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遺伝子スクリーニングと社会的問題
ゆう(神奈川県) 2011/10/12
こんにちは、はじめて投稿させていただきます。
BRCA陽性であることが判明した人について、遺伝子スクリーニングの先進国(アメリカなど)では、
・結婚や就労に関する差別等は社会問題になっているのでしょうか?
・個人の遺伝情報はどのように保護されているのでしょうか?
・がん既往歴のないBRCA陽性者は、どのようなサポート(情報提供やカウンセリングなど)を受けているのでしょうか?

今のところ日本では、がん既往歴がなくBRCA陽性と告げられた人が、情報を入手できる場所が非常に限られ、孤立しがちだと感じます。特に若年・未婚女性にとっては、がんを発症する恐怖に加えて、人生設計への不安が重くのしかかって切実なのですが・・・

※復元コメント
|都道府県:神奈川県 |名前:ゆう |掲載日時:2011/10/11 04:29:30 |

   
Re:遺伝子スクリーニングと社会的問題
復元コメント(広島県) 2011/10/12
※諸事情により一旦トピックごと削除させていただき、先生方のコメントを復元いたしました。申し訳ありません。


投稿有り難うございます。大変デリケートで、なおかつ非常に重要な問題だと思います。

まずアメリカの実情ですが、遺伝情報で差別を受けないよう法律が整備されていたと思います。また検査費用も保険でカバーされています。韓国、香港も確か保険でカバーされており、保険でカバーされていないのは日本ぐらいかもしれません。

カウンセリングの体制はどこまで一般的になっているのかは知りませんが、テレビでもCMで取り上げられており、決して特殊な検査ではなくなっています。

日本では昨年から乳癌学会の班会議で適正な検査実施体制を中心に討議を進めています。現時点では、検査が実施できる施設も限られていますが、逆にこれらの施設は相当の覚悟を持って取り組んでいますからきちんとフォローアップがなされていると思います。

いろいろな検査実施施設のスタッフの方と話をしましたが、皆さん重要な問題と認識して、真剣に取り組まれています。

※復元コメント
|都道府県:広島県 |名前:村上 茂 |掲載日時:2011/10/11 17:08:40 |
| | | 編集キー:
Re:遺伝子スクリーニングと社会的問題
復元コメント(海外在住) 2011/10/12
※諸事情により一旦トピックごと削除させていただき、先生方のコメントを復元いたしました。申し訳ありません。



村上先生のおっしゃるとおりです。少し繰り返しになりますが、よろしくお願い致します。

・結婚や就労に関する差別等は社会問題になっているのでしょうか?
基本的にないです。でも社会がどう受け取るかは別物です。しかし、乳がんなどの多い家系は米国では普通にみられますので、差別するのはかなり労力がいることですけどね。

・個人の遺伝情報はどのように保護されているのでしょうか?
HIPAAという厳しい個人情報開示に関する法律で守られています。

・がん既往歴のないBRCA陽性者は、どのようなサポート(情報提供やカウンセリングなど)を受けているのでしょうか?
遺伝子カウンセリングはそもそも別物あつかいをしています。僕自身は乳腺専門である程度できますが、責任をもって遺伝子カウンセリングができませんのでやはり的確なトレーニングを受けた人がするべきだと考えています。また、Brcaなどの遺伝子検査も社会的インパクトがあまりにもおおきいので、遺伝子カウンセリングを受けた後に検査指示がでます。基本的には僕はオーダーしません。


※復元コメント
|都道府県:海外在住 |名前:上野 直人 |掲載日時:2011/10/11 19:43:46 |
| | | 編集キー:
Re:遺伝子スクリーニングと社会的問題
ゆう(神奈川県) 2011/10/12
村上先生、上野先生、

ご回答ありがとうございます。諸事情により一旦トピックごと消去し、先生方のコメントを復元いたしました。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。

乳がん家系はアメリカでは、あまり珍しくないのですね。実は私がこの遺伝子変異を知ったきっかは、ドラマのERです(2005年ごろにアメリカで放送されていました。シーズンは不明です)そのとき、もしかして私も!?と思いました。最初の情報源が、強烈なストーリー展開のテレビドラマであったせいか、隠れた社会問題になっているのかな・・・と勝手に想像していました。またドラマでは医師が予防切除を強く薦めていたのですが、上野先生の過去のコメントを拝見する限り、実情は違うということでしょうか。

日本では昨年から乳癌学会の班会議で適正な検査実施体制を中心に討議を進めています
>私はこの3つがあれば、不安を抱えながらも前向きに頑張れる気がします。
1) 遺伝子カウンセリング・検診・がん治療を行う医療機関が
 それぞれ連携して生涯フォローしてくれるしくみ
2) 法律(生命保険加入・銀行借入の際、不利益を受けないなど)
3) 最新情報(研究段階の情報が多いため)

1)については、村上先生のおっしゃるように、検査を受けれる施設の多くが大学病院などに限られており、大学病院では通常がん検診は行っていないので、他院で定期的な検診を継続することになると思います。これはもちろんケースバイケースだと思うのですが、健診センターと、大学病院の遺伝子外来では、個人情報の取り扱い方や、言葉の配慮など、まったく意識が違うんだなーと感じてしまう出来事がありました。


●最後に乳がんハイリスクの人に対する検診方法について教えてください。

MDアンダーソンのHPで少し勉強させていただきましたが、brca陽性の場合は、「血縁者の最も若い発症年齢よりマイナス5~10歳、もしくは25歳になった時点で、マンモを年1回、追加検査としてMRIを年1回」とガイドランにあります。
私は26歳で試しにマンモを撮りましたが、真っ白で読めないといわれ(先生は読影A判定医でした)、超音波検査+MRI(オプション)年1回を薦められました。

・MDアンダーソンのガイドラインで、超音波検査が選択肢にない理由はなんですか?
 http://www.mdanderson.org/patient-and-cancer-information/cancer-information/cancer-topics/prevention-and-screening/cancer-screening-guidelines/breast-cancer-screening-exams-increased-risk.html

・以下の動画では、マンモの検査精度が80~90%に対して、MRIが95-100%といっていますが、マンモの80~90%というのは何歳くらいの女性が前提なのでしょうか?またMRIの精度が95-100%あるのであれば、MRI単独でもよいのでは?と思ったのですが・・・MRIでは発見できなくて、マンモで発見できるような癌はあるのでしょうか?http://www3.mdanderson.org/streams/FullVideoPlayer.cfm?xml=publicEd%2Fconfig%2FBreastMRI_cfg


よろしくお願い申し上げます。
Re:遺伝子スクリーニングと社会的問題
村上 茂(広島県) 2011/10/12
あまりにも鋭い質問にどきどきしますね。現時点で分かること、実現可能なことでコメントします。

2005年頃のアメリカではちょうど遺伝性乳がんが社会的に認知され始めた頃で、テレビCMなどが打たれた時期だと思います。そのため乳がん発症のリスクを低減するための方法として、発症する前の乳房切除の是非が論議されており、女性にとってとても厳しい問題が取りあげられたのだと思います。最近は乳房切除は減少傾向と聞いていますが、このあたりは上野先生の方が詳しいと思います。

1) 遺伝子カウンセリング・検診・がん治療を行う医療機関が
 それぞれ連携して生涯フォローしてくれるしくみ
2) 法律(生命保険加入・銀行借入の際、不利益を受けないなど)
3) 最新情報(研究段階の情報が多いため)

これは確かに全てきちんと整備することが必要ですね。これらは医療者だけで対応することは困難ですから、社会問題として取り組む必要があることがあると思います。

健診センターと、大学病院の遺伝子外来では、個人情報の取り扱い方や、言葉の配慮など、まったく意識が違うんだなーと感じてしまう出来事がありました。

この問題は施設の違いと言うよりは、実際に担当するスタッフ、施設の問題意識の違いが大きいと感じます。ただ確かに大学病院の方が、遺伝子検査を多く取り扱っているので個人情報の管理にはなれています。ちなみに広島大学病院で一番多い遺伝子検査は高齢妊娠女性の出生前胎児遺伝子検査です。

遺伝子異常のある女性に対する検診についてはアメリカでははっきりとMRIでの検査を推奨されています。ただ若年女性では癌でない乳腺が、癌のように写ることが結構あります。そのためきちんと読影するには、乳腺MRIに精通した放射線科の医師が相当数必要になります。また乳房のMRIを撮影するためには専用の器具が必要になりますが、日本にたくさんあるMRI装置にはその専用器具が装備されていません。このどちらも日本では圧倒的に不足しています。これらをどうするかはこれからの課題ですが、一朝一夕に解決できる問題ではないですよね。

アメリカで超音波がどの様に位置づけされているかは上野先生にコメントいただいた方が良いと思います。

Re:遺伝子スクリーニングと社会的問題
ゆう(神奈川県) 2011/10/15
村上先生、

お忙しいところご丁寧なご回答をいただきまして、ありがとうございます。

MRIでの健診体制の整備もこれからなのですね。お話を聞く限り、MRI+超音波の方がダブルチェックになるので、より安心できそうです。首都圏ですと乳房MRI健診をはじめた施設がいくつか見つかりました。早く全国どこでも最新の健診が受けれるようになってほしいです。http://breast.mri-mri.com/

私は家族や親戚を乳がんで亡くしており、幼少期に生々しいハルステッド手術の跡をみてショックで幼稚園に行けなくなったことがあります。その当時は小さな子供に家族のがんを告知することは一般的ではなく、聞いてはいけない・触れてはいけないという不文律がありました。けれども子供ながらに、命にかかわる状態であることは感じ取っていました。思春期には胸が大きくなることに恐怖心すら覚え、今まで目を背けてきました。

今回、新たに家族に乳がんが見つかりましたが、ずいぶんと医療が進歩したのだなーと感じました。貴ホームページで皆様のご活動を知って、勇気づけられました。我が家でも以前の失敗を反省して、がんに対する考え方を改めようという話になりました。ルールは、①隠さない②向き合う③話し合うです。これから家族を支えると同時に、正しい知識を得て怖がらずに健診を毎年受けようと思います。

※ERが遺伝性乳がんを取り上げていたのは、シーズン14のSTORY2~4です。ツタヤでDVDジャケットを片っ端から確認していたら、店員さんに怪しまれてしまいましたが(笑)改めて日本語字幕で観てみると、英語の問題でたくさんの勘違いをしていたことが分かりました。内容は、不安を煽るものではなく、がん健診啓発が目的で、色々と考えさせられました。
Re:遺伝子スクリーニングと社会的問題
村上 茂(広島県) 2011/10/18
MRIと超音波検診を受けることが出来るようになりそうとのこと、良かったですね。お話を拝見する限り、ゆうさんは確かに乳がんのリスクが高いように思えます。検診を受けることをお勧めします。

アメリカでは生涯の乳がん発症リスクを計算する方法が確立されています。年齢、家族歴、ご自身のこれまでの既往歴などを入力すると、乳がんの発症リスクが数字として提示され、ある数字以上になるとハイリスクグループとして定期的なMRIでの検査が推奨されています。
日本人では乳がん発症リスクを計算する尺度がまだ確立されていません。ただないならないなりに如何にリスクの高い人を吸い上げるかいろいろと基準は明示されています。もしある程度医学的知識をお持ちでしたら金原出版から出ている「乳癌診療ガイドライン 2 疫学・診断編 2011年版」を読まれると詳しく記載がしてあります。値段は医療者向けの本のため4000円と少々高いのですが、アマゾンのホームページでも購入可能です。インターネットを叩いて情報を集めるより、より遙かに正確な情報を効率よく得ることが出来ます。

今回の投稿を拝見してゆうさんのお気持ちに初めて触れた気がしました。これまでいろいろな体験をされ、押しつぶされそうな重圧の中で日々過ごしてこられたことを感じました。でも今回ご自分お気持ちを文章に書いて投稿されたことで、一つ階段を上がられたのではないでしょうか。ゆうさんの勇気に心から拍手を送ります。

医療者には、正確な知識を持って診断する科学的な面と、患者さんの心に寄り添う人間性が問われます。遺伝性乳がんの分野は、我が国はまだ黎明期であり、その両面からハイリスクの女性を支えることが出来る施設、医師が不足しているのは事実です。また何かありましたらお気軽野ご投稿下さい。
Re:遺伝子スクリーニングと社会的問題
あい(東京都) 2011/10/18
ゆう様

はじめまして。私は告知から4年4か月の乳がん患者です。

こちらの投稿を読みながら、ゆう様が物凄く勉強されていることに驚いていましたが、ご自身の経験からなのですね。さぞお辛い子供時代を過ごされたことでしょう。

私自身は血縁者に乳がん罹患者はいないのですが、治療を進める中で当時高校生だった娘に「私、絶対ガンになるよ。」と言われ少なからず傷ついたことがあります。
その時は私自身自分のことでいっぱいいっぱいでしたが、ゆう様のコメントを読むうちに、娘も私が想像できないような恐怖と戦っていたのかもしれないと思うようになりました。

ただ、ゆう様も書かれている通り、今の医学は凄いです。「ハーセプチンが無かったらかなり厳しかったでしょう。」と言われた私も今では元気に暮らしています。
それに、たかをくくって検診せず手遅れになるより、リスクがあるのを冷静に受け止めきちんと検診しておけば万一の時でも早期発見でき大事に至らずに済むでしょう。

遺伝があっても無くても罹る時は罹る。
罹ってしまったら早期発見!が一番です。

ご家族のこともありご心配でしょうが、どうかあまり悲観的にならないでください。
私もこれを参考にさせていただき今度娘と話し、怖がるのではなく検診を続けていくことの大切さを伝えたいと思います。

良い勉強をせていただきました。ゆう様、どうも有り難うございます。

Re:遺伝子スクリーニングと社会的問題
ゆう(神奈川県) 2011/10/20
村上先生、

温かいお言葉、ありがとうございます。お忙しい中、本当に丁寧に言葉を選んでコメントを下さり、感激しました。ここ数ヶ月、一人で悶々としていたのですが、村上先生のおかげで少しスッキリしました。ありがとうございます。

「乳癌診療ガイドライン 2 疫学・診断編 2011年版」を読まれると詳しく記載がしてあります。

>オンライン版でサマリーを見れましたが、知りたい情報が網羅されているようなので読んでみようと思います。家族の乳がんが発覚したときに、病院からすすめられた本が「患者さんのための乳癌診療ガイドライン2009」でしたが、もう少し詳しく知りたいと思っていたところでした。

医療者には、正確な知識を持って診断する科学的な面と、患者さんの心に寄り添う人間性が問われます。

>収拾がつかなくなってしまった私の不安をおさめてくださり、ありがとうございました。顔の見えないインターネット上で、こんなに親身に対応いただけたことに驚いています。村上先生をはじめ皆さまのご活躍を心よりお祈りしています。



あい様、

コメントありがとうございます。
私の母(患者)も、あい様のようなサバイバーの方のお話を聞いて、モチベーションを保っているようです。治療を受けられた際、ハーセプチンが使用できて本当によかったですね。母も、術前3ヶ月+術後1年と長期間、ハーセプチンのお世話になるようです。

その時は私自身自分のことでいっぱいいっぱいでしたが、ゆう様のコメントを読むうちに、娘も私が想像できないような恐怖と戦っていたのかもしれないと思うようになりました。

>私の投稿が、子育て中の方の不安を煽っていないか、心配になりました。親が病気になって、いっぱいいっぱいだったんだなーというのは当時(5歳)の記憶を呼び起こして、今なら理解できます。ただ私の場合はちょっと複雑に悪条件が重なりあっため、短期間ですがカウンセリングやお薬の手助けが必要でした。ただしこれは20年以上前の出来事が原因ですし、現在の医療の恩恵を受けている以上、このようなケースは稀だと思います。

ご家族のこともありご心配でしょうが、どうかあまり悲観的にならないでください。

>ありがとうざいます。本人は複雑な思いを抱えていると思いますが、化学療法中も思ったより元気にすごしています。副作用を上手くコントロールしてくださっているのだと思います。心配事は尽きませんが、本当にたくさんの方々にお世話になっていて、感謝しています。

検診のたびにドキドキしてしまいますが、私もあいさんや、お嬢様と一緒にがんばって続けていきたいと思います。ありがとうございました。
Re:遺伝子スクリーニングと社会的問題
あい(東京都) 2011/10/21
ゆう様

私にまで丁寧なコメントを戴きありがとうございました。

親といえども子供のことをすべてわかるはずがありません。ところが、子供が小さければ小さいほど「自分はわが子のことは分かっている」と思ってしまうのが親の悪い癖。

ですから、ゆう様のご経験や今の率直な気持ちを表現してくださることは親にとっては大変有難いことなのです。やはり言われなければわかりませんから。

もしこちらのコメントをお読みの患者さんの中に小さなお子さんをお持ちの方がいらしたら確かに不安になってしまうかもしれませんが、現在ではそういったお子さんへの精神的サポートを進めている活動もありますし、知らないで過ごしてしまうよりやはり知った上で対応を考えられる方が良いと思います。

ゆう様もゆう様のお母様も私達も、時には慎重に時には病気のことなど忘れていきたいものですね。
お母様の治療が順調に進むことを祈っております。

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