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治療とその選択
タモキシフェンとトレミフェン
ひやの(東京都) 2008/12/28
47歳女性です。
先月乳癌手術を受け、病理検査をもとに腫瘍内科医と相談し、低リスクのため抗エストロゲン剤のみの服用と決まりました。
医師からは、抗エストロゲン剤として標準薬はタモキシフェンとトレミフェンがあり、タモキシフェンの方が長い歴史があるが、効用・副作用とも両者に違いがなく、当院ではトレミフェンを第一薬として処方し、副作用等あり合わなければ、タモキシフェンに切り替える。
とのことで、フェアストン60mg1日・1回を処方されました。
しかし、薬価点数を調べると、タモキシフェンの方がずっと安かったので、効用・副作用とも同じであれば、まずは安いタモキシフェンで試して、合わなければトレミフェンに切り替えたい由を伝えたら、ノルバディックス20mg・1日1回に換えられました。
医師は個人の意見を尊重してくれるのですが、自分で選んでおいて恐縮なのですが、質問は2点です。
1.タモキシフェンとトレミフェンは本当に効用・副作用とも同じなのでしょうか?

2.その医院がトレミフェンを第一薬に選択された理由は何のでしょうか?
(これについては、さりげなく医師に聞いたところ、日本での標準はトレミフェンンで当院ではそうしている、としか答えてくれませんでした。)

以上、よろしくお願いいたします。

   
Re:タモキシフェンとトレミフェン
上野 直人(海外在住) 2008/12/28
ちなみにどうして低リスクと説明を受けたのですか?
Re:タモキシフェンとトレミフェン
shige(東京都) 2008/12/28
ひやのさん こんにちわ

ご自身で決めていけるかたのように思われますので、客観的な情報を提供させていただきますね。

日本国内で使用される場合のトレミフェンは40mg/日が基本で、タモキシフェン(ノルバテックス)に効かなくなった転移性の再発乳癌では120mg/日を使用することができます。海外では60mgで使用する国もあります。

一応、認可といって、健康保険診療上の許可は閉経後患者さんのみが対象です。ただ、これは実際の薬効や特性から閉経前のかた(ひやのさんは年齢からそうだと思いますが)でもまず効果としての問題はないだろうと考えられます。

乳癌の手術後に、再発予防の目的で使用される場合の比較的大きな規模の試験はフィンランドで900人くらいのかたが参加しておこなわれました。タモキシフェン(ノルバテックスなど)20mgかトレミフェン 40mgを3年間内服する試験です。2つを比較し効果には差をみとめず、副作用も同等とされています。

日本では、乳癌の手術後にトレミフェン 40mgかタモキシフェン20mgのどちらかをのむ、もしくは途中で切り替えるといった200人規模の試験が(知る限りでは)2つおこなわれています。これらは効果を比べる試験ではなく、脂質代謝といって、コレステロール、高脂血症関係への影響をみる試験でした。閉経後の患者さんのみを対象しています。結果としてはそれぞれ、特徴的な変化がでるのですが、おおよそバランスとしてはトレミフェンのほうがよいのではということになっています(確定的ではありませんが)

乳癌診療ガイドラインというのを日本乳癌学会の検討委員会で作成しており、このなかに術後のホルモン療法の項目があります。このなかでは、タモキシフェン(ノルバテックス、タスオミンなど)5年間を標準的な選択としてあげています。トレミフェンはこの記載には入っていません。ただし、ガイドラインはガイドなので、それに絶対従わないといけないことはなく、科学的で論理的な判断がともなっていれば他の選択は個々の状況で可能とはおもいます。

閉経されていれば、アロマターゼ阻害剤という薬の種類が選択にあがってきます。

ご参考になればと思いますが。
Re:タモキシフェンとトレミフェン
ひやの(東京都) 2008/12/28
質問をしました、ひやのです。
丁寧なご回答をありがとうございます。

低リスクの根拠は以下のとおりです。
硬がん、18×12mm、T1
f(+),ly0,v0,n(0/6)
Grade Ⅰ
ER(3+),PgR(-),HER2 1+
47歳

トレミフェンもタモキシフェンも違いがないことはわかりましたが、医師はフェアストンは60mgを投与するのが標準だと説明していました。
でも上記回答をみるとフェアストン40mgが標準のようですね。

私は乳癌発見前、生理不順のため3年ほど低容量ピルを飲んでおり、そのため定期的に生理がきておりました。
検査で乳癌とわかってからピルの服用をやめて2ヶ月たちますが、それ以来生理は来ておりません。
今回ホルモン療法を開始する前に、血液検査はしておらず、閉経前か後かはわからないのですが、年齢的に閉経に近づいているということでLH-RHアゴニスト剤は適用されなかったようです。
血液検査は本当に必要ないのでしょうか?

Re:タモキシフェンとトレミフェン
shige(東京都) 2008/12/29
閉経のことについてコメントさせていただきます

45歳以上で12ヶ月間生理がない。
もしくは血液中のホルモンを測定しestradiolが8-10pg/ml以下(多少測定施設で差があります)、FSHがおおよそ30くらいより上(これも多少ばらつきあります)のどちらかが閉経の条件になります。

ひのやさんがお書きのとおりタモキシフェンをすでに開始しているため、2つめの基準では判断できなくなっていますが、(ピルの有無に関わらず)一つめの基準にはあたりますので、閉経前と判断されるとおもいます。

LH-RHアゴニストをいっしょに使用するか、などは期待される治療の効果と副作用のバランス、再発リスクの程度(上野先生が質問されましたね)、閉経のみこみなどをもとに主治医先生とご相談できるといいのですが。。
Re:タモキシフェンとトレミフェン
shige(東京都) 2008/12/29
ところで、上野先生とも意見を交換しましたが、ひやのさんの質問の2が気になったので。

ひやのさんは、もうご理解されていると思いますが、乳癌の術後補助療法としての選択のなかで、トレミフェンは”日本の標準治療”という説明は難しいですし、世界でも知る限りではそうではないように思います。脂質代謝の点など、こいうい理由でこちらを選択していると教えてもらえれば、納得しながら進めていけるのではと思いました。

お一人の診療時間をあまりとれない事もあり、自分も診療していく上で過程がおろそかになっています。あらためて、標準治療、第1選択はなにで、代替え案はこれで、選択の理由はこれでと順をおさえて正しく提示していくことは大事だなと感じました。また、これは病気にかかわらず共通だと思いますが、患者さんからそのような流れで聞いていくことも、医師とのコミュニケーション、選択の決定のためにはよいコツなのかもしれません。
Re:タモキシフェンとトレミフェン
上野 直人(海外在住) 2008/12/29
Shige先生に僕も同感です。

標準がどこにあるかを主治医と再確認が必要だと思います。
標準は様々な治療ガイドラインによってきめられており、多くの場合は科学的根拠とエキスパート(専門医)の総意よって決められています。もちろん、様々な諸事情(患者の状態、社会的なニーズ、患者のニーズ)などによって標準が外れることはだれもが知っていますが、大切なのはこれを患者にキチッと説明することだと思います。本当にトレミフェンを標準として説明したのか、あるいは他の理由でトレミフェンの処方されたのかがコミュニケーションの大きなポイントだと思います。

それはさておき、自分の病状を的確に説明されたことには賞賛に値いたします。多くの患者も詳しく説明できる状況がくることを心から願っています。

Happy Holiday and Best Wishes ! 
Re:タモキシフェンとトレミフェン
ひやの(東京都) 2008/12/30
上野先生、Shige先生、
いつも丁寧なご回答ありがとうございます。

トレミフェンのことを医師ともう一度話し合って、医師の考えを聞いてみます。

貴重なご意見、情報をありがとうございました。

良いお年をお迎えくださいませ。

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