掲示板「チームオンコロジー」

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治療とその選択
ガンに負けない心を持つために
橋本浩伸(東京都) 2010/08/07
今朝たまたまTVをつけたところ「発見,人間力」という番組がやっていました.(既に放送された地域もあるかと思います)

そこでは,18年前にがんを患い手術と再発を繰り返しながら病院の臨床検査技師を勤めている方が,「スピリチュアルケア」のカウンセラーを目指しているといった内容でした.

この「スピリチュアルケア」という言葉は,病気に対する不安や死に対する恐怖が常につきまとう。患者さんの心の声に寄り添ったり、気持ちの整理のお手伝いをするといった意味合いだそうです.

カウンセラーの養成プログラムは桃山学院大学の伊藤高章教授が行っているものでした.カウンセラー養成プログラムの課程で患者さんと実際に会ってカウンセリングを行うのですが,その検査技師さんはカウンセリングの内容に悩みながら,ご自身の病気とも向き合っておられるようでした.
プログラムの終盤にご自身の再発が判明し手術を受けることになったのですが,今まで見ることが出来なかったご自身の過去の闘病日記を始めて見返しながら自分の病気と向き合い,患者さんに寄り添うこととはどういうことかを考えプログラムの中でカウンセリングを行っていた患者さんと話をしている姿が印象的でした.

私はがん患者さんを専門に診る病院に勤める薬剤師です.「スピリチュアルケア」という言葉や海外の病院ではチャプレンという牧師さんがいてこういったケアを行っているということは知っていました.

医師,看護師と治療にあたる中で患者さん自身の病気への理解や整理なくして治療を進めることは難しく,まさしく「がんに負けない心」を持つ事が第一歩だとおもいます.

こういったケアを行う職種が日本の医療の中に早く浸透するよう伊藤教授をはじめとして取り組まれている事は存知あげておりますが,こういった番組を通じて社会にその認識が早く広まると良いと思いこの場に投稿させていただきました.

   
Re:ガンに負けない心を持つために
村上 (広島県) 2010/08/09
橋本様
素晴らしいご意見有り難うございました。
今回の投稿の内容と少し異なるコメントですが,私は「がんに負けない」という言葉があまり好きではありません。
病気にかかってもこれまでと変わらぬ日常生活を送るように気持ちの持ち方を考える,という意味で使うのであれば「負けない」という言葉も良いかもしれません。
ただ「負けない」という言葉が,治療の場面で出てくるのは私個人は好きではありません。
がんの治療を,勝ち負けで論ずるのは,治療を受ける患者さんに対して失礼な気がしています。

皆さんどの様にお考えでしょうか?
Re:ガンに負けない心を持つために
上野 直人(海外在住) 2010/08/09
癌には負けるかは負けないかの心は、治療だけでなく人間力で、今の日本の癌治療は勝つことにフォーカスがありすぎですね。
本当は克つことがもっと大切だと思います。
Re:ガンに負けない心を持つために
悦子(神奈川県) 2010/08/09
「癌に勝つ負ける」というのは、戦う気持ちがあるから。戦っている間は苦しいんです。最初は、何とかしたいと思って戦うんです。でも、治らないという事がわかる(治ることもあるが)。それを容認して癌と共に生きるということを、どこかのタイミングで理解し受け入れる。それがない限り、心の安定は訪れないと思います。どこかのタイミングで気持ちを切り替えられたら、それが大前提で暮らしていける。切り替えられないから苦しいし、戦おうと負けまいとするんです。
受け入れる事…でも、そこまで行きつくのが大変なんですよね。
泣く時はとことん泣く、嘆く時はとことん嘆く。感情をため込まずに吐ききったら、ひとつずつ前に進めると思います。癌に負けない心を持つためには、と頭で考えてどうにかしようとするのではなく、自分の感情としっかり向き合う事。そんな気がします。
「戦わない」って、あきらめる事とは違います。
一足飛びには心の安定までは到達しません。ひとつずつでいいんです。そしてある時、フッと気づくんです。「あっ、私、癌と戦ってない!」って。。。そんな私は、ステージ4の肺癌と共に暮らし、3年が経ちました。
Re:ガンに負けない心を持つために
佐藤由美子(愛知県) 2010/08/09
悦子さんのご意見に同感です。

うまく言えませんが、がんだけでなく、完治が難しい病気はたくさんあります。
闘うことを否定するつもりはありませんが、
共存することも考慮に入れた方が、きっと豊かな人生を送れる気がします。

がんであっても、笑顔で生活を送れることの方が、
難しいけれど、大切なことだと考えています。

それが、「がんに負けない」ということかもしれませんね。

そのためには、スピリチュアルケアカウンセラーさんの役割は非常に重要だと考えています。
Re:ガンに負けない心を持つために
前田由紀(東京都) 2010/08/14
癌に負けない心…負けない、が引っ掛かる。心に対しての言葉ではありますが、そんなに強くなくても良いかな。例えば、タイトルは「癌患者の心を支えたい。(スピリチュアルカウンセラーを目指して)」なんて如何でしょう。。。
癌治療をされている方に「負けない」という言葉は辛いかもしれませんね。身体も心も大変な状況下で、色々な究極の選択をしなければならない事が多く、精神的に辛い、苦しい、が本音ではないかと思います。そうだからといって決して負けている訳ではありません。あたりまえな心の動きだと思います。

辛い、苦しい状況を変えることは難しいけれど、寄り添い見守る。精神的な助けが欲しい時に安心して打ち明けられる。そんな関係が欲しいですね。

題名はさておき…
番組内容は、今まで置き去りにされてきた癌患者の心をサポートしようというカウンセラー養成があることを知り、心強く思いました。癌を患い、激しい流れの中で木の葉のように揺れ動く患者の心を支える。。。大変な事です。
癌患者の心のケアをしようと立ちあがった方々に、エールを送りたいです。
Re:ガンに負けない心を持つために
橋本 浩伸(東京都) 2010/08/14
なかなか返信をかけず恐縮です。
みなさんのご意見は大変参考になりました。

この掲示板の書き込みを通じていろいろ方にいろいろな思いを書きこんでいただけることで、番組内容とは違った思いを感じることができることはとても大切なことだと思います。

財団法人 民間放送教育協会のホームぺージでこの番組の取材後記を読んでディレクターの方の迷いを知り、みなさんのお考えを聞くことで、まだまだ考えが浅かったと気付きました。

私は薬剤師ですので日常のすべてをスピリチュアルケアに傾けることはできません。薬剤師には不要ということではなく、日本にもそういった専門職が誕生しつつあることもあり、私たちはスピリチュアルケアの基本的な部分を学びつつ、専門職の方と協働していける医療環境を作ることができればと思います。

いつもなら医療関係者向けの掲示板に書くところを敢えて一般の方の掲示板書かせていただいたのには、医療者、患者、家族など関係なく広く意見をいただければと考えたためです。

ですので、まだまだみなさんのお考えをお聞かせいただければと考えております。よろしくお願いします。

番組を見逃した方は「番組動画配信」(http://www.minkyo.or.jp/12/)に載れば、ご覧
になれますが現在のところ載っていないようです。
Re:ガンに負けない心を持つために
榎本悦子(神奈川県) 2010/08/15
コメントを書かせて頂きました悦子です。
癌を告知されてから、色々な感情を体験し、向き合っているうちに「自分のこの体験を役立たせたい」気持ちになり、そのビジョンとして、今病気と向き合おうとしている方々の心のサポートができれば、と考えていました。それを自分の仕事とすることも、自分自身の生きる希望になるのです。スピリチュアルケアカウンセラーという職種が、日本でも広まりつつあることを、今回知ることができ、私のビジョンそのものです。
講座があるのですか?どうやったらカウンセラーになれるのか、等等、スピリチュアルカウンセラーについて、もっと詳しく知りたいです。教えてください。
Re:ガンに負けない心を持つために
前田由紀(東京都) 2010/08/15
 悦子さんの志に心動かされるものを感じました。
スピリチュアルカウンセラーについての情報ですが、テレビ朝日による公式サイト「人間力」のなかに今回のTV放送の内容と問合せ先が記載されています。(スピリチュアルカウンセラーのことについて教えて頂けると思います。)
スピリチュアルカウンセラーはまだ数が少なく、養成しているところも少ないと思います。
悦子さん、出演されていた山地さん、山地さんのカウンセリングを受けていた松本さん。自らも病気を抱えながら同じ病気の方を支えようとする。自らが感じてきた痛みがあるからこそ、癌患者のより深い心の苦しさを感じてあげられる。。。そんな風に思います。言葉には言い表せないほどの思いを感じます。
この放送を機会に、もっと癌患者の心をサポートするシステムが広がっていくことを願っています。

Re:ガンに負けない心を持つために
井沢 (京都府) 2010/08/15
皆様のコメントに感銘を受けながら読ませていただきました。
がんに限らず、難治性の病気を患っておられる方の苦悩ははかり知れません。
最近、私も身体だけでない心の痛みについてよく考えます。
それは医療者だけでなく、家族や、社会全体でも、そのことについて注目し、ケアの必要性について考えていくことが大事なのではと思います。

スピリチュアルカウンセラーという専門職の方たちが活躍され、広くその必要性が認知されることを願います。同時に看護師であっても、ソーシャルワーカーであっても、薬剤師であっても、心の痛みを聴くことから、やれることからはじめていくことも大切と思いました。
Re:ガンに負けない心を持つために
伊藤高章(大阪府) 2010/08/15
テレビで紹介された山地さんが履修していた、高知県がん患者会の「心のケア支援相談員」養成プログラムの指導を担当していた、伊藤高章です。

高知の養成プログラムは、日本医療政策機構市民医療協議会「がん政策情報センター」が後援しています。地域におけるがんケアの試みを支援し、必要が確認されれば全国展開を目指す企画と聞いています。他の地域でも同様な人材養成が行われるよう、同センタ―にお声をお寄せ下さい。
http://ganseisaku.net/impact/gan_coproduction/2010/osaka/osaka.html

日本の医療における心のケアについては
上野 玲 『ルポ がんの時代 心のケア』(岩波書店、2010)が良い本だと思います。

スピリチュアルケアの人材養成には世界基準があります。その基準をにらみながら日本で実施されているプログラムについて詳しく記した本が、9月上旬に出版されます。
窪寺俊之 他編『スピリチュアルケアを語る 第三集 ― 臨床的教育法の試み』(関西学院大学出版会、2010)

日本におけるスピリチュアルケアの専門的な教育については「日本スピリチュアルケア学会」が、専門職資格認定について準備中です。これに伴い、現在いろいろなところで行われている諸研修の質の保証が、徐々に進むことと思われます。学会のホームページは下記:
http://www.spiritual-care.jp/

卑見の及ぶ限りで、現在行われているスピリチュアルケア人材養成について紹介します。

1)本格的なプログラムは、上智大学グリーフケア研究所が大阪で実施している三年課程の人材養成講座です。毎週授業があるため、関西圏外の方には履修は難しいかもしれません。
http://www.sophia.ac.jp/jpn/admissions/griefcare

2)ご自分のペースでの学習には、「臨床パストラル教育研究センター」のプログラムがあります。宗教的(カトリック)色彩の強いプログラムですが、内容は、布教を目指さない病者のケアです。
http://pastoralcare.jp/

3)医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー、臨床心理士、宗教者など、既に対人援助の臨床にいらっしゃる方のためのプログラムとしては、「臨床スピリチュアルケア協会」が年2回(8月と3月)実施する専門職養成プログラムがあります。一週間の集中プログラムです。プログラムについてはメールでお問い合わせ下さい。
http://www.pasch.jp
E-mail: office@pasch.jp

多くの方が関心をもっていただき、様々な働きをとおして、がん医療におけるスピリチュアルケアが日本の医療に当然なものとなって行けることを願っています。
Re:ガンに負けない心を持つために
榎本悦子(神奈川県) 2010/08/15
榎本悦子です。皆様の優しさに涙がとまりません。感謝の気持ちでいっぱいです。子供の頃から、突発性血小板減少性紫斑病、膠原病SLE,そして肺癌と、これでもかと言うくらい打ちのめされてきました。でも、自分に起こる様々なことの意味を理解できた今、皆様の優しさを、感謝して受け取ります。
私は神奈川県民なので、関西四国方面に赴く事はできません。
上智大学の講座のように素晴らしい講座が、東京でもあると良いのですが…
治療と両立できるようこちらで受講できる講座を、皆様が教えてくださった情報をもとに探します!!ありがとうございます。
私は、このスピリチュアルカウンセラーという職種を確立してほしいと思います。働いて収入を得られるという事は、病気を持つ自分自身の心の支えや励みにもなります。だから、うまく言えませんが、そういう働き方がしたいのです。
また何か情報がありましたら、これからも教えて下さい。よろしくお願いします。

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