掲示板「チームオンコロジー」

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治療とその選択
化学療法と放射線の併用
うな(海外在住) 2009/02/05
こんにちは。37歳です。ACx4で術前化学療法を受け、12月に全摘を受けました。現在術後化学療法でウイークリー・タキソールを受けています。浸潤性乳管癌、ER+、PR+、HER2-、グレード1の病理結果でした。原発巣の大きさは術前胸部MRIでは5.9cm、術前PETでは3.5cm、最終病理では2.5cmでした。リンパ節は9つのうち2つが陽性でした。

さて、科学療法と同時に放射線療法を受けると再発防止効果が上がると読みました。特に現在やっているタキソールは、がん細胞を特に放射線に弱い細胞分裂期で止めてしまうので効果がある、という理論展開でした。病理によると私の癌は分裂像が低いため、より多くのがん細胞を分裂期に持っていって、放射線で痛めつけたいのですが、そんなにうまくいくでしょうか。

現在4回目のウイークリー・タキソールを終えたところですが、放射線を併用するというのは良い方法でしょうか。

予定としてはタキソール終了後、5-6週間の回復期をまって放射線療法をすることになっていました。同時に行わなくても、タキソール終了後時間をあけないで放射能療法するほうがより多くのがん細胞死滅が期待できるでしょうか。

放射線の主治医には、放射線療法により肉腫などの癌になる可能性が指摘されました。化学療法と併用すると、このリスクも高くなるでしょうか。

お忙しいところ、なにとぞよろしくお願いします。

   
Re:化学療法と放射線の併用
上野 直人(海外在住) 2009/02/07
これに関してはエビデンスレベル(科学的根拠)だけをとれば弱いです。実際に、手術不可能患者さんにはtaxol, gemcitabine, xelodaなどを放射線治療の効果を高めるために加えることはあります。しかし、その容量に関してはまちまちで一概にどのときに、どのように適応するかははっきりしていません。

このような治療をするときには本当にどれぐらいのがんの広がりがあり、かなりの確率で再発があるか、あるいは取り残しに限られて考えられる治療で、それでも必ずしも適応があるか微妙です。

放射線治療医はなんて言ってるのですか?
Re:化学療法と放射線の併用
ちゃしば(東京都) 2009/02/07
上野先生が御指摘のように同時化学療法に関しての論文は少ないようです。もともと乳房の術後照射は肺野への被曝を少なくするために接線で照射されるわけですが、どんなに薄く幅をとったとしても被曝する体積が大きくなってしまうので放射線治療医は放射線肺臓炎のリスクを常に考えて治療計画しています。ですから、それ以上のリスクを加えるようなことは避けるのが一般的だと思っています(エビデンスがある領域は別ですが)。
癌医療情報リファレンス・PubMed論文抄録にいくつか抄録訳を出していただきましたので、ご参考にされてください。好意的なものもあれば、否定的なものもある。こういう場合は評価が定まっていないと考えたほうがいいですし、当該病態での得失を担当医、放射線治療医にそれぞれじっくり相談すべきだと思います。

http://www.cancerit.jp/xoops/modules/pubmed/
※『原発性乳癌治療における術後放射線治療とパクリタキセル同時併用に関連した急性・亜急性毒性』、『乳癌患者におけるパクリタクセル・ベースの化学療法後に引き続いての放射線治療後の臨床的に意義のある肺臓炎』については近日中にUP予定

ひとつだけ老婆心ながら・・・・。遺伝子レベル・分子レベルといった戦略はまだまだ解明されていません。教科書に書かれていることも理論的に正しくても実際の臨床ではまったく逆の結果になるものも多々あります。机上の理論で試された試験がたとえ第I-II相で有望であっても第III相で否定されるものも多いです。一面だけをとらえることなく、全体的なリスク・ベネフィットを大切にしてください。極端な話、ごく少数の症例報告レベルのエビデンスにのっかってしまい、数%の恩恵があるかもしれない・・という程度のものに命をかけてしまうことになってしまうことだって起こりえます。人間の身体は理論ですべて解明できるほど単純なものではありません。それだけは忘れないでほしいと思います。
Re:化学療法と放射線の併用
うな(海外在住) 2009/02/07
上野先生、

お忙しいところ、ご返事ありがとうございました。放射線科の主治医は、この話を出したところ私の腫瘍内科医と相談をしてみるとおっしゃっていました。来週月曜日に放射線科医との診察があるので、もう少し意見が聞けると思います。

私は原発巣が大きく、リンパ節9つ中2つが陽性で、extracapsular extensionがありました。術前に乳腺専門の外科医にセカンドオピニオンを求めたところ、リンパの転移巣も大きく(術前PETでは2cmと1.6cmでした。術前化学療法で、両方とも1cm以下に縮小しました)、エコーでは「皮膜が破れているようだ」と言われました(臨床的にはそれにどういう意義があるかは触れていただけませんでした)。Extracapsular extensionがあるので腋下リンパ周囲に取り残しがあるのではないか、と不安になります。Extracapsular extensionがあるからといってエキ下に放射線療法をなすべきかも放射線医に相談したく思っています。月曜日の診察を待ち、放射線医の意見を聞いたうえでまた投稿させていただきます。

ちゃしば先生、

色々な面でお詳しく説明していただき、とても感謝しています。全体的なリスクとベネフィットをきちんと評価して方針をきめるべき、というのはたしかに最も重要な点ですね。私も素人知識でいろいろ考えているだけなので、主治医の意見を求め、自分でもきちんと納得した治療を受けていきたいと思っています。
Re:化学療法と放射線の併用
うな(海外在住) 2009/02/11
上野先生、ちゃしば先生

きのう放射線科の主治医と会ってきました。化学療法と放射線療法を同時にやることは不可能ではないけれど、骨髄抑制がひどくなる恐れがあるので薦めないということでした。

上野先生には化学療法と放射線療法の同時進行に関してはまだエビデンスが弱いこと、ちゃしば先生には全体的なリスクとベネフィットを考るのが重要であると教えていただいたので、放射線科医のアドバイスをすなおに受け入れることができました。

当初の予定どうり、化学療法をきちんと終了した後に放射線療法にとすすむことにしました。Extracaupular extensionがあったので、念のため腋下にも放射線治療をして下さるそうです。 自分でも納得したうえで治療選択ができたと思っています。

本当にどうもありがとうございました。
Re:化学療法と放射線の併用
上野 直人(海外在住) 2009/02/12
納得できてよかったですね。情報は一杯あるのですけど、それをどのようにあつめ、消化し、最終的に患者と医療従事者が一緒に納得する時の充実は本当の意味での安心感に最終的につながると信じています。

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