掲示板「チームオンコロジー」

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治療とその選択
原発不明がんについて
がじゅまる (千葉県) 2013/09/10
原発不明がん、余命6~9ヶ月と宣告された母のことでご相談させていただきます。
(3年前には、私自身の乳がん治療での疑問点に、親身にアドバイスを頂き深く感謝しております。
お陰さまで、大勢の同志にも恵まれ、自家組織での乳房再建も終え、ホルモン治療を継続し
3年半経過いたしました。)

金沢に独居の実の母は69歳、既往症は特になく、昨年末から今年春にかけて脇腹の帯状疱疹に
かかり、神経痛が残っていたため、リリカをこの夏まで飲んでおりました。
若い頃「卵管けっさつ」をしておりますが、出産後は婦人科通院したことはありません。

3週間前、どこにも痛みもなく突然腹部が膨らみだし、胃腸科で便秘薬など処方されましたが、
改善されるどころか腹部は膨らむ一方で、再度胃腸科にてエコーをしてもらったところ、
多量腹水が確認されました。翌日大学病院で診察を受け、翌日から検査入院となりました。

頭の先から足の先まで検査をしても明らかな病変が見当たず、唯一腹水の中に
アデノカルチノーマ「腺がん」が少し?見つかったため、9/9に「原発不明がん」と診断されました。
原発不明がんは、治療法が確立されていない難治がんと情報を得ています。
(過去の掲示板も拝見いたしました。)

主治医から提示された治療法は3つです。
1、化学療法(パクリタキセル+カルボプラチン)
2、化学療法+CART(腹水を抜きABMなど栄養素をろ過して体内に戻す)
3、無治療(決して、諦めるという選択ではないと解釈しています。)

母は現在、6リットル以上の腹水があり(入院1週間後に1度2リットルを穿刺しましたが
ほどなく増えて元通りです)、利尿剤を使用していますが、先週末より足に浮腫みがでてきました。
体重は腹水分らしく10キロ近く増え、食事も喉を通らず、上半身はどんどん痩せ細ってきて
います。主治医からは、化学療法は通院で行えるほどの身体状態でなければ、実施できないと
言われています。経験者の私から見ても、化学療法に耐えられる状態ではないと思います。

お尋ねしたいのは、

①腹水から始まった原発不明がんには病期/ステージがあるのか?現在、一歩進んだ有効な
治療法があるのか?

②腹水に腺がんがひとつでもあれば絶対にがんなのか?今更ながら、ウイルス性の疾病は
考えられないのか?

③治療法が確立されていないとなれば、他施設のセカンドオピニオンをする価値があるのか?
がん高度先進医療センターのある病院で治療を受ければ、可能性は広がるのか?単なる延命
なのか?
(転院希望の場合は、その病院の外来で1から検査を受ける必要があると聞いてます。
入院中で身動きもとれない状態で、別の病院に転院するのは現実的ではありません。)

唯一、母はお若い主治医の先生と相性が良いようで全面的に信頼をおいています。主治医は
物事をはっきりとお話しされるので、家族は心を震わされることもありますが、がん患者である
私にとっては理解しやすく、やはり信頼をおいています。

パクリタキセルを経験した私からは、母があの副作用に耐えうるか不安です。
ならば、「3、無治療」を選んで、現在の病院でCARTだけ行っていただき、漢方療法などで、
生活が営めるほどに腹水をコントロールしていけるものなら、そうした方が良いのでは?
母のためなのでは?とも考えます。

私自身が母の主治医と話をするのが一番早いと思いますが、その前の予備知識を得たいので
掲示板を利用させていただきました。
1~3のリスクとベネフィットを私からも十分説明し、母の意志を尊重して、一日も早く治療に
取り掛かれるよう支えたいと思います。
説明がまとまらず申し訳ございません。よろしくお願いいたします。

   
Re:原発不明がんについて
松本光史(兵庫県) 2013/09/10
兵庫県立がんセンター腫瘍内科の松本光史と申します。
原発不明癌は一般的には厳しい病気ですが、一部に「特定の癌にみなして」抗癌剤治療を行うと良い効果が得られる患者さんがおられることが知られています。お母様の癌は、卵巣癌に対して行う化学療法に対して反応する可能性があると思います。ご年齢や、全身の状態を考慮すると通常のカルボプラチン+パクリタキセル療法をそのまま行うことは難しいかも知れませんが、卵巣癌に対して行う化学療法レジメンを一部調整して行うことで、一時的かも知れませんが、腹水が減少して症状がかなり和らいだ状態を保てるかも知れません。

ご質問にお応えしますと、
①腹水から始まった原発不明癌はいわゆるステージIVと見なすことが多いです。場合によっては卵巣癌のステージIIIcと見なして治療しうる場合もあります。
②腹水細胞診で腺癌が検出されていれば、残念ながらがんと考えざるを得ないと思います。セカンドオピニオンで他の施設の医師に意見を聞かれる際、病理標本を持参して、確認してもらうことは可能です。
③ご本人を診察しておらず、情報も限られていますので断定的なことは申せませんが、原発不明癌の診療や、卵巣癌の化学療法に慣れた腫瘍内科医のセカンドオピニオンを聞いてみるのも一法です。治療の目標が完治ではなく延命、となる場合が多いですが、症状緩和に専念した場合と比較すると何年、という単位での延命を図れる可能性があります。まず手始めに、主治医の先生と相談される際に「原発性腹膜癌と見なし得る病状だと思われますか?」とお尋ねになってみては如何でしょうか。
お母様の治療が上手く進むことを祈念いたします。
Re:原発不明がんについて
濱嶋 (東京都) 2013/09/11
都内の病院で看護師をしている濱嶋と申します。

治療の選択は患者さんや家族の方にとって難しい選択であると思います。私が働いている病棟でも、治療を始める前や入院して治療中にセカンドオピニオンを利用している患者さんがいます。別の治療の可能性を求める方、現在の治療や今後の治療についての妥当性を知るの方など、利用の目的は様々です。その後に当院で治療を継続する方、治療のため転院をする方もいます。

今後主治医の先生との話し合いの後に、治療方針に迷いや疑問があるようであれば、がじゅまるさんやご家族がお母様に代わってセカンドオピニオンを聞きに行き、治療方針に納得した上で治療を選択するというのも有効なセカンドオピニオンの活用になるかと思います。ちなみにセカンドオピニオンは本人が不在でも診療情報提供書や検査結果などを持参すれば問題ないかと思います(転院の希望の有無にかかわらず、全ての検査を一からし直す必要もないかと思います)。必要な書類や検査結果は主治医の先生に伝えれば用意してもらえます。

病状に対する返答ではなく申し訳ありません。がじゅまるさんが書かれていたようにリスクとベネフィットをよく理解した上で、治療を選択なさることが一番大切かと思います。きっと、闘病生活を経験しているがじゅまるさんの存在がお母様も非常に心強いと思います。ご心配も尽きず色々と大変かと思いますが、お母様にとって最善の選択ができますようお祈りいたします。
Re:原発不明がんについて
がじゅまる (千葉県) 2013/09/11
松本先生

早速アドバイスを頂きましてありがとうございました。
明瞭なご回答に深く感謝いたします。
腹膜がん=卵巣がんという認識でよろしいのですね。卵巣がんに関しては全く知識がなく、
少々驚きました。

今日タイミングよく、私自身の診療日だったため主治医にも尋ねたところ、松本先生のお考えと
ほとんど同じお答えでした。
原発不明がんは、婦人科臓器からのきているケースがよくあるので、卵巣がんの標準治療が
第一選択になるでしょう、とのことでした。

また、CARTについて、母は「CARTは、穿刺した腹水をろ過する時にがん細胞が残って、
それを点滴すると全身にがん細胞が回ってしまう危険もあるる。」とお聞きした
ようで、唯一苦痛を取り除ける処置のCARTですら、母は二の足を踏んでおりました。
リスクについて私の主治医に尋ねますと、「CARTのリスクはない。今すぐにでもやって
もらった方が良い。」と言われ、あわてて今日早速、母の主治医にもその旨申し出た次第です。
(提示された治療の選択肢「2.化学療法+CART」の、まずはCARTの処置をです。)

併せて、「原発不明がんは大変難しい状態と認識しており、治療法や見解を幅広く得たいため」
と付け加えて、セカンドオピニオンを希望する旨も伝えました。
母の主治医もご理解を示して下さり、この要望を教授の先生にすぐ伝えて頂くことができ、
明日の夕方には診療情報の資料をそろえて頂けることになりました。
さっそく明日、地元と東京、2つの病院にセカンドの予約を取る予定です。

日経メディカルの「癌Experts」のエリアレビューを拝見いたしました。
お優しそうな松本先生のお顔にホッとするとともに、卵巣がんのベバシズマブ治療における効果、
「ハイリスク患者におけるOS中央値の改善」など、一筋の光に照らされたような気持になりました。
こちらも参考にさせて頂き、今週中に母の主治医とも話し合って参ります。
大きな一歩を踏み出すことができました。本当にありがとうございました。


看護師の濱村さま

セカンドオピニオンの実情について、現場の生の状況を教えて頂き、おかげで背中を押して頂く
ことができました。本当に感謝しております。

母は、現在の病院では看護師の皆様に本当によくして頂いており、そばにいられない家族に
変わって、母の様子を観察し気持ちを察して下さったり、毎日遠方から通う妹のことも
心配して下さり、私たち家族は、大変親身に接して頂いております。

私自身も、乳腺手術、再建手術の際に、看護師の皆様には感謝してもしきれないほど
支えて頂いた経験があります。
どうかこれからも変わらず、患者やその家族の目線で、日々の現場でご活躍されますことを
心より願っております。本当にありがとうございました。
Re:原発不明がんについて
がじゅまる (千葉県) 2013/09/12
 
看護師の濱嶋さま

お名前を間違えてしまいまして、大変失礼いたしました。
お詫び申し上げます。

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