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治療とその選択
近藤誠医師の「がんもどき」理論について
lupin(大阪府) 2009/08/07
「患者よ、ガンと闘うな」で有名な慶応大学の近藤誠医師のことはほとんどの医療関係者の方もご存知だと思います。

この書籍の中で、ガンが転移するかしないかはごく初期に決定されていて、転移するガンだと検診で発見する前に転移しているから、検診も手術も無意味だと述べられています。

このようなことは、医療関係者の方はどのように感じておられるのでしょうか?

   
Re:近藤誠医師の「がんもどき」理論について
上野 直人(海外在住) 2009/08/07
なかなかおもしろい質問です。ありがとうございます。

「ガンが転移するかしないかはごく初期に決定されていて、転移するガンだと検診で発見する前に転移しているから、検診も手術も無意味だと述べられています。」本を読んでないのですが、この一文からだけ言えば、極論ですね。笑

転移、つまりどこかに広がっていることをどのようにとらえるかは、科学的にも、臨床的にも、色々と議論されており、非常に難しい問題です。

例えば、乳ガン患者さんで骨髄を初期の癌でとると約三割で微少の転移がみつかります。この転移がみつかると予後が悪い、つまり転移をする可能性が高いことを示唆しますが。一方で転移しないこともあります。

さらに、この骨髄の検査の仕方も標準化されていません。

最後に転移するメカニズムがわかっているといいのですが、これも究明中です。諸説を組み合わせると、初期から転移してるときもあるし、後で転移するメカニズムもあります。

つまり、「転移するガン」を明確に定義し、それが予測出来るなら、確かに無駄なのかも知れないですが。笑
今の科学と医学ベルでは難しいですね。


これらの限られた例を見ただけでも、
Re:近藤誠医師の「がんもどき」理論について
lupin(大阪府) 2009/08/07
ご回答ありがとうございます。

> この一文からだけ言えば、極論ですね。笑

暴論との意見もあるようです。
ところが内容をよく読んでみると、海外で行われている無作為くじびき
試験というので、検診をする群と検診をしない群で死亡率に変わりは無い、
すなわち検診をして早期に癌を発見し、治療を行っても死亡率が伸びない
というデータが掲載されています。
私はこのデータは無視できないと思いました。
ガン検診は実は人間が長生きするために、ほとんど貢献していないのでは
ないでしょうか。

> 後で転移するメカニズムもあります

後で転移するメカニズムがあるとして、それがどのあたりの時期で転移を
開始しているかというのは、これまでの研究では解明されているのでしょうか。
もしその時期がごく早期であるか、早期であることが多いなら、結果として
ガン検診は無意味ということになりそうなのですが。。。
Re:近藤誠医師の「がんもどき」理論について
上野 直人(海外在住) 2009/08/08
医学は科学だけでは明確な答えはないのかもしれません。
確かに無作為くじびき試験において、検診の有効性が疑われるものもあります。でも、有効性があるとも解釈できるデーターが存在するのも事実です。
つまり、コツコツとした研究の成果が結果を導き出すのです。

転移のメカニズムの研究は少しづつ進歩しています。早期であると確定できるエビデンスがあるならいいのですけど。それも確定していません。

すっきりとした答えがあると良いのですが、検診がすべて無効であると確定できる根拠はまだないと思いますよ。ポイントは「すべて」という点ですけど。
Re:近藤誠医師の「がんもどき」理論について
lupin(大阪府) 2009/08/08
いつも率直でわかりやすいご回答ありがとうございます。

先生の言葉のニュアンスからすると、検診が無効という近藤誠医師の説は「あたらずとも遠からず」であり「極論ではあるが暴論とまでは言えない」と言われているように感じます(笑)

結局のところ、検診が無効と確定できる証拠も無いが有効であるという充分な証拠も無いということですね。

しかし、よくテレビCMで「ガンは早期発見で治ります」と断言しているものを見かけますが、少なくともこれは「暴論」ということになりそうではありませんか?

また早期にガンを発見し治療をすることによるQOLの低下やコストのことまで考えると、寿命を延ばす効果が無いもしくはあっても限定的であろうというガン検診は、どちらかと言えば行うより行わない方がベターに近いということになりそうなのですが、率直にどう感じておられますか?
Re:治療の必要のないがん、検診など
nozomi(東京都) 2009/08/08
転移の話とも、タイトルの理論の話とも異なりますが、
微少ながんが見つかっても全てが進行して命を脅かすがんになるとは限らないというのは知られていることです。

最近のものでも、
・マンモグラフィー検診で見つかった3人に1人は過剰診断であり、同率の患者が必然的に不必要な治療を受けているという最新結果が、検診で見つかった浸潤性乳癌の20%は自然退縮する・・つまり"にせ癌"である。BMJ2009年7月

・PLCO(前立腺癌、肺癌、大腸癌、卵巣癌)がん検診試験で「偽陽性」、過剰診断が多かった Annals of Family Medicine. 2009; 7

少し前の肺癌検診試験でも有益性は証明されませんでした。

早期診断が死亡率減少に必ずしもつながらないことが日本ではあまり認識されていないように感じますね。
Re:近藤誠医師の「がんもどき」理論について
上野 直人(海外在住) 2009/08/09
検診が無効であるという意見があるのは意識していますが、普段の医療はやはりガイドラインを大切にする必要があります。つまり、少なくとも米国においてはガイドラインで認識されている検診を医療従事者としてやめることは倫理違反です。
つまり、本当に無効ならエビデンスが高いものをだして、ガイドラインの改定のコンセンサスをとる必要があり。意見をマスコミで高らかに言うだけではだめです。これは検診を有効とする人たちも同じです。

意見を言うのと実際の日々の診療行為は必ずしも一致しないのが現実です。
Re:近藤誠医師の「がんもどき」理論について
通りすがり医療者(東京都) 2009/08/09
「がんもどき」理論
本を売る為に無責任な主張をしているとしか思えない。
日本の医療の問題点を指摘するのはいいが、検診や癌を治療するのは無駄という極論はまったく科学的根拠が無く話題性を狙ったにすぎない発言。

検診で早期発見できて完治した癌は『がんもどき』で再発して死亡した症例は『がん』という結果でしか判断できない理論だそうですね。
このような非科学的な意見を医療者として患者さんへ勧める事はできません。

>ガンが転移するかしないかはごく初期に決定されていて、転移するガンだと検診で発見する前に転移している

という説のメカニズムを科学的に立証してからご本を出して頂きたい。

この「がんもどき」理論について、医療者としてどう感じるか、

一般の方に癌を治療するなという間違った考えを抱かせる、危険で無責任な非科学的理論である、ということ。

本当に癌という疾病を知っている医療者ならこのような発言はできない。



Re:近藤誠医師の「がんもどき」理論について
lupin(大阪府) 2009/08/09
上野先生へ

日本ではガイドラインの認知度が低いのであまりガイドラインの話をしても仕方が無いと思うのです。
「ガン対策基本法」なるものも最近出来ているようですが、結局これも何も分かっていない国会議員によって早期発見ありきで進められています。

検診をするべきか、しないべきか、結局、国民一人一人が自分で決断していかざるをえないというのが原状だと思います。

是非この1点だけはお答えを頂きたいです。ガイドライン云々ではなく、先生の率直なお考えを頂きたいです。
ガン検診は世間で思われているほど役に立たないと感じておられるのではないのでしょうか?
Re:近藤誠医師の「がんもどき」理論について
上野 直人(海外在住) 2009/08/10
[ガイドラインの認知度が低い]確かにそうですね。笑
でも、ガイドラインを順守すること、そこから新しいエビデンス(科学的根拠)を創ることが医療従事者の義務であり、医療従事者になったときの倫理を順守することにつながります。ですので、ガイドラインあるいは現時点であるエビデンスを拡大解釈し一個人の医療従事者が暴走することは許されません。

僕自身は、大腸癌あるいは乳ガンの検診はとても大切だと思っています。実際に大腸癌の検診は僕自身受けています。
乳ガンの検診も推奨していますし、今のエビデンスレベルから言うと、患者に良いと信じていますよ。(^^)
Re:近藤誠医師の「がんもどき」理論について
lupin(大阪府) 2009/08/10
>乳ガンの検診も推奨していますし、今のエビデンスレベル
>から言うと、患者に良いと信じていますよ。(^^)

先生の言われる乳ガン検診のエビデンスとは「乳ガン検診をする人がしない人より長生きする」というエビデンスということで間違いないですか?
もしそれ以外のエビデンスであれば、それは乳ガン検診が有効であるというエビデンスとして私は不十分だと思いますし、それを認めているガイドラインの作成基準そのものに問題があると思いますが。。。
Re:近藤誠医師の「がんもどき」理論について
上野 直人(海外在住) 2009/08/10
ガイドラインと推奨するかは必ずしも、長生きするだけではきまりません。しかも、エビデンスが確立しないとガイドラインに入らないという決まりもありません。NCCNのガイドラインはエビデンスと参加委員の同意レベルによってきまります。

さて本題ですが、乳ガン検診が長生きさせるという確立したエビデンスはありません。しかし、実際には原因がわからないが乳ガンの生存率が改良したこと、また早期発見によっえ侵襲性の高い手術を減らすことのできたことを含めると、今のアメリカの乳ガン検診ガイドラインを変えることは出来ません。

ガイドラインを改正するなら患者はより多くの臨床研究に参加をもとめられるし、ハイレベルな臨床研究を行うことの出来る医療従事者を増やさないとだめですね。
Re:近藤誠医師の「がんもどき」理論について
nozomi(東京都) 2009/08/10
上野先生、
ガイドラインにも則っていないような検診が日本では多くあるようで危惧します、という意味です。
誤解を与えていたら、すみません。

乳癌マンモ検診は米国で50歳以上で生存期間延長が証明されている数少ない優れた方法だと認識しています。
ただ、対象年齢や方法なども無関係に煽られたり、他に日本でだけ行われているようながん検診もあったりすると、コンセンサスや根拠、ガイドラインに基づいて、きちんと提供されればと思いますね。
Re:近藤誠医師の「がんもどき」理論について
上野 直人(海外在住) 2009/08/10
Nozomiさん、おっしゃるとおりです。ガイドラインにも則っていないような検診が日本では多いかもしれませんし、Lupinさんが指摘されたようにガイドラインを守らないどころかしらに人も多いです。笑
でも、我々医療従事者はエビデンスの普及と改善を目指して頑張る必要があります。
Re:近藤誠医師の「がんもどき」理論について
lupin(大阪府) 2009/08/11
そのガイドラインというのは、本当に公正中立な立場で作成されているのでしょうか。
医療関係者が検診や付随する治療でお金を儲けるために、都合の良いガイドラインが作られているということはないのでしょうか。
本当に患者や検診を受ける一般の人間のために作成されているのでしょうか。
Re:近藤誠医師の「がんもどき」理論について
上野 直人(海外在住) 2009/08/12
日米ともに公平にかなり作ってるとおもいましよ。お金儲けのためにガイドラインをどうするかの話し合いは聞いたことがないでね。ガイドラインはあくまで医療れびるでのエビデンスが最優先です。
Re:近藤誠医師の「がんもどき」理論について
lupin(大阪府) 2009/08/12
前立腺ガンのPSA検査が現在、厚生労働省では推奨グレード「I:推奨しない」となっているのがありますよね。
このガイドラインの策定にあたって泌尿器学会が猛反発をしているという話をよく見かけます。
また最近出た研究の中間報告でPLCOとERSPCという研究に関して、「死亡率減少効果が認められない」としたPLCOの研究を「RCT研究としてすでに破綻している」などと言っています。
このような泌尿器学会の主張は、一般人の私から見ると大人気ないとも思うし、何か利権が深く関わっているという気がしてしかたが無いです。
Re:近藤誠医師の「がんもどき」理論について、ガイドライン
上野 直人(海外在住) 2009/08/12
日本の前立腺癌のガイドラインがどのように話されているに関しては知識と情報不足ですのでコメントができません。ただ言えるのはガイドラインに関して患者あるいは社会が関わるのは大切です。
でも、参加するなら公の立場にたって、科学的知識を論理的に見極める力が必要です。また、科学の真実を追究する義務と責任は医療従事者にあります。アメリカではconsumerがNCCNのガイドラインの作成に関わっています。すべてはバランスであり、すべての人をハッピーにすることは不可能ですが、多くの人を納得させるものを作る努力は必要ですそのようなガイドラインを作ることは可能だと思います。

ちなみにconflict of interestの無い人間はありません。利権は社会が存在する限り、存在し、大切なのは。利権が存在を認め、暴走しないようにルールを設定し、倫理高い医療行為をすることがポイントだと思います。

最後に、Lupinさはかなり勉強されていると判断しています。一般人とはとても思えないのが正直な感想です。笑
Re:近藤誠医師の「がんもどき」理論について
のりー(東京都) 2009/08/14
寡聞ながら、PSA検査を多くの方に実施すると、前立腺がんの発見よりも前立腺肥大症と診断される患者が増大することが問題になっているかと思います。爾来自覚症状がなく、治療の必要がない患者にも前立腺肥大症の治療が開始されるために医療費が増大する危惧です。
Re:近藤誠医師の「がんもどき」理論について
とんこ(千葉県) 2013/07/25
要は貧乏人は適切な医療を受けることができないから
抗がん剤治療を続けても結局手遅れだと言われ死ぬ
なら、手術や抗がん剤でボロボロになるよりもモルヒネなどで痛みをごまかし余命を全うするほうが寿命が延びるってことだろ

抗がん剤で癌を抑えながらBJ先生バリの手術治療を集中的に受ければ
あるいはって話だから

一般人には縁遠い話でこの先生の理論は庶民目線に立ったもので
共産主義の理想論と民主主義みたいなものだね・・・

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