掲示板「チームオンコロジー」

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治療とその選択
原発不明がんの治療について
ugo(広島県) 2012/08/16
妻が、がん治療中の者です。

妻は40歳前半で、私より1歳年上です。

3年前に急性膵炎から、膵臓に腫瘍が見つかり、粘液性嚢胞腫瘍(MCN)と診断され、膵臓尾部の1/3と脾臓の摘出をしました。
摘出された後の診断では、悪性所見なしでした。

しかし、その一年後に、片側の卵巣に腫瘍が見つかり、両方の卵巣の摘出および子宮の摘出をしました。
摘出された後の診断では、片側の卵巣は境界悪性ということでしたが、もう片側の卵巣および子宮には、腫瘍はありませんでした。

そして、その一年後に、膣に腫瘍が見つかり、膣の一部摘出をしました。この時には、腸の一部などに播種があったようです。
この治療の後、タキソールとプラチナ製剤の科学治療を受けましたが、2回で中断し、PET-CTの所見で腫瘍のあった、恥骨への放射線治療に切り替えました。

放射線治療後、約半年間は腫瘍マーカーの上昇なども無かったのですが、2ヶ月前に腫瘍マーカーの上昇およびPET-CTの所見で腫瘍が発見されました。

手術で摘出した部位を検査しても、腺ガンとしか分からず、原発が膵臓なのか卵巣なのか判断つかないと言われています。

この状態なので、医師も投与する抗がん剤について、まずはジェムザールを試してみようと言われました。

本人は、効果が分からない抗がん剤の治療を受けたくないようなのですが、どのように考えたら良いでしょうか?

   
Re:原発不明がんの治療について
向原徹(兵庫県) 2012/08/22
ugoさま

初めまして、神戸大学腫瘍・血液内科の向原と申します。
沢山の治療を重ねられ不安でいらっしゃると思います。

状況の把握に、いくつかのこと分かる範囲でを教えてください。

①膣に腫瘍がみつかったとありますが、それは婦人科の内診で内側にみつかったのでしょうか。それともCTなどで膣の外側にみつかったのでしょうか。
②タキソールとプラチナを2回で中断した理由はどう聞かれていますか?
③恥骨に放射線をあてたとのことですが、それは骨転移とお聞きになっていますか?それとも、恥骨に隣接した腹膜に腫瘍があったのでしょうか。
④上昇している腫瘍マーカーの種類とどの程度の上昇か分かりますか?
⑤現在PET/CTで病変のみられているのはどこですか?
⑥現在主に診療されている診療科は婦人科でしょうか?

ねほりはほり聞いてしまい申し訳ありません。

とても複雑な状況なので、ここでお答えできる範囲は限られてしまうと思いますが、もしよろしければお教えいただければ、何か手掛かりを書けるかもしれません。
Re:原発不明がんの治療について
ugo(広島県) 2012/08/24
向原さま

返信ありがとうございます。

質問していただいた部分に返答させていただきます。
①腫瘍については、CTで判明しました。外から組織検査も行いましたが、基本的には内側になると思います。
②TC療法を2回で中断したのは、本人の希望(抗がん剤の副作用がきつい)と、その時のPET-CTで恥骨への集積が見られたため、主治医の先生と相談して、放射線のみに切替ました。
③②の回答にもありますが、PET-CTの結果から骨転移との判断からです。
④腫瘍マーカは、すい臓の治療の後から検査していたので、CAE19-9だったと記憶しています。(もし違っていたら、後で訂正します)
⑤PET-CTで病変があるのは、前回と同じ恥骨の部分です。
⑥診療科は婦人科です。

色々あって、全てを書ききれていないのと、記憶違いがあるかもしれませんが、よろしくお願いします。
Re:原発不明がんの治療について
向原徹(兵庫県) 2012/08/24
ugo様

ありがとうございます。
まず、原発不明癌というのは、がんと診断されるかたのなかで、2-8%程度あるといわれています。意外と、何処からできたがんか分からないことも多いんですね。

当然、いろんながんをまとめたような病名ですので、それに対する絶対的な標準治療というのは存在しません。

ただ、いくつかの病態を示す場合はその限りではなくて、その中のひとつ、女性の腹膜だけにできる腺がんは、腹膜癌といって、卵巣癌と似た病態を示すことがあります。治療も卵巣がんと同様に行われます。

奥様のご病状を伺うに、腹膜に病変がみられたということで、質問をさせていただきました。

腹膜癌ということであれば、通常タキソールとプラチナ製剤が第一に考えられます。腫瘍マーカーではCA125という卵巣癌のマーカーが参考になることがあります(ただ他の癌でも腹膜に病変があると上昇します)。
ジェムザールは、腹膜癌や卵巣癌にも使われますし、膵癌にも使われる化学療法薬です。

原発不明癌では前にお話ししたように、決められたお薬はありません。ただ、タキソールとプラチナ製剤の組み合わせは、よく使われるお薬ですし、なにか組織像、病変の分布などから疑わしいがんの種類が推定されるならば、それに準じた治療薬を選択することもあります。

このようなことを参考にしていただき、主治医の先生に、どのようなお考えで、ジェムザールを選択されたのか、お聞きになるのが、一番の近道ではないかと思います。
婦人科の先生であれば、腹膜癌のことはよく精通されていると推測しますので、恐らく何かお考えがあってのことだと思います。

奥様の治療が、上手く進みますようにお祈りいたします。
Re:原発不明がんの治療について
ugo(広島県) 2012/08/27
向原 様

再度のコメントありがとうございます。

腹膜癌というのは、初めて伺いました。
これまでは、すい臓か卵巣かという事でしか話を伺ってませんでした。
ただ、やはり確定させるのは困難なようですね。

抗がん剤の選択については、これまで担当していただいていた婦人科では卵巣がんの治療という事で、タキソールとプラチナ製剤の投与のみ扱うという事でした。
したがって、抗がん剤については詳しくは、腫瘍科に行ってほしいと言われ同病院内の腫瘍科の先生に話をしたところ、まずはジェムザールを勧められました。

抗がん剤の効き方について、個人差があることは理解しているのですが、妻が抗がん剤全般に不信感を持っており、投与に積極的ではない状況です。

どの抗がん剤が効くかは、やってみないと分からない。
副作用がきつい。
どの抗がん剤でも完治は難しい。
といった所が、ネックになっているようです。

実際に、治療を受けていない私から、どこまで強要すべきなのか悩んでいる所です・・・
Re:原発不明がんの治療について
ugo(広島県) 2012/09/05
妻は、9/1に息を引き取りました。

何をするにも遅すぎたのかもしれません・・・

今は後悔の念で、いっぱいです。

色々と、お騒がせしました。
Re:原発不明がんの治療について
向原徹(兵庫県) 2012/09/05
ugo様

突然のことだったのでしょうか。
なんとお声掛けすればよいのかも分かりません。

後悔の念、とはどのようなものでしょうか。

亡くなられた患者さまのご家族がどのような気持ちでおられるのか、我々医療者は極めて無知なのかもしれません。
我々にできることは何なのか。

そのような気持ちになった際には、お教えいただけるとありがたく思います。
Re:原発不明がんの治療について
ugo(広島県) 2012/09/06
向原さま

再度のコメントありがとうございます。

妻の事は、もう取り返しがつかない事なので、もう書き込みは止めようかと思いましたが、私がお伝えする事で、少しでもお役に立てるのであれば、書き込みたいと思います。

私の最大の後悔は、妻に抗がん剤治療を勧めきれなかった事です。
妻も、担当医から説明を受けましたが、抗がん剤では完治することは不可能。延命効果のみ期待できるという話でした。

勿論、かなりの末期だったので、客観的に見れば、それが事実だと思うのですが、妻にとっては、その言葉は、かなりショックだったようです。

そして、三度の手術、抗がん剤、放射線と、度重なる治療を受けてきましたが、最終的にガンの転移が見つかり、これまでの治療は何だったのかと絶望してしまったのかもしれません。

それでも、抗がん剤にかけたいと私は思っていましたが、妻の説得にはいたりませんでした。

結果的に抗がん剤をしなくて、早くに亡くなった訳ですが、抗がん剤をしたからといって、よりよい最後を迎えられたのかというと、やはり仮定の話なので、何とも言えないなというのが、今の気持ちです。

取り留めのない文章になりましたが、なかなか言葉で表すのは難しいです。

また訪問しますので、返信いただけると幸いです。
見ず知らずの私に、お時間を割いていただき、本当にありがとうございます。
Re:原発不明がんの治療について
向原徹(兵庫県) 2012/09/06
ugoさま

ありがとうございます。

先日、ある会で緩和ケアに携わる先生に質問をしました。「患者さんが癌を患われて、それを新しい人生の発見と捉えるように導くにはどのようにすればよいか」と。
その答えは、「患者さんを意図的に変えようとしないことだ」というものでした。

確かに我々医療者は、とかく患者さんに何かを与え、患者さんを変えようとしがちだな、と思わされました。もちろん善意で行っているわけですが、患者さんの価値観や生命感というのは、極めて内面的なもので、我々が誘導して変わるものでは実はないのかもしれません。もちろん、最適な治療を考え、提案することは我々の仕事で、プロフェッショナルでありたいと思っています。しかし、同時に患者さんの価値観までコントロールしようとするのはとても傲慢な考えであり、常に、患者さんの考えを尊重するニュートラルな姿勢も持ち合わせる必要があると思っています。逆にそのことまで背負うのは自らに無用の負担をかけているように思います。

ご家族もある部分では同じなのかもしれません。
どのような状況であったのかは分かりませんが、奥様に化学療法を勧めきれなかったことで、ご自身を責められる必要はないように思います。仮定の話ですが、「旦那様が言うから」、ということでご自身の内面的な気持ちや価値観を曲げて治療を受けられたとしたら、それは大変不幸なことだったと思います。

分かったようなことを書いてすみません。
Re:原発不明がんの治療について
ugo(広島県) 2012/09/07
向原さま

度々のコメントありがとうございます。

私自身も、自分の思った通りにできない事が一番後悔すると思っていたので、妻の意見を尊重して無理な説得はしない事にしました。

なので、後悔はしないつもりでしたが、4歳にもならない息子と、その息子が本当に大好きだった妻の事を思うと、無念でならず、思わず後悔していると書いてしまいました。

やはり悪い結果が出てしまうと、簡単には納得いかないものですね。

人間の力には限界があって、いくら医学を用いても、どんなに祈っても自然の力には逆らえない、人生には限りがあると、つくづく感じています。

常日頃から心の準備が出来ていれば良いのでしょうが、凡人にはなかなか容易な事ではありません。

私は、これまでの思いを、お寺に相談に行って、少し気持ちが晴れました。
やはり、いつの時代でも、人の心を救えるのは宗教なのかもしれません。
(祈れば、何事も解決するというのは、明らかに間違いだと思いますが・・・)

長々と失礼しました。

これから更に医学が進歩して、突然の死に悲しむ人が少しでも少なくなればと思います。

私のような見ず知らずの者に暖かいコメントをいただける向原さまの様な、お医者さんが増えることを祈っています。

お身体に気をつけて、多くの方を救ってください。

本当に、ありがとうございました。

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