掲示板「チームオンコロジー」

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治療とその選択
トリプルネガティブ乳癌の再発防止のための治療について
MT(海外在住) 2010/12/13
初めまして。

私は、2004年に最初に乳癌と診断され、その後、手術、化学療法、放射線治療と、一連の治療を受けました。

そして先月、同じタイプのガン、トリプルネガティブ乳癌が、反対側の乳房に再発しました。

手術をしたところ、ガンのサイズが2.6cmだったので、ステージIIAと診断されました。リンパへの転移は、幸いありませんでした。現在44歳、独身です。

前回の乳癌治療の際、アドレアマイシン、タクソールともう一つの化学療法剤を受けており、同じ薬を使うことは出来ないと、化学療法の担当医から知らされました。他の化学療法の薬は、前回使用した薬よりも効果が少ないと聞いています。

一度目の癌は1.5cmと1cmと2つの腫瘍でした。それでも化学療法を受けました。化学療法は、乳房以外の部分に、もしかしたら広がっているかもしれない微小ながん細胞を攻撃するために行う必要があると理解しています。それでも癌は、反対側の乳房に再発しました。二度目の癌のサイズが2.6cmだったことから、もう一度化学療法をする必要があるといわれましたが、私の癌のタイプ、化学療法を受けたにも係わらず、6年目にして2.6cmの癌が見つかったことを考えると、化学療法の必要性をそんなに感じません。Quality of Life を考えても、もう一度化学療法を受けたいとは思いません。最初の化学療法によって、他の臓器への転移を防ぐことが出来たのでしょうか?トリプルネガティブ乳癌は、最近の研究によって、若年齢の女性に多く、再発の可能性が高いと理解しています。

話がそれてしまいましたが、一番の質問は、日本でステージ2、トリプルネガティブ乳癌に対するPARP INHIBITORに対する治験が行われているかどうかです。

私は現在ハワイ在住です。ハワイでは、この治験が行われておらず、他の州での治験を、化学療法の医師から勧められました。日本で治験を受けられるなら、他の州へ行くよりも、日本で試験に参加したいと考えています。私をサポートしてくれる家族は日本におりますので、日本での治験参加が理想と考えているのですが…。

長い質問になってしまいましたが、もしどなたか末期ではないトリプルネガティブ乳癌の再発予防に関する治療についてご存知でしたら、お知らせ下さいませ。

宜しくお願い致します。

   
Re:トリプルネガティブ乳癌の再発防止のための治療について
向原徹(兵庫県) 2010/12/13
はじめまして、神戸大学病院の向原と申します。

まず、診断についてですが、今回反対側の乳房に新たな病気がでてきたとのことで、二つの可能性があると思います。①全く新しい乳がん、②前回の乳がんの転移再発。
治療の目標、つまり治してしまえるのか、治すことは難しいのか、ということを考える場合、①はもちろん治せる可能性が十分あります。②の場合、理論上がん細胞が一度全身を血管を通じて巡回していることになりますので、今は見える病気がなくてもいずれはどこかに出てきてしまう可能性が高い、つまり治すのは難しいということになります。
今回も前回もトリプルネガティブということで、①と②を見分けるのはとても難しいと思います。もちろん、両者の組織標本を顕微鏡で見比べたり、臨床像からある程度察しをつけるのですが、それでもどちらなのかどうしても分からないこともあります。その場合は、目標を治癒における方、つまり①と考えて治療にあたるのが通常だと思います。治せるがんを、治せないと判断するのは、患者さんにとってデメリットが大きいからです。

という観点でいうと、①、②の鑑別がつかない場合は、①と考えて治すための最良の方法を考えることになります。トリプルネガティブで、がんの大きさが2.6cm、それからご年齢のことを考えると、主治医がおっしゃるように化学療法を考えたいところです。

そこで難しい問題ですが、ではどの化学療法をするかということになります。これに関しては、答えはないと思います。
つまり、今のがんが新しいがんだとしても、a)前の化学療法をしていた時期にすでにミクロのレベルで存在しており、それに生き残ってきたものが発病したのか、あるいはb)前の化学療法が終了後、全く新しくでてきた、のか分からないからです。6年という年月は、どちらともとれるので、より一層判断は難しくなります。
a)と考えれば、同じ系統のお薬(アドリアマイシン、タキソールとその類縁の薬)をするのは憚られますし、b)だとすれば、同じ薬をするのも妥当だと思います。(アドリアマイシンは総投与量[前回の積算]が多くなると心臓の機能に影響するので注意が必要です)。

いろいろ書きましたが、確実なエビデンスがない部分なので、ご自身を含めた医療チームでコンセンサスをとっていくしかないと思います。アドリアマイシン、タキソールの系統のお薬を再度トライするのか、あるいは他のお薬、例えばトリプルネガティブに効果が示唆されているプラチナ製剤なんかも考えるのか、そこは話し合いの上決めていくしかないと思います。

長くなりましたが、PARP阻害薬ですが、日本でも治験がいくつかされていると思いますが、ご自身のように、今明らかに身体の中に目に見える腫瘍がないような患者さまを対象にした試験はないと思います。

どうか、よいお話合いを主治医を含めたチームと持たれて、納得して治療にあたられることをお祈りします。
Re:トリプルネガティブ乳癌の再発防止のための治療について
MT(海外在住) 2010/12/13
向原様

早速のコメントを頂き、ありがとうございました。

私のオンコロジストは、PARP阻害剤がトリプルネガティブ乳癌に有効であるということ、治験が行われていることは知っていましたが、手術で腫瘍を摘出してしまった患者に対しての再発予防のための治験が行われているかどうかは知りませんでしたので、大変参考になりました。

プラチナ…については、医師からは、何の示唆もありませんでしたので、次回の医師訪問の際に尋ねてみます。

医師と私との間に、治療に対する姿勢の違いが多少有りますので、時間を掛けて最善の方法を考えたいと思います。

貴重なお話、本当にありがとうございました。
Re:トリプルネガティブ乳癌の再発防止のための治療について
向原徹(兵庫県) 2010/12/14
MT様

そうですね。いろいろ相談されるのがよいと思います。
プラチナ製剤については、ひとつの考え方だとは思いますが、医師によってもかなり意見が分かれるところだと思います。
手術後の補助療法として、特にトリプルネガティブ乳がんにはデータが乏しいからです。
日本でもカルボプラチンやシスプラチンとよばれるプラチナ製剤は乳がんに保険適応はありませんので、私自身は日本では提案しませんが、米国では少し事情がことなるかもしれませんので言及させていただきました。

ご参考になれば幸いです。

向原
Re:トリプルネガティブ乳癌の再発防止のための治療について
MT(海外在住) 2010/12/16
向原様

たびたびご意見頂きまして、ありがとうございます。

昨日、CTとBoneScanを受けました。明日オンコロジストとのアポイントメントがあり、その際に、上記の検査の結果と、彼女の考える最善策、私の考える最善策を話し合う予定です。おそらく、何らかの化学療法を受けなければならないとは思いますが、出来るだけ副作用が少なくて有効な治療法が、医師と私の意見の妥協点にあればと思っています。

ポジティブ思考な私ですが、全身の毛と味覚を失い、それでも嗅覚は普段よりも鋭くなったため、普段気にならない匂いで嘔吐し、口内炎が口から胃腸まで続くような痛み、微熱、手足の痺れ、便秘等、それはそれは酷く辛い副作用を経験しましたので、それをもう一度経験すると思うと、心が重いです。

…こんな弱音を吐いたところで、治療方法が見つかるわけではないので、何とか最善の治療方法を考えたいと思います。

オンコロジストとの話し合い後に質問がありましたら、またコメントさせていただきます。

ありがとうございました。

MT

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