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治療とその選択
乳がん 生検(biopsy) 針か手術か(core or open)の選択
Reichert(海外在住) 2012/09/28
アメリカ在住の41歳で、2年位前に左胸がDCIS(非浸潤性乳管がん)と診断され、
その後部分切除、放射線を経て、現在ホルモン治療中(Tamoxifen)です。
実は先週右胸の生検をしたばかりで、そのことについての質問です。

右胸にしこりと言える程でもないような、
言いえて言えば少々ボコボコしている程度のものが見つかり、
マンモグラフィーとエコーをして、異常がないと太鼓判を押されましたが、
そのボコボコを発見した医師が、念のため外科に会って来いというので、行ってきました。
それで先週の生検(針ではなく全身麻酔で手術: open biopsy)に至った訳ですが、
結果やはり異常なしでした。
それで今更なのですが、あの手術って結局必要だったんだろうかという疑問が浮かびました。

外科の先生は、マンモとエコーのフィルムを見もせずに、
ちょちょっと触って、「大丈夫だとは思うんだけど、一応生検しておいた方がいいかな。」とおっしゃり、
針か手術かの選択を一応聞かされましたが、
先生の中でもう手術と勝手に決められている雰囲気で、
先生に乗っかる形であれよあれよと翌日手術になりました。
今考えれば、何故フィルムも見ずに生検しようなんて言えたのか、
私のカルテ他にどの程度目を通して、そういう判断をしたのか、
疑問はつきません。

医師の判断が正しいに決まっているというのが、
患者の固定観念だと思いますので、
私も疑いもせず、先生の判断を正当化しようと、
「私には病歴があるんだから、良性だろうとなんだろうと、怪しいものはとってしまった方がいいんだろう。」と考えていました。
さらに正当化しようと調べたら、思わぬ内容の新聞記事をみつけてしまいまして、
端的に言えば、外科が不必要なopen biopsyをし過ぎると言うことでした。
core biopsy(針)で充分なのに、やたらopen biopsyをしたりしたがったしするのは、
悲しいかなお金のためとしか思えないということです。
それでますますわからなくなっている状況です。
針か手術かはおろか、生検自体必要だったんでしょうか。
今考えれば、腫瘍内科の先生に相談してから、
生検に踏み切ればよかったかもしれません。

ご意見いただけたら有難いです。

   
Re:乳がん 生検(biopsy) 針か手術か(core or open)の選択
Ban(茨城県) 2012/10/01
Reichert様
日本の乳腺外科医です。

針生検か、手術か、あるいは生検自体必要であったのか。
その決定にいたるプロセスが適切であったのかという疑問が残ったままでいらっしゃるために、外科的生検を受けられたことにちょっと後悔されていらっしゃるのかと思いました。

生検が適切であったかどうかは画像所見などの詳細が分からないままでは、お話しすることはfairではないように思います。
また画像所見だけではなく、それぞれの方の状況に応じて、どのような検査が必要かはことなってきます。

41歳で乳癌の治療を受けられたことは、アメリカのガイドラインにおいては若年乳癌の範疇に該当します。もちろん家族歴(血縁の方でほかのがんを発症された方)も考慮しますが、お若くして乳癌を発症するということは、遺伝的に乳癌になりやすい状況にあるか検討が必要ということになります。もし、遺伝的な要因が関与する可能性がある場合には、以前に手術をした側だけではなく、反対側の乳がんの発症リスクも高まると考えられます。

放射線診断(マンモグラフィおよび超音波の診断の先生)および外科の先生は、おそらくそのような共通認識をベースに持っていらっしゃったと思います。

左の手術をなさったときにも、またその後も1年に1度は詳細な検査を行われたと思うのですが、大丈夫な可能性が高いとは思いつつも、これまでに見えなかったもの(少々ボコボコしたもの)が見えるようになったことが、放射線の先生は気になさったのでしょう。

日本では針生検を行うか、外科的生検を行うか、あるいは経過観察とするかは、多くの施設では乳腺外科医が判断します。実際に多くの外科医は自分で超音波や針生検を行ったり、マンモグラフィの読影をします。もちろん画像診断で悩む場合には、放射線科医や病理医の意見も参考に判断をします。

一方、アメリカでは超音波やマンモグラフィの画像診断は放射線科医が行い、画像で確認される病変に対し、病理学的検査を要するのか、については放射線科の医師の意見が基調となっているように見受けられます。実際には針生検は放射線科医が自分の裁量で行う場合も多いと聞きます。外科医は針生検を自分ですることは少なく、外科的生検を行うことが主体なのではないかと思います。

Reichert様の御施設で日常的に、どのように診断・生検プロセスが行われているのかわかりません。しかしボコボコを発見した医師(放射線科医?)は外科医に会ってこいと言ったということは、外科医に対して、なんらかの病理学的検査(針生検もしくは外科的生検)をしてくださいという意味を含んでいたのかもしれないと思いました。

診断においては日常から放射線科医、外科医と病理医が連携をとることが非常に重要です。自分の信頼する放射線科医や画像診断にかかわる医師が“気になる病変(画像所見)が出現した”といえば、外科医はある意味、阿吽の呼吸で“では病理学的検査が必要ですね”と判断したのではないでしょうか。

近年は針生検から様子を見ることが多いとは思います。しかし針では病変の一部分しか取れないので、病変のタイプによっては針で大丈夫であったも本当に大丈夫でとはいえない所見=いずれにしても手術で全体像を確認しないと大丈夫かどうか判断に迷う病変というものもあります。

Reichert様の場合にもおそらく画像診断医と外科医の間の連携という点で、Reichert様には説明しきれなかった上記のような診断決定プロセスがあったのではないかと推察いたします。

放射線科医が画像診断に対するどのようなレポートが作成されたのか、それをどう外科医が受け取ったのかということについて、Reichert様にもっとわかるようにお話があれば、このように悩まれなくてよかったのかと思いました。

なお、腫瘍内科医はこうした診断に関する判断をすることは日米ともに少ないかと思います。

医療事情は異なりますが、診断プロセスに関わる医療者の一人としてReichert様の経過に関する医療者の視点を推察してみました。

外科医として金銭的な理由で手術を勧めたのだとしたら悲しい限りです。
しかしながら乳腺診療に真剣に取り組んでいる病院・乳腺診療に携わるチームであれば安易に無駄な検査や手術は行わないはずだと信じてもおります。

Reichert様が今後も、信頼できる医療チームとともに、後悔なく経過を迎えられるサバイバーでありますようにお祈り申し上げます。
Re:乳がん 生検(biopsy) 針か手術か(core or open)の選択
Reichert(海外在住) 2012/10/02
Ban先生

ご親切なお返事、ご意見まことにありがとうございます。多少付け加えさせていただこうと思います。後もう一つ疑問同件で浮かんだので、Ban先生に限らずお返事いただければ幸いです(別便に記載)。

-遺伝子検査(BRACA)は陰性でした。

-私の医療施設に関して言えば、針生検は、放射線科医(radiologist)か外科ができますが、2年前の前回は外科にしてもらいました。

> 画像診断医と外科医の間の連携という点で、Reichert様には説明しきれなかった上記のような診断決定プロセスがあったのではないかと推察いたします。<
等のご指摘なのですが、私としてはまだ疑いが隠しきれず...登場人物を整理させていただくと:

放射線科医: 放射線の専門施設の先生(なので他の先生とは直接のつながりはありません)。いつも同じ先生ではない(なので私とも面識がありませんでした)。マンモグラフィーとエコーをして、異常なしと判断。この先生の書いたレポートが以下の先生方に送られる。

Radiation oncologist: 今回しこりのようなものを発見して、いつもより早めの検査を勧めた医師。マンモグラフィーとエコーの後、念のため外科に会うように勧めた。ちなみにこの先生に会ったのはその時の8月が初めて。(彼女の病院で放射線治療を受けましたが、その時の先生から変わってしまいました。)

外科: 初対面(前回手術をした先生は、随分前に引っ越してしまい、それ以来外科にはかかっておりませんした)。上記の病院と兼任はされてはいるが、独立してオフィスを構えている。

腫瘍内科: radiation oncologistと同じ病院のがんセンター所属。今回の件に関してはまだ話せていない。来週予約あり。

ということで、外科の先生と放射線科医との連携はあったはずがなく、外科の先生とがんセンターのお二方(Radiation oncologistと腫瘍内科)とも連携があったとは思えないのです。そして、今回関った医師たち全員(つまり腫瘍内科を除いた)、初対面だったということになります。なので私の病歴やカルテに関して精通していたとは言えません。

以上が付け加え等ですが、追加質問は、別便にいたします。
Re:乳がん 生検(biopsy) 針か手術か(core or open)の選択
Reichert(海外在住) 2012/10/02
別便でまた乳がん生検について質問させていただきます。前回が非浸潤性で、リンパ節転移の心配がなかったので、無知をさらけ出すようで恥ずかしいのですが。

主人が言うには、万が一今回のが陽性だったら、手術生検をした後では取り返しのつかないことになっていたと。針生検で胸のしこりが陽性とわかったら、色素を注射し、手術中にリンパ節を探しだして摘出し、がんが転移していないかどうかを調べると。主人が言うには、この方法は、しこりや怪しい部分を全部取り除いてしまってからではできないから、リンパ節を調べるチャンスを逃していたはずだとのこと。これが本当なら、ほとんどの乳がん生検はまず針で行われるべきということになりますが、どうなんでしょうか。

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