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治療とその選択
Oncotype DXによる術後療法の選択について
pooh(愛知県) 2009/12/16
M.D.アンダーソンがんセンターの上野先生、教えてください。Oncotype DXは、乳がんの術後療法の選択においてアメリカではどのような位置づけなのでしょうか。

45歳、閉経前です。10月20日に乳房温存手術を受け、病理検査の結果は
浸潤性乳管がん
腫瘍の大きさ1.1cm
ER、PRともに強陽性(8点満点)
グレード3
Her2-
切片断端-陰性
脈管浸潤-
でした。グレード3とER,PR強陽性とが乖離している?ということでOncotype DXを勧められ受けたところRS=12でした。主治医はNCCNのガイドラインに沿って、抗がん剤は不要との見解でしたが、化学療法をするかどうかは私に任せられました。
実はそれまでの長い結果待ちの間に、頂いたパンフレット、インターネットなどで私なりにOncotype DXについて勉強しました。検査を申し込んだときには、低リスクならば抗がん剤は受けなくていい、中リスクのときをどうするかを考えておこうと思っていたのですが、いろいろ勉強するうちに、低リスクと出たらGrade3ということを無視して本当に抗がん剤をやめてよいのかという疑問が湧いてくるようになってしまいました。

再発リスクはB-14試験、抗がん剤の寄与度についてはB-20試験といった別の試験を基にしているため、頂いた結果の数値に矛盾も感じます。
日本では未だあまり行っていない検査ですので、情報が無いため、アメリカの乳がん患者サイトで質問もしました。RS=20代後半でも抗がん剤をしない人、RS=10でも抗がん剤を選ぶ人などさまざまでした。
こうなるとそれぞれの価値観ということになるとは思うのですが・・・。(私は少しでも再発率を下げることができるならできることは何でもやりたいです。)
結局結論を出さなくてはならず、Oncotype DXをある程度信頼することにして、ホルモン療法のみを選びました。
そこでお聞きしたいのですが、

(1)グラフによると私の場合2%ぐらい再発率が減るということなのですが、基になっている試験B-20では実際には全く変わりません。つまりもし再発してもそれは抗がん剤をしなかったからではない、と解釈しました。これは間違っていますか。

(2)M.D.アンダーソンがんセンターでは、Grade3、RS=12という場合どのような指導がされるのでしょうか。

(3)抗がん剤をやらなくてホルモン療法のみを選択した場合、タモキシフェンの代謝が特に重要になると思いますが、CYP2D6の検査ができることになりました。
この検査でもし代謝が良くないと分かったときは、ホルモン療法はどのようになるのでしょうか。(閉経前ということで、リュープリン、ノルバデックスで治療が始まったところです。)
抗がん剤をこれからやるということも選択肢としてはあるでしょうか。(Oncotype DXの中にはCYP2D6という要素はないようなので、タモキシフェンの代謝が普通にあることが前提の低スコアだと思いました。)

最近になってこのサイトに出会うことができたので、これまで考えてきたことをたくさん質問してしまいました。

申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。



   
Re:Oncotype DXによる術後療法の選択について
佐治(東京都) 2009/12/16
こんばんわ

上野先生が答えることのできる前に、すこしだけ。

1)B-20試験の解析と、手元に帰ってきた結果シートの記載をごらんになってのことと思います。
基本的には、これまでのデータでは、low risk (RS18未満)では化学療法は効果を発揮しないか、化学療法してもしなくても、ホルモン療法で十分役割を果たしてくれるでしょうという解釈となっています。データとしては、ご理解のとおりです。

日本人のこのような化学療法の効果のありなしをみた研究はありませんが、わたくしどもが参加したJBCRGの研究では、200例の日本人患者さんでOncotype DXの検査をしてもRSのlow と intermediateのかたの予後は良好でした。high相当(31以上)はこれらと明らかに差がありました。詳細は論文をまっていただく必要ありますが、プレスリリースのみ公開されています。

今のところこのような解釈です。
ただし、すべて過去の研究をひっくりがえしたデータなので、これが本当に正しいかどうかを検証する試験が海外でおこなわれています。TAILORxといいます。これが決定打になるはずなのですが、ここでは、スコア11-25点のかたは化学療法をする群と、しない群にくじ引きでわけられています。11点未満は無条件でホルモン療法のみが割り当てられます。いろいろな考えで、こういう設定にされています。

細かく書くとこうなりますが、実質的にはRS12はlowと考えて、化学療法をする利益はとてもとても少ないと説明されると思います。主治医先生のご意見はこのとおりではないかとおもいます。


3)のCYP2D6は、最近一番頭を悩ませている分野です。最初の報告では、代謝能力によってタモキシフェンの効果に差があるというデータでしたが、いろいろ追試験が報告されてきており、どうも予想どおりの効果の差がみられない報告が増えてきました。先日までサンアントニオでおこなわれたシンポジウムでも最新の大きな規模のデータがでましたが、代謝能力と再発予防としてのタモキシフェンの効果に明らかな関係がでませんでした。いろいろ研究や検査の方法論や、望ましい対象での解析が難しいなど、いまのところ最終的な答えはでていません。

ということで、CYP2D6の答えにかかわらず、これまでと同じく標準的にはタモキシフェンをそのまま飲むのがよいかなというところです。
わたくしどももこれに関しては研究をしています。

いつか答えがでてくると思いますが。。

ありがとうございます。
pooh(愛知県) 2009/12/17
佐治先生、早速お答えいただいて本当にありがとうございます。
Oncotype DXを申し込んでから20日以上+結果が出てから半月ほどで、合わせると1ヶ月以上このことばかり考えていて、心にためていた思いや質問が爆発してしまいました。

Oncotype DXの詳しい説明をありがとうございます。
今現在日本の専門家の先生の間では、Oncotype DXはある程度信頼されていて、もし検査した場合は、術後療法の選択に大きなウエイトを占めているということでいいのでしょうか。

3)については、特にホルモン療法だけでいくと決めた場合、タモキシフェンの効果が重要になりますので、絶対に検査しなくてはいけないと思い込んでいました。でも、代謝能力と再発予防としてのタモキシフェンの効果の関係がはっきりしていないのであれば、あえて検査する必要はありませんね。(実は今の病院では検査できなくて、遠方の医療機関に申し込もうと思っていました。)

Oncotype DXを含む術後療法について主治医以外の先生からお話を伺えるのは初めてでしたので、感激しています。

ありがとうございました。










Re:Oncotype DXによる術後療法の選択について
佐治(東京都) 2009/12/18
お役にたてれば幸いです。

オンコタイプについては、日本では(たぶんヨーロッパも)強い信頼をおいているというところまでには至っていないとは思いますが、それ以外の情報できめた方針を補完する目的では利用されていると思います。

おなじ方向の結果がでると安心度は高まるのではないでしょうか。
Re:Oncotype DXによる術後療法の選択について
pooh(愛知県) 2009/12/18
佐治先生、たびたび失礼致します。
Oncotypeは、日本では強い信頼をおいているというほどではないのですね。
私の場合「同じ方向の結果」ではなかったので悩んでおりました。病理検査だけですとGrade3ということで中リスクとなり、私のようにリスクを下げるためにできることはすべてやりたいという場合抗がん剤を選んだと思います。
「それ以外の情報」で決まってくる方針とOncotypeからのものは全く逆のものでした。私の中では、病理検査の結果(Grade3)とOncotype RS=12のどちらをとるか、極端に言うとそんなことだったと思います。でもOncotypeというものを知ってから1ヵ月半ほど勉強したとはいえ、どちらにウエイトをおくかを決めるのは素人にはとても難しいことです。アメリカの掲示板でも相反する結果に悩む人はたくさんいました。

そこで、Oncotypeが広く使われているアメリカ、またはまだ少ないですが使われるようになった日本で、Oncotypeが専門の先生方にどれ程信頼されているのかを知りたくて質問致しました。

日本では、「それ以外の情報」で決まってくる術後方針をOncotypeが覆すというような使われ方はあまりないのでしょうか。
Re:Oncotype DXによる術後療法の選択について
上野 直人(海外在住) 2009/12/18
OncotypeDxは絶対的なものではないですが普段の指針にはとても役に立ちます。佐治先生にもご指摘されていましたが、TailorRx studyがおそらくがOncotypeDxの役割を明確にすると思います。

それでは、現実どう対応するかですが、ER, PR 強陽性HER-のStage Iの乳がんは化学療法をしなくても良いのではないかという流れがあるのは事実です、特に腫瘍の大きさが1cm以下の場合ではそうかんじているかもしれません。では、1.1 cmは問題かというと相ではないと思います。
特にこの場合、OncotypeDxにより低リスクと出ているので、医師としてのこれまでの臨床経験を裏付ける事の出来る検査結果なのでますます、化学療法しなくてもいいと思いますね。

患者の気持ちとしては少しでも、良くなりたいのが当たり前ですが、化学療法の様々な副作用を考えるとーーー、

ちなみに、化学療法の短期と長期の副作用はご存じですか?
Re:Oncotype DXによる術後療法の選択について
pooh(愛知県) 2009/12/19
上野先生、現実に今どういう対応をするか、Oncotypeをどう考えるかを示していただいて、とても安心致しました。

「ER, PR 強陽性HER-のStage Iの乳がんは化学療法をしなくても良いのではないかという流れがある」ということは全く知りませんでした。そうすると私の場合、佐治先生がおっしゃたようにOncotype以外の情報で決めた方針をOncotypeで補完したと言えますね。

術後療法に抗がん剤なしを選び、もうホルモン療法が始まったのですが、まだ心が揺れていました。
でも、佐治先生、上野先生にお話を聞いて頂き、明快なご見解を伺えてそれもなくなりました。

化学療法の副作用については、私はまだ明確には分かってないと思います。病院より冊子を頂きましたが確かに大変そうだと思いました。
ただどれも数ヶ月ぐらいのもののように思われました。主治医にも抗がん剤投与期間のずっと後に残るような後遺症はないのですかと質問しましたが、ないという答えでした。
それならある期間副作用に耐えて少しでもリスクを減らした方がよいのでは、と考えたことも事実です。(長期的には抗がん剤は私にとって、利益が0であったとしてマイナスにはならないと思っていました。)

その後、アメリカの乳がん掲示板でlong termとかpermanentな副作用のことをよく調べて考えたほうがいいというアドバイスをいくつか頂きました。心臓へのダメージ、神経障害、白血病などの二次がんなどということでした。
これらの長期の副作用が出る確率はとても少ないと思いますが、抗がん剤による利益もOncotypeによればとても少ないと出ています。
Oncotypeを信頼することにしてリスクと利益を天秤にかけて、抗がん剤なしでいくことに気持ちが傾いていきました。

先生のおっしゃる長期の副作用というのは、これらの副作用のことでしょうか。

Re:Oncotype DXによる術後療法の選択について
上野 直人(海外在住) 2009/12/19
抗がん剤投与期間のずっと後に残るような後遺症はないのですかと質問しましたが、ないという答えでした。

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これは主治医の答えは間違っています。笑
仰るように長期の副作用は存在します。多くないかも知れないですが、知っている必要はありますね。

天秤にかけると発想が良いと思います。ストレートな答えがない中で、天秤のバランスをどうとらえるかは本人と医療従事者がともに決めていくことが重要です。
もうひとつだけ教えて下さい。Re:Oncotype DXによる術後療法の選択について
pooh(愛知県) 2009/12/19
上野先生、お忙しい中お答えいただいて本当にありがとうございます。

後遺症の質問の答えが「ない。」の一言でなければ、もう少し早く決断できたのにと考えたりもします。

でも、このサイトで質問し、先生にお答えいただいたことで頭の中が整理できて、今は自分の中で納得してホルモン療法のみを選んだと思えるようになりました。
これから長いホルモン治療を、疑問と不安を持ちながら受けるのと、これが自分のベストなんだと納得して受けるのでは全く違います。

このサイトに出会えたこと、本当に感謝しています。

本当に申し訳ないのですが、もうひとつ教えてください。

代謝能力と再発予防としてのタモキシフェンの効果の関係はまだはっきりしていないと佐治先生に教えていただき、はっきりしていないのならCYP2D6検査を受ける必要はないと思ったのですが、今になって、はっきりしていなくても「念のため」受けた方がいいのかなと思えてきました。

もし検査を受けてCYP2D6のpoor metabolizerであった場合、閉経後であれば「念のため」(将来もしかしたら関係性がはっきりするかもしれないので)タモキシフェンではなくアロマターゼ阻害剤を選べば良いのですよね。(間違ってたらごめんなさい。)
確か、この掲示板でもCYP2D6欠損のために卵巣摘出後にタモキシフェンからアロマターゼ阻害剤に切り替えたという方がいらっしゃったと思います。
閉経前では「念のため」タモキシフェンの代わりになるようなものはないのでしょうか。

アメリカではCYP2D6検査は日本より広く行われているようですが、閉経前の方はpoor metabolizerと診断されたときはどうしているのでしょうか。(日本と違って卵巣摘出手術を受けることもよくあると聞きますので閉経後と同じ条件で薬の選択ができるということになるのでしょうか。私はリュープリンで生理をとめるだけの予定です。主治医からは、その間にほぼ確実に閉経するよと言われていますが。)

もし閉経前にはタモキシフェンに代わるものが無ければ、やはり念のためとはいえ検査をしても意味が無いのかなとも思ったり、でもやっぱり検査をしてCYP2D6の状態を知りたいとも思います。

上野先生、佐治先生、お教えください。
よろしくお願いいたします。








Re:Oncotype DXによる術後療法の選択について
上野 直人(海外在住) 2009/12/21
少しはお役に立ててよかったです。

1.でもこの内容に関して必ず、主治医と話しをし合意形成をしてくださいね。このサイトは正確な情報提供に努力をしています。しかしネット上で正確なオピニオンを出すことは不可能です。あくまで、一情報としてとらえて頂くことが大切です。

2.CYP2D6検査はOncotypeよりもまだ発展途上です。少なくとも、私たちの病院では調べてません。CYP2D6検査を行う病院、それを押す保険会社もありますが、意見が分かれています。検査を受けるなら、主治医とよーく相談してください。結果が出ることによるメリット。デメリットを知る必要があります。また、検査の精度。検査の結果により、治療に影響するのかなどの情報が必要ですね。
ありがとうございました。
pooh(愛知県) 2009/12/21
上野先生、何度もお答えいただいて、ありがとうございました。
主治医は言葉少ないかたなので、話し合いの中で質問の仕方をよく考え、主治医のお考えをお聞きしようと努力したのですが、そのへんの不完全燃焼をすべてこの掲示板に持ってきてしまったようです。

本当に申し訳ありませんでした。

CYP2D6検査のこともあらためてもう一度、主治医に質問してみようと思います。

ありがとうございました。
Re:Oncotype DXによる術後療法の選択について
上野 直人(海外在住) 2009/12/22
応援してます。頑張ってコミュニケーションしてください。
Re:Oncotype DXによる術後療法の選択について
中村 千恵(埼玉県) 2013/02/23
初めまして。1月中旬に手術を受けましたが、主治医からOncotype DXの検査を勧められ、また抗がん剤による治療も勧められております。抗がん剤の治療は避けられるのであれば、避けたいと思っているのですが、Oncotype DXの検査が役に立つものかの判断がつかず、悩んでいます。
私は47歳で、閉経前です。病理組織診断の結果は、
1. Breast, right, total mastectomy:
- Invasive ductal carcinoma (papillotubular type), pT2, f, ly(-), v(-).
Surgical margin: Negative
2. Non-Sentinel lymph nodes, biopsy:
- Negative for metastasis (0/3)
Nottingham GradeはGrade 1相当であり、組織学的な癌の広がりは約24x23x23mm大。明らかな静脈・リンパ管侵襲はみられない。
免疫染色結果は、
ER 陽性細胞の占有率:5 陽性強度:3
PR 陽性細胞の占有率:5 陽性強度:3
Her2/neu 2+ (FISH検査では増殖なしと判定)
Ki67標識率 20% (Hot Spot)
との事ですが、
Oncotype DXが役に立つ検査がアドバイス頂きたく、
宜しくお願い致します。
Re:Oncotype DXによる術後療法の選択について
J-TOP事務局(東京都) 2013/04/03
中村 千恵様

はじめまして、当サイトを運営しておりますJ-TOP事務局の小川と申します。
さて、中村様の質問が別のテーマのツリーの下の方になっていて、目に留まりにくくなっておりますので、申し訳ございませんが、新しいテーマとして作成させていただきました。
新規テーマの名称およびページ(URL)は、以下になりますので、そちらをどうぞご覧ください。よろしくお願い申し上げます。

■Oncotype DXが役に立つ検査かどうかについて
https://www.teamoncology.com/bbs/thread_dtl.php4?coid=1&cid=10&tid=4163

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