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低線量被曝時代における放射線治療線量について
aizi(埼玉県) 2011/09/09
「チームオンコロジー.com」掲示板、お忙しい先生方の毎回の迅速丁寧なレスありがとうございます。
久しぶりに投稿させていただきます。
福島原発事故来、放射性物質汚染のさまざまな情報や知見が、各メディアで錯綜しています。
玉石混交な情報から、がん患者として、確度の高い有用な情報を摂ることのますますの困難さを感じています。
先日、東大アイソトープ研の先生が、原発事故以降、国内に放出された放射性物質がセシウム換算で、広島原爆の168倍との発言がありました。
ということは、この国内の大気は、3月11日以来、変容しているようです。
がん患者は、放射線治療を受けます。
生涯被爆量とがん治療のベネフィットをトレードオフして、ある一定量の放射線を照射されるわけですが、今までは、自然発生の放射能量の上に、がん治療としての線量が加算されていたかと思います。
しかし、これからは、自然線量プラス広島原爆168倍という“底上げ”な環境下で、治療として照射される線量は、今までと同等で妥当なのでしょうか?
ただのしろうと患者なので、もとより医療知識がないところに、今回のような、予想もしない放射性物質汚染環境になり、ますます混乱と混迷です。
ニュースなどで、今回の福島由来の被曝と、放射線治療の線量とが、同一チャート図などで示されているのも、しろうとの私たちに混乱を誘発します。
医療線量と原発被曝とは、全く別物であるなら、同一次元で解説するメディアのあり方にも疑問を感じています。
長くなってしまいましたが、現下の放射性物質環境での、放射線治療線量についての知見をお教えくださいますようお願いいたします。
貴掲示板では、Susan G Komenのサイトに関しての意見交換が3月下旬時点で行われていましたが、9月現在、後出しじゃんけん的に、3月では知らされなかった情報が、私たち一般市民にも及んでいます。
健康人でも、被曝量が懸念される中、がん患者は、放射線をCT検査などで、今後もずっと照射され続けます。
低線被曝の症状は、10年20年後の晩発性とも聞きました。
一介のがん患者として、不安を禁じ得ません。

   
Re:低線量被曝時代における放射線治療線量について
通りすがり (海外在住) 2011/09/09
今回の福島の事故に関連して外部被曝、内部被曝の違い、短期の高線量の被曝と長期にわたる低線量被曝との違いについて説明されていることがあります。これが参考になると思います(本当はそこらへんをちゃんと説明していればこんな混乱が起きてなかったと残念に思っています)。恐らく医療被曝はそれによる恩恵がリスクを上回るからという正当な解説をしてくださる方がいると思いますので、別の側面から私見を書きます。
放射線治療では当然ながら二次癌(放射線による別の癌の発生)が懸念され、長年研究・調査されています。前立腺癌の治療などで膀胱癌、直腸癌の二次癌リスクがわずかに上昇するというエビデンスはあると理解していますが、たとえば乳癌で乳房切除術と温存術(+放射線治療)とで15年間二次癌の発生を比較した論文があります。Obedian E, Fischer DB, Haffty BG. Second malignancies after treatment of early-stage breast cancer: lumpectomy and radiation therapy versus mastectomy. J Clin Oncol. 2000 Jun;18(12):2406-12. これでは全く差は出ませんでした。適正に高線量を短時間に照射する場合は今回のような長期にわたる低線量被曝の持続とは異なると考えたほうがよいと私は思っています。
ただし、昨今の強度変調放射線治療(IMRT)という手法のうち照射に時間がかかる方法については、照射する機械の部分(照射ヘッドと呼ばれる部分)からの散乱線による全身被曝の増加が言われており、欧米では小児ではIMRTでの照射は避けることがコンセンサスとなっていると思います。
適正な線量、線量分割は膨大な過去の治療の検討から標準的なものが定まっており、それから逸脱することは腫瘍制御率の低下や局所再発なども懸念されます。
ともかくも、治療、検査にかかわる疑問は担当医に率直に質問するべきかと思います。

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