掲示板「チームオンコロジー」

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治療とその選択
フェマーラ+リュープリンと骨密度
あい(大阪府) 2011/03/21
2009年6月、35歳のときに温存手術を受けました。
CYP2D6低活性型のため、自分の強い希望でフェマーラとリュープリンでその後の治療をしています。
(標準治療から外れていることは自覚しております)

先日DXA法にて骨密度を測ったのですが、
腰椎 0.940g/cm2、PR 93%、左大腿骨頸部 0.589g/cm2、PR 75%
という結果でした。

大腿骨頸部の値が低いので骨粗鬆症の治療が必要になるかもしれない、という説明を受けたのですが、
いくつか疑問に思うことが出てきましたので質問をさせてください。

1、骨転移で骨量が落ちているという可能性があるのではないか?と不安になっています。
 骨転移と骨粗鬆症、それぞれ何を決定打として診断を出すのでしょうか。
 骨転移を疑う場合、追加の検査が必要になってくるのかもしれませんがそれはどのような検査ですか?

2、骨粗鬆症の治療を始めるとなると、ビスフォスフォネート経口剤を飲むことになると思いますが、
 どうせならゾメタをしたいという気持ちがあります。
 (再発予防としての根拠が確立されていないことは理解しているのですが…)
 でもやはり、私のような場合では認められないでしょうか。
 
よろしくお願い致します。

   
Re:フェマーラ+リュープリンと骨密度
向原徹(兵庫県) 2011/03/25
あい様

返事が遅くなり申し訳ありません。
神戸大学、腫瘍・血液内科の向原と申します。
いただいたご質問について、出来る範囲でお答えしたいと思います。

1、骨転移で骨量が落ちているという可能性があるのではないか?と不安になっています。
 骨転移と骨粗鬆症、それぞれ何を決定打として診断を出すのでしょうか。
 骨転移を疑う場合、追加の検査が必要になってくるのかもしれませんがそれはどのような検査ですか?

骨転移で骨量が落ちるというのは、おっしゃるように理論的にはありえると思います。その上で、どこまで検査を加えるかは、どれだけ転移を疑うかに依存すると思います(痛みの具合、症状やレントゲンの左右差など)。画像検査としては、いわゆるレントゲン写真、骨シンチ、CT、MRIなどがあります。
私は画像診断医ではないので、あまり的確なことは言えませんが、一般には、レントゲンや骨シンチに比べて、CT、MRIの方が、両者を見分ける能力は高いと思います。それでは、大腿骨頸部の骨密度が低い方に皆MRIをするかというとそれは行き過ぎだと思いますので、慎重に判断すべきだと思います。

2、骨粗鬆症の治療を始めるとなると、ビスフォスフォネート経口剤を飲むことになると思いますが、
 どうせならゾメタをしたいという気持ちがあります。
 (再発予防としての根拠が確立されていないことは理解しているのですが…)
 でもやはり、私のような場合では認められないでしょうか。

米国では骨粗鬆症治療薬として、ゾメタを1年に1度5mg投与する方法が認められています(ちなみに再発予防効果が示唆された臨床試験では4mgを半年毎)。しかし、日本ではご存じのように骨粗鬆症には認められていません。したがって、骨粗鬆症予防(正確には骨粗鬆症と診断されていないとだめなのですが)アレンドロネートやリセドロネートといった内服のビスフォスフォネートを用いられます。
ゾメタも内服のビスフォスフォネートも、アロマターゼ阻害薬による骨塩量低下予防効果が示されていますので、医学的にはゾメタを使うことは間違いではないと思うのですが、問題はやはり保険適応だと思います。保険医が保険を無視することはそもそもご法度なのですが、仮に保険適応外の使用をする、あるいは保険を使わずに患者さまの自己負担で行うには、それだけの医学的根拠が必要だと思います。よく勉強されて書かれている通り、ゾメタの再発予防効果についてもまだ議論のあるところだと思います。そう言ったことを踏まえて、私自身はアロマターゼ阻害薬による骨塩量低下予防には、内服のビスフォスフォネートをお勧めしています。

ここにはいろいろな考え方があると思いますので、ご参考程度に聞いていただいて、最終的には主治医の先生とよくご相談ください。
Re:フェマーラ+リュープリンと骨密度
あい(大阪府) 2011/03/27
向原先生、ご回答ありがとうございます。

骨転移の可能性について…
今のところ痛みもないし、ちょっと先走りすぎかなと恥ずかしく思っていたところです。
でも、理論的にはありえるんですね。
可能性も含めて自分の状況を正しく把握しておきたかったので、ご回答いただけてありがたいです。

ゾメタの件も、ありがとうございました。わかりやすく説明していただき、感謝しております。

骨の先生から、骨粗鬆症の飲み薬(ベネット)を処方していただきましたので、
こちらで治療を進めていきたいと思っています。


…正直に言うと、乳癌にたいする治療内容を見直すべきなのかと悩んでいるところです。
1年前、CYP2D6の検査結果を持って乳腺外科の高名な先生方のところを何件もまわり、
フェマーラとリュープリンを5年する、と自分で決めたのですが…。
最近CYP2D6に否定的な論文が多数出ているようですので、
その先生方の意見も今は変わっているかもしれません。

骨密度が落ちた原因がフェマーラとリュープリンにあるのだとすれば、
治療内容を元に戻すことを考えたほうが良いのかもしれない、と悩みはじめています。

タモキシフェンで治療をするなら、リュープリンは5年でなく2年で良いんですよね…?
だとしたら、今年の6月でやめられるんです。
これ以上骨量を落とすのは、怖い気がしています…。

ベネットを飲み続けると、骨量は上がるのでしょうか?
それとも、これ以上下がるのを止めるだけの効果しかないのでしょうか。
Re:フェマーラ+リュープリンと骨密度
向原徹(兵庫県) 2011/03/28
あい様

こんばんは。ご質問を受けいくつかの論文をみてみました。アロマターゼ阻害薬による骨塩量低下予防薬として、ベネット(リセドロネート)を使った場合と、プラセボ(偽薬)を使った場合とを比較した臨床試験2つでは、1つではリセドロネートを使うことで骨塩量は2年後にはやや上昇(プラセボでは低下)、もう1つでは低下はするんだけれども下がり幅がプラセボより少ない、というデータのようです。

これら臨床試験では2年の段階での骨塩量を比較していますが、本当に知りたいのは、もっと10年とか、それ以上に長いスパンで骨塩量がどうなっていくかだと思います。残念ながら、アロマターゼ阻害薬自体が術後に一般的に使われるようになったこと自体が最近10年以内なので、長期にみてアロマターゼ阻害薬がどれだけ骨塩量に影響するのかは未知数なところがあります。

いずれにしても、リセドロネートがプラセボより少なくとも2年といった短いスパンではよいということなので、35歳から治療を受けられている(場合によっては平均より15年ほど早く閉経状態となる)ことを考えると、骨には今できることをしっかりしていくしかないのかなあ、と思います。そこには薬もありますが、もちろん食事、適度な運動、日光を浴びる、なども含まれるのかと思います。

治療を変更すべきかどうかについては、この掲示板では範囲を超えると思いますので、どうかよくご相談なさってください。

とても沢山勉強をしておられて、そのご苦労の分、うまく治療が進んで報われることをお祈りいたします。
Re:フェマーラ+リュープリンと骨密度
あい(大阪府) 2011/04/01
向原先生、論文を調べてくださって本当にありがとうございます。

ベネット、骨塩量が上昇するわけではないのですね。
でも下がり幅が少なくなるのであれば、やはり有り難いです。

>35歳から治療を受けられている(場合によっては平均より15年ほど早く閉経状態となる)
>ことを考えると、骨には今できることをしっかりしていくしかないのかなあ、と思います。

5年しっかりホルモン療法をしたとしてもその頃は40歳なので
また生理が復活する可能性も高いのではないかと思ってはいるのですが…。
復活したらしたで複雑な気持ちになりそうです。

治療内容の変更については、主治医とよく相談してみようと思います。

本当にどうもありがとうございました。

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