掲示板「チームオンコロジー」

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治療とその選択
Bisphosphonate剤の乳癌抑制機能について
aizi(埼玉県) 2009/02/03
ご無沙汰しております。
上野先生はじめ、諸先生方の毎回迅速で誠意あるご返信いただき、私の治療生活に有用な教示たまわり、まことにありがとうございます。
さて、今回は、Bisphosphonate剤の骨だけにとどまらない効用について質問させていただきます。
昨年のASCOにて、骨転移乳癌患者に処方されるBisphosphonate剤が、ホルモン受容陽性の閉経前の患者に対して、乳癌の発症抑制機能もあることが発表されました。
そこで……
①タモキシフェンなどのSERM系剤に不適合がある上記属性(ホルモン受容陽性の閉経前患者)への適応症例は、今現在あるのでしょうか?
日本国内や海外での実際の臨床現場で、適応されているのでしょうか?
②閉経前患者に対して、アロマターゼ阻害剤との併用はどうでしょうか?
③同上記属性患者に、Bisphosphonate剤単剤使用の症例はありますか?
④先生方のBisphosphonate剤のこの新たな効用につきまして、所見お伺いいただければ幸いです。
末筆ながら、上野先生はじめ先生方の、本年のますますのご活躍を一患者として期待申し上げて、新年のご挨拶とさせていただきます。


   
Re:Bisphosphonate剤の乳癌抑制機能について
上野 直人(海外在住) 2009/02/07
これは原発性乳ガンの再発抑制のことですか?
返事が遅れてすみません。個人的な事情により少し返事がおくれています。
Re:Bisphosphonate剤の乳癌抑制機能について
柏葉匡寛(岩手県) 2009/02/07
久々にコメントします。
①②の解釈ですがこれらの試験は補助療法としてホルモン治療下でのBPの追加効果について保証しています。幾つかの試験でBP併用の方が抗腫瘍効果が高いというポジティブなデータが出ていますが現状日本では保険適応が無い状態です。厳密にはホルモン感受性患者さんでホルモン療法中(LH-RHa+タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬)の方でもまだ実践的ではないでしょう。
③単剤=ホルモン療法をしていないと解釈すれば、①②の結果を重要性すれば適応からさらに遠ざかります。試験というのは拡大解釈がしたくても、試験で得られた患者さんの状態に厳しく適合が縛られます。
④は上記の内容に関して補足します。BPの効果は基礎データ(血管新生、免疫、微小環境)等で百花繚乱、サポーティブな結果が出ていますがどれが最も重要か?ははっきりしていません。Seed & Soil(種と土壌)説というのが曖昧ですが、あてはまっているように思います。腫瘍が体に拡がっているけれど土壌(骨や他の臓器)がBPによって腫瘍が生着・増殖しにくい環境になっているという解釈です。
恐らく多くの臨床家は保険の縛りがなければ使いたいという気持ちに傾いていると思います。
aizi様、お答えになっているでしょうか?
Re:Bisphosphonate剤の乳癌抑制機能について
aizi(埼玉県) 2009/02/09
上野直人先生・柏葉匡寛先生
お忙しい中、さっそくにもご返信いただき、ありがとうございます。

上野先生:
昨年のASCO08で、Bisphosphonate剤には、原発性乳ガンの再発抑制効果があるやに、聞き及んでいますが、いかんせん、私自身が素人で元データは英文なので、確信はないのですが…

柏葉先生:
私にも理解できる文面でお教えくださり、ありがとうございます。
今回のBisphosphonate剤の効用は、あくまで、ホルモン療法中(LH-RHa+タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬)の副次的な産物と解釈してよいうのでしょうか。
LH-RHa+タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬に不適合だった場合の、いわゆるセカンドライン的な処方については、まだリアリティはないとのことですね。
まして、ホルモン療法剤(LH-RHa+タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬)を投与していない体内へのBisphosphonate剤のみの使用は、あにはからんや。
ただ、Bisphosphonate剤は、保険適応でなくても、そんなに額面はかからないとも聞き及んでおります。
しかし、単剤使用不可となると、きっと、他剤は保険内でおさめたいとしたいでしょうから、混合医療に抵触しますよね。

タモキシフェンで内膜症亢進し、卵巣肥大なども併発し、タモキシフェン投与を断念した私のようなSERM系とどうも相性の悪い患者には、あらたな療法が開けるかしらと、ちょっと期待しながら、質問スレッドをアップした次第です。
でも、そううしたセカンド的処方でなく、ホルモン療法の王道として、再発抑制効果として、安全にBisphosphonate剤使用が広く行われるようになることを期待しています。
Re:Bisphosphonate剤の乳癌抑制機能について
上野 直人(海外在住) 2009/02/12
そうですね。わかりやすく言いますと

Bisphosphanate (BP) は、原発性乳ガンに補助療法として他の治療法(手術、放射線療法、化学療法、ホルモン療法)などに加えると骨の再発率が減るというデーターが出てきてます。

しかも、骨以外の、場所でも経るというデーターもあります。ただし、このーデーターだけをとって普段の診療で使用することは不可能です。長期にわたってこれが本当にいいのか。治療効果および副作用が今後どういう結果になり、本当に生存率を上げているのかがとても重要です。

これからのデーターが楽しみです。
Re:Bisphosphonate剤の乳癌抑制機能について
ちゃしば(東京都) 2009/02/12
日本時間で2/12:21:40の段階でPubMedにはまだ抄録が出ていませんが、N Engl J Medに下記論文が出ていました。

Endocrine Therapy plus Zoledronic Acid in Premenopausal Breast Cancer
N Engl J Med 2009;360(7):679-691.

『閉経後乳癌における内分泌療法とゾレドロン酸(ゾメタ)との併用』で、結論は『結論:補助内分泌療法にゾレドロン酸を加えることにより、エストロゲン受容体陽性初期乳癌の閉経前女性では無病生存率が改善する。』ということになっています。ただ、本文のグラフなどを見る限り、確かに有意差は出たとしても、誰が見ても明らかに・・とまでの差には思えないように私には思います。上野先生のご意見をいただけたら嬉しいです。

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