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治療とその選択
即手術(全摘)か術前治療か悩んでいます
HOTARU(埼玉県) 2011/06/10
はじめまして、よろしくお願い致します。

5月に右乳房に乳がんがみつかりました。
精密検査の結果のデーターは下記となります。

浸潤性乳管癌
HER2:+2
FISH:陽性(シグナル比 3.7)
ER:強陽性
Pgr:80%陽性
Ki67:40%
腫瘍の大きさ:22mm~28mm程度
腫瘍の位置:乳頭直下
転移は検査データーではどこにも認められない。

現在、2つの治療法を提示されており、
どちらの治療法を選択すればいいのか悩んでいます。
もちろん最終的には自分で選択し決めなければなりませんが、
アドバイスを頂ければと思い投稿させて頂きます。

治療方法1.即手術
■術前治療の必要性はなし
 理由:
 1.腫瘍の大きさが3cm以上
 2.リンパ節に転移がみられる
 上記のどちらかを満たしている場合のみ術前治療をするが
 どちらも満たしていないので術前治療の必要はない。
■手術日:約2週間後(100%全摘、温存の可能性は0%)
■術後治療について
 1.リンパに転移があることが認められた場合
  抗がん剤(TCとECを3週間に1度を4サイクル)その後ハーセプチンを1年プラスホルモン治療
2.リンパ転移が認められない場合
  化学療法(抗がん剤)はなし。ホルモン治療を5年間。
しかし、ハーセンプチンを1年間投与することを薦める(選択自由)
  →Kiが高い数値なのでハーセンプチンをしておいた方がいい。

治療方法2、術前化学治療後に手術
■術前治療
 化学治療、AC(アイスラサイクリン系薬剤)3週間に1度を4サイクル
 効果が見られた場合、手術。
 効果が十分見られないようであれば、タキサン系薬剤を3週間に1度を4サイクル後に手術。
■術前化学治療をする理由
 手術後の体力消耗しているときに開始するよりも、手術前の体力に問題がないときに開始する方がいい。
 手術前に癌が何の薬に効果が見られるかを見ておくことも必要。
 15%の割合で癌が縮小し、温存が可能になるかもしれない。
 HER2が2+でFISHが陽性ならば腫瘍の大きさにかかわらず、抗がん剤の術前治療は必要である。
■手術日:抗がん剤の効果により、9月頃もしくは12月頃
■術後治療
 ハーセプチンのみ1年間、その後ホルモン治療


治療方法1に関しての疑問
●リンパ転移がみられない場合のハーセプチン単独(事前に抗がん剤を使用しない)治療は一般的なのでしょうか?
エビデンスはあるのでしょうか?
●リンパ転移がひとつでもあれば、即抗がん剤というのも一般的なのでしょうか?

治療方法1に関しての疑問
●術前の抗がん剤ACで効果がない場合、次にタキサンやるので手術が12月になる。手術が6カ月遅れることによるリスクはないのでしょうか?
●検査データー上では転移が見られないのに、いきなり抗がん剤を使用するメリットはあるのでしょうか?

よろしくお願い致します



   
Re:即手術(全摘)か術前治療か悩んでいます
向原徹(兵庫県) 2011/06/15
HOTARUさま

こんばんは。レスポンスが遅くなり申し訳ありません。
神戸大学、腫瘍・血液内科の向原と申します。

いただいたご質問に答える前に、術前化学療法についての一般的なことをお話しようと思います。
まず、大前提として、術前に化学療法をする場合と、術後に化学療法をする場合ですが、同じ化学療法をした場合には、治療成績(再発率、生存率)は同等であることが、複数の臨床試験で示されています。
それでは、なぜ術前に化学療法をすることがあるのでしょうか?
一部は既にご自身で書かれていますが、メリットとしては次のようなことが挙げられます。
①乳房を温存できるチャンスが増える
②乳房の腫瘍を見ながら治療できますので、化学療法の効果が目に見える(術後だと効果があるのかないのか分からないまま、予定通り化学療法を行うことになります)
③術前化学療法で生きている細胞が手術標本で見当たらないかたの再発率はとても低く、そのことをお伝えできる。

というものです。

逆にデメリットはというと
①手術の時点ですでに化学療法という”修飾”がかかっているため、もともとどの程度のご病気をおもちだったのか分からなくなる(特にリンパ節転移の程度がどの程度あったかは、分かりづらくなります)。そのことが、放射線治療をすべきかどうかの判断を迷わすこともあります。
②明らかにリンパ節転移のない患者さまではセンチネルリンパ節生検が一般的に行われます。最近は術前化学療法後でもセンチネル生検は信頼できるといわれつつありますが、リンパ流などの変化で、その精度が落ちるという意見もあります。よって、術前化学療法前にセンチネルリンパ節生検のみ行うことのできる施設ならよいですが、実際は難しい場合もあり、センチネルリンパ節生検を術前化学療法を受けられた患者さまには行わない方針をとるところもあると思います(よくご相談されておくほうがよいと思います)。
③一般にタキサンは手術でリンパ節転移があった患者さまに対する有用性が証明されており、術前にリンパ節転移の有無が分からない段階でする場合、潜在的に過剰な治療になっている可能性がある(つまり先に手術すれば、リンパ節転移陰性で、タキサンは必ずしも必要でない場合もある)
④まれですが、化学療法中に病気が大きくなって、手術がより難しくなる

というものです。

すべての医療行為はメリット、デメリットのバランスを考慮すべきですが、メリットで一番重要視されるのは、やはり乳房の温存率の上昇であり、乳房の温存を希望されない患者さまでは、あまりお勧めできません。

前置きが長くなりましたが、
●リンパ転移がみられない場合のハーセプチン単独(事前に抗がん剤を使用しない)治療は一般的なのでしょうか?
エビデンスはあるのでしょうか?
→ハーセプチン単独という術後補助療法にはエビデンスがなく、基本的に勧められません。ハーセプチン治療のみでも恐らく効果はあると想像しながらも、その程度は不透明です。原則、抗がん剤治療とハーセプチンはセットと考えられるほうがよいと思います。

●リンパ転移がひとつでもあれば、即抗がん剤というのも一般的なのでしょうか?
→そういう考えが以前は一般的でしたが、最近見直されつつあるようです。特に、ホルモン受容体陽性、HER2陰性の乳癌では、リンパ節転移があっても場合によっては抗がん剤を省略してもよいのでは、と考えられつつあります。ただ、HOTARU様の生検結果では、HER2陽性のようですので、それが正しければ、リンパ節転移がある場合、基本的に化学療法が勧められます。

治療方法1に関しての疑問
●術前の抗がん剤ACで効果がない場合、次にタキサンやるので手術が12月になる。手術が6カ月遅れることによるリスクはないのでしょうか?
→上のデメリット④に書いた内容です。確かに非常に少ない患者さま(一般に3%程度)は化学療法中に病気が大きくなってしまう場合があります。しかし、乳房の腫瘍を触診しながら治療を進めていきますので、仮に大きくなった場合には、すぐに手術あるいは、化学療法の変更という手がとられます。したがって、それで手術の機会を逃すことは、ほとんどありません。

●検査データー上では転移が見られないのに、いきなり抗がん剤を使用するメリットはあるのでしょうか?
→昔は、乳癌の治療は徹底的に乳房の周囲を大きく手術することに主眼が置かれました。それでも、あまり治療成績が伸びなかったのは、目に見えない転移(微小転移)というのが比較的早くから起こっているためと考えられています。その微小転移を”種”の間に摘み取るべく、術後、あるいは術前の化学療法がおこなわれます。もちろん術前化学療法にはそれに加えて、乳房温存のチャンスを増やしたいという思惑もあることは前述したとおりです。

以上、長く書きましたがご参考にしていただければ幸いです。
Re:即手術(全摘)か術前治療か悩んでいます
あい(東京都) 2011/06/16
HOTARU様

はじめまして。ちょうど4年前に告知を受け術前化学療法後温存手術を受けた乳がん患者、あいと申します。

経験者として術前化学療法のメリットを挙げてみます。
ちなみに、初診時腫瘍の大きさ25mm、HER2陽性。

①なんといっても抗がん剤の効果がはっきりとわかること。
 2度目の療法前の診察時、「1回目にしては効いている(小さくなっている)ねぇ。」とおっしゃって戴き辛い治療も乗り切っていこうという前向きな気持ちになれました。
 術後にされると常に「本当に必要なのか?」という気持ちをぬぐえない方もいらっしゃるようです。術前の場合効果がなければやめればよいのです。

②手術までの期間があり主治医との信頼関係を持てたこと。
 私の病院には腫瘍内科はなく化学療法中も毎回主治医の診察を受け点滴の針も主治医が刺してくれました。とても素っ気ない先生なのですが化学療法期間中に先生の人となりを感じる機会も増えいきなり手術したよりも安心してお任せできたと思います。

私は告知の前年にも検診は受けていたのに早期発見することができなかったのが悔やまれると別の先生にお話しした時「早期発見で手術だけで済ませるより全身治療して却ってよかったということもありますよ。」と言われたことがあります。
中途半端に勉強すると却って不安ばかり感じてしまうと思い当時は何も知らないでいましたが、今ではその言葉の意味がよく分かります。
そして、素っ気ない主治医が、「早期発見できたのにどうしても予後の良くない人たちがいて、それがHER2陽性の人たちで、その人たちを何とか救いたいと開発されたのがハーセプチンなのです。」と珍しく力を込めておっしゃっていたのを今でもはっきり覚えています。そしてその効果を上げるためには単独ではなく抗がん剤の使用が必要なのだと。

デメリットについては、ごめんなさい。終わってしまったことは考えないようにしているので勉強もせず分かりません。
ただ、温存した場合放射線治療を受けることになるのでそれを避けるために、全摘+乳房再建術を考える方もいらっしゃいます。温存といっても元通りとはいきませんし。

いずれにしても、告知されただでさえ動揺し初めてのことばかりでどうしていいか分からないのに短い期間に治療法まで決めなければいけないのは大変なことと思います。でも時間があったからといって絶対正しい方を選べるというものでもありません。可能ならばセカンドオピニオンなども活用されHOTARU様ご自身の納得のいく形で治療を選択されますように。

HOTARU様が順調に治療を進めていくことができるよう応援しています。
Re:即手術(全摘)か術前治療か悩んでいます
HOTARU(埼玉県) 2011/06/20
向井先生・あい様

レスポンスどうもありがとうございました。

向井先生のご説明、ひとつひとつ何度も読み返しました。
どれもとても参考になるアドバイスで感謝しております。

先日、サードオピニオンに行って来ました。
そこの治療方針は下記となります。

●術前化学療法
 化学療法の前にセンチネルリンパ節生検をする。
 その後、FEC3か月後ハーセプチン3か月
●約半年後に手術
 温存もしくは全摘+同時再建
●術後化学療法
 ハーセプチン(期間は聞きそびれてしまいました)

私の病理結果
HER2 2+
FISH 陽性
悪性度 3
からして、化学療法をしない理由がみつからないとのことでした。

そこでまたご質問させて頂きたいのですが、

1.私の病理結果からして化学療法を用いるのは一般的なのでしょうか?

2.ホルモン受容体が強陽性の場合、抗がん剤よりもホルモン治療の方が有効と書かれている文献もありますが、FISH陽性でもホルモン治療の方が有効と言えるのでしょうか?

勉強を進めて行くうちにいろいろな情報が入って来てしまい、よけいにわからなくなってきています。
アドバイス頂けますようよろしくお願い致します。

あい様、
心温まるレスポンスありがとうございました。
「早期発見で手術だけで済ませるより全身治療して良かったということもある」との事、心強くなりました。
デメリットに関しても、終わってしまったことは考えないようにしているというお気持ち、ものすごく共感できます。
私もこれから治療方針を決めていく中で、終わってから考えないようにできるような方針を自分で納得して決めていきたいと思います。
ありがとうございました。

Re:即手術(全摘)か術前治療か悩んでいます
izawa(京都府) 2011/06/20
こんにちわ。がん診療で看護師をしています。

____________________________
先日、サードオピニオンに行って来ました。
そこの治療方針は下記となります。

●術前化学療法
 化学療法の前にセンチネルリンパ節生検をする。
 その後、FEC3か月後ハーセプチン3か月
●約半年後に手術
 温存もしくは全摘+同時再建
●術後化学療法
 ハーセプチン(期間は聞きそびれてしまいました)

私の病理結果
HER2 2+
FISH 陽性
悪性度 3
からして、化学療法をしない理由がみつからないとのことでした。

そこでまたご質問させて頂きたいのですが、

1.私の病理結果からして化学療法を用いるのは一般的なのでしょうか?

2.ホルモン受容体が強陽性の場合、抗がん剤よりもホルモン治療の方が有効と書かれている文献もありますが、FISH陽性でもホルモン治療の方が有効と言えるのでしょうか?

___________________________

やり取りを見ていて、本当に悩まれているご様子が伝わります。本当に重大な治療選択だとお察しします。だからこそ、多くのご意見をお聞きになりたいと思っておられるのだと思います。

ただ、これらのご質問については、現在の主治医やセカンド・サードの医師のお返事からは、まだ十分に納得が行かないということなのでしょうか。

ここでの書き込みでの情報についても、回答される医療者は実際に診察を見ている訳ではないので、お答えをするのは、慎重になってしまうところがあります。

よろしければ、主治医・セカンド・サードの先生方とのやりとりと、ご自身としてどのように思われているのか、もう少しお聞かせください。

Re:即手術(全摘)か術前治療か悩んでいます
HOTARU(埼玉県) 2011/06/20
izawa様

レスポンスありがとうございました。

■主治医の治療方針に関して
 検査データーからリンパ転移の可能性は6%と聞きました。
 (その6%に私があてはまらないとは言い切れませんが)
 理由は、過去3年のその病院でのエビデンスが6%だそうです。
 ハーセプチン単独(抗がん剤を事前に使用しない)の治療に関しても、その病院ではエビデンスがあると言われました。
 次に改定される乳がん治療のガイドラインにも必ず載る事項との説明も受けました。
 しかし、セカンド・サードオピニオンでハーセプチン単独の症例は明確ではないと説明され、不安を抱いています。
 トリプルポジティブであるが抗がん剤を使用しない方針(但し、リンパ転移があれば使用する)も、私としてありがたい(語弊がありますが)方針だと思っていましたが、サードオピニオンでは、抗がん剤を使用しない理由が見つからないと説明を受け、正反対な説明で混乱しております。

■セカンドオピニオンの治療方針に関して。
 サードオピニオンとさほど違いはないのですが、
 あまりこちらの質問に明確に答えて頂けなかったのでサードオピニオンを決断しました。

■サードオピニオンの治療方針に関して。
 こちらの質問にも明確に答えて頂けて、ある程度信頼もおけるのではないかと思っております。

ただ、ネットの情報やその他乳がんの友人から頂く情報(それぞれの病理結果のそれぞれの治療方法等)を見聞きしておりますと、本当に抗がん剤の治療が必要なのかどうか迷いを感じております。
できれば避けたい治療方法ですが、必要であるならば戦いたいと思う気持ちもあります。

主治医とセカンド・サードオピニオンの見解が違い、私が選択すべき治療方法はどれなのか?と今も悩んでおります。

 
Re:即手術(全摘)か術前治療か悩んでいます
izawa(京都府) 2011/06/20
HOTARUさん

本当に悩みますね、、。

■主治医の治療方針に関して
 検査データーからリンパ転移の可能性は6%と聞きました。
 (その6%に私があてはまらないとは言い切れませんが)
 理由は、過去3年のその病院でのエビデンスが6%だそうです。
 ハーセプチン単独(抗がん剤を事前に使用しない)の治療に関しても、その病院ではエビデンスがあると言われました。
 次に改定される乳がん治療のガイドラインにも必ず載る事項との説明も受けました。
 しかし、セカンド・サードオピニオンでハーセプチン単独の症例は明確ではないと説明され、不安を抱いています。

____________________________
主治医のお話で「その病院ではエビデンスがある」ということですが、過去のその施設のデータからそのように主治医はおっしゃっているのですね、、、。

また、ハーセプチン単独のエビデンスがある、ないで医師の意見が違うのですね、、、。

迷われるのは当然かと思います。
HOTARUさんは、どの医師の意見が最も納得がいくものだったのでしょうか。

先ほどの方の意見もありましたが、その医師(や、その施設)のスタンスや診療姿勢にどれくらい信頼を置いているか、ということ、納得されるかというご自身のお気持ちもとても大事かと思います。

あと、経済面や整容面、ご自身のライフスタイルが各治療との関連がどの程度であるか、ご家族(特にHOTARUさんと最も親しい方や身内の方)は、どのように思っておられるのか、
ここでの意見と同時に、様々な角度から、ノートに書きだして感がて見てもよいかもしれませんね。

的確なお答えではなくて、申し訳ありません。

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