療システムの違いについて語り合う一日となりました。
国民に対し、「公平」な医療を提供している日本(国民皆保険など)。。。
国民に対し、「平等」な医療を提供しているアメリカ(社会的に成功している人が高額が医療を受ける)。。。
どちらが、国民にため、また国の成長・発達に繋がっていくのだろうか??深く考えた一日でした。
Re:Japan Medical Exchange program 2012 現地リポート
金 隆史(広島マーククリニック)
2012/04/23
MDAでの研修が始まり、忙しくまた楽しい日々を送られていることと思います。私は、当時まだ大学在籍中の9年前の2003年に、MDAを訪れさせていただきましたが、各職種の能力の高さとシステム化されたチーム医療には、目を見張るものがあり感銘いたしました。今では、日本でも多くの施設でチーム医療の概念が浸透・実践されてきており、隔世の感です。4年前に、乳腺専門クリニックを開業はしましたが、施設の大小に関わらずチーム医療の真髄は同じと考えております。医療は患者のためにあり、患者を思う心とそのために何が出来るかだと考えております。システム、制度の違いはありますが、全ての医療者が医の心を生かす場面は多く存在します。務めて仁となすために実のある研修になると思います。
Re:Japanese Medical Exchange program 2012 現地リポート
濱嶋 夕子(東京医科大学病院)
2012/04/24
週末が終わり、いよいよ研修が本格的にスタートしました。研修2日目は、PA/NPとの病棟のラウンド、MDAのコンピューターシステムの説明ケースカンファレンスへの参加が主なものでした。
その中でも、日本で導入の是非が議論されている特定看護師のモデルと言われている、PA:physical assistant , NP: Nurse Practitioner とのラウンドは印象的でした。医師達が手術で忙しい間に外科病棟のPA,NPが術後の患者さんをみて、術後管理に関する指示を出していく役割の存在はとても機能的でした。また彼らが自分の役割にプライドを持ち、責任を果たす姿はとても頼もしく思えるものでした。
今日はゆったりとしたスケジュールだったものの、ホテルにつく頃には皆に疲れの色が見えました。しかし、夕食の後アメリカのPA,NPの話からそれぞれの職種の役割がどうあるべきかに話が及び、気付けば2時間ほど白熱した議論が繰り広げられました。チーム医療における各職種の役割はある程度オーバーラップされている方が望ましいと思いますが、役割を拡大する=ミニドクターになることでなく薬剤師、看護師の視点をもってチームとしてどう機能するかが大切である。また役割の拡大のためには、責任を持たせていく(or責任を請け負う)ことが大切なのではないか等、沢山の意見交換ができました。
まだ始まったばかりですが、MDアンダーソンの研修を通じて沢山の気付きや学びに加えて、日々のメンバー間で行う意見交換がとても有意義に感じる2日目でした。これからが楽しみです。
その中でも、日本で導入の是非が議論されている特定看護師のモデルと言われている、PA:physical assistant , NP: Nurse Practitioner とのラウンドは印象的でした。医師達が手術で忙しい間に外科病棟のPA,NPが術後の患者さんをみて、術後管理に関する指示を出していく役割の存在はとても機能的でした。また彼らが自分の役割にプライドを持ち、責任を果たす姿はとても頼もしく思えるものでした。
今日はゆったりとしたスケジュールだったものの、ホテルにつく頃には皆に疲れの色が見えました。しかし、夕食の後アメリカのPA,NPの話からそれぞれの職種の役割がどうあるべきかに話が及び、気付けば2時間ほど白熱した議論が繰り広げられました。チーム医療における各職種の役割はある程度オーバーラップされている方が望ましいと思いますが、役割を拡大する=ミニドクターになることでなく薬剤師、看護師の視点をもってチームとしてどう機能するかが大切である。また役割の拡大のためには、責任を持たせていく(or責任を請け負う)ことが大切なのではないか等、沢山の意見交換ができました。
まだ始まったばかりですが、MDアンダーソンの研修を通じて沢山の気付きや学びに加えて、日々のメンバー間で行う意見交換がとても有意義に感じる2日目でした。これからが楽しみです。
Re:Japanese Medical Exchange program 2012 現地リポート
山口徹郎(神戸大学医学部附属病院)
2012/04/25
本日4/24(火,Houston)、Nursing LecturesとClinical trial、午後にはLeadershipに関する講義を受けた。
Nursing Lecturesでは、MDACC看護師より看護師主導多職種連携のClinical trialという大変興味深い話を聞いた。
研修終了後、日本ではどうなのか、日本の看護師・薬剤師等は米国ほどScientificな研究ができていないのではないか、米国のような研究をするにはどうすればいいのか、活発なディスカッションが始まった。
そこで出てきた問題、それは、日本の看護師・薬剤師もScientificな研究をしている、しているがまだまだ少数且つ情報発信が不十分なため見えていないということ、研究に関して多職種連携がとれていない、研究に対する現場の温度差があるのではないか、というものであった。
臨床現場での多職種連携も必要だが、研究においても多職種連携の必要性・重要性を強く感じた貴重なディスカッションであった。
本日のディスカッションもそうであったが、医師・看護師・薬剤師が集い、自由に語り合い、様々な切り口で思いをぶつけ合う、これこそが日本の臨床に求められている本来の姿であると思う。
Nursing Lecturesでは、MDACC看護師より看護師主導多職種連携のClinical trialという大変興味深い話を聞いた。
研修終了後、日本ではどうなのか、日本の看護師・薬剤師等は米国ほどScientificな研究ができていないのではないか、米国のような研究をするにはどうすればいいのか、活発なディスカッションが始まった。
そこで出てきた問題、それは、日本の看護師・薬剤師もScientificな研究をしている、しているがまだまだ少数且つ情報発信が不十分なため見えていないということ、研究に関して多職種連携がとれていない、研究に対する現場の温度差があるのではないか、というものであった。
臨床現場での多職種連携も必要だが、研究においても多職種連携の必要性・重要性を強く感じた貴重なディスカッションであった。
本日のディスカッションもそうであったが、医師・看護師・薬剤師が集い、自由に語り合い、様々な切り口で思いをぶつけ合う、これこそが日本の臨床に求められている本来の姿であると思う。
Re:Japanese Medical Exchange program 2012 現地リポート
帶刀 朋代 (東京医科大学病院)
2012/04/26
現地のリポートありがとうございます。
私が懐かしさに浸る隙なく、夫に
「去年は一人で犬の世話してたな~、あれから一年か。」を連呼されている2011の帶刀です。
みなさんの議論の端緒を読ませていただきながらこの後のアップロードと5週間後がますます楽しみです。
濱嶋さん。
役割の拡大。特定看護師などでもトピックですね。国内においてもモデル事業はすでに始まっており、今後の動向に要注視です。
と、これは比較的中・長期的な活動に分類されると思うのですが、帶刀的には短期的に「私たちができること」をなにか土産に持って帰ってきてもらえたら嬉しいです。
今年度の研修と来年度に活かしましょう!!!
濱嶋さん帰ってくるまで、オンコロジー研修しないで待ってます。
健康に留意して、帰ってきたらお土産話をつまみにまた三人で飲みましょう☆
私が懐かしさに浸る隙なく、夫に
「去年は一人で犬の世話してたな~、あれから一年か。」を連呼されている2011の帶刀です。
みなさんの議論の端緒を読ませていただきながらこの後のアップロードと5週間後がますます楽しみです。
濱嶋さん。
役割の拡大。特定看護師などでもトピックですね。国内においてもモデル事業はすでに始まっており、今後の動向に要注視です。
と、これは比較的中・長期的な活動に分類されると思うのですが、帶刀的には短期的に「私たちができること」をなにか土産に持って帰ってきてもらえたら嬉しいです。
今年度の研修と来年度に活かしましょう!!!
濱嶋さん帰ってくるまで、オンコロジー研修しないで待ってます。
健康に留意して、帰ってきたらお土産話をつまみにまた三人で飲みましょう☆
Re:Japanese Medical Exchange program 2012 現地リポート
田口 (大阪府立成人病センター)
2012/04/26
みなさま、ヒューストンでは刺激的かつ濃厚な毎日を送られていることでしょうね。
山口先生のご指摘の通り、看護師主導の臨床研究はまだまだ少数ですね。教育体制や研究のバックアップ体制の違いもあるのでしょうが。
J-TOPナースで(または主導で)看護師で多施設研究をしたいという意見もたくさんありますし、近い将来取り組んでいきたいと思っています。私たち日本の看護師が臨床試験をするにあたって足りないことやこうすればということがありましたら是非、情報提供おねがいします。
体調に気をつけて(特に体重増加)留学生活を楽しんでください!
山口先生のご指摘の通り、看護師主導の臨床研究はまだまだ少数ですね。教育体制や研究のバックアップ体制の違いもあるのでしょうが。
J-TOPナースで(または主導で)看護師で多施設研究をしたいという意見もたくさんありますし、近い将来取り組んでいきたいと思っています。私たち日本の看護師が臨床試験をするにあたって足りないことやこうすればということがありましたら是非、情報提供おねがいします。
体調に気をつけて(特に体重増加)留学生活を楽しんでください!
Re:Japanese Medical Exchange program 2012 現地リポート
宮本京介 (東京都済生会中央病院)
2012/04/26
メントール外来
はじめまして。
JME2012の東京都済生会中央病院呼吸器内科・宮本京介です。
今日からプログラムはいよいよ本格化しました。
代替医療(Integrated Medicine)に非常に力を入れ、
NIHのグラントもかなり獲得しているMDAですが、
メントールを使った外来があるわけではありません!
今日は何と、初のメンタリングがあったんです!
メンターはギリシャ神話のメントールから付けられた
名前で、今日のメンタリングは外来見学でした。
メンターのLiao先生は胸部専門の放射線治療医で、
外来は胸部腫瘍科 "Thoracic Oncology"という部門です。
外来のシステムや構造は、日本とは全く異なります。
有名な点では、患者さんが診察室で待っており、
学生やPAがあらかじめ問診や診察を先にしてくれて、
主治医はそれらの情報を確認後診察室に入ります。
最も有機的だと感じたのは、医師の待機室(医局的な)に
放射線治療医、腫瘍内科医、胸部外科医が集まっており、
軽いコンサルテーションはその場でなされていることです。
もちろん、最終的には患者さんを診察して、きちんと
正式なコンサルテーションをする旨を伝えます。
それでも、お互いにある程度方針を確認してから患者さんの
診察をできますので、専門家によって治療方針がぶれ、
患者さんが振り回されてしまうリスクが低くなります。
私が見学したのは中皮腫のオペ後再発例、肺癌疑いで
EBUS/TBAC検討例、肺癌ⅢA期で化学放射線治療後の
治療方針についてのコンサルト例でしたが、どの症例も
3科の医師で話し合い、方針を決めて診察していました。
This is what you call "multidisciplinary care"!
って冗談っぽく笑っていらしたので、毎回このように
うまくいくわけではないのかもしれませんが。
中皮腫の術後再発例は"Breaking bad news"でした。
外科ドクターはかなり慎重に、重い状態であることを
うっすらと感じさせる雰囲気作りから入り、まさにRobert
Buckmanの教科書通り、段階を経て告知されていました。
日本とやり方は同じですが、外来で十分に時間が取れ、
診察室もかなり静かで、プライバシーが保たれています。
患者さんもご家族も、そして私自身もドクターの低めの
トーンの語り口に吸い寄せられていくのを実感できました。
最後はドクターへの信頼がより強くなり、涙しながらも
力強く握手し、みんなで治療の成功をお祈りしました。
ちなみにみんなでお祈りするのは一般的ではないみたいです。
色々な人種がいて、色々な文化的背景があるアメリカ。
医療のレベルは日本も負けていないと信じていますが、
多様性diversityに適応している社会構造・文化に関して
得るものが大きく、毎日その違いを実感しています。
「日本に何を持ち帰れるのか?」
という大きな命題を抱えるJMEプログラムですが、
一方で日本の良さをアメリカに輸出し融合できれば、
さらに素晴らしい医療になるのでは?とも思います。
自分が何をしたいのか、そのためには何をするべきか、
そんなことも少しずつ見えてきて、まさにいい
メンタリングを受けられたと実感しました!
はじめまして。
JME2012の東京都済生会中央病院呼吸器内科・宮本京介です。
今日からプログラムはいよいよ本格化しました。
代替医療(Integrated Medicine)に非常に力を入れ、
NIHのグラントもかなり獲得しているMDAですが、
メントールを使った外来があるわけではありません!
今日は何と、初のメンタリングがあったんです!
メンターはギリシャ神話のメントールから付けられた
名前で、今日のメンタリングは外来見学でした。
メンターのLiao先生は胸部専門の放射線治療医で、
外来は胸部腫瘍科 "Thoracic Oncology"という部門です。
外来のシステムや構造は、日本とは全く異なります。
有名な点では、患者さんが診察室で待っており、
学生やPAがあらかじめ問診や診察を先にしてくれて、
主治医はそれらの情報を確認後診察室に入ります。
最も有機的だと感じたのは、医師の待機室(医局的な)に
放射線治療医、腫瘍内科医、胸部外科医が集まっており、
軽いコンサルテーションはその場でなされていることです。
もちろん、最終的には患者さんを診察して、きちんと
正式なコンサルテーションをする旨を伝えます。
それでも、お互いにある程度方針を確認してから患者さんの
診察をできますので、専門家によって治療方針がぶれ、
患者さんが振り回されてしまうリスクが低くなります。
私が見学したのは中皮腫のオペ後再発例、肺癌疑いで
EBUS/TBAC検討例、肺癌ⅢA期で化学放射線治療後の
治療方針についてのコンサルト例でしたが、どの症例も
3科の医師で話し合い、方針を決めて診察していました。
This is what you call "multidisciplinary care"!
って冗談っぽく笑っていらしたので、毎回このように
うまくいくわけではないのかもしれませんが。
中皮腫の術後再発例は"Breaking bad news"でした。
外科ドクターはかなり慎重に、重い状態であることを
うっすらと感じさせる雰囲気作りから入り、まさにRobert
Buckmanの教科書通り、段階を経て告知されていました。
日本とやり方は同じですが、外来で十分に時間が取れ、
診察室もかなり静かで、プライバシーが保たれています。
患者さんもご家族も、そして私自身もドクターの低めの
トーンの語り口に吸い寄せられていくのを実感できました。
最後はドクターへの信頼がより強くなり、涙しながらも
力強く握手し、みんなで治療の成功をお祈りしました。
ちなみにみんなでお祈りするのは一般的ではないみたいです。
色々な人種がいて、色々な文化的背景があるアメリカ。
医療のレベルは日本も負けていないと信じていますが、
多様性diversityに適応している社会構造・文化に関して
得るものが大きく、毎日その違いを実感しています。
「日本に何を持ち帰れるのか?」
という大きな命題を抱えるJMEプログラムですが、
一方で日本の良さをアメリカに輸出し融合できれば、
さらに素晴らしい医療になるのでは?とも思います。
自分が何をしたいのか、そのためには何をするべきか、
そんなことも少しずつ見えてきて、まさにいい
メンタリングを受けられたと実感しました!
Re:Japanese Medical Exchange program 2012 現地リポート
横田真里(聖マリアンナ医科大学病院)
2012/04/27
はじめまして、聖マリアンナ医科大学病院薬剤部の横田真里と申します。
この度JME2012の薬剤師メンバーとして参加させていただいております。
プログラムが始まってまだ1週間足らずですが、多くの出会いや学びに日々刺激を受けています。
研修4日目、4/26木曜日。
午前は呼吸器・頭頚部がん病棟にて薬剤師の見学、午後は乳がん外来の見学等がありました。
特に呼吸器・頭頚部がん病棟における薬剤師の役割が印象的でした。
治療のほとんどが外来で行われているため、予定入院はほとんどなく、
主に化学療法による副作用マネジメントやがんの増悪に伴う症状
コントロールのための緊急入院がメインです。
呼吸器・頭頚部がんのClinical pharmacy specialist(臨床薬剤師)は
3人で、入院2チームもしくは外来の3カ所を定期的にローテーション
しています。なので入院・外来ともに同じ薬剤師が関わっています。
入院チームは主治医・NP・薬剤師の3人で構成されていて、1チーム
あたり10人程度の患者さんを診ていました。
薬剤師は前夜の緊急入院患者や担当患者の指示、投与薬剤、バイタルの変動、血液検査値、CTなどの画像所見を細かくチェックして、必要と考えた
薬剤の処方を行っていました。
NPも同様にチェックを行い、他科へのコンサルト依頼、検査オーダーなど
を行っていました。
その内容を薬剤師・NPで共有、ディスカッションを行い、さらに主治医
を含めたチームで共有していました。
この多職種チームは少人数で、さらにそれぞれが自分の責任において
処方やオーダーが可能であり、とても機能的だと感じました。
特に薬剤師は、個々の患者に合わせて薬剤の必要性、種類、投与量、
投与期間などあらゆることを考えて実行することが出来ます。
(もちろん、NPや主治医に相談することもありますが)
日本ではもちろん薬剤師の処方権はありませんので、医師の処方を
フォローすることがメインです。薬物治療について考えるプロセスが
たとえ同じであっても、そこには大きな違いがあると感じました。
自由に処方や検査オーダーが出来ることの背景には、きっとそれぞれの
専門性や責任、エビデンスの共有、信頼性など様々な要因が隠されている
と思います。
薬剤師がどのような根拠をもとに処方を行っているのか、チームの信頼を
どのように確立してきたのか、今後の研修を通して確認していきます!
この度JME2012の薬剤師メンバーとして参加させていただいております。
プログラムが始まってまだ1週間足らずですが、多くの出会いや学びに日々刺激を受けています。
研修4日目、4/26木曜日。
午前は呼吸器・頭頚部がん病棟にて薬剤師の見学、午後は乳がん外来の見学等がありました。
特に呼吸器・頭頚部がん病棟における薬剤師の役割が印象的でした。
治療のほとんどが外来で行われているため、予定入院はほとんどなく、
主に化学療法による副作用マネジメントやがんの増悪に伴う症状
コントロールのための緊急入院がメインです。
呼吸器・頭頚部がんのClinical pharmacy specialist(臨床薬剤師)は
3人で、入院2チームもしくは外来の3カ所を定期的にローテーション
しています。なので入院・外来ともに同じ薬剤師が関わっています。
入院チームは主治医・NP・薬剤師の3人で構成されていて、1チーム
あたり10人程度の患者さんを診ていました。
薬剤師は前夜の緊急入院患者や担当患者の指示、投与薬剤、バイタルの変動、血液検査値、CTなどの画像所見を細かくチェックして、必要と考えた
薬剤の処方を行っていました。
NPも同様にチェックを行い、他科へのコンサルト依頼、検査オーダーなど
を行っていました。
その内容を薬剤師・NPで共有、ディスカッションを行い、さらに主治医
を含めたチームで共有していました。
この多職種チームは少人数で、さらにそれぞれが自分の責任において
処方やオーダーが可能であり、とても機能的だと感じました。
特に薬剤師は、個々の患者に合わせて薬剤の必要性、種類、投与量、
投与期間などあらゆることを考えて実行することが出来ます。
(もちろん、NPや主治医に相談することもありますが)
日本ではもちろん薬剤師の処方権はありませんので、医師の処方を
フォローすることがメインです。薬物治療について考えるプロセスが
たとえ同じであっても、そこには大きな違いがあると感じました。
自由に処方や検査オーダーが出来ることの背景には、きっとそれぞれの
専門性や責任、エビデンスの共有、信頼性など様々な要因が隠されている
と思います。
薬剤師がどのような根拠をもとに処方を行っているのか、チームの信頼を
どのように確立してきたのか、今後の研修を通して確認していきます!
Re:Japanese Medical Exchange program 2012 現地リポート
Hiro(・・・)
2012/04/28
本日で研修5日目。はじめの1週間が終わりました。
今日は乳腺の腫瘍内科外来の見学、病院のカンファランス(Grand Rounds)、T1週間の振り返りとメンターとの面談がありました。
今回はチーム医療とリーダーシップ研修が主目的ですが、自分の専門領域にもかかわる分野であり、乳腺外来はとても興味深いものでした。ハード面でも充実しています。外来区画のすぐとなりに放射線診断部門(MMG、超音波)、細胞診部門が併設されています。うまくすると診療当日に超音波で気になる所見があれば、即細胞診を実施し、結果が出るまで1時間もかからない!ハードのみならず、診断部門とface to faceですぐにミニカンファができるのが素晴らしいです。患者さんの時間的・心理的負担も最小限となるよう工夫されています。
診療は看護師、(+時にフェロー、)医師がそれぞれ診察を行っていきます。それぞれの視点を生かしつつ診療を行い、医療者間の教育および意思確認も同時進行しているのが印象的です。化学療法でも落ち着いている場合は医師は必ずしも毎回診察をしているわけではなく、安全に行える条件(採血結果、体調)がNs、Phにより確認されれば、実施可能である点などで効率性の高さを感じます。
Grand Roundでは最先端のsiRNAの研究発表および臨床への応用などが検討されていました。最先端のリサーチと臨床のブリッジングが意識されたプログラムであると感じられました。フェローが基礎研究データを発表していたのにも驚きます。
医療の内容では大きく引けを取るようなことはないと思います。しかし、MDACCでは人や物の資源がより潤沢であり、またシステムの違いによるものもあり、医療者の時間的・肉体的負担は日本ではすべての職種において大きいのではないでしょうか。またその差がリサーチにかけられる労力の違いと関連があるようにも思います。
Joyceからできない理由を5つさがすよりも、できる(やりたい)理由を一つ考えることが重要、との言葉をいただきました。まさにその通りだと思います。私たちが向かうべき道を考え、一歩ずつ歩みだせるよう、ディスカッションを重ねたいと思います。
今日は乳腺の腫瘍内科外来の見学、病院のカンファランス(Grand Rounds)、T1週間の振り返りとメンターとの面談がありました。
今回はチーム医療とリーダーシップ研修が主目的ですが、自分の専門領域にもかかわる分野であり、乳腺外来はとても興味深いものでした。ハード面でも充実しています。外来区画のすぐとなりに放射線診断部門(MMG、超音波)、細胞診部門が併設されています。うまくすると診療当日に超音波で気になる所見があれば、即細胞診を実施し、結果が出るまで1時間もかからない!ハードのみならず、診断部門とface to faceですぐにミニカンファができるのが素晴らしいです。患者さんの時間的・心理的負担も最小限となるよう工夫されています。
診療は看護師、(+時にフェロー、)医師がそれぞれ診察を行っていきます。それぞれの視点を生かしつつ診療を行い、医療者間の教育および意思確認も同時進行しているのが印象的です。化学療法でも落ち着いている場合は医師は必ずしも毎回診察をしているわけではなく、安全に行える条件(採血結果、体調)がNs、Phにより確認されれば、実施可能である点などで効率性の高さを感じます。
Grand Roundでは最先端のsiRNAの研究発表および臨床への応用などが検討されていました。最先端のリサーチと臨床のブリッジングが意識されたプログラムであると感じられました。フェローが基礎研究データを発表していたのにも驚きます。
医療の内容では大きく引けを取るようなことはないと思います。しかし、MDACCでは人や物の資源がより潤沢であり、またシステムの違いによるものもあり、医療者の時間的・肉体的負担は日本ではすべての職種において大きいのではないでしょうか。またその差がリサーチにかけられる労力の違いと関連があるようにも思います。
Joyceからできない理由を5つさがすよりも、できる(やりたい)理由を一つ考えることが重要、との言葉をいただきました。まさにその通りだと思います。私たちが向かうべき道を考え、一歩ずつ歩みだせるよう、ディスカッションを重ねたいと思います。
Re:Japanese Medical Exchange program 2012 現地リポート
T.Yamaguchi(神戸大学医学部附属病院)
2012/05/01
4/30(月)、本日の研修内容は、surgery/pathology Observation、Pharmacy Lectureであった。
午後のPharmacy Lectureでは、日本の薬剤師・病院薬剤部との違い、また教育しkステムの違いに驚かされた。人数も多く、その業務は細分化されている。Tecnician,Staff Pharmacist,Clinical Pharmacist である。各々は異なる教育バックグラウンドをもつprofessionalであるが、その職能のリンクの素晴らしさを感じた。調剤・抗がん薬調製業務業務はTecnicianが、その処方監査等はStaff Pharmacistが、患者への直接的介入・医師への処方提案や看護師との連携といったclinicalな部分をClinical Pharmacistが行い、それぞれがそれぞれの専門性を生かしている。
日本の病院薬剤師は、一般調剤業務から病棟・薬剤管理指導業務といった臨床業務までをいわゆる薬剤師が全て行っている。そのため、一人あたりの業務量は膨大となり、最も大きな問題は、薬剤師が臨床へ参画する物理的・時間的余裕の決定的な不足が生じていると私は感じる。本年度より、薬剤師の病棟常駐に対し加算が認められ、病棟常駐化により臨床業務の拡大が図られているが、病棟常駐に際し一般調剤業務(調剤室等)の人員不足が生じ、現場の疲弊が生じるように私は感じている。
確かに、MD Anderson Cancer Centerの全てを日本に取り入れることは不可能だが、Professional による職能の細分化、それはそれで様々な問題もあるかと思うが、その姿勢・考え方は大変重要であると思う。
今後さらに続くPharmacy Lectureに胸が高鳴る。
午後のPharmacy Lectureでは、日本の薬剤師・病院薬剤部との違い、また教育しkステムの違いに驚かされた。人数も多く、その業務は細分化されている。Tecnician,Staff Pharmacist,Clinical Pharmacist である。各々は異なる教育バックグラウンドをもつprofessionalであるが、その職能のリンクの素晴らしさを感じた。調剤・抗がん薬調製業務業務はTecnicianが、その処方監査等はStaff Pharmacistが、患者への直接的介入・医師への処方提案や看護師との連携といったclinicalな部分をClinical Pharmacistが行い、それぞれがそれぞれの専門性を生かしている。
日本の病院薬剤師は、一般調剤業務から病棟・薬剤管理指導業務といった臨床業務までをいわゆる薬剤師が全て行っている。そのため、一人あたりの業務量は膨大となり、最も大きな問題は、薬剤師が臨床へ参画する物理的・時間的余裕の決定的な不足が生じていると私は感じる。本年度より、薬剤師の病棟常駐に対し加算が認められ、病棟常駐化により臨床業務の拡大が図られているが、病棟常駐に際し一般調剤業務(調剤室等)の人員不足が生じ、現場の疲弊が生じるように私は感じている。
確かに、MD Anderson Cancer Centerの全てを日本に取り入れることは不可能だが、Professional による職能の細分化、それはそれで様々な問題もあるかと思うが、その姿勢・考え方は大変重要であると思う。
今後さらに続くPharmacy Lectureに胸が高鳴る。
Re:Japanese Medical Exchange program 2012 現地リポート
HRM(がんセンター東病院薬剤部 )
2012/05/01
今からおよそ9年ほど前にMDACCへ行きました。その当時の日本の薬剤師はまだまだ臨床にでる機会が多くありませんでした。およそ9年という歳月は薬剤師の世界を大きく変えたような気がします。今では多くの若くチベーションの高い薬剤師がどんどん臨床へ行き、患者のベッドサイドだけの臨床ではなく、医師や看護師と同じ立場で「医療チームの一員」となってきたような気がします。MDACCでの体験は自分の中の多くの可能性を引き出してくれます。同じようにできないのは当然です。でもそこで学んだことをモディファイして、日本版の「臨床薬剤師」を作って行ってくれることを期待しています。その「任」を忘れずに、「修行」してきてください。
Re:Japanese Medical Exchange program 2012 現地リポート
森恵子(徳島大学)
2012/05/01
徳島大学の森恵子です。私は2005年のexchange programでMDACCに行かせていただきました。現在は徳島大学でがん看護専門看護師の教育に携わっています。3月の終わりに4日間、再度MDACCに行かせていただく機会をいただきました。目的は、日本のCNS教育が26単位から38単位へ移行するにあたって、MDACCではどのようにAPN/NPがCNSの教育に携わっているかの情報を得ることでしたが、Joyceからアメリカでは現在CNS教育は大学での教育ではなくなっているということを聞き、またMDACCではoncology nurseの領域で、Fellowship programという新たな教育が行われていたり、CNL;clinical nurse leaderという新たな資格(役割)ができつつあるということでした。この新しいシステムについても情報が得られるとよいと思っています。毎日大変だと思いますが、どうぞ、体調に留意しつつ、貴重な体験をしていただけたらと思います。
Re:Japanese Medical Exchange program 2012 現地リポート
宮本京介 (東京都済生会中央病院)
2012/05/02
5月1日の研修は
放射線治療科
統計学講義
薬事委員会
でした。
放射線治療科では、まず始めに概要の講義を受けました。
放射線治療科のチームとしては
放射線治療医
ナース
radiology therapist
physicist
dosimetrist(放射線線量測定士)
の5職種が関わっていいることを学びました。
日本では医師と技師で行なっている業務ですが、潤沢です。
放射線治療を受ける人が多いからかもしれませんが、
MDAだけでなんと17台のリニアックがあるとのこと。
リニアック1台につき、radiology therapistが3から4人、
physicistが1人ついていて、効率的に治療していました。
リニアック1台につきだいたい1日30人治療するそうです。
ここでradiology therapistは実際に患者さんを誘導したり、
機械に乗せたりして治療に直接関わっている方々です。
physicistは照射野を確認したり微調整し、医師による
最終チェックを受けます。
今日はdosimetristにお会いする機会がありませんでしたが、
planning clinicで拝見できるとのことで楽しみです。
統計学講義は全4回のうち2回目でした。
今日はbiasの種類(主にlead time bias)、incidenceと
prevalenceの違い、観察研究と比較試験の違いなどにつき
実例をもとに講義を受けました。
統計学専門の先生のお話なので、基本的な内容でも
今までと違う気づきを得ることができました。
薬事委員会は、日本同様、医師と薬剤師からなる組織ですが、
薬剤師の役割と裁量が日本よりも大きいと感じました。
特にどの薬剤を採用中止にするのかについては、日本では
医師による抵抗がconflictになることもありますが、
安全性、効果、コストなどから検討して中止していました。
また、色々な案件の資料やプレゼンテーションは薬剤師の
レジデントが行なっており、教育の機会としても優れている
と実感しました。
以下は全くの私見です。
日本のように1つの職種が幅広い業務内容をカバーするのは、
患者さんを全人的に診ることに関してメリットを感じます。
ただし、慢性的にマンパワーが不足していますので、欠員
が出た時に質を保証できなかったり、passionを維持できず
燃え尽きてしまったり、権限が偏った職種に集中しすぎて
しまったり、というような側面も見受けられます。
一方でアメリカでもMDAのようなacademic instituteでは、
職種を増やし、仕事を細分化・専門的に特化させることで
最大限のパフォーマンスを発揮できるよう工夫されています。
このことは質を維持したり、個人のパフォーマンスやpassion
に左右されにくいという良い側面もありますが、莫大な
コストがかかり、患者さんの負担も増えます。
職種が多すぎて、必ずしもすべての職種同士が有機的に
つながらない可能性もあります(この部分にリーダーシップが関わります)。
今後の研修では、MDAで最初に感じた、いわゆる目に見える
ような圧倒的な「規模」の違いだけでなく、細部の違いにも
注目してみたいと思います。
放射線治療科
統計学講義
薬事委員会
でした。
放射線治療科では、まず始めに概要の講義を受けました。
放射線治療科のチームとしては
放射線治療医
ナース
radiology therapist
physicist
dosimetrist(放射線線量測定士)
の5職種が関わっていいることを学びました。
日本では医師と技師で行なっている業務ですが、潤沢です。
放射線治療を受ける人が多いからかもしれませんが、
MDAだけでなんと17台のリニアックがあるとのこと。
リニアック1台につき、radiology therapistが3から4人、
physicistが1人ついていて、効率的に治療していました。
リニアック1台につきだいたい1日30人治療するそうです。
ここでradiology therapistは実際に患者さんを誘導したり、
機械に乗せたりして治療に直接関わっている方々です。
physicistは照射野を確認したり微調整し、医師による
最終チェックを受けます。
今日はdosimetristにお会いする機会がありませんでしたが、
planning clinicで拝見できるとのことで楽しみです。
統計学講義は全4回のうち2回目でした。
今日はbiasの種類(主にlead time bias)、incidenceと
prevalenceの違い、観察研究と比較試験の違いなどにつき
実例をもとに講義を受けました。
統計学専門の先生のお話なので、基本的な内容でも
今までと違う気づきを得ることができました。
薬事委員会は、日本同様、医師と薬剤師からなる組織ですが、
薬剤師の役割と裁量が日本よりも大きいと感じました。
特にどの薬剤を採用中止にするのかについては、日本では
医師による抵抗がconflictになることもありますが、
安全性、効果、コストなどから検討して中止していました。
また、色々な案件の資料やプレゼンテーションは薬剤師の
レジデントが行なっており、教育の機会としても優れている
と実感しました。
以下は全くの私見です。
日本のように1つの職種が幅広い業務内容をカバーするのは、
患者さんを全人的に診ることに関してメリットを感じます。
ただし、慢性的にマンパワーが不足していますので、欠員
が出た時に質を保証できなかったり、passionを維持できず
燃え尽きてしまったり、権限が偏った職種に集中しすぎて
しまったり、というような側面も見受けられます。
一方でアメリカでもMDAのようなacademic instituteでは、
職種を増やし、仕事を細分化・専門的に特化させることで
最大限のパフォーマンスを発揮できるよう工夫されています。
このことは質を維持したり、個人のパフォーマンスやpassion
に左右されにくいという良い側面もありますが、莫大な
コストがかかり、患者さんの負担も増えます。
職種が多すぎて、必ずしもすべての職種同士が有機的に
つながらない可能性もあります(この部分にリーダーシップが関わります)。
今後の研修では、MDAで最初に感じた、いわゆる目に見える
ような圧倒的な「規模」の違いだけでなく、細部の違いにも
注目してみたいと思います。
Re:Japanese Medical Exchange program 2012 現地リポート
横田真里(聖マリアンナ医科大学病院)
2012/05/03
5/2 今日の研修は
AM 薬剤師/看護師見学
PM 振り返り、チームでのディスカッション、IRB見学
がありました。
私達6人は医師・看護師・薬剤師で2チームに分けられており、私のチームは薬剤師の見学および振り返りを主に行いました。
今回は白血病病棟で薬剤師について見学。
白血病病棟・外来担当薬剤師は9人で、入院5チーム+外来クリニックを1ヶ月毎にローテーションしています。
主に午前中は主治医やフェロー、レジデント、NP(Nurse practitioner)、RN(Registered Nurse;いわゆる日本のNsと同じ役割を主に行う)とともにチームで回診を行い、情報共有・治療方針の決定・処方内容の確認変更などを行っていました。(回診のスタイルは主治医によって異なるようです)
特に白血病治療において感染症予防や治療は重要であり、薬剤師は投与薬剤の種類および投与期間、バイタルサインや画像結果、検査値、培養結果などを確認し、薬剤継続や中止変更の必要性を判断し処方することを任されていました。
アメリカでの医療費や保険制度の問題から、入院期間を短縮するために、点滴での抗菌薬加療が1~2剤でコントロール可能であれば、退院して外来通院もしくは自宅での点滴加療を継続することが可能です。
どのような対応をするかは患者さんの医療保険の種類によっても大きく異なるため、保険の種類に合わせて薬剤の選択および処方、case managerへの連絡(自宅点滴の場合)など退院時のマネジメントも行っていました。
今回新たに気づいた点は、薬剤師が”〇〇病棟担当”としてではなくひとつの多職種チームの一員として患者さんを担当し働いていること、医師が細かく薬剤師の処方をチェックしていないことです。
ひとつのチームの一員として働くことで、効率よく意思疎通が可能でありディスカッションもしやすくなります。
医師がどの程度薬剤師の処方をチェックしているのか、薬物治療に対する考え方の違いによりトラブルとなるケースはないのか、疑問に思い質問したところ、
「主治医によっても確認の頻度は異なるが、多くは薬剤師に一任しており細かくチェックは行っていない」とのことでした。
その理由としては、pharmDという学位やレジデンシープログラムを修了しし専門薬剤師として認定されていることが大きな信頼につながっているようでした。
その上に円滑なコミュニケーションやエビデンスが加わり、薬剤師の地位や影響力がより強固なものとなっているのだと実感しました。
この気づきを日本に持ち帰り、薬剤師の地位向上や業務拡大につなげるためには具体的に何が必要なのか、MDACCでの様々な薬剤師の活躍を見ることで考えていきたいと思います。
AM 薬剤師/看護師見学
PM 振り返り、チームでのディスカッション、IRB見学
がありました。
私達6人は医師・看護師・薬剤師で2チームに分けられており、私のチームは薬剤師の見学および振り返りを主に行いました。
今回は白血病病棟で薬剤師について見学。
白血病病棟・外来担当薬剤師は9人で、入院5チーム+外来クリニックを1ヶ月毎にローテーションしています。
主に午前中は主治医やフェロー、レジデント、NP(Nurse practitioner)、RN(Registered Nurse;いわゆる日本のNsと同じ役割を主に行う)とともにチームで回診を行い、情報共有・治療方針の決定・処方内容の確認変更などを行っていました。(回診のスタイルは主治医によって異なるようです)
特に白血病治療において感染症予防や治療は重要であり、薬剤師は投与薬剤の種類および投与期間、バイタルサインや画像結果、検査値、培養結果などを確認し、薬剤継続や中止変更の必要性を判断し処方することを任されていました。
アメリカでの医療費や保険制度の問題から、入院期間を短縮するために、点滴での抗菌薬加療が1~2剤でコントロール可能であれば、退院して外来通院もしくは自宅での点滴加療を継続することが可能です。
どのような対応をするかは患者さんの医療保険の種類によっても大きく異なるため、保険の種類に合わせて薬剤の選択および処方、case managerへの連絡(自宅点滴の場合)など退院時のマネジメントも行っていました。
今回新たに気づいた点は、薬剤師が”〇〇病棟担当”としてではなくひとつの多職種チームの一員として患者さんを担当し働いていること、医師が細かく薬剤師の処方をチェックしていないことです。
ひとつのチームの一員として働くことで、効率よく意思疎通が可能でありディスカッションもしやすくなります。
医師がどの程度薬剤師の処方をチェックしているのか、薬物治療に対する考え方の違いによりトラブルとなるケースはないのか、疑問に思い質問したところ、
「主治医によっても確認の頻度は異なるが、多くは薬剤師に一任しており細かくチェックは行っていない」とのことでした。
その理由としては、pharmDという学位やレジデンシープログラムを修了しし専門薬剤師として認定されていることが大きな信頼につながっているようでした。
その上に円滑なコミュニケーションやエビデンスが加わり、薬剤師の地位や影響力がより強固なものとなっているのだと実感しました。
この気づきを日本に持ち帰り、薬剤師の地位向上や業務拡大につなげるためには具体的に何が必要なのか、MDACCでの様々な薬剤師の活躍を見ることで考えていきたいと思います。
Re:Japanese Medical Exchange program 2012 現地リポート
IKU(・・・)
2012/05/04
おはようございます。
5月3日木曜日から、メンバーのうちNurseの二人はONS(Oncology Nursing Society:アメリカのがん看護学会です)に参加しています。
朝9時よりオープニングセレモニーが盛大に始まり、私たちはInternational Attendeeの日本代表としてちゃっかり入場行進してしまいました。
近年のがんの医療においては、分子生物学やファーマコゲノミクスを理解していなければ、疾患や治療を理解することが難しくなりました。正しい疾患や治療の理解に基づいた看護ケアを実践するためには、看護師にも勉強が必要です。今回のONSでも「遺伝がん看護」に関する演題が大きく取り上げられていました。
「遺伝がん看護」とは、家族性がんをもつ患者やその家族のケアや遺伝子的な診断に基づいた治療の実践に関す支援などに関する看護ケアのことを言います。
遺伝子的な解明が進んだことで治療の個別化は進みましたが、患者にとっては複雑な治療や多様な選択肢が理解できなかったり、治療の選択に迷うことが多くなりました。また、遺伝子学的な診断を受けるためには、高い医療費を支払うことになります。
看護師として、このような患者や家族をどのようにささえていくか考えるのは非常に重要なテーマであると思います。また、医療スタッフの教育も重要です。複雑化するがん医療に看護師として何をしていかなければならないか考えさせられたONS初日でした。
5月3日木曜日から、メンバーのうちNurseの二人はONS(Oncology Nursing Society:アメリカのがん看護学会です)に参加しています。
朝9時よりオープニングセレモニーが盛大に始まり、私たちはInternational Attendeeの日本代表としてちゃっかり入場行進してしまいました。
近年のがんの医療においては、分子生物学やファーマコゲノミクスを理解していなければ、疾患や治療を理解することが難しくなりました。正しい疾患や治療の理解に基づいた看護ケアを実践するためには、看護師にも勉強が必要です。今回のONSでも「遺伝がん看護」に関する演題が大きく取り上げられていました。
「遺伝がん看護」とは、家族性がんをもつ患者やその家族のケアや遺伝子的な診断に基づいた治療の実践に関す支援などに関する看護ケアのことを言います。
遺伝子的な解明が進んだことで治療の個別化は進みましたが、患者にとっては複雑な治療や多様な選択肢が理解できなかったり、治療の選択に迷うことが多くなりました。また、遺伝子学的な診断を受けるためには、高い医療費を支払うことになります。
看護師として、このような患者や家族をどのようにささえていくか考えるのは非常に重要なテーマであると思います。また、医療スタッフの教育も重要です。複雑化するがん医療に看護師として何をしていかなければならないか考えさせられたONS初日でした。
Re:Japanese Medical Exchange program 2012 現地リポート
濱嶋 夕子(東京医科大学病院)
2012/05/08
昨日ニューオリンズで行われていたONS(Oncology nurse society)カンファレンスより戻りました。初めての海外での学会であり、緊張しましたが貴重な経験となりました。
カンファレンスの内容は多岐にわたり、薬剤の最新情報、治験、疾患毎のケア、精神的なケア、コミュニケーション、副作用マネージメント、患者教育、安全管理、スタッフ教育や配置、リサーチ、エビデンスプラクティスに関するものなど様々なトピックがありました。それぞれの講義の後には、活発に質疑応答やディスカッションがあり講義者だけでなく、聴講者の情報共有その場を通じてなされており活気のあるものでした。日本では医師が講義している印象のある薬剤に関するセッションでも全てNPなどが講義しているのは少し驚きました。
患者教育や精神的なサポートに関するセッションにいくつか出ましたが、あるセッションで聞いた"Information is medicine. "という言葉に象徴されるように、患者さんが十分な情報を得て様々な決定そして治療が円滑に行えるよう教育、精神的なサポートの重要性について再認識しました。教育をする上で、患者さんのhealth care literacy を評価し効果的な方法を用いて行うなど具体的な方法論などもあり参考になりました。
また、学会に参加している日本人の方とアメリカ人NP,CNSを招いての座談会もありました。今回のONSでの学びをどう日本フィードバックするか、CNS や特定看護師の今後の日本での活躍についても話しが及びました。アメリカも現在の看護師の役割や専門性を築くまでに様々な試行錯誤を重ねた歴史があったそうです。日本の看護界もその過渡期にあるのかなと思うとともに、看護師の役割の拡大にどんなことが必要か異なる立場の方と意見交換をする機会となりとても有意義でした。日本からのCNSの方や大学の先生方、そしてアメリカでNPとして活躍されてる方など様々な立場で活躍する人達に会い、刺激を受けることができたことはとても良かったと思います。
カンファレンスの内容は多岐にわたり、薬剤の最新情報、治験、疾患毎のケア、精神的なケア、コミュニケーション、副作用マネージメント、患者教育、安全管理、スタッフ教育や配置、リサーチ、エビデンスプラクティスに関するものなど様々なトピックがありました。それぞれの講義の後には、活発に質疑応答やディスカッションがあり講義者だけでなく、聴講者の情報共有その場を通じてなされており活気のあるものでした。日本では医師が講義している印象のある薬剤に関するセッションでも全てNPなどが講義しているのは少し驚きました。
患者教育や精神的なサポートに関するセッションにいくつか出ましたが、あるセッションで聞いた"Information is medicine. "という言葉に象徴されるように、患者さんが十分な情報を得て様々な決定そして治療が円滑に行えるよう教育、精神的なサポートの重要性について再認識しました。教育をする上で、患者さんのhealth care literacy を評価し効果的な方法を用いて行うなど具体的な方法論などもあり参考になりました。
また、学会に参加している日本人の方とアメリカ人NP,CNSを招いての座談会もありました。今回のONSでの学びをどう日本フィードバックするか、CNS や特定看護師の今後の日本での活躍についても話しが及びました。アメリカも現在の看護師の役割や専門性を築くまでに様々な試行錯誤を重ねた歴史があったそうです。日本の看護界もその過渡期にあるのかなと思うとともに、看護師の役割の拡大にどんなことが必要か異なる立場の方と意見交換をする機会となりとても有意義でした。日本からのCNSの方や大学の先生方、そしてアメリカでNPとして活躍されてる方など様々な立場で活躍する人達に会い、刺激を受けることができたことはとても良かったと思います。
Re:Japanese Medical Exchange program 2012 現地リポート
宮本京介 (東京都済生会中央病院)
2012/05/11
1100人!
アメリカ最大の神経腫瘍内科プログラムをもつMDAの、
原発性脳脊髄腫瘍症例の年間新患数です。
MDAのホームページには500人以上と書いてありますが、
実際にはこれくらいいるそうです。
これがどれくらいすごいかというと、日本で最も原発性
脳脊髄腫瘍を診療している施設の5~10倍に相当します。
5月10日の研修の目玉は、この神経腫瘍内科のNP
(Nurse Practitioner)の役割を見学することでした!
ので、かなり楽しみに意気揚々と外来に向かいました。
しかし、何とその方が病欠されており、研修中のfellowの
ドクターも1人いないとのことで、かなり外来がごった返して
いるとのこと。
そんな中、颯爽と一人の紳士が現れました。
Gilbert教授で、日本に何回もいらしているという親日家です。
今年も8月に神経腫瘍内科の研究会が東京で開催され、
招聘されるので参加してみたら?とお誘いいただきました。
外来は他の科と同様、NPやfellowのドクターが予め患者さん
を問診・診察し、情報を集めます。その後、外来主治医が
今後の方針をチームで話し合い、診察に赴きます。
外来の合間に、Gilbert先生と日本との違いについて
お話する時間をいただけました。
何度も日本にいらしているので、日本の脳神経外科の
ドクターの苦悩を十分にご存知でした。
その上で、やはり経験に勝るものはないとご意見されました。
MDAの良さは、症例の豊富さにつきるとのことです。
実は、アメリカでも神経腫瘍内科はニッチな分野です。
アメリカの腫瘍内科医は、内科レジデントとして3年間
トレーニングを受け、内科専門医を取得します。
その後、腫瘍内科医として血液腫瘍・固形腫瘍のいずれか
あるいは両方を診療するトレーニングプログラムを受けます。
この期間はプログラムによりますが、2-3年です。
ちなみに、腫瘍内科医が神経腫瘍内科医になるためには、
さらに2年間の追加トレーニングが必要です。
一方で、神経腫瘍内科は3年間の神経内科のトレーニング
修了後、2年間の神経腫瘍内科のプログラムを受けます。
つまり、一般内科や腫瘍内科を目指してはおらず、あくまで
神経内科がベースにあります。
神経内科で腫瘍を診る機会は非常に稀ですので、一般的な
神経内科医が目指す進路とはかなり異なる方向性です。
MDAには11人も常勤医がおり、トレーニングプログラム
であるフェローシップも、世界中から応募があるそうです。
ニッチでも、症例数が増えれば、診療の質は必然的に
高くなります。
膠芽腫などの悪性度の高い腫瘍でも、長期生存されている
ケースをかなり見ることができました。
圧巻だったのは、症例報告もされている、世界で8例しか
いない稀な脳腫瘍の患者さんのフォロー外来がたまたま
あったことです!
この方は一時的にかなり機能喪失になり、ホスピスを
検討されていたのですが、たった数ヶ月で奇跡的に改善し、
ご家族と一緒に外来にいらしており、幸せそうでした。
NPがいないためNPの役割としてどのように診療がスムーズに
行われているのかを知ることはできませんでしたが、
MDAならではの細分化された専門外来に刺激をうけました!
8月にGilbert教授にお会いするのが楽しみです。
アメリカ最大の神経腫瘍内科プログラムをもつMDAの、
原発性脳脊髄腫瘍症例の年間新患数です。
MDAのホームページには500人以上と書いてありますが、
実際にはこれくらいいるそうです。
これがどれくらいすごいかというと、日本で最も原発性
脳脊髄腫瘍を診療している施設の5~10倍に相当します。
5月10日の研修の目玉は、この神経腫瘍内科のNP
(Nurse Practitioner)の役割を見学することでした!
ので、かなり楽しみに意気揚々と外来に向かいました。
しかし、何とその方が病欠されており、研修中のfellowの
ドクターも1人いないとのことで、かなり外来がごった返して
いるとのこと。
そんな中、颯爽と一人の紳士が現れました。
Gilbert教授で、日本に何回もいらしているという親日家です。
今年も8月に神経腫瘍内科の研究会が東京で開催され、
招聘されるので参加してみたら?とお誘いいただきました。
外来は他の科と同様、NPやfellowのドクターが予め患者さん
を問診・診察し、情報を集めます。その後、外来主治医が
今後の方針をチームで話し合い、診察に赴きます。
外来の合間に、Gilbert先生と日本との違いについて
お話する時間をいただけました。
何度も日本にいらしているので、日本の脳神経外科の
ドクターの苦悩を十分にご存知でした。
その上で、やはり経験に勝るものはないとご意見されました。
MDAの良さは、症例の豊富さにつきるとのことです。
実は、アメリカでも神経腫瘍内科はニッチな分野です。
アメリカの腫瘍内科医は、内科レジデントとして3年間
トレーニングを受け、内科専門医を取得します。
その後、腫瘍内科医として血液腫瘍・固形腫瘍のいずれか
あるいは両方を診療するトレーニングプログラムを受けます。
この期間はプログラムによりますが、2-3年です。
ちなみに、腫瘍内科医が神経腫瘍内科医になるためには、
さらに2年間の追加トレーニングが必要です。
一方で、神経腫瘍内科は3年間の神経内科のトレーニング
修了後、2年間の神経腫瘍内科のプログラムを受けます。
つまり、一般内科や腫瘍内科を目指してはおらず、あくまで
神経内科がベースにあります。
神経内科で腫瘍を診る機会は非常に稀ですので、一般的な
神経内科医が目指す進路とはかなり異なる方向性です。
MDAには11人も常勤医がおり、トレーニングプログラム
であるフェローシップも、世界中から応募があるそうです。
ニッチでも、症例数が増えれば、診療の質は必然的に
高くなります。
膠芽腫などの悪性度の高い腫瘍でも、長期生存されている
ケースをかなり見ることができました。
圧巻だったのは、症例報告もされている、世界で8例しか
いない稀な脳腫瘍の患者さんのフォロー外来がたまたま
あったことです!
この方は一時的にかなり機能喪失になり、ホスピスを
検討されていたのですが、たった数ヶ月で奇跡的に改善し、
ご家族と一緒に外来にいらしており、幸せそうでした。
NPがいないためNPの役割としてどのように診療がスムーズに
行われているのかを知ることはできませんでしたが、
MDAならではの細分化された専門外来に刺激をうけました!
8月にGilbert教授にお会いするのが楽しみです。
Re:Japanese Medical Exchange program 2012 現地リポート
Hiro(筑波大学)
2012/05/15
Houston Hospice見学 2012/5/11
Houston HospiceはMDACCから徒歩約7分、1920年代に市長であったHolcombe邸をもとにつくられており、レンガ造りの重厚な建築にまずは息をのむ。街中にありながら広く美しく、手入れの行き届いた庭があり、敷地内には図書室やチャペルを有する。Hospice内部は廊下や居住スペースはひろく、なおかつ温かみのある木の家具や装飾品に彩られ、また絵画やボランティアたちの手による大きなタペストリーが随所に飾られている。独特の消毒・薬品臭などもなく、一見して医療施設とは思えない。
Dr. Thuy Hanh Trinhより説明を受ける。
Houston Hospiceは非営利組織であることが、多くのホスピスと異なる。ホスピスの経営はかならずしも医療費収入がよいわけではないとのことであり、資金運用は患者・保険会社からの支払いおよび、多くの寄付により支えられている。非営利であるがゆえ、経営をあまり考慮せずに真の患者中心のケアを提供できているとのことである。ホスピスケアの対象となるのは余命6カ月程度と認定された患者である。数年前はがん患者・非がん患者の割合は5分5分であったとのことであるが、最近はがん患者35%、非がん患者65%となっている。心不全、腎機能不全、アルツハイマー病など非がん患者の割合が増加しており、ホスピスケアの重要性が一般内科診療医および社会的に広く認知されてきているようである。またアメリカでは保険が金銭的にネックとなることが多いが、現在の政治体制においてはMedicareの患者は100%ホスピスケア(在宅支援、薬剤、入院)に関する支払いが保証されており自己負担はなく、ほかの保険の場合は自己負担率・支払い率は保険会社により異なるようであるが、今後政治体制の変化により、経済的には厳しくなる可能性を憂慮されていた。
Houston Hospiceは入院施設として23床あり、平均在院日数は5日程度、入院対象者の待機期間は非常に短く、時に依頼当日、多くは数日とのことであった。この効率的な運用の背景にはホスピスによる在宅支援があり、250名以上の患者が訪問チームによりケアの対象となっている。入院対象となるのはほかの病院からの転院要請例、および在宅支援中に症状の悪化症例などである。
ホスピスにおけるinter-disciplinary teamには看護師、ソーシャルワーカー、チャプレン、ドクター、ボランティア、およびBereavement coordinatorがいる。病院に比較し精神的・宗教的に支援するチャプレン、患者および家族のあらゆる支援を行うボランティア、患者と死別後の家族のケアを13カ月にわたりおこなうBereavement coordinatorの支援がより機能的となる。
どのように生を全うするか、死を迎えるか、家族としてどのように愛する人の死を受け入れていくのか。ホスピスケアの概念は患者・医療者のみならず、すべての人にとって大切であり、今後日本においても議論が深まり、社会的にひろがることを期待する。
Houston HospiceはMDACCから徒歩約7分、1920年代に市長であったHolcombe邸をもとにつくられており、レンガ造りの重厚な建築にまずは息をのむ。街中にありながら広く美しく、手入れの行き届いた庭があり、敷地内には図書室やチャペルを有する。Hospice内部は廊下や居住スペースはひろく、なおかつ温かみのある木の家具や装飾品に彩られ、また絵画やボランティアたちの手による大きなタペストリーが随所に飾られている。独特の消毒・薬品臭などもなく、一見して医療施設とは思えない。
Dr. Thuy Hanh Trinhより説明を受ける。
Houston Hospiceは非営利組織であることが、多くのホスピスと異なる。ホスピスの経営はかならずしも医療費収入がよいわけではないとのことであり、資金運用は患者・保険会社からの支払いおよび、多くの寄付により支えられている。非営利であるがゆえ、経営をあまり考慮せずに真の患者中心のケアを提供できているとのことである。ホスピスケアの対象となるのは余命6カ月程度と認定された患者である。数年前はがん患者・非がん患者の割合は5分5分であったとのことであるが、最近はがん患者35%、非がん患者65%となっている。心不全、腎機能不全、アルツハイマー病など非がん患者の割合が増加しており、ホスピスケアの重要性が一般内科診療医および社会的に広く認知されてきているようである。またアメリカでは保険が金銭的にネックとなることが多いが、現在の政治体制においてはMedicareの患者は100%ホスピスケア(在宅支援、薬剤、入院)に関する支払いが保証されており自己負担はなく、ほかの保険の場合は自己負担率・支払い率は保険会社により異なるようであるが、今後政治体制の変化により、経済的には厳しくなる可能性を憂慮されていた。
Houston Hospiceは入院施設として23床あり、平均在院日数は5日程度、入院対象者の待機期間は非常に短く、時に依頼当日、多くは数日とのことであった。この効率的な運用の背景にはホスピスによる在宅支援があり、250名以上の患者が訪問チームによりケアの対象となっている。入院対象となるのはほかの病院からの転院要請例、および在宅支援中に症状の悪化症例などである。
ホスピスにおけるinter-disciplinary teamには看護師、ソーシャルワーカー、チャプレン、ドクター、ボランティア、およびBereavement coordinatorがいる。病院に比較し精神的・宗教的に支援するチャプレン、患者および家族のあらゆる支援を行うボランティア、患者と死別後の家族のケアを13カ月にわたりおこなうBereavement coordinatorの支援がより機能的となる。
どのように生を全うするか、死を迎えるか、家族としてどのように愛する人の死を受け入れていくのか。ホスピスケアの概念は患者・医療者のみならず、すべての人にとって大切であり、今後日本においても議論が深まり、社会的にひろがることを期待する。
Re:Japanese Medical Exchange program 2012 現地リポート
佐藤由美子(名古屋市立西部医療センター薬剤科)
2012/05/15
いつも詳細なレポートありがとうございます。
6年前のことをありありと思いだします。
もう3週間ほど経ったと思いますが、
皆様体調はいかがですか?
お体に気をつけて、最後まで楽しんできてくださいね!
6年前のことをありありと思いだします。
もう3週間ほど経ったと思いますが、
皆様体調はいかがですか?
お体に気をつけて、最後まで楽しんできてくださいね!
Re:Japanese Medical Exchange program 2012 現地リポート
古屋由加(広島大学病院)
2012/05/15
Team2012の皆様、毎日充実した時間を過ごされているようで安心しました。
私も、佐藤由美子さんと共に6年前のあの夢のような時間を思い出しました。
ホスピスは私自身、当時告知を拒否する脳腫瘍の患者さんとの向き合い方に苦悩していたので、個人的にとても興味がありました。
告知のあり方や自分の死生観と向き合うことをタブーとされている日本の医療現場しか知らなかった私にとっても、とても素敵な荘厳な雰囲気に包まれた時間でした。
ひとつひとつのお部屋もまるで映画のワンシーンのようで。
人の最期の時間と生を全うするための空間として今でも鮮明に記憶に残っています。
また、現地の報告 楽しみにしています。
お体に気をつけて。
私も、佐藤由美子さんと共に6年前のあの夢のような時間を思い出しました。
ホスピスは私自身、当時告知を拒否する脳腫瘍の患者さんとの向き合い方に苦悩していたので、個人的にとても興味がありました。
告知のあり方や自分の死生観と向き合うことをタブーとされている日本の医療現場しか知らなかった私にとっても、とても素敵な荘厳な雰囲気に包まれた時間でした。
ひとつひとつのお部屋もまるで映画のワンシーンのようで。
人の最期の時間と生を全うするための空間として今でも鮮明に記憶に残っています。
また、現地の報告 楽しみにしています。
お体に気をつけて。
Re:Japanese Medical Exchange program 2012 現地リポート
横田真里(聖マリアンナ医科大学病院)
2012/05/17
5/16 水曜日
IRB(Institutional Review Board) committeeへ参加。
事前にDr.TheriaultからIRBの概要を伺ってから、IRBへ参加することが出来ました。
MDACCでは2週に1回、水曜日の午後に行われています。
通常、臨床試験を行う場合にはまず "Clinical Research committee" へ臨床試験のプロトコールを提出します。そこで科学的妥当性について具体的に専門家(医師、薬剤師、看護師など)や生物統計家など8人のreviewerが評価を行います。(薬剤師は各分野を担当しているClinical pharmacy specialistが分担してreviewerとなっています!)
CRCで認可されると、次はIRBにおいて、倫理性や試験の妥当性について審議されます。晴れて"approved" となると週明けの月曜日には正式に文書で研究者へ報告されます。
研究者がプロトコールを提出してから、"approved"となるまで期間は概ね30日とのことです。
実際のIRB committeeでは、新たに申請された臨床試験や患者さんへの説明文書についての議論、現在行われている臨床試験の経過やviolation(プロトコール逸脱による患者さんへの不利益事項)の報告などがありました。
今日のcommitteeでは特に大きなコンフリクトはなく、厳正な雰囲気の中次々と議論が進められて、匿名性を保つために電子投票にて採決を行っていました。
MDACCでは"Vision"に "We are Making Cancer History"と掲げているように膨大な数の臨床試験(Phase Ⅰ/Ⅱが多い!)が行われています。
現在進行中の試験は1000以上とのことです!!
IRBは"patient" "Investigator" "Institution"の3つを守るためのcommitteeであり、臨床試験の公平性、倫理性、試験の質を保つための重要な組織です。いわば全米No.1のMDACCの底力を支えている組織とも言えると思います。
現在IRBのChairであるDr.Theriaultは12年間IRBのメンバーとして務めていらっしゃるそうです!先生のお話から大きな誇りを感じることが出来ました。
IRB(Institutional Review Board) committeeへ参加。
事前にDr.TheriaultからIRBの概要を伺ってから、IRBへ参加することが出来ました。
MDACCでは2週に1回、水曜日の午後に行われています。
通常、臨床試験を行う場合にはまず "Clinical Research committee" へ臨床試験のプロトコールを提出します。そこで科学的妥当性について具体的に専門家(医師、薬剤師、看護師など)や生物統計家など8人のreviewerが評価を行います。(薬剤師は各分野を担当しているClinical pharmacy specialistが分担してreviewerとなっています!)
CRCで認可されると、次はIRBにおいて、倫理性や試験の妥当性について審議されます。晴れて"approved" となると週明けの月曜日には正式に文書で研究者へ報告されます。
研究者がプロトコールを提出してから、"approved"となるまで期間は概ね30日とのことです。
実際のIRB committeeでは、新たに申請された臨床試験や患者さんへの説明文書についての議論、現在行われている臨床試験の経過やviolation(プロトコール逸脱による患者さんへの不利益事項)の報告などがありました。
今日のcommitteeでは特に大きなコンフリクトはなく、厳正な雰囲気の中次々と議論が進められて、匿名性を保つために電子投票にて採決を行っていました。
MDACCでは"Vision"に "We are Making Cancer History"と掲げているように膨大な数の臨床試験(Phase Ⅰ/Ⅱが多い!)が行われています。
現在進行中の試験は1000以上とのことです!!
IRBは"patient" "Investigator" "Institution"の3つを守るためのcommitteeであり、臨床試験の公平性、倫理性、試験の質を保つための重要な組織です。いわば全米No.1のMDACCの底力を支えている組織とも言えると思います。
現在IRBのChairであるDr.Theriaultは12年間IRBのメンバーとして務めていらっしゃるそうです!先生のお話から大きな誇りを感じることが出来ました。
Re:Japanese Medical Exchange program 2012 現地リポート
IKU(・・・)
2012/05/20
「CNL~clinical Nurse Leader~」について
MDACCでの研修も残り1週間となりました。名残惜しい気持ちでいっぱいですが、帰国する日はもうすぐやってきます。研修最終日まで、さまざまなことを精一杯学び、感じたいと思います。
さて、本題の研修報告にうつります。
今日はアメリカで新しく生まれた看護師の役割である「CNL~clinical Nurse Leader~」について報告したいと思います。
MDACCでは2007年の誕生以降、CNLを積極的に導入しているそうです。
アメリカではAPN~Advanced Practice Nurse~(NPやCNSなど)と呼ばれる高い専門性と高度な看護実践能力を有する看護師が、一定の診断や処方における権限をもち、看護師の役割拡大やチーム医療の推進に貢献していることは、日本でも知られています。APNは修士課程で教育され、各々がスペシャリティをもっているのが特徴です。
一方、CNLは修士課程で教育されますが、診断や処方の権限はありません。特定の専門分野内での活躍というより、より包括的で高度な看護実践や多職種間のリエゾン的役割、また強力なリーダーシップを発揮することが求められているようです。修士課程での教育内容は、「健康増進や疾病予防」「チームおよびリスクマネージメント」「アウトカムマネージメント」「リーダーシップおよびジャッジメントスキル」などなど多岐にわたります。
APNが高い実践能力を持つスペシャリストといわれるならば、CNLはスーパージェネラリストといったところでしょうか?
医療現場においては専門性の分化がすすみ、複雑さが増しています。CNLの登場により、より効果的な看護や医療の提供が進んでいくことを願います。
MDACCでの研修も残り1週間となりました。名残惜しい気持ちでいっぱいですが、帰国する日はもうすぐやってきます。研修最終日まで、さまざまなことを精一杯学び、感じたいと思います。
さて、本題の研修報告にうつります。
今日はアメリカで新しく生まれた看護師の役割である「CNL~clinical Nurse Leader~」について報告したいと思います。
MDACCでは2007年の誕生以降、CNLを積極的に導入しているそうです。
アメリカではAPN~Advanced Practice Nurse~(NPやCNSなど)と呼ばれる高い専門性と高度な看護実践能力を有する看護師が、一定の診断や処方における権限をもち、看護師の役割拡大やチーム医療の推進に貢献していることは、日本でも知られています。APNは修士課程で教育され、各々がスペシャリティをもっているのが特徴です。
一方、CNLは修士課程で教育されますが、診断や処方の権限はありません。特定の専門分野内での活躍というより、より包括的で高度な看護実践や多職種間のリエゾン的役割、また強力なリーダーシップを発揮することが求められているようです。修士課程での教育内容は、「健康増進や疾病予防」「チームおよびリスクマネージメント」「アウトカムマネージメント」「リーダーシップおよびジャッジメントスキル」などなど多岐にわたります。
APNが高い実践能力を持つスペシャリストといわれるならば、CNLはスーパージェネラリストといったところでしょうか?
医療現場においては専門性の分化がすすみ、複雑さが増しています。CNLの登場により、より効果的な看護や医療の提供が進んでいくことを願います。
Re:Japanese Medical Exchange program 2012 現地リポート
野木雅代 (東京医科大学病院)
2012/05/20
IKU 様
CNLに関する詳しい投稿をありがとうございました。
とても興味深く読ませていただきました。
日本の看護界においては、特定看護師のあり方やCNSの方との位置づけ、認定看護師との連携のあり方など・・・これからも課題が沢山あると感じています。
今の現場では、かなりのスペシャリストの方々が、その専門分野だけに専従できない事も問題の1つとして上がっています。
これからの日本の看護界においても、CNLのようなスーパージェネラリストの存在が必要になってくるかもしれませんね。
名称が何であっても、向かう先は「患者中心の医療」でありたいと個人的には思っています。
CNLに関する詳しい投稿をありがとうございました。
とても興味深く読ませていただきました。
日本の看護界においては、特定看護師のあり方やCNSの方との位置づけ、認定看護師との連携のあり方など・・・これからも課題が沢山あると感じています。
今の現場では、かなりのスペシャリストの方々が、その専門分野だけに専従できない事も問題の1つとして上がっています。
これからの日本の看護界においても、CNLのようなスーパージェネラリストの存在が必要になってくるかもしれませんね。
名称が何であっても、向かう先は「患者中心の医療」でありたいと個人的には思っています。