掲示板「チームオンコロジー」

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治療とその選択
再発と確定できない段階での治療の選択
ミモザ(兵庫県) 2012/02/23
以前、母の再発卵巣がんについていろいろ質問させて頂き、先生方からご回答頂きました折には大変お世話になりました。

今回は、再発と確定できない段階の治療の選択についてお伺いしたいと思い投稿いたしました。


母は、3年前に卵巣がん(類内膜腺癌/Ⅰc)で手術(卵巣・子宮全摘出、リンパ節郭清)・化学療法(TC6クール)を行いました。

治療終了後は、定期健診を受けていたのですが、今年の5月頃からひと桁だった腫瘍マーカーが徐々に上がり始め、8月の検診で「おそらく再発でしょう」と言われて約6カ月経ちます。現段階では、腫瘍マーカーは上昇しているものの、CTやPETでは未だに再発部位が確認できず、治療が開始されません。

こちらの掲示板や主治医の話などから、「再発部位が確認されてからでないと治療開始は適当でない」ということは承知で、母や私は、再発部位が確定されてからそれ以降のことを考えたいと思っているのですが、家族の中で、現段階で他に打つ手がないのかと(開始できる治療などがないのか)という意見があり、この段階で治療(というか何らかの対処)がなされる場合があるのかお伺いしたいです。

お忙しいとは存じますが、ご回答よろしくお願いいたします。


※ちなみに腫瘍マーカー(CA125)の変化は以下の通りです。

2011年

5月  13.6
6月  24.6
8月  52.6
9月  120
10月 148
11月 177.9
12月 178.6

2012年

1月  177.0
2月  195.7

   
Re:再発と確定できない段階での治療の選択
向原徹(兵庫県) 2012/02/29
ミモザさま

初めまして、神戸大学病院、腫瘍・血液内科の向原と申します。

いただいたご質問に関してですが、結論から申しますと、主治医の先生が提案されているのように、再発部位が確認されてから治療を開始する、というのが妥当だと思います。

手術→化学療法後にCA125を測って、上がってくれば早めに治療を開始したほうがよいのではないか、という考えは以前からありました。そういう中、CA125の上昇によって治療を早期に開始することの意義を問う、1つの臨床試験がされました。

2010年に結果が報告されたこの臨床試験では、CA125を主治医にも分からない形で測定されました。患者さんを2つのグループに分けて、一方のグループではCA125が上がった時点で主治医に知らせて治療(化学療法)を開始され(早期治療群)、もう一方のグループではCA125が上がったことを主治医にも知らせず再発が臨床的に明らかになってから治療(待機的治療群)が開始されました。その結果、治療成績(どれだけ患者さんが長生きされたか)に関して、両群に差が全くないことが分かりました。しかも、待機的に治療をされた方のほうが、生活の質(QOL)や健康具合が高く保たれる傾向にあることも分かりました。この結果は、ある意味驚きであった訳ですが、早く治療を開始するのは、感覚的にはいいように思うのですが、実際はそうでもないことを示したものでした。

恐らく、主治医の先生はそのあたりもことも承知の上で、おっしゃっているのだと思います。それならば、CA125を測定すらしなければよかったのでは、と思われるかもしれませんが、実際の臨床現場では測定されることがほとんどです。やはり上昇しているのであれば、より詳細に問診、診察、必要に応じてCTなどがなされると思いますので、一概に無駄だとはいえません。

実際に診察をせずに確定的なことは言えませんが、現時点では経過をみられて、なにかお気づきの症状などがあれば、的確に主治医の先生に伝えられるのが大切なように思います。患者さまの訴えは、CTなんかよりも正確で早いこともよくあります。

お答えになればうれしいです。
Re:再発と確定できない段階での治療の選択
ミモザ(兵庫県) 2012/03/01
向原先生

丁寧なご回答、ありがとうございます!
そういった臨床試験があったのですね。
確かに早めに治療を開始して、また抗がん剤の副作用の辛さだけを早く味わって、結果は同じというなら、臨床的な再発が確認されるまで、不安な気持ちを抱えることにはなるけれども、自分らしい生活がより長く続く方を、母も私も望みます。

先生が仰るとおり、何か気付くことがあればすぐに主治医に相談するように母にも伝えます。

本当にありがとうございました。

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