掲示板「チームオンコロジー」

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治療とその選択
タモキシフェン耐性乳癌について
ひかり(北海道) 2007/09/10
色々検索したのですが、あまり理解できない状態でこちらの掲示板に当たりました。
2002.12左乳癌全摘でホルモン治療はノルバデックス22ヵ月後ゾラデックス15ヶ月その後副作用で無治療7ヶ月。2006.7よりノルバデックス再開しました。2007.2右乳癌発症、全摘しました。
病理結果が左右で違うので、どちらに重きをおくべきかとインターネットで相談したところ「どちらも感受性はあるが左についてはタモキシフェンは耐性と考えるべきでしょう」との回答でした。
左 ER(+)31.7% PgR(+)93% ステージⅡ リンパ郭清 0/11
右 ER(+)80.0% PgR(-) 5% ステージⅠ リンパ郭清 0/ 8
現在もタモを服用中です。私の場合ホルモン療法はあまり効果がないのでしょうか?この先閉経後にAIを使う場合の効果はどうでしょうか? 
タモキシフェン耐性について教えて下さい。よろしくお願い致します。


   
Re:タモキシフェン耐性乳癌について
上野直人(海外在住) 2007/09/10
単純に与えられた情報からはtamoxifen耐性とは言えないです。おそらく免疫染色によってER, PRのパーセンテージを算出しているのだと思いますが、>10% あれば感受性があるというのが常識的な考え方です。ER, PRをどのように判断するかは大きな論議に常になっています。

さて、総合的に判断するにはこの情報だけでは足りません。
乳ガンにおいては、更に
1. TNM Stage
2. HER2の判定
3. リンパ節の数
4. Lymphovascular status
5. また、両腫瘍の診断時期
6. ホルモン療法の副作用の中身
7. 閉経状態
8. 年齢
など様々な要素がわからないとなかなか簡単に判断できません。また、これらがわかったとしても、正確な判断ができないのが正直なところです。ちなみに、主治医は何故、耐性だと言っているのでしょうか?いまいち理解できていないのですが?
Re:タモキシフェン耐性乳癌について
ひかり(北海道) 2007/09/11
先生とても早くに回答いただきありがとうございます。
タモの耐性うんぬんは主治医ではなく、インターネットでの相談から得た回答です。私自身もタモ耐性という言葉を知らなかったので、これからのホルモン治療に不安があり、質問させていただきました。詳細を書くと長くなると思い簡潔にしたつもりでしたが、内容としては下記に掲載されています。
http://www.kbcts.gr.jp/Pt/soudan.asp#No.7118
主治医とは何でも話しあっていますが、診察時に聞くのを忘れたり、後で思い出した事を電話再診(検査結果)の際に質問しています。今は3~4ヶ月に一度の受診です。10月受診予定なのでその時の参考にしたいと思っています。よろしくお願い致します。
Re:タモキシフェン耐性乳癌について
上野直人(海外在住) 2007/09/11
読ませていただきました。タモキシフェンを原発性の乳ガンの術後療法としてのんでいたら、反対側に新たに原発性乳ガンがみつかったということですね?この反対の癌がタモキシフェンに耐性であるとかという質問でしょうか?
Re:タモキシフェン耐性乳癌について
ひかり(北海道) 2007/09/11
先生の仰る通りです。最初は左乳癌ホルモン治療中に左の再発・転移が無く右乳癌の発症があったので、左右関係なく単純にホルモン療法が効いてないのかと思ったのです。
ただ相談室の先生は左がタモ耐性だというので、私も意味が解らなくなり検索した次第です。
また、右はPgR(-)なので、右がホルモン療法の効きが悪いのかと思い、左右どっちの病理結果に重きをおいてこれからの治療をかんがえるべきかと思ったのです。
左が耐性か右が耐性かで考え方が違うと思うのですが、先生は左右どちらかでタモ耐性と思われますか?
Re:タモキシフェン耐性乳癌について
上野直人(海外在住) 2007/09/13
非常に難しい質問ですね。
タモキシフェンを使用しながら対側の乳房に癌が発現したことは、新しい癌がホルモン療法に効きにくい可能性を示唆しています。でも、あくまで示唆だけです。実際にタモキシフェンが癌を促進する症例がありますが、このケースに当てはまるかは疑問です。
おそらく、この状況でホルモン療法をするならaromatase inhibitorを使用することを考慮しますが、perimenopausalであることを考えるとGnRH agonistを更に使用するかを考える必要があります。つまり、完全にchemical postmenopausalを誘導することが重要です。また、oophorectomyも考えられます。

色々と読ませていただきましたが、ネット上で提供できるのあくまで、限られています。論理的には色々と言えますが、やはり主治医とのやりとり中で治療を模索することが大切です。
Re:タモキシフェン耐性乳癌について
ひかり(北海道) 2007/09/13
先生回答ありがとうございます。やっぱりなぁ~という気持ちと、ちょっとへこんでいます。すぐに返事かけませんでした。
右乳癌の発症は、のほほんとしていた私にホルモン治療についてもっと知識を得たいという気持ちにさせました。なぜだかホルモン治療をしている5年間は何も起こらないと思っていたのです。
両側全摘の私は外科的なことより、これから腫瘍内科の治療についての知識が必要と思いました。
ここの掲示板に辿り着く前にタモ耐性の検索でフルベストラントを知りました。
アストラゼネカ発表で【フルベストラント】はERの遮断、減少も行い、現行の抗エストロゲン療法に耐性を示して増殖したがん細胞に対して活性を示し、アナストロゾールよりも関節疾患を招くことが有意に少なかったとありました。
素人考えですが、正に私が望む治療薬と思いました。何故なら、閉経後に使うかもしれないAIの情報を集めていて、アリミデックスの副作用で関節疾患がかなりの率である事を体験者談で知っていたので。
ましてや先生方の回答を聞いては尚更です。でも何年先に認可されるか解らず、術後予防に使えないとなると今の段階では閉経状態にする事が優先すべき事なのでしょうね。
ゾラ単独でも関節痛、腱鞘炎がひどくて二年がんばれなかったと言うか、そこまでがまんしてQOLを下げる必要があるのかと思ってしまいました。(すぐにでも命に関わる状態だったらきっとがんばったと思う)
乳房全摘は再発防止の為何とも思わなかったのに、卵巣摘出には抵抗を感じてしまう。
中リスクでも低リスクに近く微妙なラインで選択に迷いますが、これっぽっちの病理結果で贅沢な悩みかも知れないです。
何がベストかネットでの相談、質問は全て主治医に報告し、これからの事を相談したいと思います。大変参考になりました。ありがとうございました。

* 最後に余談ですが、ここの掲示板は掲載画面で修正をかける事ができるので間違いだらけの文章で載っても安心です。すばらしい!
Re:タモキシフェン耐性乳癌について
上野直人(海外在住) 2007/09/13
知識を得ることは希望につながります。でもその知識もエビデンスの高いものから低いものまで様々です。患者と家族はそのなかで医療従事者とともに自分の納得できるものを模索必要があります。でも一番大切なのはエビデンスを通して良い医療をうけることです。エビデンスから外れるときはその明確な正当化する説明が必要です。
1.薬の副作用に関しては実際に薬を使用してみないとなかなかわからないので、特にホルモン療法の場合は短期に使用して様子をみてもいいのではないでしょうか。
2.年齢的に今の骨の健康状態、bone mineral densityを確認する必要があります。特にこの治療に関しては、閉経状態を維持することとestrogenを低下させるすることが大切です。
3.米国では、遺伝子判断法、OncoTypeDxを使用して、化学療法が必要であるかを判断することもあります。ただ、この検査法は後ろ向けにしか臨床試験が行われていないことからエビデンス的には確立されていませんので標準治療とは言えません。2007年9月の時点で前向けの臨床試験が行われています。

情報過多になりやすいですが、主治医とじっくり相談してください。もしじっくりと話し合って結論に至らない、あるいは納得できないなら、セカンド・オピニオンを取ることを考慮してください。

掲示板を他の方々に勧めていただければ幸いです。このサイトはセカンド・オピニオンサイトではありませんが。論理的にエビデンスの吟味および、患者としてどのように医療に取り組むかのテーマに関しては大歓迎しています。
Re:タモキシフェン耐性乳癌について
ひかり(北海道) 2007/09/14
先生いろいろご配慮いただきありがとうございます。
『特にホルモン療法の場合は短期に使用して様子をみてもいいのではないか』との事、とても気持ちが楽になりました。
治療方法を変更し、挑戦して断念の繰返しでは何の意味も成さないのではないか、主治医にも申し訳ないとの思いもありましたので。
骨密度はゾラを始める前に調べてもらい、今も定期的に調べています。(閉経前後の比較をしたかったので)
新しい治療を始める前に現在の状態を把握しておく事はとても大切だと思います。
9/6に婦人科受診の際、先生が今月中に生理がくると思うと言ってましたので、早くホルモン値の検査を受けたいです。
その結果を持って、10/1に乳腺外科に行く予定です。今迄は自然に閉経するのを待ってAIにスイッチと思っていましたが、もっと積極的な方法にトライしてみてもいいかなと思えてきました。
患者会に入会していない私は掲示板で情報を得る事が多いです。自分と同じパターンの患者の治療法、副作用を参考にしていました。
両側乳癌の相談はあまりなく、今後自分と同じ状態の方達にここでのやり取りが少しでも参考になればと思います。
(相談室で詳細に説明したのはその為でもあり、ここでの質問を簡潔にしたのは、セカンドオピニオンのようにならないように、診断を仰いではいけないとの思いがあったからです。自分の質問の仕方では上野先生から回答はこないかも知れないと思ってました)
術後治療、経過観察が長期に亘る乳癌患者にとって、ここの掲示板はとっても意義のあるものと思います。これからものぞきにきます。本当にお世話になりました。ありがとうございました。

”医者の不養生”にならないよう、先生もお身体大切に!






その後の報告&リンクのお知らせ
ひかり (北海道) 2008/01/28
上野先生、その節は大変お世話になりました。
ホルモン値の検査をしました。
http://aerochan.blog33.fc2.com/blog-entry-14.html

今はいろいろ迷いましたが子宮筋腫、子宮内膜と相談しながらタモキシフェンで様子をみて、ちょっとでも婦人科に影響がでたら、LH-RHアナログ再開を考えようと思っています。
(婦人科検診は3ヶ月毎にしています)
報告はこれで終わります。

今日、こちらのサイトを訪問したところ、リンクについての書込みがありました。
私もブログを開設したのでようやくこちらのサイトをご紹介する事が出来るようになりました。

リンク貼らせていただきましたので、拙いブログですが一度覗いていただけたら嬉しいです。
http://aerochan.blog33.fc2.com/blog-entry-68.html

羅患した人だけのSNSでLiving with Cancerというグループです。URL: http://www3.to/lwc
ここで見ていただいた方がより切実な患者さんが多いかなと思い追加しました。

★最近乳癌患者で治療方法が狭められた方に、こちらのサイトを紹介しました。
 今、彼女は免疫療法を始めるのに、東京で採血して来たところです。
 いつかこちらのサイトに訪問するかも知れません。
Re:タモキシフェン耐性乳癌について
上野 直人(海外在住) 2008/01/29
ありがとうございます。早速訪問させていただきました。ブログ頑張ってくださいね。応援しています。
Re:タモキシフェン耐性乳癌について
nozomi(大阪府) 2008/02/01
この記事もタモキシフェンが不成功に終わることについて書かれています。どなたかのお役に立つかもしれないので貼ります。

http://www.cancerit.jp/CancerBulletin/diary.cgi?no=27

遺伝子多型、および一般的に投与される多くの治療薬(セロトニン再摂取阻害剤など)は、ともにチトクロム(CYP)2D6という酵素の活性に影響を与えうる。
ホルモン剤の途中変更について
はち(海外在住) 2008/05/18
はじめまして
ホルモン剤の途中変更についておたずねします。
家族の都合でマレーシアに住んでいましたが、残り後2ヶ月というところで、乳がんが見つかり外科手術をしました。温存だったので放射線治療まではこの国で行う予定です。夏以降は中国転勤が決まっています。日本へは一時帰国で帰りますが、主治医は当然ながらおりません。

ホルモン治療について訪ねたところ、「ER陰性だから、タモキシフェンではなく、アリミデックスを」と処方されました。もし、日本へ帰ったら閉経前にはアリミデックスは出さないだろうということ、保険の適用もないと聞いています。その際薬は変更になるのではと予想しています。アリミデックスを2ヶ月くらい飲んだ後で、変更は問題ないと思われますか?それとも、ホルモン剤は飲まずにおいたほうがいいでしょうか?

状況について説明します。もうすぐ41歳、閉経前、生理の周期は22日から26日。ステージ1、右温存手術。
病理の結果、肝臓、肺には転移はない。骨シンチはやってない。わきのリンパ郭清の結果、0/16 転移はなし。湿潤性の癌。レセプターPgR  3+(90%以上)、ER陰性。ハーツー 陰性。核グレード、核異型、(英語の訳がみつからず、はっきりしないが)分裂像は見られない、グレード1という結論。腫瘍断末は、がん細胞なし。腫瘍径 10×6mmで、リンパ管、静脈侵襲なし

どこへも相談するところがなく、日本の友人からこのサイトを聞きました。今後は、日本の病院で主治医をさがすか、中国の都市から近い香港に出かけて病院を見つけるかも考えが決まっていません。中国に住むのは、3年から5年と思われます。
とりあえず、ホルモン剤の変更についてご意見を頂けると、大変心強いです。
お忙しいと思いますが、どうぞよろしくお願い致します。

Re:タモキシフェン耐性乳癌について
shige(東京都) 2008/05/18
直接どのようにしたほうがいいですよという意見は掲示板の性質上避けさせていただきますが。。
1)ER-PR+なのでタモキシフェンではなくアリミデックスという選択の方法は現時点では標準的ではありません。
2)明らかに閉経前のかただと思いますが、もしリュープリンやゾラデックスといった生理をとめる(卵巣機能をとめる)薬を一緒に使用していないのなら、アリミデックスは全く効果がないです。保険の問題ではなく、卵巣機能のあるかたには効果がないという問題です。
3)同様の患者さんがおられたら、タモキシフェン、タモキシフェン+リュープリンorゾラデックス、リュープリンorゾラデックス(これは事情によりですが)、なにもしない、の4つのうちのどれかを選ぶことが一般的と思います。
Re:タモキシフェン耐性乳癌について
上野 直人(海外在住) 2008/05/18
はちさんへ

まずは、掲示板に書いていただきありがとうございます。
病名のサマリーの書き方がわかりやすくてとてもいいです。これは誰かに教えていただきましたか。
このように癌の病歴において、年齢、病気のステージ、病履歴、治療歴、さらにはperformance status (PS)などを書いていただけると医療従事者としては、まず患者の理解力の確認および、コミュニケーションがとても効率よくなります。

Shige先生の書きましたように、すくなくともArimidex (aromatse inhibitor)は現時点では標準ではありません。とくにArimidexなどの薬は閉経前には効きません。なざなら、aromatase inhibitorは脂肪を女性ホルモンに変換させる酵素を阻害する(止める)薬です。ですので、いくらこの薬を使っても閉経前なら、女性ホルモンが卵巣から出てくるのであまり意味がないのです。ですので、他の薬を使って卵巣機能を押さえる必要があるのですが、それでさえ、エビデンスがまだ出そろってない現時点(2008年5月)ではそろっていません。

是非、セカンドオピニオンを取ってください。
また、その後の結果を教えてください。


Re:ありがとうございました
はち(海外在住) 2008/05/19
shige先生、上野先生、お忙しい中、早速のお返事ありがとうございました。
良くわかりました。薬を目の前に、あわてて飲み始めるのはやめることにします。お聞ききして良かったです。日本でセカンドオピニオンを頂き、またご報告します。7月になると思います。

病歴については、このホームページを教えてくれた友人が、こういうことをポイントとして良く聞いたり、レポートを読んだりするように。と日本から教えてくれました。彼女も乳がん経験者ということもありますが、仕事で乳がん関係をしています。その関係で上野先生のことを存じ上げており、患者思いの信頼できる先生だから質問してみたらいいよ。と教えてくれました。

海外に住むことが多いと(特にアジア圏)健康なときは問題ないですが、病気になると不安です。でも、このホームページのおかげで、標準の治療を知ることができて、大変ありがたいです。
お仕事はお忙しいと思いますが、ぜひホームページを続けて頂きたいと思います。
ありがとうございました!

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