掲示板「チームオンコロジー」

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患者と医療者のコミュニケーション
化学療法CR確認後の放射線治療
山内博貴(滋賀県) 2011/03/01
上野先生はじめ諸先生方には大変お世話になっております。
歯肉がんはおかげさまで無事手術を終え、術後の回復に努めています。

昨日、主治医から摘出組織の病理検査結果が出たと知らされました。それによるとうれしいことにがん細胞は消えていました。
NACでのPF療法が完全奏功したということです。固形がんで進行がんの場合は、抗がん剤で完全奏功得られることは少ないと思っていたので驚きました。

ただ、同時に主治医は、治療が病期T4で始まっているので、術後放射線治療は施行する予定だと言いました。
私の中では、ここまでの治療成績がよかっただけに放射線は避けてもよいのではないかという思い、ここまできたのだから完治、生存率向上のためにやれることは全部やるほうがいいのか、などすこし揺れてきました。

放射線を使うと、再発時にそのオプションはなくなってしまいます。オペも難しくなるでしょう。一方、私のがんが薬剤感受性の極めて高いことがわかったのだから、再発時の心配はさほどしなくても治療の組み立ては十分可能ともいえます。

主治医との関係は良好で、今後そのあたりは詳細に説明、相談を進めていくことになろうかと思いますが、そのさいどのようなことをポイントに進めていけばよいでしょうか。また病理医などとも話をしたほうがよいでしょうか。

   
Re:化学療法CR確認後の放射線治療
向原徹(兵庫県) 2011/03/04
山内さま

神戸大学の向原です。
無事に手術を終えられ、また化学療法の効果も非常によかったとのことで、うれしく思います。

術前に化学療法をした場合、特によく効いた場合の術後放射線療法については、大変難しい問題です。
というのは、歴史的には、すぐに手術をしたときの病理所見をもって、術後の放射線療法をどのような患者さまにすべきか、検討されてきたという経緯があるからです。
術前化学療法は比較的新しい治療戦略です。いろいろなメリットはあるのですが、手術の時の病理所見が修飾されているために、術後療法をどの強度でするのかについて、すぐに手術をされた場合よりもデータの蓄積が少ないのです。それは、乳がんなど他のがん種でも言えることです。

ただ、一般的には、そのまま手術した場合どのような病理所見だったか、ということを”想像”して、術後の治療を考えることが多いようです。つまり、リンパ節転移はもともと見当たらなかったということですが、T4ということですので、もし直接手術していたら、腫瘍の周りの正常な部分をどの程度含んでとれたか(マージンといいます)、などを化学療法前の所見から
推測して、術後の治療を考えるのが一般的のようです。ちなみに乳がんでも同じ考えだと思います。

くどいですが、将来的には病理学的CRに入ったひとは、術後の放射線はいらないよ、という時代になるのかも知れませんが、いまはそれをサポートするデータがないのが現状のようです。

ご参考にしていただければ幸いです。
Re:化学療法CR確認後の放射線治療
山内 (滋賀県) 2011/03/05
向原先生、いつも温かいコメントありがとうございます。

その後、主治医と話す機会が持て、「がんの治療は初回治療をどうするかが重要。患者が80歳ぐらい高齢ならここで終わりという選択もあるが、病期と年齢からいえば放射線をするべき対象だ」とのことでした。

今回の向原先生のコメントを拝読して、主治医、治療チームがどのような考えで治療を進めてきたか理解できたように思います。
術前化学療法自体が歴史浅く、運良くがんが消失した例ももちろん少ない。だから幸運だったからといって、治療計画の大枠をはずすようなことはしないのですね。
放射線を省略しても問題ないというデータが少ない以上は、集学的にやれることをやりきって進んで行こうと思います。

お忙しい中たいへん参考になるご意見をありがとうございました。


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