掲示板「チームオンコロジー」

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治療とその選択
術前化学療法後のセンチネルリンパ節生検について
がじゅまる (千葉県) 2010/08/25
術前化学療法「後」のセンチネルリンパ節生検について、現在どのように検証されているか
というご意見を頂戴したく投稿させていただきます。よろしくお願いいたします。

わたくしは、40歳既婚、子供なし、会社員です。
2月末に生検を行い、左乳房:C寄りのD領域 1.5~1.8cmの乳管がん、ステージI、
ER80%・PgR70%・HER2(3+)という病理診断を受けております。
4月よりAC4クール、今週末パクリタキセルの4クール目を受け、来月初めにCT撮影、
9/末以降に全摘手術を受ける予定です。
しこりは、随分小さく形もあいまいになってきましたが、まだ存在は確認できます。

治療中に、「術前化学療法を行うことにより、手術時に腋窩リンパ節転移の個数が
減少する可能性があるので、もともとの転移個数がわからなくなる。
この場合には、たとえ転移が認められなくても、腋窩リンパ節郭清しなくて良いという
科学的根拠はまだ確立されておらず、腋窩リンパ節郭清を行うのが一般的である。」
という情報を得ています。

術前を希望した際、主治医からは「センチネルリンパ節生検を先に」というお話しは
ありませんでした。これまでも、リンパが腫れるという自覚症状はありませんでしたし、
当時はまだ知識がなかったために、「先にセンチネルリンパ節生検を行わないのでしょうか?」と
お尋ねすることもできなかったことが、今となっては悔やまれます。

術前化学療法前にセンチネルリンパ節生検を受けなかった場合、
術中のセンチネルリンパ節生検は適用外となり、腋窩リンパ節郭清はまぬがれないのでしょうか。


   
Re:術前化学療法後のセンチネルリンパ節生検について
津川浩一郎(東京都) 2010/08/25
 術前化学療法後のセンチネルリンパ節生検の適応と腋窩リンパ節郭清の省略に関しては専門家でも意見の分かれるところです。術前化学療法後のセンチネルリンパ節生検は、同定率が低い(センチネルリンパ節が見つけにくい)、偽陰性が多い(センチネルリンパ節に転移が無いのに他のリンパ節に転移がある。すなわち腋窩郭清をしないと転移リンパ節を取り残す危険がある)という問題点を指摘する研究者もいます。
 現在のコンセンサスとしては、「術前化学療法前に腋窩リンパ節が腫れていなかった(画像診断も含め臨床的にリンパ節転移が疑われていなかった)場合には、センチネルリンパ節生検を行って郭清を省略することは可能」(これも時期尚早という意見もありますが)、一方、「術前化学療法前に腋窩リンパ節が腫れていて転移が疑われていた場合(細胞診などで転移が証明されていた場合)、化学療法の効果でリンパ節が小さくなっても郭清をした方が良い(センチネルリンパ節生検を行って郭清を省略するのは研究的、実験的)」というところだろうと思います。
 最近、センチネルリンパ節に転移があった場合でも郭清してもしなくても予後に差は無い、という報告が出ましたが、センチネルリンパ節転移の個数が3個以下、元々5cm以下の腫瘤、術後の薬物療法を行う、乳房温存療法の症例で全乳房に放射線治療を行う、などの条件がついた場合のことです。
 また、術前化学療法前のセンチネルリンパ節生検にもいろいろ意見があります。診断は正確に行えますが、転移があった場合、術前化学療法後の手術の際には、原発巣がかなり小さくなった場合でも一般的には郭清を行います。郭清を省略できる人もその中にはいらっしゃるのではと考えますが、まだその患者さんを選定する方法が確立されていません。微小転移ならよいのではないか、などいろんな研究がありますが、確定していません。
 以上、長くなりましたが、化学療法を行う前のリンパ節の評価(画像診断も含めて)を確認して、担当の先生とご相談なされたらよろしいかと思います。
Re:術前化学療法後のセンチネルリンパ節生検について
がじゅまる (千葉県) 2010/08/28
津川先生

すぐにコメントをいただきましたのに、書き込みが遅くなりまして申し訳ございません。
大変わかりやすくご説明頂きまして、よく理解でき、現在の状況を真摯に受け止めることが
できました。
センチネルリンパ節生検については、まだ有効な判断材料を模索中というような段階なのですね。
手術してみないと断定できないこと、手術しても断定できないことがあるというのが、今の現実なのですね。

27日、主治医の先生とお話いたしました。私の状況については、
「術前化学療法前の画像診断などから、おそらくリンパ節転移はないと思われます。
センチネルリンパ節生検は、化学療法後であっても、手術中に検査を行い、それにより
慎重に判断して腋窩リンパ節郭清を判断します。」とのことでした。

不安や後悔を残さないためには、その時にできる有効な治療を確実に行っていくことが大切
なのですね。自分という状況をしっかり見つめ、主治医の先生とご相談のうえ、手術とその後の
治療を進めて行こうと思います。

また、再建については、来週横浜の先生にお話を伺ってくる予定です。

たくさんのアドバイスを頂きまして、本当にありがとうございました!

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