掲示板「チームオンコロジー」

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患者と医療者のコミュニケーション
ガイドラインについて質問してもいいですか?
くっしー(大阪府) 2010/03/15
いつも勉強させていただいています。「かるてぽすと」というがんの掲示板を運営に携っている串岡と申します。本日、上野先生のブログ記事、
http://teamoncology.blog39.fc2.com/blog-entry-155.html
を読んで、ガイドラインについて質問があるのですがよろしいでしょうか?

「かるてぽすと」でも、標準治療についてみなさんに知っていただくために、サイト内でガイドラインをご紹介するのもいいかなと思っていました。しかし、掲載にあたって、どうしたものかと思案しています。

といいますのも、今回の記事でおっしゃっていたように、ガイドラインは複数あります。複数のものを並列に、「これらがガイドラインです。参考にしてください。」と紹介すると、たぶん見る人(患者の立場である人)が、混乱すると思うのです。

患者の立場である人に、混乱なく「ガイドラインを伝える方法」としては、どのようなものが考えられるでしょうか?

上野先生の記事を拝見すると、『ここの病院あるいは医師が自分の直面する医療現場でどのガイドラインを引用するかのコンセンサスをとること』と、ありました。もし患者の立場の人で、「ガイドラインを勉強したい。」という人がいらっしゃった場合は、

①主治医にどのガイドラインを読むといいのか聞く
②そのガイドラインを調べる

というようなステップを踏むといいんでしょうか?そうであるなら、ガイドラインへのリンクをただたんに並列に表記する前に、「主治医にどのガイドラインを読むといいのかまず聞いて下さいね。」と一文入れようと思うのですが・・・。前々からどういう形が適切か?と疑問に思っていました。ご意見伺えれば幸いです。

   
Re:ガイドラインについて質問してもいいですか?
村上 茂(広島県) 2010/03/20
串岡様
私は広島大学で乳癌診療に従事しており,また日本乳癌学会のガイドライン作成にも参加させていただいています。

そもそもなぜガイドラインについて掲載しなければならないのかを考えてみて下さい。

ガイドラインはあくまでも治療を決定するための指針の様な者です。必ず書いてあるようにしなければならない法律のような者ではありません。ただ自分が受ける治療,病気について,正しい情報を知り,正しく判断したいと考える患者さんが増えてきたことも実感しています。

私個人としては日本乳癌学会が編集した「患者さんのための乳がん診療ガイドライン」金原出版をお勧めします。これは医療者向けのガイドライン作成に当たった医師が,そのまま患者さん向けのガイドライン作成に当たりました。またどの項目を取り上げるかについても患者会の皆様のリクエストを募り,患者さんの意向に沿った項目を取り上げています。

また執筆に当たっても医師の書いた文章を看護師,薬剤師,患者会の代表の方が校正し,医師にありがちな「専門用語が羅列されて患者には全くわかりにくい説明」が排除されています。私の書いた原稿などは跡形もなく修正されました。もちろん医学的な内容は修正していません。

最後に「標準治療」は上野先生も書かれているように言葉のイメージが悪いですね。それは患者会で話をした際にも実感しました。「標準仕様の車」というと最低限の装備しかついていないい廉価版のイメージがあります。病気になったとき,せめて最高の医療が受けたいと願っている患者さんが,突然「標準治療をしましょう。」といわれてもピントこないのも当然かもしれません。
Re:ガイドラインについて質問してもいいですか?
上野 直人(海外在住) 2010/03/20
村岡先生の意見賛成です。個人的にはNCCNのガイドラインが好きですが、どのガイドラインも作成者の患者への想いが入っています。問題は書いていることは科学的な根拠を見極める為に内容がとてもドライです。

そのために患者が読むとガイドラインをどのように利用すればいいのかみえません。

①主治医にどのガイドラインを読むといいのか聞く 。なぜそのガイドラインなのか聞いたらいいですね。違いがどこにあるのか。
②そのガイドラインを調べる 。調べるときに、自分の治療とずれているのがとうぜんよくあります。そのずれが生じた理由を聞く。大抵はちゃんとした理由があります。また、ずれることによる、治療結果あるいは満足度の違いにつながるのか聞いてみて下さい。
Re:ガイドラインについて質問してもいいですか?
ゆみこ(愛知県) 2010/03/22
串岡様

私が個人的に気になったことを書かせてください。

それは、患者さんはなんのためにガイドラインを見たいんだろう?ということでした。

自分が正しい治療を受けられているかどうか不安だから?
いま受けている治療に不満があるから?
今後どうなるのか知りたいから?

他にもいろいろあるでしょうか。

そして、これらの情報を医療従事者から得られていないから?とも思いました。

ひとつ恐れることは、がんの宣告を受け大きなショックとストレスを受けた患者さんが、
自分の望む治療を受けたい、自分が望む予後を見つけたいと思うがために、
ガイドラインのなかから望みに叶う部分を探し出し、
なぜ今の主治医はこの治療をしてくれないのか、この治療はどこに行ったらしてもらえるのか、と
さまよってしまわないか、とても心配です。
なぜなら、ガイドラインを適用するためには、正確な診断が重要であり、
正確な診断を基に適切に適用してこそ、ガイドラインの意味があるからです。

ガイドラインを、患者さんと医療チームとを結ぶ確かな絆にしたい!と、切に願います。
ぜひ、医療スタッフとともに読み解いてほしい、と思っています。
Re:ガイドラインについて質問してもいいですか?
くっしー(大阪府) 2010/03/23
村上 様

ご返信ありがとうございます。
「患者さんのための乳がん診療ガイドライン(金原出版)」は拝読したことがあります!あの資料は素晴らしいですね!コトバもわかりやすく編集されていて、心強い存在だと思いました。

>なぜガイドラインについて掲載しなければならないのか
についてですが、私なりには、
①村上様の仰られたとおり正しい情報を知りたいと思う方がいること
②「患者さんのための乳がん診療ガイドライン」のような、正しい情報がわかりやすく読めるケースがあることを、まだご存知ない方がいるかもしれないから
と、考えています。患者さん向けのガイドラインがどんどんでてきて、広がるといいですね。

資料が乏しい→ガイドラインを読む→わからなくなってしまう
という患者さんのサイクルを防ぐために資料を作ってくださっている村上様他、ご関係者様のお気持ちをもっと広げるお手伝いができればと願っています。



上野 様

ご返信ありがとうございます。

>患者が読むとガイドラインをどのように利用すればいいのかみえません。
おっしゃるとおりだと思います。
また、ステップの①、②について、まとめてくださってありがとうございます。
こういったかんじで「何を質問したらいいのか?」を示してくださるということは、コミュニケーションを円滑にするのにとても役立つと思います。適切な質問によって、コミュニケーションがスムーズになれば信頼も深まりますね!ありがとうございます。勉強になります!!


ゆみこ 様

ご返信ありがとうございます。

>これらの情報を医療従事者から得られていないから?
医療従事者の皆様が日々努力されているのは感じています。
情報が得られていても、医療者さんに相談できる時間でないときは、何か自分なりに調べてみたくなると思います。

そういったときに、ゆみこ様が提示してくださった「混乱」がおきないような、資料があるといいですね。もしくは「患者さんのための乳がん診療ガイドライン」のような、素晴らしい資料がある場合には、誰でも簡単に気がねなくアクセスしやすい状況においておくことも重要だと思います。

絆が深まるツール、私どもも応援したいです!!


ご返信くださった皆様へ

突然の質問に関わらず、お答えどうもありがとうございます。
貴患者さんはもちろん医療者さんのためにも、標準治療の理解のために、できることはやっていきたいと思います。ありがとうございました。




Re:ガイドラインについて質問してもいいですか?
村上 茂(広島県) 2010/03/23
串岡様

御返事有り難うございました。
わたしが外来をしていて良く思うのは、

よく分からない-インターネットをたたくーいろいろな情報がありすぎてますますわからないー中途半端な知識だけが残って益々不安になる-悪徳サイトに引っかかる

の悪循環を何度か見ました。
正確でフェアな情報を伝えたいとの思いが「患者さんのために乳がん診療ガイドライン」には込められています。
Re:ガイドラインについて質問してもいいですか?
串岡(大阪府) 2010/03/24
村上 様

おはようございます!
お返事ありがとうございます。

サイクル、すごく参考になります。
私はウェブサイトを運営していますので、
ひとまずは、

「インターネットをたたく→いろいろな情報がありすぎてますますわからない」

ここを、↓

「インターネットをたたく→適切な情報源にナビゲートされる」

に、役立つことをしたいと思います。

少なくとも乳がんの患者さんやご家族に関しては、「患者さんのために乳がん診療ガイドライン」をすごく目につくところに掲載しようと思います。

現場の貴重なお声をお聞かせくださって、とても参考になります。ありがとうございます。もっともっと、今後も勉強していきたいです。
Re:ガイドラインについて質問してもいいですか?
村上 茂(広島県) 2010/03/24
適切な情報源を作るのはやはり医療者の義務だと思います。次に串岡さまが中心となって,適切な情報に一人でも多くの患者さんがたどり着く道を整備していただけると助かります。これも一種のチーム医療だと思います。よろしくお願い致します。

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