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治療とその選択
HER2過剰の術後化学療法を受けないリスクについて
かずっぴ 11(神奈川県) 2012/01/15
初めまして。
家内(49歳)が2011年11月に乳房温存手術を受け、放射線照射が終了し、今後の治療方針について悩んでおります。

家内の癌は、
腫瘍径15mm*10mm*15mm
娘結節なし
波及度g、f
脈管侵襲ly2 v0
核グレード2
リンパ節転移なし
ER+、PgR+、HER2強陽性
ki-67 20%

という状況でした。

「今後の標準療法は化学療法+ハーセプチン+ホルモン療法」
と医師から説明を受けております。
化学療法の副作用を心配しており、
「ハーセプチン+ホルモン療法だけではだめですか?」
と聞いたところ、「標準治療とは異なる。再発率が10%程度上がる」という回答でした。
「その場合、何パーセントが何パーセントになる感じですか?」とお聞きしても「それはわかりません」という返事でした。

再発率が10%上がるということは、仮に標準治療で再発率が20%であった場合、30%になるということだと思いますが、ということは、「10人いたら、化学療法をやって8人再発無しで2人は再発」から「7人再発無しで3人再発」ということだと思います。
ということは、抗がん剤をやって意味があるのは「再発するかどうかが判れる10人中1人だけ」という理屈に思えます。

一方、程度の差がありますが、化学療法をすると、ほぼ全員が白血球低下や骨髄抑制の副作用があり、治療後も手足のしびれや骨髄ダメージが残るというように思えるのです。

そうすると、乳癌治療だけに特化して考えると化学療法を受けた方がベターですが、今後の人生で病気は乳癌だけではなく、その場合、骨髄へのダメージを受けていることが致命的な状況になるリスクも想定されます。

10人に1人しか意味のない化学療法を受けることで、そういう別のリスクを受け入れてしまうことになるような気がして、化学療法を受けさせるべきかどうか悩んでおります。

しかし、いろいろな例を見たり、病院で話をすると、50代以前で、転移が無い場合でかつHER強陽性のほぼ全員が化学療法を受けているような印象を受けております。

なぜそういう判断になるのか、何度考えてもわからず、本投稿を致しております。

例えば、日本より乳癌患者が多い米国でも同じ傾向なのでしょうか?
又、化学療法を選択せずハーセプチンとホルモン療法だけで治療されていらっしゃる方がいらっしゃればご意見お聞かせ頂きたく存じます。

どうぞ宜しくお願い致します。

   
Re:HER2過剰の術後化学療法を受けないリスクについて
向原 徹(兵庫県) 2012/01/17
かずっぴ様

初めまして、神戸大学腫瘍・血液内科の向原と申します。

化学療法を省略して、ホルモン療法+ハーセプチンだけにして化学療法を省略すると、化学療法もした場合に比べどれくらい再発率が上がるか、というご質問ですが、ものすごく正確に言うと、その答えはどこにもありません。

というのは、既に恐らくご存じのように、ハーセプチンを術後化学療法に加えることで、再発が減ることは明らかになってきました。これは、臨床試験の結果をもとに分かってきたことです。複数の臨床試験がされましたが、すべて、化学療法をした方を、ハーセプチンをするグループ、しないグループに分けて(無作為化割り付けと専門的には言います)その後の経過をみてみると、ハーセプチンをされたグループの方で再発が少なかった、という結果でした。これらでは、ハーセプチンの効果は、化学療法ありき、いわば化学療法への上乗せ効果として示されています。つまり、化学療法なしで、ハーセプチンがどれだけ再発抑制効果があるかは、不透明と言わざるをえないのです。また現在のところ、ハーセプチン+/-化学療法を比べる臨床試験はされていません。化学療法を省略した場合の再発率がどれだけ上がるか厳密には分からない、と冒頭に述べたのはそのためです。しかし、主治医の先生が、大まかな数字(10%)と言われたのは、決してあてずっぽうではなくて、他の情報から常識的な数字を推定して言われたのだと想像します。また、繰り返しになりますが、化学療法を省略した場合の負の影響(再発の増加)がどの程度かは極めて不透明になりますので、HER2陽性乳癌の患者さまの場合、多くはまずは化学療法、それにさらにハーセプチンという風に勧められるわけです。

実際に診察をしていない状態で、奥様の再発率はどの程度です、ということを言うのは避けさせてください。ただ、10%という数字に対する考え方、つまり10人に1人の再発する・しないを左右するというご理解の仕方は、正しいと思います。現在の医学では、何かを得る(再発抑制)のに、差し出していただくもの(副作用他)が大変多いのは、書いておられる通りです。最終的に天秤にかけられて、最終判断されるのは患者さまであるべきなのですが、副作用がどの程度かやってみないと分からないのも現実だと思います。難しいのは百も承知ですが、主治医の先生と十分ディスカッションして決めていかれるしかないことではあります。医学が発展してもっと差し出していただくものが少なくなればよいのですが。。。

以上長くかきましたが、お役にたてれば幸いです。
Re:HER2過剰の術後化学療法を受けないリスクについて
かずっぴ11(神奈川県) 2012/01/18
向原先生

ご教授ありがとうございました。
おかげさまで、よく理解できたつもりでおります。

10%の再発確率の上昇、というのは非常に悩ましく、何もない状況で「10%の確率で命にかかわる可能性を選択するか、苦しい思いをするか?」と聞かれれば、「どれだけ苦しいのか?」によって判断が分かれると思います。
副作用は人により異なるので、やってみなければわからない、というのが悩ましく、私としては「副作用が少なければトライしてほしい」としか言えません。

副作用を少なくする為に投与量を標準より減らすことも主治医の先生にお聞きしてみましたところ、「70%以上は投与しなければ薬の効果が無い。80%はした方が良い。副作用は70%未満でもあるので、70%以上かやらないかです。」ということでした。

今は、「抗がん剤をやらない」か「70%ないし80%でやってみて本人が耐え切れない副作用があれば中止する。そうでなければ継続」という2つのオプションかと、考えております。

27日に主治医の先生と面談をして治療方針を決める予定です。それまでは、とことん悩んで、意思決定したらあとはその決定が正しいと信じることにしたいと思います。
家内にも、「決めたらそれが最善の方法だと思うんだ」と話しております。

幸い神奈川県のあけぼの会に家内が入り、同じ悩みを経験した方々のお話をお聞きでき、当初「絶対抗がん剤はやらない」と言っておりましたが、「やってみてもいいかも」というように気持ちが変わってきているようです。

繰り返しになりますが、お忙しいところ、コメント頂きまして本当に有難うございます。
Re:HER2過剰の術後化学療法を受けないリスクについて
勝俣範之(神奈川県) 2012/01/25
かずっぴ様

日本医科大学武蔵小杉病院 腫瘍内科の勝俣範之と申します。

化学療法の併用の意義に関しては、向原先生がおっしゃったとおりと思います。
少し補足させていただきますと、奥様の乳がんは、ホルモン受容体陽性、HER2陽性であり、最近の分類で言いますと、ルミナルBタイプと言います。このルミナルBタイプに対して、ホルモン療法、ハーセプチンに加えて、化学療法を加えた方がよいか?ということはまだよくわかっていないという現状があります。実際に、米国のNCCNガイドライン(米国のがんセンターがつくったガイドラインhttp://www.nccn.org/index.asp を見ますと、リンパ節転移陰性、ホルモン受容体陽性、HER2陽性乳がんの術後補助療法に対して、ホルモン療法とハーセプチンは勧められると記載があります。化学療法を加えるかどうかに関しては、腫瘍径別に分けて、腫瘍径(病理学的直径)が、1cm以上の場合は、化学療法を加えることをすすめており、1cm未満の場合は、+/-化学療法となっております。つまり、腫瘍の大きさが小さいものは、再発のリスクはあまり高くないので、化学療法を積極的におすすめする、というわけではない、ということです。

奥様の場合は、腫瘍径が、1.5cmであり、グレード2、Ki67 20%ということで、やや再発のリスクが高いということがありますので、ホルモン療法、ハーセプチンに加えて、化学療法をする、というのは、ご考慮されてもよいかと思われます。

以上ご参考になりましたら幸いです。
Re:HER2過剰の術後化学療法を受けないリスクについて
かずっぴ11(神奈川県) 2012/01/28
勝俣先生

ご教授ありがとうございます。

家内も化学療法を受けることに納得しまして、昨日主治医の先生にその旨お伝え致しました。

ドセタキセルとシクロホスファミドという薬で、通常TC又はDCと呼ばれる療法とお聞きしております。
様子を見ながら三週間おきに計4回点滴を行うということで、分量も70%に減らさず、通常の分量でやってみて、我慢できないようであれば減らすか止めるかの選択もあり得ると思っております。

両先生の投稿が非常に参考になりました。

お忙しい中、アドバイス本当に有難うございました。
Re:HER2過剰の術後化学療法を受けないリスクについて
かずっぴ11(神奈川県) 2012/02/20
こんばんわ。

2月6日に第一回の抗がん剤投与が行われました。

一週間後の13日には、白血球が1000すれすれで、
15日に700台まで下がった為、グランを4日連続で
投与。
本日は白血球は7000程度に増加しています。

ただ、一週間ほど前から手に蕁麻疹のようなものができ、
本日からは胴回りにも蕁麻疹のようなものが出来てしまい
ました。
薬のアレルギーかどうかわからず、先生に相談したのですが、
「抗がん剤を続けるかどうかはあなたの判断です。(続けた
方がいいと思う、というニュアンスだったと家内には思えた
ようです)」という回答だったようです。

素人としてはアレルギー様の症状が出ている以上、アレルゲンを特定した上で、「アレルギーなら抗癌剤ストップ、そうでないなら継続」、という判断をするべきだと思うのですが、そういう発言になるというのは「アレルゲンが抗がん剤ではない」という確信が先生にあるということでしょうか?

「抗がん剤は止める」という判断をしない限り、来週の第二回の抗がん剤投与時に「アレルギー様症状が治まっていたら続け、治まっていなければ様子を見る」ようです。

アナフィラキシーが怖いので、抗がん剤治療を止めさせて、ハーセプチンに移行しようかどうか考えております。

一方で、蕁麻疹が治まったらもう一回だけ抗がん剤投与を受け、再度同様の副作用が出たらそこで止めることにすることも考えております。
Re:HER2過剰の術後化学療法を受けないリスクについて
りり (静岡県) 2017/05/26
1年3ヶ月前に右胸全摘とリンパ数十本切除したものです
手術後…抗ガン剤の副作用で体力が低下するのが嫌で拒否
結果医師と相談の上…ハーセプチン1年間+ホルモン剤(トレロゾール)5年間の治療法にしています。
今のところ…再発は無く順調です。
勿論…術後…右手…上腕含め右上半身は痺れと痛みと浮腫みが続いていますけど……。

治療法は自分に選択権が有ります
その後再発しても自己責任…
でも…納得出来ます…自分の人生なので
Re:HER2過剰の術後化学療法を受けないリスクについて
はし(神奈川県) 2017/05/30
りり様

ありがとうございます。薬剤師をしております「はし」と申します。
りり様の仰る通り、皆さんが納得されて治療にのぞまれるのが一番だと思っています。
皆さんが納得されて治療の選択ができるように、私たち薬剤師も薬剤に関する正確な情報をお伝えすることで皆さんのお力になれたらと思っています。

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