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治療とその選択
乳がん ER.PGR強陽性 術後、ホルモン治療の選択について
ひわ (大阪府) 2013/07/07
49歳 閉経前で乳がんが発覚。温存手術・放射線治療を受けました。術後、最大径1.5センチ センチネルリンパ節にマイクロ転移(1/2)、断端5mmでclosed、ER.PGR共に100%、Her2 +1 ki67が25%とのことで、TC×4を受けました。現在タモキシフェンのみです。 

 TC中から生理がなくなり約1年になります。そろそろ閉経かと思い今後のホルモン療法についてご教授下さいませ。

 ① ホルモン受容体強陽性の場合、化学療法(抗がん剤)は効かないと言われますが、主治医は「上乗せ効果が少ない」という表現をされます。微妙に異なるように思うのですが、これは再発した場合にホルモン受容体が現行であれば「抗がん剤は効かない」ということを意味しているのでしょうか?
 ② 検査結果に基づいて、今後、タモキシフェン→Al剤にス
イッチされると思います。また「これからはホルモン療法は10年かなー」と言われています。再発リスクの高い時期をAl剤で、それ以降、再びタモキシフェンに戻す選択肢はありますか?CYP2D6で変異はありませんでした。

 どうぞよろしくお願い申し上げます。

   
Re:乳がん ER.PGR強陽性 術後、ホルモン治療の選択について
Koji(神奈川県) 2013/07/22
ひわさま

ご質問ありがとうございます。コメントさせて頂きます
まず、①ホルモン受容体強陽性の場合、化学療法の「上乗せ効果」についてですが、これは一定期間術後乳癌患者さんを経過観察して行った際にどの程度の割合で再発を認めるか?過去の臨床試験のデータから、ホルモン療法のみの患者群とホルモン療法に先立って何らかの化学療法が行われた患者群を比較して再発率がどの程度異なったかが比較されています。この結果から推測されることとして、ホルモン受容体強陽性、HER2陰性、Ki-67低値と言った再発リスクが低いと考えられる場合はこの二つの群間に数%程度の差しかない一方、Ki-67が高値などの再発リスクが高いと考えられる場合では前述の二つの群間には数十%の差があると予測されます。主治医はこの差の事を、化学療法の「上乗せ効果」として表現していたのだと考えます。
また、万が一再発した際に化学療法が効かないのでしょうか?そのような事はありません。そのときの状況にもよりますが、抗癌剤が有効な治療方法として選択される事もあります。
 ②の今後の治療方針に付いては、ホルモン受容体陽性乳癌の再発リスクは余り経過年数で変化せず、高くはないですが、変化も乏しい様です。従って、経過年数でタモキシフェンとAI剤を飲み分けるという方法は一般的な治療法として行われていない所であります。確かに、閉経となればAIにスイッチする事にはなるでしょう。副作用が原因でAIからタモキシフェンに戻す事もあるでしょう。
また、タモキシフェンの内服期間を5年と10年で比較した試験が2つ、発表されました。これを受けて実際の臨床で全ての患者さんにタモキシフェンを10年飲ませるのか?長期間服用する分、副作用や子宮内膜癌の発症リスクが若干高くなる事もあり、更に5年タモキシフェンを長く飲む事によるbenefitがどれほど得られるのかという事も考える必要があると思われます。やはり主治医と良くコミュニケーションを取って決められるのが良いと考えます。
ご参考になれば幸いです。
Re:乳がん ER.PGR強陽性 術後、ホルモン治療の選択について
ひわ (大阪府) 2013/07/29
  Koji先生

 ご多様中、丁寧なご回答をありがとうございました。術後、化学療法の選択が課題となりましたが、同時期より大幅な人事異動が行われたために、主治医はもちろん、その他のスタッフも「全とっかえ」になりました。
 高次医療機関なればこそ、人事異動も致し方ないと納得しております。また、幸運であれば、今後も起こりうるべき事柄です。
 ご指摘どおり、新しく来られた先生方と良質なコミュニケーションを形成していただくべく努力してまいります。

 このたびは、ありがとうございました。

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