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患者と医療者のコミュニケーション
浸潤性小葉癌について
AK(埼玉県) 2012/10/11
38歳の主婦です
8月上旬術前の生検にて

組織学波及度:f 腫瘍間質:scirrhous 浸潤様式:INF-γ 脈管侵襲:1y0、v0
乳管内進展:(+) 組織学的悪性度:管腔形成 2、核異型 3、核分裂数 1、 grade 2
HER2:1+  PR:80%~90%  ER:80%~90%

左浸潤癌の告知、9月3日に温存手術


術後の病理結果
センチネルリンパ生検0/1 腋窩リンパ郭清なし 
追加の免染で浸潤性小葉癌と言われる

大きさ:肉眼的(20x15x9mm) 顕微鏡的:(22x48mm) 切除標本の割面所見:F(g)
割面肉眼分類:浸潤型 WHO分類Carcinoma 脈管侵襲:1y(0)、v(0)
核異型度:NSAS-BCで、Nuclear atypia:Score2、 Mitosis:Score1ですので
Nuclcar Gredeは1
断端:皮膚側 真の断端は陰性ですが、断端の2㎜以内に癌巣の進展を見ます
Ki67:5%

手術から1ヶ月もかかり病理の結果が出ました、聞いた事もない小葉癌、色んな所に転移しやすい癌と言われパニックになり、主治医に放射線とホルモン療法でいく予定ですと言われました、色々質問がありましたが答えを急かされその日のうちにホルモン治療が始まってしまいました。
(リュープリン+ノルバデックス)
質問です
1 術前生検で小葉癌と分かっていれば全摘になっていた?
2 皮膚側断端2㎜、追加切除もしくは全摘すべき?
3 転移しやすい癌なのに抗がん剤はやらなくていいのでしょうか
4 ホルモン療法を始めてしまったら抗がん剤は出来ないのですか?
5 核異型度が術前の生検結果と変わる事があるのですか?

小葉癌の情報があまりなく、毎日不安です。胸がなくなる事や抗がん剤の副作用は怖くありません。まだ小さい子供が2人います。
転移は絶対に避けたいです。
お忙しいとは思いますが、よろしくお願いします。

Re:浸潤性小葉癌について
向原徹(兵庫県) 2012/10/12
AKさま

はじめまして、腫瘍内科をしています向原と申します。


1 術前生検で小葉癌と分かっていれば全摘になっていた?
小葉癌は一番よくある乳管癌に比べて、腫瘍の端(マージン)が分かりにくいとされています。しかしながら、最近では小葉癌といえど、それだけで温存術を避けることはないようです。

2 皮膚側断端2㎜、追加切除もしくは全摘すべき?
断端に関しては、病理レポートの表記だけでは判断しづらく、実際に手術された先生に聞かれるのが最もよいと思います。

3 転移しやすい癌なのに抗がん剤はやらなくていいのでしょうか
小葉癌は乳管癌でみられる典型的な転移場所(骨、肝臓、肺など)以外の臓器に転移がみられやすいことが知られていますが、特に乳管癌に比べて転移の頻度が高い、とか予後が悪いとは言われていません。むしろ長期の予後は乳管癌よりも良いとも言われています。ですから、小葉癌であることのみを理由に特に化学療法を積極的にすることはありません。術前に化学療法をする場合がありますが、その場合、小葉癌は乳管癌に比べて効きづらいとされています。反面、小葉癌は乳管癌に比べて内分泌療法には一般に感受性が高いとされています。

4 ホルモン療法を始めてしまったら抗がん剤は出来ないのですか?
そういうことはありません。ただし、タモキシフェン(ノルバデックス)と化学療法を同時に行うと、化学療法→タモキシフェンを順次行うよりも治療成績が落ちたというデータがあります。仮に抗がん剤を始めるとすれば、恐らくホルモン療法(少なくともノルバデックス)は中断するのが妥当かと思います。

5 核異型度が術前の生検結果と変わる事があるのですか?
乳癌に限らずいろいろな癌で、腫瘍の中でも癌の顔つきにいろいろある(heterogenityとよばれます)と言われています。術前の生検の標本は針でとったのみの、小さなものですので、たまたまgradeの高いところがとれてしまったことはありえます。

おっしゃるように小葉癌は乳管癌に比べて情報が少なく、総合的に化学療法の適応を考えていく必要があります。
ここで、「あなたは化学療法すべき」とか、「あなたはこのまま内分泌療法でいくべき」とか、言えるようなものでは残念ながらありませんし、そうすべきでないと思っています。

恐らく主治医の先生は、私が書かせていただいたことも、頭にいれられた上で、治療に当たられていると思います。今一度、ご相談をもちかけられるのが一番よいかと思います。

納得された上で治療が上手く進むことをお祈りいたします。

Re:浸潤性小葉癌について
AK(埼玉県) 2012/10/12
向原様

丁寧な説明、ありがとうございます。
手術をしてくれた主治医は外来患者が多く質問をあまり聞いてくれず、病理の説明やなぜ化学療法をしないか、など理解出来ないまま進んでしまい不安でした。
向原先生の説明で自分の病気がやっと見えてきた気がします。
本当にありがとうございます。

あと1つ質問です

術中センチネルリンパ生検で陰性だったのですがセンチネルリンパが1個しかとれませんでした、3個中0個なら安心ですが1つでも同じ事ですか?私のセンチネルリンパは1つしかなかったと言う事なのでしょうか。
もちろん主治医にも聞きましたが答えはいただけませんでした。
Re:浸潤性小葉癌について
津川 (神奈川県) 2012/10/13
センチネルリンパ節は、検出方法によっても若干異なりますが、通常1~2個です。したがって、1個も3個もその価値は変わらないといえます。
ただひとつ問題点として、浸潤性小葉がんはがん細胞の大きさが小さく、そのリンパ節転移巣が見つけにくいという点が指摘されています。したがって、術中の病理検査のみならず、術後の病理検査でも転移が無いといえるかを確認する必要があるといわれています。その点は担当医に確認されてもよいかと思います。
Re:浸潤性小葉癌について
AK(埼玉県) 2012/10/29
再度質問させていただきます。
病理の結果

センチネルリンパ生検0/1 腋窩リンパ郭清なし 
追加の免染で浸潤性小葉癌と言われる

大きさ:肉眼的(20x15x9mm) 顕微鏡的:(22x48mm) 切除標本の割面所見:F(g)
割面肉眼分類:浸潤型 WHO分類Carcinoma 脈管侵襲:1y(0)、v(0)
核異型度:NSAS-BCで、Nuclear atypia:Score2、 Mitosis:Score1ですので
Nuclcar Gredeは1
断端:皮膚側 真の断端は陰性ですが、断端の2㎜以内に癌巣の進展を見ます
Ki67:5%

1:この場合私のステージはⅡaになりますか?
2:ステージを決める腫瘍の大きさとは肉眼的な事なのでしょうか。
3:ルミナールA?
4:予後や治療による再発率などは聞けていません。乳管癌と同じに考えていいのでしょうか。。。
5:また現在放射線とホルモン療法(リュープリン・ノルバデックス)で治療中ですが小葉癌のような小さな細胞の癌でも放射線の効果は同じですか?

術前(8月下旬)のMRIで背骨に白い影がありました。(骨転移?)主治医曰く、このでかたは違うと思う・・・と。
一応整形外科の先生にも診てもらいましたが同じでした。
その時点で痛みは気付いてなく、押すと少し痛いくらいでしたが、経過観察の今、押さなくてもツキンと痛むようになっています。(じわっと熱く感じるときもある)
主治医にも言いましたが「この時点での転移はまずないよ」と笑っておられました。少しほっとはしたのですが
6:じゃあ、骨の影やこの違和感はなんなのでしょうか。。。
7:現在放射線3週目です、もし転移があればこの放射線治療は意味があるのでしょうか。

質問が多くてすいません。
不安と恐怖でこの事ばかり考えてしまいます。
Re:浸潤性小葉癌について
向原徹(兵庫県) 2012/11/03
AKさま

こんばんは、なかなかお返事ができずにすみません。腫瘍内科医の向原と申します。ご心配が募りますね。

1:この場合私のステージはⅡaになりますか?
→いただいた情報からはおっしゃる通りstage IIaになると思います。

2:ステージを決める腫瘍の大きさとは肉眼的な事なのでしょうか。
→非常に専門的にいうと、診察時に触って測る大きさをもって判定する臨床的ステージと、手術標本を顕微鏡的にみて判定する病理学的ステージというものがあります。一般に、手術後の補助療法を考えるのに重要なのは、病理学的ステージです。

3:ルミナールA?
→ルミナールAとかBという分類は主に、浸潤性乳管癌をもとに作られた分類ですが、浸潤性小葉癌は、おっしゃるようにluminal Aに似た性質をもつといわれていて、臨床的にもそのように扱われることが多いように思います。

4:予後や治療による再発率などは聞けていません。乳管癌と同じに考えていいのでしょうか。。。
→再発率の目安を示すようなツールはもちろん乳管癌からのデータから作られています。そのため、小葉癌ではその解釈は難しいのですが、少なくとも小葉癌が乳管癌より予後が悪いとは言われていないので、乳管癌のデータを参考に予後も見積もりますし、治療方針もそれに準じてたてていくことが多いと思います。


5:また現在放射線とホルモン療法(リュープリン・ノルバデックス)で治療中ですが小葉癌のような小さな細胞の癌でも放射線の効果は同じですか?
→私は腫瘍内科医なので、この点に関しては無責任なことは言えませんが、少なくとも乳房を温存した場合、小葉癌だから放射線治療を省略しよう、という風にはなりません。

とてもよく勉強されていますし、とても的をえた疑問をお持ちだと思いますので、主治医の先生にうまく聞いて見られることもお勧めします。

無事に治療が進んでいくのをお祈りします。
Re:浸潤性小葉癌について
Ak(埼玉県) 2012/11/03
向原様

返信ありがとうございます。どこかでお医者様と繋がっていると思えて前向きな気持ちになれます。

実は昨日が主治医の診察の日でした。ここで書いた質問全ては聞けなかったので、お答えいただき感謝しています。
放射線治療が始まって初めての診察でした。
ホルモン治療で早速生理がとまって、そのせいか反対側の乳頭の奥が腫れてグリっとするものがあり、まさかこんなすぐに・・・なんて思いながら「触診で診てもらおう」と思ってましたが、反対側の触診はありませんでした。
訳を言って診てもらいましたが、ちょっと呆れてた感じでガーっと触って終わりました。。。
通常両方の乳房の検査をすると思っていたのですが。(特に小葉癌なので)
なかなかうまくコミュニケーションがとれないこの時に、ここで返信、回答をもらえて安心できます。
これからまだまだ長く続く治療なので少しずつでも主治医と打ち解けていけたらいいなと思っています。


骨転移の事ですが、急いで原因を追及する必要はないのでしょうか、生存率に差はないとはいえ違うなら違うと納得したいのですが。。。
昨日の診察時にも聞いてみましたが半年に一度検査していくから、と言われました。
乳がんの骨転移と診断がつくのは痛みでしょうか、転移じゃない場合影があることは事実なので他の病気なのでは?
違う病院の整形外科で診てもらおうか迷っています。
判断のつきずらい骨の影って悪くなるのを待つしかないのでしょうか。
Re:浸潤性小葉癌について
三浦裕司 (東京都) 2012/11/04
虎の門病院で腫瘍内科をしております、三浦と申します。

ひとつだけ、アドバイスをさせて下さい。
主治医に、「わたし、不安なんです。」と、お気持ちを直接お言葉で伝えたことはありますでしょうか?本来ならば、医師はすべての患者さんが、不安を抱えている事を十分理解しているべきで、患者さんからすれば、そこは大前提でしょ、って思うかもしれません。ただ、その一言、気持ちを伝えるだけで、人と人の気持ちが一気につながる事があると思います。

もし、既にお伝えしているのであれば、申し訳ありません。
Re:浸潤性小葉癌について
AK(埼玉県) 2012/11/04
三浦様

アドバイスありがとうございます。
確かに自分の気持ちははっきり言わないと駄目ですよね・・・。
初めての診察からオーラと言うか威圧感があってなかなかうまく話せませんでした。当初から私は恐怖で診察中に泣いてしまったり震えが止まらなかったり、面倒な患者だろうなと自分でも思っていましたが、聞くべきことは聞かなきゃと毎回覚悟して診察に臨みます。
でもしこりや背中の痛みの事を話したら笑われました。
「笑わないで下さい、毎日すごく怖いんです」と伝えました。
「こんなすぐに転移なんて無いから」と。
笑われたのはショックでしたが同時にホッともしました。
主治医の治療方針は当然軽い判断ではなく考えがあっての事だと思うのですが、その考えを聞きたいのです。

ステージ2の浸潤性小葉癌で抗がん剤無し、医師によって違うと思いますが抗がん剤をするしないで再発率の違いや何故無しでもいいのかなど、主治医の考えを聞いたのですがはっきりした答えはありませんでした。ホルモン治療が始まってる現在でも悩み中です。(化学療法をした方がいいんじゃないかと・・・)

これからはもっと気持ちを出していけたらと思っています。
アドバイスありがとうございました。

Re:浸潤性小葉癌について
あい(東京都) 2012/11/05
AKさま

はじめまして。告知から5年になる乳がん患者あいと申します。

患者にとって主治医とのコミュニケーションの取り方、難しいですよねぇ。患者サロンに参加してもよく話題に上ります。こちらのサイトで返信してくださる先生方のような医療者ばかりなら良いのに、と私も以前は思っていました。

私の主治医はとても素っ気ない方で、細かく説明をしてくださらないのですがやることが早く、あれよあれよという間に治療がどんどん進んでいった、というのが正直な感想でした。
こちらから質問をすれば丁寧に説明してくださるのですが最初は何を質問してよいのかもわからない状態でしたから診察時間もとても短かったです。そして、やはり「ここが痛い、、、動悸が気になる、、、」等の訴えには「気にしないように」で終わりでした。

私は術前化学療法、手術、放射線療法を経て今はホルモン療法中です。素っ気ない先生でも、今にしてみれば化学療法中は随分と気を遣って戴いたように思います。そして、術後の素っ気無さにまたまた「え!?」と思いましたが、

「先生が素っ気ないのは私の病状に心配がない証拠なんだ」

と気がつきました。でも何も言わないと診察は本当にあっという間に「静か~に」終わってしまうので、自分なりに勉強してみて疑問に思ったこと等を、お忙しい中なので1日に一つ、伺ったりしています。おかげさまで今ではだいぶお話し易い関係になれました。

「がん」と告知を受け気が動転してしまうのは仕方のないことです。でも手術も終わり主治医に笑われたということは今の段階ではAKさまの病状に心配がない証拠だと思いますので、どうかあまり考え過ぎずにお過ごしください。

医療者と患者といえども基本は人間関係です。いくら相手の立場に立って、等と言われても経験のないことは分からなくて当然。「がん」を熟知している先生方でも「がん患者」ではありません。ならば私は患者のプロになろう!
これが現在の私の目標です。

放射線治療をされているのですよね、毎日の通院ご苦労様です。寒くなってきましたし、どうぞお気をつけて。
AKさまの治療が納得のいく形で進まれることをお祈りしています。
そして、一緒に患者のプロ、めざしましょう。

あい
 

Re:浸潤性小葉癌について
AK(埼玉県) 2012/11/05
あい様

温かいお言葉ありがとうございます。
5年無事に過ごされているんですね!!おめでとうございます!

確かに笑われた時「私って安心していいタイプ!?」なんていい方にもとらえましたが、細胞が飛びやすいタイプの癌で断端陽性・・・抗がん剤無し・・・この3つを考えるとやはり怖くなってしまいます(汗)
3歳と5歳の子供がいて再発する訳にはいかないのです。後悔するようなことがあってはならないのです。

あい様の主治医と同じく私の主治医もすごい早さで決めていきます。この治療が当然だ!!って感じ。。。頼もしくもありますが(笑)

でんと構えて心配してなさそうな主治医を信じて、悩んでばかりいてもしょうがないかな、と思っています。

あい様、同じ患者さんからの励まし、うれしく思います、お互い気をつけて頑張りましょう!!
ありがとうございました。
Re:浸潤性小葉癌について
Saran(兵庫県) 2013/08/15
妹が2ヶ月前に突然浸潤性小葉癌からの骨転移ステージ4と診断され抗がん剤治療を三回ほどしていますが副作用で髪の毛は抜け白血球もかなりさがっています。
主治医の先生は1000例ほどの症例をみてきてるようですが非常に稀なケースと言われています。
最初治療はタキソールとゾメタを使い二回目からアブラキサンとランマークを使用してるようです。
いろんな本を読むと化学療法も良し悪しだとするものもあり何が良いのか素人にはわかりかねます。
本人は先生を信頼してますが今の化学療法で効果がなければセカンドオピニオンで遺伝子組換えで癌をピンポイントで治療できるところがないか調べてほしいと言ってますがそのような病院や医師がいるのか詳しくわかる方がいたら教えて下さい。
Re:浸潤性小葉癌について
三浦裕司 (東京都) 2013/08/31
Saran さん

虎の門病院で腫瘍内科をしております三浦と申します。
妹さんが乳がんと診断されたとの事で、さぞかしご心配な事と拝察致します。
また、ご本人さんと主治医の間に良い信頼関係が構築されているとの事で、非常に素晴らしいことだと思います。
お尋ねの治療法についてですが、インターネットや新聞などで使用される事の多い、「遺伝子」や「ピンポイントで」などの言葉から、どうしても「最新の治療」や「新薬」、「治験」というイメージを連想されると思います。しかし、場合によってはこのようなkey wordに該当する治療法の中には、既に実臨床の現場で標準的に使用されているものもあります。(ただし、がんの性質によって効果があるもの、ないものなど適応がありますが)

拝察致しますに、現在の使用中の化学療法の副作用に少なからず辛い思いをされていることや、今の治療が効かなくなった後の治療の事について、ご不安があるのだと思います。まずは、その思いを主治医にお伝え頂けると良いと思います。そのタイミングで、「ピンポイントにがんに効くような薬の話しも聞いたんですが・・・」と話しを切り出しても良いかと思います。

三浦

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