掲示板「チームオンコロジー」

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治療とその選択
転移乳癌の治療法選択について
はる (大阪府) 2009/11/23
98年5月にステージ2で乳癌の温存手術。ホルモン感受性あり、リンパ節転移なし。 当時はHER2検査なし。 術後放射線照射及び病理検査でグレード3のためCMF6クールとタモキシフェン5年。 腫瘍マーカーはCMFを始めて漸減し基準値以下になるが、CMF終了後3ヶ月で微増傾向に転じ、以後昨年まで10年間基準値を少し上回ったあたりで上がったり下がったりで推移するも、定期検査では転移なし。 昨年初めて胸部CTで術側胸郭傍リンパ節の腫脹が見られ、先日PETーCTでリンパ節転移と確認。13mmで他に転移の所見なし。 主治医はホルモン療法を提案し、治験薬の提案もしたいとのことで、まだ具体的な治療法は決まっていません。 私からも残っている検体でHER2の検査もできるならしてほしいとお願いしました。 転移乳癌の場合、マイルドなホルモン療法からというのが標準と、何を見ても書いてあるのですが、私のケースのように領域内に小さい転移で収まっている間に、強い治療(CAFのような化学療法)を先行させた方がホルモン療法より微小転移の発現を抑えたり遅らせたり効果が期待でき、ひいてはQOLも向上するとは考えられないでしょうか。 私はCMFの時は副作用が他の人より強く出、6クール終えるのに9ヶ月かかりましたが、化学療法先行の方がメリットがあるならば、そうしたいと思っているのですが…。 ホルモン療法も薬によっては化学療法に匹敵するような効果を期待できるのでしょうか。 また、どちらにしても予後は変わらないのでどの選択をしても同じなのでしょうか。 ご意見をいただければありがたいです。
  

   
Re:転移乳癌の治療法選択について
上野 直人(海外在住) 2009/11/24
転移先には生検をされたのですか。何を根拠に再発と最終的に主治医は決めたのでしょうか?
Re:転移乳癌の治療法選択について
はる (大阪府) 2009/11/26
CTでの腫脹部分が胸骨傍リンパ節のため生検はできないのか、主治医からは調べられないといわれました。 それでPET-CTを受け、放射線部からの「右胸骨傍の軟部陰影部に一致して強い異常集積を認めます。(SUV max:6.0) PET-CT上もリンパ節転移を考えます。 その他の領域には明らかな転移を示唆する異常集積を指摘できません。」という画像診断報告書に基づいて転移と判断されたと思います。 また、以前からの腫瘍マーカーの高値は「おそらくその頃から微小な転移があったのだろう」ともおっしゃいました。 ちなみに腫瘍マーカーの値はCA15-3は8年前より29から42の間を上下し、今年は38から41.8への上り方向、BCA225はこの5年は170から200の間の上下、今年は3回測定して全て200でした。 術後の11年間を概観すると増加傾向にあるのは確かです。 放射線部からの報告書を再確認するとサマリーにあたる末尾には「右胸骨傍リンパ節転移疑い」と「疑い」の2文字が入ってはいるのですが…。 また、CT及びPET-CT上では6年前より右心横隔膜部にwater densityの腫瘤も指摘されており、毎回「増大傾向にはあるもののスピードが遅いのでpericardial cystのような良性変化と思われるがfollowすること」というコメントがついています。 
Re:転移乳癌の治療法選択について
佐治重衡(東京都) 2009/11/26
こんばんわ

途中からですみません。

PETをもとに再発と診断されたとのことでした。

コメントにあったとおり、ホルモン療法と化学療法の選択には、一応一定の目安があります。
それをもとに、主治医先生はホルモン療法を選択されていると思います。

ぜひ、はるさんがお考えになった、化学療法をしたほうがメリットがあるのではないかという点について、主治医先生にもお聞きいただきたいと思います。患者さんの疑問として考えうるよい質問だと思います。

11年後の再発とした場合、Herが陽性である可能性は低いとおもわれますが、はるさんのご指摘のとおり、昔の標本が調べられれば知っておきたいところですね。

ちなみに年齢はおいくつですか。
Re:転移乳癌の治療法選択について
はる (大阪府) 2009/11/26
佐治先生、お忙しい中、コメントありがとうございます。
年齢は現在54です。 術後のホルモン療法をきっかけに閉経しました。 また、術後4年目に子宮体がん、頚がん検診でそれぞれsuspicious、Ⅲaとなり、病理の結果「イレギュラーな腺管少々」、「わずかに異形扁平上皮」で一応どちらも「悪性の所見なし」となりましたが、「タモキシフェンより細胞への刺激が少ない」と当時の主治医の勧めで最後の1年はタモキシフェンからフェアストンに変更して服用しました。 

PET-CTは今のところ一番きちんと転移を見つけてくれる機器だと思っていたのですが、PET-CTでもまだ「転移の疑い」であるのなら、どういう方法で転移を確認できるのでしょう? 胸骨傍リンパ節でも生検ができるのでしょうか? 私の乳癌は右上内側にあり、段端+(よって追加切除1cm)、脂肪組織への侵襲ありだったので、手術時腋下リンパ節16個に転移がなくても今回「やっぱり右胸骨傍か…」と妙に納得(?)していたのです。 

昨年4月の7mmから1年半で13mmに倍増したリンパ節をもう少し見守るのも不安なので、何らかの治療をしたい気持ちになります。 となるとやはり「疑い」段階ではマイルドなホルモン療法ということになるのでしょうか。 ただし、ホルモンレセプターの再チェックはできないままで…。 

もし、転移を確実とするならば、ホルトバジーの治療方針は原則にしつつも、私のような「変わった、一見ラッキーな」ケースは、初回治療もしくは局所再発に準じた強い治療で押さえ込む方法が、次の転移発現を遅らせ「元気でいる期間」を長くしてくれるような気がするのですが…。

ともあれ、主治医に全て尋ねてみようと思っていますが、諸先生方のご意見もお聞かせください。

 




  
Re:転移乳癌の治療法選択について
はる (大阪府) 2009/11/28
今日が診察日で、主治医に疑問や自分の考えを全てお話しし、治療法について「一緒に」考えることができたと思いますので報告します。

転移と確定できるのかと尋ねると、「生検できるのは細胞が取れる所、すなわち鎖骨リンパ節など表面の転移だけで、胸骨傍リンパ節では手術するしかなく、リスクが高い」、「PET画像で光っているのはほぼ癌転移とみていい」とのこと。

化学療法の選択については、ホルトバギーの治療方針に従い、生命の危機のない、なおかつゆっくり出てきた小さな転移の状況では、誰が考えてもホルモン療法が第一選択、10年を越えての再発だからあわてることはない」かつ「患者がどうしてもと望むなら抗がん剤治療も考えるが、副作用の強さ、後々の打つ手が狭まる等すすめられない。 生検で確定できず、転移が疑いである可能性がわずかでもあるのなら、なおさらすすめられない」

生検できないのなら転移がんのホルモンレセプターもわからないのでは、と聞くと「確かにそうだが、原発がんと違っている可能性は10%くらいで、原発組織がエストロゲン、プロゲステロン両方陽性だったのなら今回もホルモン感受性があるとみていい」とのことでした。

また、化学療法とホルモン療法の効き目についても話し合い、最近のホルモン療法は侮れないこと、化学療法より奏効する場合があり寛解することもあること、強い治療でたたくのは初回治療の時だということでした。また、私のようなケースはホルモン療法で治癒に持っていける可能性もあると言われました。(自分ではゆっくり身辺整理をしようと真剣に考えていたのでちょっと意外でした。主治医からの励ましの部分が多分にあるのかもしれませんね。)

あるがん情報のサイトで「ホルトバギーの治療方針が基本だが、患者によっては体力があるうちに化学療法で高さを稼ぐのがいいかもしれない。それから、ゆるやかなホルモン療法の坂道を行く方法もある」という意見を見つけ、私の化学療法先行という意見も、あながち暴論ではないのでは…と今でも思いますが、主治医との話の中で、ホルモン療法は今まで思っていたように単にがんの増殖を抑えるだけではなく、がん細胞を減らし、寛解させる(可能性もある)こと、私の考える化学療法先行のエビデンスは当然ないし、先のサイトの化学療法先行もありの意見も、例として多発の肝転移など急激に全身状態が悪化する恐れのあるケースをあげていること、3ヶ月後位にホルモン療法の効果をチェックするので薬や治療法の見直しの機会もあること、そしてゆっくりでてきた転移なので悲壮にならず、とりあえず今は医師がすすめない一か八かのような化学療法先行は棚上げにしようと結論しました。 主治医が他の症例や他の医師に尋ねたことも交えてひとつひとつ丁寧に答えてくださったこと(姿勢)も結論を後押ししました。

ホルモン療法の薬は、このサイトはじめ様々なサイトの情報から有効性のより高そうなフェマーラをお願いしました。 体質的に(母、妹、姪全て)高脂血症気味であることも伝え、アリミデックスとの副作用の差はあまりないとのことなので、気をつけながら…ということになりました。

前の主治医の転勤のため、今の主治医とのおつきあいはまだ短いですが、患者の疑問への応答、医師の提案、患者の意見、それに対する医師の意見、それぞれがかみ合った話し合いになった感があり(前医ではうまくいきませんでした)、今回はこの選択で納得しています。

以上、簡潔にまとめられず申し訳ありませんが、患者の治療法選択の落ち着きどころのようなものが伝わればと思い、詳述しました。
主治医への質問のヒントをいろいろいただき、ありがとうございました。 

よろしければ、主治医に聞いても疑問に残ったことをひとつだけ教えてください。 

転移乳癌治療では必ず「転移癌もホルモン感受性があれば云々」とありますが、実際は、転移乳癌の組織は表面に近いところにない限り採取できないので、結局はほとんど調べられておらず、原発癌に準じてレセプターの陽性陰性は判断されているのでしょうか?

Re:転移乳癌の治療法選択について
佐治重衡(東京都) 2009/11/28
こんばんわ

主治医先生とよいコミュニケーションがとれたようで、安心いたしました。

ご質問に関してはちょうどAnnals of Oncologyという雑誌の11月3日号に2本、これに関連した論文がでています。参考までに。

以下は一般的な知識としてお読みください。

乳房のしこりと脇の下のリンパ節の比較、乳房のしこりと再発場所の組織との比較など、これまでいろんな研究者が調べています。研究によってデータは違うのですが、ER(エストロゲン受容体)に関してはざっというと95%は同じだったというものから60%くらいは同じだっという報告まであります。

ご指摘のとおり、転移先の組織を調べることは多くの場合難しいので、正確な把握は限界があります。
厳密には、やはりもとの組織の状況と、転移先の状況はなんらかの変化があると考えられています。

しかし、これまでのデータからは、ほとんどの場合、もとの癌の性格判断をもとに、再発時の治療をすることで問題なく治療ができることが知られており、現時点ではこの考え方が標準とお考えください。
何事も100%ということはありませんが。。

いずれにしても、今後研究が進んでいく分野ですので、また新しいお話ができる日もくるのではと思います。


Re:転移乳癌の治療法選択について
はる (大阪府) 2009/11/29
佐冶先生、ありがとうございました。

以下は蛇足です。
雑感ですが、治療について主治医と話し合う時、患者たる自分の意見の収めどころについてしばしば迷います。 

例えば今回のホルトバギーの治療方針にそむくような提案ですが、主治医から肯定的な意見はひとつも得られませんでした。 でも、ホルモンレセプター情報が100%正しいわけでなく、また転移でも治癒を目指せる可能性があるというのなら、まず強い化学療法という考え方もありではないかという疑問は消えていません。 ですが、医学の細部を知らない素人が生半可な医学知識を振りかざして医師を困らせているだけではないか、とか、医師にもわからないことはいっぱいあって医師のせいいっぱいのところで一生懸命考えてくれているのだから…とか、いろいろ思い、結局自分の責任でこの治療を選びとるという自信も持てなかったので、今回はここが引き際かなと考えました。

「今回は」としたのは、過去に当時の担当医にあまり信頼がおけなかった時、一歩も引かなかったことがあったからです。
CMFの薬剤の量でしたが、医師の提示した量がかなり少なく、根拠もあいまいだったので、自分で文献にあたり、体表面積の出し方や欧米の基準値を調べて自分の量を提案しました。 現在、標準とされる量に近い量だったので、あの時がんばっておいてよかったなと思っています。 

医師の皆さんには非常に失礼な言い回しになっていたら、ごめんなさい。 
自分で治療を選択するということの限界と、でもその中でも自分の治療に主体的に関わりつつ医師とよいパートナーシップを作っていく意義の両方をあらためて感じています。

これからもよろしくお願いします。
  

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