掲示板「チームオンコロジー」

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治療とその選択
乳がんの術後療法の選択について
でーび(神奈川県) 2010/04/16
こちらのサイトをいろいろ調べているうちに見つけることができうれしく思っております。

3月下旬に妻が皮下乳腺全摘手術を受け、先日、病理の結果が出て、化学療法を推奨されました。
病理の結果は、大部分は非浸潤(7.5×19.5cm)であるが7箇所に浸潤がみられる(1cm以内)。脂肪組織への浸潤もわずかに見られる。
リンパ管侵襲ははっきりしないが、明らかな静脈侵襲は認められない。断端陰性。リンパ節1/8、グレード2、HER2(1+)なし、ホルモン受容体 陽性(FR(3+)、PgR(3+))
(1)医師からは、AC-T療法の後、ホルモン療法を薦められていますが、脱毛に不安があり、決めかねております。 やはり、効果と副作用を比較した場合に、AC-T療法を選択するのが標準でしょうか? ネットの情報をいろいろ見ていますと、HER2なし、HR陽性ではアンスラサイクリン系は使うべきではないということですが・・・。主治医は質問に対しては、妻の病理結果からはアンスラサイクリンの使用が高く推奨される、と言う答えをもらいました。
(2)また、CEF-T療法はAC-T療法と効果が同等で副作用が少ないという情報を見つけたのですが、いかがでしょうか?(http://www.oph.gr.jp/breast_care/team-chemo.pdf)
(3)さらに、TC療法は期間が短い(3ヶ月)が保険が効かない量を使う必要があるということでしたが、選択を考慮する価値がありますでしょうか?ネットの情報では良いと書いてありました。(主治医への質問の回答は、TC療法がAC-Tの代替として考えられるとなったデータで使われているT(ドセタキセル)の薬の量は、日本では使えない量です。具体的には、臨床試験では75mg/m2だったものが、日本では60mg/m2(極量70mg/m2)までしか使えません。デメリットとしては、ドセタキセルのこの量は、骨髄抑制が強い印象を我々は持っている、ということです。)
(4)また、その他に検討すべき療法はありますでしょうか?EC-TはAC-Tと同等でしょうか?
(5)また、手術の傷が完全によくならないうちに抗がん剤を開始した場合、傷の治りが悪くなることはありますでしょうか?
(6)センチネルリンパ節生検で8個中1個に転移があったものの、主治医は追加で郭清はしないということですが、これは標準でしょうか?主治医からは、国際ガイドラインによれば、(ガイドラインでは10個だがそれに近い)8個のうち1個であるのでリンパ節転移の数が少ないといえる。郭清すれば、より正確に判断でき局所再発率が下がるがリンパ浮腫の可能性があるため半年化学療法を行った後、PET-CTで検査をして転移が疑われたら生検をやったらどうか?と言われています。
放射線照射をすることは効果的だと思われますか?
(7)リンパ節転移あり、でも遺伝子検査をすることは術後療法を選択する上で効果的でしょうか?
以上、お手数ですがよろしくお願い致します。

   
Re:乳がんの術後療法の選択について
佐治(埼玉県) 2010/04/21
こんばんわ 

なかなか返信がつかないようですので、すこし書き始めてみます。全部にはお答えできないので、わかる範囲の問題に関して一般的なことを書いてみます。


1)ところで、一番大事な情報は年齢なのですが、おいくつでしょうか。

2)手術後の結果から、抗癌剤をするかどうかで迷われているということかと思いますが、たしかに迷う条件がそろっています。また、みなさんが迷われるところかと思います。する、しない、のどちらも標準のなかにはいってしまいます。

3)このタイプのときにアンスラサイクリンを使うべきか、使わなくてもよいかも大変議論が多いところで、どちらかに決まっていません。TCを選択されることも、AC(EC)-TやFEC-Tなど、アンスラサイクリンとタキサン系の抗癌剤を使われることも、また、ACなどアンスラサイクリンのみにすることも、いずれも選択できる範疇にあります。
残念ながら、どれかが決定的によいとは言えないと思います。

4)アンスラサイクリンとタキサン系を順番に使う化学療法は、いくつかやりかたがありますが、ガイドラインにのっているような標準的なやりかたであれば、どれも大きな差はないといってよいです。

5)Oncotype DXは閉経後のホルモン陽性の患者さんであれば、リンパ節転移陽性でも利用できることになっています。
この情報をもって、化学療法をする、しないの、補足情報として使用することは可能と思います。ただ、ちょうど真ん中のデータがでたり、他の要因とあわないデータがでたときに、迷う要因が増えるということもあります。






Re:乳がんの術後療法の選択について
でーび(神奈川県) 2010/04/21
佐治先生、ご返信ありがとうございます。

1)年齢を忘れていました。37歳です。

2)迷うことが多くなかなか決めることができないのですが、妻と後悔するよりもできるだけの治療をした方がよいかと思い、抗がん剤をする方向で検討を始めています。

3)現在、効果があまり変わらないのであれば、AC-T療法に比べ期間が半分のTC療法も良いのではないかと思っております。ただ、TC療法を行う場合、保険で使える量よりも多い量を使う(AC-Tの代替として使えるとしたデータの量)そうで、その場合、骨髄抑制の副作用が出やすいと考えているということでした。個人差があると思いますが、TC療法は期間が短い分、薬が強くて、3ヶ月間の治療を終了できないことも多いのでしょうか?AC-Tはほとんど終了することができる、と主治医に聞きました。

4)一般的に、AC-TとTCの短期的な副作用と長期的な副作用で差はどのようなものがあるのでしょうか?

5)パクリタキセルとドセタキセルではパクリタキセル(毎週投与)の方が効果があるとする記事があったのですが(N Engl J Med. 2008 Apr 17;358(16):1663-71)、大きな差があるとまでは認識されていないと考えてよろしいでしょうか?

以上、たびたびで恐れ入りますがよろしくお願い致します。

Re:乳がんの術後療法の選択について
佐治(埼玉県) 2010/04/22
1) 2)了解いたしました。

3)4)に関しては、主治医先生ともう一度話しをされることをおすすめします。もしくはセカンドオピニオンかと思います。TCとAC-Tが同じというデータはなく、たぶんBCIRG005試験のTACx6サイクルとACx4ータキソテールX4が同等であったデータのことかと思います。
保険適応の用量の問題、各施設で可能となる方法の違いなどがあります。副作用の問題も含め、face to faceでのご相談が必要な部分とおもいます。

5)この論文は、わたくしどもも勉強会で使うくらい解釈の難しい論文ですね。一般的な考えとして、タキソテールを3週ごとにうつ方法とタキソールを毎週うつ方法は、ほとんど同じと考えている先生が多いとおもいます。
Re:乳がんの術後療法の選択について
でーび(神奈川県) 2010/04/25
佐治先生

ありがとうございました。
いただいたご意見を参考に検討を進めたいと思います。

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