掲示板「チームオンコロジー」

Bulletin board

治療とその選択
ホルモン治療について
ゆぃゆい(愛知県) 2009/05/05
チームオンコロジー興味深く拝見しています。
地元にもこのようなチーム医療の病院があったら是非通いたいのにないんです・・・。

ホルモン治療について質問なのですが一ヶ月ほど前に右乳房温存手術をしました。
今 放射線治療中です。

46歳、閉経前、pure type粘液がん 脈官侵襲なし リンパ侵襲なし、大きさ0.7cm、リンパ転移なし、グレード1、HER2 0 切除断端陰性、ホルモンレセプター強陽性でした。

医師からは生理を止める注射2年とノルバデックス5年を薦められましたが 私はノルバデックスのみでもいいのではないかと思っています。
自分で決めるように言われたのですが飲み薬のみでもいいと思われますか?
リスクはどの位違うのでしょうか?

   
Re:ホルモン治療について
佐藤 由美子(愛知県) 2009/05/06
ゆぃゆぃさん

こんばんは。
名古屋市立西部医療センター城北病院の薬剤師の佐藤と申します。
同じ愛知県ということで、とても親近感がわいています。
今後ともよろしくお願いいたします。

質問からで申し訳ないのですが、
ゆぃゆぃさんの心配されているリスクの違いについて、
主治医の先生からはどのようなお話しがあったのでしょうか?
また、ゆぃゆぃさんは、
どのような理由でノルバデックスのみを選択しようと思われましたか?
ぜひ教えてください。
Re:ホルモン治療について
上野 直人(海外在住) 2009/05/07
佐藤先生と同じ質問ですね。
どうしてこの選択肢がいいとあなたは思うのですか。
なぜ主治医は違う選択肢がいいとおもうのでしょうか。
気軽にこの質問を主治医にされたらいかがでしょうか?

Re:ホルモン治療について
ゆいゆい(愛知県) 2009/05/09
主治医の先生から注射と飲み薬が標準治療だからと言われました。
どちらかでは駄目ですか?と聞いたところ 普通は両方する。
したほうが安心だからと言われ リスクの違いは正直分らないというお返事でした。

私がノルバデックスのみにしようと思ったのは年齢からしてもエストロゲンがそんなに活発に出ている訳ではないと思ったのと 注射でうつ病になった知り合いがいるからです。
副作用のキツさはよく耳にするので。

私としてもはっきりとした理由があれば両方しなければと思うのですが 標準治療だからと3回くらい言われて これ以上 主治医に聞いても同じだと思いここで質問させていただきました。

出来れば皆さんのご意見を聞かせてください。
責任取れとか言いませんので。
Re:ホルモン治療について
佐藤 由美子(愛知県) 2009/05/09
質問にお答えいただき、ありがとうございました。
ゆいゆいさんのお考えが、よりわかってきました。
・ホルモン治療+タモキシフェンと、タモキシフェンのみのリスクの違いがわからない。
・主治医にたずねても、「標準治療」だということで、ホルモン治療+タモキシフェンを勧められた。
・お知り合いがホルモン治療を受けられて、副作用に苦しんでいたので、必要ないなら受けたくない。
ということなんですね。
このような状況から、タモキシフェンのみを選択しようと判断されたわけですね。
また、「意見を聞かせてほしい」とのご要望でしたね。
意見を述べるために、もう少しゆいゆいさんのお考えを知りたいので、
もう少し質問をさせてください。
ホルモン治療+タモキシフェンと、タモキシフェンのみで、
どの程度のリスクの違いがあったら、
やっぱりホルモン治療を受けようと思われていますか?
また、ホルモン治療の副作用については、発現率とか、副作用の種類とか、
副作用に対する対処法などはお聞きになっていますか?
Re:ホルモン治療について
ゆいゆい(愛知県) 2009/05/10
佐藤さま

患者の心というのは複雑なもので 今のところとても元気で癌だと分る前と変わらないのに急に不安になって夜中に泣いてしまったりするのです。
なので自分で注射はいらないのでは?と思っても不安でしょうがないし、でも性格がひねくれているのか先生が言うとおりにするのも疑問なのです。

胸を切って温存とはいえ引きつれて変形しています。
放射線をしてさらにデコボコになり炎症を起こしてオレンジの皮のように毛穴が出ています。
効果があるのかハッキリわからないのにこれ以上副作用を増やしたくありません。経済的負担も大きいです。
佐藤さんは女性なので気持ちが少しはわかっていただけるのではないでしょうか?

ホルモン治療+タモキシフェンと、タモキシフェンのみで、
どの程度のリスクの違いがあったら、
と言うのはハッキリ言えませんが5%くらいでしょうか?

私の場合 早期で大きさも小さかったので無治療でも生存率90%と言われました。
ホルモン治療(両方)すれば さらにリスクが半分になると言われたので単純に考えれば5%ですよね。
タモキシフェンのみでも45%良いと書いてあるのを読んだことがあり それじゃあタモキシフェンだけでもいいじゃない?と思ったわけです。

また、ホルモン治療の副作用については、紙をもらって説明していただきました。
発現率は子宮体癌についてお聞きしました。
副作用に対する対処法は聞いたか分りません。
先生は物腰の柔らかい人でいい方だとは思うのですが余りハッキリした事は言ってくれません。マニュアル通りといった感じです。

それに実際の患者に体験談聞くのとお医者さんに聞くのでは全然違いますよね。

これで意見を聞かせていただけるでしょうか?
精神的に結構まいっています。
質問ばかりされるのは辛いです。
Re:ホルモン治療について
佐藤 由美子(愛知県) 2009/05/10
ゆいゆいさん

丁寧に、誠実に質問に答えていただいて、ほんとうにありがとうございます。
また、つらい思いをさせてしまったこと、ごめんなさい。
ご病気のつらさのなか、ご自分で納得できる治療法を求めて、
勇気を持って選択されようとなさっている姿勢に、心を打たれています。

ゆいゆいさんのような状況だったら、私だったらどうするか、考えてみました。
あくまで一意見です。
無治療で生存率90%、ホルモン治療+タモキシフェンで95%、
仮に、ホルモン治療のみでは92%に低下するとすると、
ホルモン治療と、タモキシフェンを行っても、
100人に5人は再発するということです。
ホルモン治療を行わないことにより、その5人が8人になるとしたら、
私は、ホルモン治療を行うと思います。
また、私は病院薬剤師ですので、
再発した患者さんのつらさをたくさん見ているということが、
この選択に影響していると思います。

Re:ホルモン治療について
さじ(東京都) 2009/05/10
ゆいゆいさん 佐藤さん

途中から失礼します。
お二人のやりとりから、たぶんこのお話をしたほうがわかりやすいかとおもい書き込みします。わたくしはホルモン療法関連を専門としている医師です。

ゆいゆいさんの疑問は
LHRHアナログ(生理をとめる注射。以下LHRHとします)2年+タモキシフェン(ノルバテックスなど)5年

タモキシフェン5年で

副作用のことも考え、タモキシフェン5年だけでも十分なのでは?との疑問を持たれたのだとおもいます。

できるだけ根拠をもとに、この比較について書いてみます。
少々難しい話がまじりますが、おつきあいください。

ゆいゆいさんの癌は、お書きになった特徴からは、比較的たちがよい、早い段階でみつかった癌で、まずはよかったですね。
先生からお聞きになったとおり、無治療でも再発する確率は10%くらいで低いというのは、妥当ではないかとおもいます。もっと少ないと考える先生もいると思います。

手術後のホルモン療法は、この再発確率をすこしでも0に近づけるためにおこないます。

ホルモン療法の副作用は軽くみられがちですが、患者さんによっては抗癌剤よりいやだというかたもいらっしゃいます。更年期障害が基本の症状ですが、患者会や、サバイバーさんとの話でも、決して気楽なものではないとお聞きします。このあたりは医療者と患者さんの感じ方に差があると思います。もちろん個人差があり、全然平気というかたもいます。

たとえばタモキシフェンで再発をおさえる力は40-50%くらいの抑制率とお聞きになっているとおもいますが、これは手術後の10年間で、手術をうけた患者さんの10%の人が再発するところを、5%にへらすという意味ではありません。ある時点から次の1年間(ある瞬間にというのが本当ですが)に再発するひとを40-50%減らすという計算の手法でだされた数字です。この数値の理解のしかたはとても難しく、我々もなかなかうまく患者さんに伝えられない数値のデータです。

ちなみに、閉経前の患者さんにお願いするホルモン療法は
LHRH2年(これより長くも可)+タモキシフェン5年

タモキシフェン5年
のどちらかです。これはゆいゆいさんのお書きになったとおりです。
LHRHだけというのもありますが、タモキシフェンが使えない理由のあるかたでは選んでもよいですよというのが一般的な扱いです。(この詳細は今回はなし)

このような扱いや、数値は、これまでたくさんおこなわれてきた臨床試験という患者さんでの治療の結果をもとに、まとめて計算したり、それぞれの結果を参考にしてきめていきます。

ゆいゆいさんの疑問は、実は、これまではっきりとした結果が得られてない部分で、我々も困っている比較なのです。

疑問に直接答える試験は、INT0142という海外(北米)でおこなわれた試験です。
腫瘍の大きさ3cm未満、ホルモン受容体陽性、リンパ節転移陰性のかたに、タモキシフェン5年のみとタモキシフェン5年+卵巣機能抑制(LHRHの注射か、卵巣をとる手術、放射線などで卵巣機能をとめる)の比較です。これがいちばんゆいゆいさんに似た状況の試験ですが、あまりうまくすすまず、予定の1/5の患者さんが試験登録したところで終了となってしまいました。参考値ですが、手術後5年時点での再発などしなかった患者さんの割合は、タモキシフェンのみで87%、タモキシフェン+卵巣機能抑制で89%でした。あまり差がないなという印象です。

もうひとつはZIPP試験というもので、これは
なにもなし
タモキシフェン2年
タモキシフェン2年+ゾラデックス(LHRHですね)2年
ゾラデックス2年
という4つのグループにわけた試験です。古い試験ですので、タモキシフェンが5年ではなく、2年のところがゆいゆいさんと条件があいません。でも15年間観察したデータが今年3月に論文ででました。
再発やあたらしく乳がんができた、なんらかの理由で亡くなったというすべてのことを悪い出来事として、それを防ぐ力がどれくらい違うかという点でみてみます。
タモキシフェンだけに比べて、LHRHを一緒に使用すると、5年後で約2%(INT0142の結果とにています)、15年後で約3%再発などするひとが減りました。15年後のデータを、別の書き方をすると、タモキシフェンをのんでもらう予定の患者さん36人にLHRHを注射すると、この36人のうち1人だけが注射をしたおかげで再発をまぬがれます。
ゆいゆいさんの疑問の年齢ですが、たしかに40歳未満のかたは15年後で再発などする人が注射を加えることで5.5%減りますが、40歳以上のかたは1.7%しか減りませんでした。

長々と書きましたが、ご説明できるのは、
LHRH+タモキシフェンは、タモキシフェンだけより、再発などする患者さんを減らせるのはたしかです。ただ、その差がとても少なそうであることもたしかなようです。

われわれ医療者は、すこしでもわずかでも、再発するかたを減らしたいと思っています。
とくに、再発する危険の高い患者さんに対しては、このわずかな差が重要な場合があります。

再発の危険が比較的低いかたにとっては、決して軽んじられない副作用や費用の問題と、このわずかな差をみていただいて、どうしようかと決めていくことになります。

ゆいゆいさんが決められていく参考になればとおもい、書き出してみました。
長くなってすみません。

Re:ホルモン治療について
上野 直人(海外在住) 2009/05/11
さとう先生、さじ先生ありがとうございます。ゆぃゆいさんへ、大変お疲れ様です。質問されぱなしで、苦しいんですね。もうお気付きかも知れませんが、医療は科学的な根拠に基づき医療従事者は必死で答えようとする義務があります。でも、それでも、かならずしも、ゆぃゆいさんへの納得の答えになりません。これらの情報をもとにもう一度主治医とコミュニケーションしてみて反応をみたらどうですか。また、納得できないならセカンド・オピニオンをもとめてみ良いのではないでしょうか?
Re:ホルモン治療について
ゆいゆい(愛知県) 2009/05/11
佐藤さま、

ご意見を聞かせていただきありがとうございました。
佐藤さん自身なら 注射もするということですね。
その考えの方が一般的だと思います。
私は 普段から薬が嫌いで風邪などでは飲みません。
食事や漢方、気功などを試してみるつもりです。

さじさま、

専門家の詳しいお話を聞かせていただき大変うれしいです。
お時間をさいていただきありがとうございました。

やはりほとんど差がないようですね。
多くて3%。年齢を考えればもっと少ないようですね。
タモキシフェンのみにかけてみようかと思います。

でも 私には余り副作用がないかもしれませんし早期といっても癌ですから 一度試して見ることも考えています。
きつかったらやめてもいいと思ったら気が楽です。

ココロがすっきりしました。
今一度良く考えて見ます。
ほんとにありがとうございました。

上野さま

色々意見が聞けてよかったです。
主治医には相談するつもりはありません。
自分で決めるしかないと思うのでもう一度良く考えて見ます。
ご心配いただきありがとうございました。
Re:ホルモン治療について
ゆいゆい(愛知県) 2009/05/11
さじさま

もう一度良く読んでみました。
教えていただきたい所があるのですが

ZIPP試験の結果タモキシフェンだけに比べて、LHRHを一緒に使用すると、5年後で約2%、15年後で約3%再発などするひとが減りました。

という事ですが たとえば私の場合再発率10%としてその3%ということは0.3%ということでしょうか?
それとも3%でしょうか?

また
>40歳以上のかたは1.7%しか減りませんでした。

というのはZIPP試験でですか?
それともまた別の試験でしょうか?

そうすると私の場合数字だけで考えると1.7%以下の違いでしょうか?

私がさじさんの身内の人間だったらどうされますか?
注射も薦めますか?

色々聞いてすみません。
ご意見聞かせていただけたらうれしいです。
Re:ホルモン治療について
さじ(東京都) 2009/05/12
絶対値の差です。

この試験にはいった患者さんの15年後時点の再発率は30%くらいのグループでしたので、
15年後の時点で、
タモキシフェンだけのかたで再発などしたひとが30%なら
タモキシフェン+LHRHのかたでは27%でした。
という計算になります。

年齢のデータはZIPP試験のものです。

この試験に参加した患者さんのデータでは、こうであったと理解してください。

再発率10%が基準だとすると、2つの治療の差はもっと小さくなるとおもいますが、このあたりまでがちゃんと説明できる限界です。

個人的には
ゆいゆいさんが書いていた
”一度試して、きつかったらやめておく”
は、できる努力はすべてしたという感じでありだとおもいます。

それでは。。

Re:ホルモン治療について
ゆいゆい(愛知県) 2009/05/13
上野さま

乳がんを専門とされているのですね。気づきませんでした。
もし私が患者だったらどんな治療法を薦められるでしょうか?
ご意見聞かせてくださるとうれしいです。

私もオーストラリアに住んでいて病院にかかっていた事があるのですが海外と日本の病院では主治医との関係が随分違ってくると思います。
オーストラリアでは何でも聞けるしサバサバしててよい反面冷たい印象も受けました。
日本では物腰は柔らかいですがハッキリとした事は言ってくれません。(違うお医者さんもいると思いますが)
なので、一度聞いて答えがもらえなかった事を何度も聞く気にはなれないのです。聞いても同じだと思います。

生意気言ってすみません。
こういう場を作っていただきありがとうございました。
Re:ホルモン治療について
ゆいゆい(愛知県) 2009/05/14
さじさま

2ページ目があることに気が付かずお礼が遅れてしまいました。
なんとなく分りました。
もう少し考えてやっぱりずっと心配してるくらいなら注射も試してみようと思います。
ありがとうございました。
Re:ホルモン治療について
佐藤 由美子(愛知県) 2009/05/15
ゆいゆいさん
ご自身で納得されて治療を選択されたこと、なによりです!
ここには、今回お返事させていただいた以外にも、
がん治療にたずさわっているスタッフがたくさんおりますので、
なにかありましたら、いつでも話しにきてくださいね。
(また質問をしてしまうかもしれませんが・・・そのときはごめんなさい!)

記事内容を変更することはできません。記述を修正したい場合はコメント欄を使って補足・訂正を行ってください。