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治療とその選択
皮下乳腺全摘+同時再建後の放射線治療は可能か
のばら (東京都) 2011/02/06
はじめて投稿いたします。
のばらと申します。
先月のそらさんの質問とその返答を読ませていただきました。
少し重複する部分もありますが、状況が少し違っていますので、お返事いただければ幸いです。

私は昨年11月に区のマンモグラフィから乳がんがわかり、
12月13日に皮下乳腺全摘とティッシュエキスパンダー挿入の同時再建手術をしました。
その術式を選んだ理由は、術前の針生検の病理結果では、非浸潤がんの疑いということであったということと、その後のMRIの画像から、非浸潤部分に広がりがあるかもしれないため、当初の予定より、大きく切除することになるかもしれないという説明を受けたためです。
私は、胸が小さいため、温存手術で部分切除といっても、(腫瘍部分は1・3センチと診断されていました)範囲を広げて大きく切除したら、変形が大きく温存する意味がないのではないかと思いました。
その疑問を主治医にぶつけたところ、「温存が可能です。でも、最大4分の1近く切除する可能性はある」とのことでした。
胸を残すことに大きなこだわりもなかったため、全摘してほしいと希望しました。その後皮下乳腺全摘+同時再建という方法を知り、その術式で、手術可能かどうか尋ねました。同じ病院内に形成外科もあり、実績もあるということでしたので、お願いしました。

皮下乳腺全摘という術式が歴史が浅く、実例も多くないというのは承知していましたが、非浸潤がんだし転移の可能性も少ないからという気持ちもありました。
ところが、術後の病理結果が、浸潤に変わってしまったのです。
乳頭腺管型の浸潤性乳管癌。センチネルリンパ節生検は陰性で、リンパ郭清はしていません。
腫瘍の大きさは最大部分で1.5センチ。
NGは1 核異型度も1 PGR、ERとも+で、HER2は0です。
その後オンコタイプDXの検査もしていただきました。スコアは10で、タモキシフェンを5年服用後の再発リスクは7パーセントという結果でした。

再発リスクは低いということで、抗がん剤治療はなし。
ホルモン治療をタモキシフェン5年はすすめられ、リュープリンはどちらでもいいといわれましたが、後でやめることも了解いただき、とりあえず併用で行うことにしました。

そこで、気になってきたのは、皮下乳腺全摘といっても、1割以上の乳腺は残っていて、非浸潤癌ではなく、浸潤癌である場合に、放射線治療はしなくていいのか?という疑問です。
そこは、非浸潤癌だろうといわれているときから、ひっかかりを感じていて、なんどか主治医にも尋ねましたが、皮下乳腺全摘の場合は、放射線治療はしないのが標準治療との回答でした。
私の場合、同時再建もしていますが、形成外科の医師によると、放射線治療もやろうと思ってできなくはないよとのこと。
4月にはエキスパンダーをシリコンに入れ替え予定です。
初歩的な質問で恐縮ですが、放射線治療後にインプラントを用いた再建は困難というのは承知していますが、インプラント入れ替え後に、放射線治療というのは不可能なのでしょうか?

   
Re:皮下乳腺全摘+同時再建後の放射線治療は可能か
中川 智恵(東京都) 2011/02/07
のばら様

初めまして。都内で乳腺外科医&病理研修をしている中川です。
ご投稿ありがとうございます。

手術前の画像による診断では、非浸潤性の乳癌であったのに、手術して詳しく調べてみたら実は浸潤癌であった。
このような、経験は患者さんを拝見しているとしばし遭遇します。術前診断の限界と言わざるを得ないところも残念ながらある現状ですが、患者さんにとってのショックはいかばかりかと感じます。
病理医、画像診断医と常に協力をして、術前に十分な診断が行えるよう努力を重ねたいと思っています。

少し確認したいのですが、乳腺が1割以上残っているというのは、どういったことを意味しておりますでしょうか?
腫瘍があった場所周囲の乳腺を残してきたことが明らかであるということでしょうか?

現在、温存療法に対する照射は全乳房照射が標準治療です。つまり、残してきた乳腺には全て放射線をあてる。これは、浸潤癌の時も、非浸潤癌の時も一緒です。それによって、温存乳房再発は減らすことができます。実は、ある文献では、温存乳房に再発をする場合、その70%はもともと腫瘍のあった近くに起こるという報告があります。腫瘍から遠い場所の乳腺に出てくる場合は、反対側の乳腺に出てくるのと同じ比率。つまり、腫瘍と遠い乳腺に放射線をあてることがどこまで意味があるかは不明ではないかということです。じゃあ遠いところの乳腺にはあてなくていいかというとそれをはっきり大丈夫と証明するデータがないんです。だから、分からないうちは遠いところも含め残った全ての乳腺に照射をしておこうという考え方です。

インプラント後の照射に関してもたくさん文献があります。インプラントの委縮などの障害が発生している報告もあれば、一方重篤な障害はなかったとする報告もあります。そして、ここでも同じ理屈で、意見が分かれるのだったら万が一を考えてインプラント後の照射は積極的に勧めない、というのが日本の標準治療です。

のばらさんのご質問にお答えするとしたら、絶対に不可能というわけではないですが、上記の理由で積極的には勧められてはいないということだと思います。ただ、私も専門家ではありませんので、最終的には必ず放射線治療医の意見を聞くようにされて下さい。

おそらく主治医の先生は、のばらさんの乳癌の状況や病理の結果、インプラント後に照射を行うことのリスク、文献からのデータなどを全て考慮して、治療方針を決めて下さっているのではないかと思います。美容的な問題ももちろん大事ですが、乳癌をしっかり治すことが何よりも最優先事項です。本当に必要な状況であれば、一度入れたインプラントを抜いて治療するという提言もされると思います。標準治療でないからと言って、インプラントを抜いてまで照射する意味がのばらさんにとってどこまであるか、逆にのばらさんの負担が増えないかといったことまで、きっと考えて下さっていると思います。
コミュニケーションというのはいつも難しい課題ではありますが。

のばらさんの心配が少しでも晴れて、納得された治療を受けられることを心より祈っております。



Re:皮下乳腺全摘+同時再建後の放射線治療は可能か
のばら (東京都) 2011/02/07
中川様

早速のお返事ありがとうございます。
なぜ、再建する胸に照射が勧められないのか、少し理解ができました。

>少し確認したいのですが、乳腺が1割以上残っているというのは、どういったことを意味しておりますでしょうか?
腫瘍があった場所周囲の乳腺を残してきたことが明らかであるということでしょうか?

上記の質問ですが、腫瘍のあった場所の乳腺を残してきたことが明らかであるという意味ではありません。主治医は取れる限り全部取ってくださって、乳輪の裏側もぎりぎりまで取ったから術後壊死を心配されてました。
昨日、本を読んでいるときに、皮下乳腺全摘では一般的に10%から15%は乳腺が残るという記述を見て、そんなに残るものかと心配になった次第です。
その本の記載には、「温存できないから皮下乳腺全摘をしているのに、放射線照射をしないなら局所再発が起こる確率はかなり上がるでしょう」とありました。
私の場合は、温存ができなかったわけではなく、自分の希望で皮下乳腺全摘をしたわけですが、今となっては、主治医の言うとおり、温存で術中の断端の陽性か否かを見つつ、全摘も含めて、切除範囲を決めようという意見にしたがっていればと、悔やんでおります。
まあ、終わったことを悔やんでも仕方がありませんので、今の状況でできることを考えていこうと思っています。

今回放射線を照射せずに、局所再発が起これば、その時に、追加で切除し、さらに放射線という選択もできますし。

乳腺の主治医と形成外科の主治医にも、もう一度不安を話してみて決めたいと思います。

ありがとうございます。

Re:皮下乳腺全摘+同時再建後の放射線治療は可能か
のばら (東京都) 2011/02/19
中川様

先日はお返事ありがとうございました。
一昨日、乳腺の主治医の形成の主治医を受診してまいりました。
腫瘍から切除断端までの距離は3センチあるそうです。
また、ほとんど乳腺は残っていない、薄い皮膚のみ残しているから大丈夫とのこと。脈管侵襲、リンパ管侵襲もないことから放射線は不要ということで、納得しました。

ご相談に乗っていただきありがとうございました。

主治医にあれこれ聞きましたが、やはり少し不快だったらしく「僕を信用してもらうしかないんですよ。取りきったと信じてもらうしかない」と言われました。
私は、取りきったことは全く心配などしていなくて、目には見えない誰にも見ることのできない微細ながん細胞に放射線でとどめをさせたらいいなと思っているだけなんですが、本当にコミュニケーションは難しいなと感じました。
医師には取りきったかどうかを、疑っていると思われたようで、それが少しショックでした。
外科医にとっては、取りきったかどうかが大きな問題なんだなあということが、よくわかりました。
これから長いお付き合いになりますし、少しずつ良い関係をきづいていけたらなあと、思っています。

治療方針も決まりましたので、すっきりしました。
ありがとうございました。
Re:皮下乳腺全摘+同時再建後の放射線治療は可能か
中川 智恵(東京都) 2011/02/21
のばら 様

ひとまず、主治医とご相談され、今後の方針にご納得いかれたとのこと、ほっと致しました。

ご投稿の内容から察するに、きっと、主治医にお聞きになるのも勇気がいったことだったでしょうし、医師と患者様間での想いのすれ違いにショックを受けられたということに関しては、医療者の立場からも胸が痛みます。

医療者がいかに患者さんの立場にたった物の見方、考え方ができるか、それを踏まえて患者さんの要望に合った満足、安心を与えるコミュニケーションがとれるかが重要なんだと改めて痛感しました。それから、患者様の立場からも医療者と少しずつでも前向きに信頼関係を築いていって下さろうとする、そんなのばらさんのご姿勢にとても救われた気が致しました。

今後も、陰ながら応援させて頂いております。
ご報告どうもありがとうございました。

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