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治療とその選択
DCISの放射線治療(省略の可否)について
まいっち (福岡県) 2011/02/22
非浸潤乳管癌(0期・8mm)と診断され,先日,乳房温存手術を受けました。

日本乳癌学会のガイドラインやインターネットなどでの情報では「乳房温存手術後には放射線照射が大原則」のようです。
また,放射線照射をした方が再発率を抑えるとのデータもたくさんあるようです。
私も主治医から今後は放射線治療を受けるとの説明を受けています(なお,ER,PgRは共に陽性でしたが,ホルモン療法はしなくてもよいそうです)。

ところが,がん治療の最先端の病院と言われている癌研有明病院の乳がん治療のパンフレットhttp://www.jfcr.or.jp/press_release/item/breastcancer_0907.pdf
の5頁,6頁,45頁~47頁には「DCISの場合,きちんと取り除くことができれば薬を使わず99%治すことができ,完全に癌が取り切れたと判断されれば放射線照射は行わない」旨記載されています。

また,名古屋医療センターの佐藤康幸先生や丸茂病院の小川弘俊先生はポリゴン法という病理検索方法で断端陰性が確保できれば放射線治療を省略している(佐藤先生の場合,局所再発率=1.47%)との情報がありました。
http://www.byoin.ne.jp/pc/modules/doctor/search.php?HypEncHint=%A4%D7&hypenchint=%A4%D7&title=1&hypenchint=%A4%D7&query=%BA%B4%C6%A3%B9%AF&action=results

http://www.byoin.ne.jp/pc/modules/doctor/singlelink.php?lid=612

http://www.breast.cancer-nagoya.name/wp/

これらの放射線照射を省略するという方法は,温存後の放射線照射が局所再発率を1/2~1/3に低下させるというデータに反するようにも思われるのですが,どうして放射線照射の省略が可能なのでしょうか?
また,どのような場合に省略が可能で,どのようなメリットがあるのでしょうか?

放射線照射をしなくてもよいのであれば,放射線の副作用などが避けられるので,それに越したことはないと思うのですが,いかがでしょうか?

放射線治療の副作用について説明を受けたこともあって,上記病院の患者さんがうらやましくも思えます。

こちらであれば教えていただけるかもしれないと思い,投稿させていただきました。
先生方よろしくお願いします。

追記
こちらにも省略しているというお話が載っていました(2頁)。
http://www.jccnb.net/06archive/image_archive/drbocker.pdf


   
Re:DCISの放射線治療(省略の可否)について
Dr NO(東京都) 2011/02/24
 あくまで一般論としてお話させていただきます。
 癌研有明病院では従来から乳房温存手術においては、手術切除標本を5mm間隔で全割し、切除断端5mm以内に癌がなければ断端陰性と評価し、術後放射線治療は行わない、という方針をとっています。逆に5mm以内に癌があった場合は放射線治療を行っています。
 DCISに関しては、北米で行われたNSABP B-17、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドで行われた臨床試験から、生存率には影響を与えないが、局所再発率は放射線治療を行わなかった症例で有意に高い。局所再発した場合は半数が浸潤がんになっていた。また、放射線治療を行わなくてよいサブグループを特定できなかった。ということで、EBMに基づいたガイドラインでは放射線治療を行うことが推奨されています。
 一方、DCISの場合、断端の状態、DCISのgrade、病変の広がり、年齢、などから、VNPI(Vun Nuy Prognostic Index) Score という基準を作成し、手術、放射線治療の適応を決めている南カリフォルニア大学のグループもあります。したがって、アメリカでも必ずしも全例に放射線治療が行われているわけではないようです。
 断端の評価、DCISのgrade、病変の広がり、などの病理結果を再確認され、担当医とご相談されることをお勧めします。
Re:DCISの放射線治療(省略の可否)について
まいっち(福岡県) 2011/02/26
Dr. NO先生へ

お忙しい中,ご丁寧な回答をどうもありがとうございました。
その後,いろいろ調べてみたりしたのですが,再度お尋ねさせていただきます。

南カリフォルニア大学のグループ(シルバースタイン)の非浸潤癌(乳癌)の治療指針では「細胞核異型度や年齢などの要素を点数化して治療方針を決定している」とありました。
http://www.jccnb.net/info/images/vnpi.pdf

また,NCCN ガイドライン2011 年第2 版(8頁)には
http://www.jccnb.net/guideline/images/gl_2011_2.pdf
「触知腫瘤,サイズが大きい,悪性度が高い,切除断端に近接または断端を含む,患者年齢が50 歳未満などである。患者および医師が,患者の再発リスクは「低い」と考える場合,一部の患者では治療が摘出手術のみとなる場合もある。」とありました。

癌研有明病院では,DCISのgradeや年齢などの要素は考慮せずに断端陰性であれば放射線照射を省略しているということでしょうか?
放射線を省略した患者さんのその後のデータなどは公表されていないのでしょうか?
(パンフレットに書かれているように99%治っているものと理解してよいのでしょうか?)


私の場合,主治医の先生からは「DCISだからグレード(異型度)やHer2は病理では調べていません」と言われています。
また,37歳という年齢もどのようなものかと思っています。

主治医の先生は放射線は必須と考えておられるようです(手術の際に放射線の目印になるクリップを入れてありますし,放射線を省略することがあるのは,高齢で何十年も先のことを考えなくてもよい人だそうです。)。

日本トップクラスの病院や海外の一部の病院では放射線を省略していることもあり,ひょっとすると私の場合も省略可能なケースではないかと思うところもあるのですが・・・。


Re:DCISの放射線治療(省略の可否)について
Dr NO(東京都) 2011/02/28
癌研有明病院(癌研病院)から公表されているものは、私の知る限り下記の論文です。DCISに特定したものではありませんが、放射線治療を行わずに、手術後平均6.5年経過をみたデータが報告されています。
Kasumi F, Takahashi K, Nishimura S, Iijima K, Miyagi U, Tada K, Makita M, Iwase T, Oguchi M, Yamashita T, Akiyama F, Sakamoto G.
CIH-Tokyo experience with breast-conserving surgery without radiotherapy: 6.5 year follow-up results of 1462 patients.
Breast J. 2006 Sep-Oct;12(5 Suppl 2):S181-90.

 VNPI, NCCN guideline、なかなか専門家全員が同意する、「放射線治療しなくてよい」基準がない、というのが現状かと思います。担当の先生と率直に話し合われたらいかがかと思います。
Re:DCISの放射線治療(省略の可否)について
まいっち(福岡県) 2011/03/02
Dr.NO先生へ

お返事どうもありがとうございました。
また,癌研病院の論文も教えていただきありがとうございました。
(どこに行けばこの論文を読めるのかは分かりませんが・・・)

専門家全員が同意する、「放射線治療しなくてよい」基準がないというのが現状であれば,素人の私が考えても分からないのは当然だろうと思いました。

放射線を照射した方がそうでない場合よりも再発リスクが有意に下がるというデータはたくさんあるようですし,St.Gallen 2009でも
http://nyugan.info/stgallen/2009/sympo_2009.html#sympo02
「RTをDCIS切除後の標準治療と考えるかどうかについては、yesが81%と、コンセンサスが得られました。」とあるようです。

主治医の先生には一応可否を聞いてみようかとは思いますが,私が治療を受けている病院は癌研有明病院のような施設とは条件が異なっているように思いますので,やはり原則どおり放射線照射になるんじゃないかと思います。
しかし,納得をした上で治療を受けるのとそうでないのとでは気持ちの面で与える影響は大きいと思います。
このたびはお忙しい中いろいろと教えて頂きまして本当にありがとうございました。
Re:DCISの放射線治療(省略の可否)について
まいっち(福岡県) 2021/08/23
10年前にこちらで相談に乗っていただいた者です。
その後、毎年定期検診に通っておりましたが、お陰様で再発等なく無事に10年が過ぎました。

当時を振り返り10年ぶりに投稿させていただきます。
こちらでの相談後、主治医の先生に当時の癌研のデータなどを見てもらい、放射線省略の意向であることを伝えました。先生からは癌研のデータは追跡期間がこれでも短いし、これからのあなたの人生はまだ長いのだから放射線治療は必須と言われました。放射線治療無しでは将来の責任は持てない(その場合でも、もちろんしっかりと診ていきます!)とも言われました。
当時は37歳で、将来の安心も得たいという気持ちがありましたので、主治医の先生の言葉にしたがって放射線治療を受けることにしました。
治療後の皮膚の状態も時間はかかりましたが良くなり、その後は毎年定期検診を受けるだけでした。
年1回の検診は本当に怖くて検診の時期は気が滅入りました。

こちらで相談した当時は原発事故があったりと、放射線治療を本当に受けたくない気持ちで一杯で、悩んで悩んでいろいろ調べたり相談したりしていました。
そのような時にこちらで相談させていただき、ご丁寧なアドバイスをいただきましたことを今でも心から感謝しています。
結果としては、主治医の先生の信念に従うことになりましたが、それも納得してのことでしたので、ありがたく受け止めています。
私と同じような悩みに直面されておられる方も多いと思いますので、そのような方々に少しでもご参考になれば幸いに思います。
本当にありがとうございました。

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