掲示板「チームオンコロジー」

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治療とその選択
米国内の治験への参加
公美子(京都府) 2007/02/22
最近は米国でも経口の新薬開発が盛んなようです。その特性を生かして、日本の患者が日本在住のまま、米国内の治験に参加することはできないのでしょうか?治療自体は入院不要でしょうし、検査結果も、日本国内に協力病院があれば、データをインターネットですぐに送る技術はあると思います。たとえ患者の渡米が必要でも、スクリーニング時に限るなど、長期・頻回でなければ、関心をもつ患者は少なくないと思います。
日本に比べて北米に患者が少ない種類の癌の場合、臨床試験を実施する側にも一定メリットがあるのではないでしょうか。具体的には、AEE788の第I相、labatinibの胆道癌第II相などを想定した投稿です。

   
Re:米国内の治験への参加
上野直人(海外在住) 2007/02/22
非常に興味深い質問を頂きありがとうございます。確かに経口剤なら日本でも臨床治験を受けられるかもしれないような気がしますね。問題は米国よりもそれぞれの
病院のIRBの対応だと思います。
例えば、アンダーソンがんセンターの病院では臨床治験を病院外でモニターする場合、まず各プロトコールによってIRBの認可が必要です。さらには、病院外の医師がプロトコールに従ってモニターすることに同意する必要があります。これは米国とか外国に関係なく同じ事です。また、データーのプライバシーの保護をどのように守るかが重要な点だと思います。
臨床試験はデーター解析できなければ非倫理的なものとして考えられます。
つまり、多くの臨床試験の場合、データーのモニターイングをどこまできちんとできるかの保証がないので、結果として、私達の病院では基本的にヒューストン以外で臨床試験を受けるのが難しくなります。
どう思われますか?
Re:米国内の治験への参加
公美子(京都府) 2007/02/23
まさしく、国際的チームオンコロジーの課題ではないでしょうか? 単独で臨床試験を実施するだけの規模も資金力も持たないけれど、臨床試験チームの一員として、正確なデータ・モニタリングを実施できる設備と技術、人材(医療従事者と、治験参加候補の患者)を有する機関(地方の大学病院など)は少なくないと思います。

家族なら(自らの社会生活を一定犠牲にすることと経済的負担を別にすれば)ヒューストンでもどこでも、患者に同伴することができるでしょう。しかし、顔なじみの主治医や看護師、折にふれ患者を見舞ってくれる友人たち、長年住み慣れた街の風景を、そっくり持ち運ぶわけにはゆきません。これらはみな、広義のチーム(サイコ)オンコロジーの重要な役割を担っていると、患者家族歴9ヶ月の私は実感しています。

compassionate useの新薬投与のために1週間家を離れることは即決した私たちですが、入院1ヶ月、プラス2ヶ月間毎日2回(朝・夕)通院(つまりホテル住まいを余儀なくされる)という、ある国内の治験への参加には、(その臨床的効果に期待しつつも)大きなためらいを感じ、患者本人にまだ話すことができていません。OS中央値が12ヶ月に満たない患者にとって、3ヶ月という時間は大変重みのあるものです。日本に比べればモビリティが高い米国内の患者さんでも、たとえばアラスカの患者さんが長期間ヒューストンに行くには、大きな決断が要ると思います。

標準的治療法が選択肢にない患者にとって、臨床試験に参加できるということは、それ自体、生きる希望につながる大きな意味があります。もちろん、実際に臨床的効果が得られる保証はありませんが、可能性があるということ、さらには、いわば「生前献体」として社会貢献できることだけでも、生きがいにつながると思います。

せっかく投与方法の点で技術革新が行われているのですから、次は、その利点を十分に生かし、治験参加者のQOLを損なうことなく、多数の治験参加候補者に開かれた臨床試験を、迅速に遂行することができる社会的制度を整備することが必要なのではないでしょうか。

日本では毎年米国の2倍近い1万5千人ほどの方が胆道癌と診断されます。そして、それとほぼ同数の方が胆道癌で亡くなってゆきます。国際的協力によって、新薬の開発がたとえ1年でも早まれば、何千人もの患者さんがその恩恵を受けることができるでしょう。知的財産の問題など、困難は多いと思いますが、諸機関の協力により臨床試験が迅速に実施され、安全で有効な薬が一刻も早くそれを必要とする患者さんの手元に届くことを切望します。
Re:米国内の治験への参加
上野直人(海外在住) 2007/02/24
将来的にどこのに住んでても臨床試験を治療のオプションに出来ると確かに良いと
思います。実際にこれは大きな研究テーマになりつつあります。

では、実際に何をするかとなるのですが、いくつかの大きな問題点が日米間をだけとってもあります。
1.病院、医師間において標準療法がばらばらである。
2.倫理委員会の実質的な運営法が違う。
3.臨床試験の実際の運営がかなり違う。同じ言葉を使用しているのですが、意味合いが違う。
4.データーの回収法また確認法が違う。

これは、私が知っている範囲内だけでもこれだけの問題があります。この違いを知っている日米の臨床試験専門家は多くないですね。そのために本格的に臨床レベルにおける医学交流が必要とされます。つまりどのようにして、真の信用構築をするかが大切だと思います。

目指す方向を作るには地道な活動が必要です。アメリカの臨床試験の整備は40年かかっています。それでも、まだ、発展途上であることを認識する必要があります。
Re:米国内の治験への参加
公美子(京都府) 2007/03/05
米国内でも、胆嚢癌患者のご友人で、私と似たようなことを考えている方がおられるのを知りました。
http://162.129.103.56/N/n.web?EP=N&URL=/MCGI/SEND1^WEBUTLTY(200,819073)/843729985
上野先生をはじめ医療従事者の方は、是非ご一読下さい。

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