掲示板「チームオンコロジー」

Bulletin board

治療とその選択
PS低下時の抗がん剤治療継続について
T・T(石川県) 2007/09/18
母、昨年3月胆管細胞がん発症。ステージ4、リンパ、肝内多発転移、
「GEM+TS-1」にてPR、11月に退院しましたが、今年8月再入院しました。
腹水大量に貯留、PS悪化(入院時3→4に近い3)、TS-1増量、骨髄抑制顕著
抗がん剤の切換が必要だと思われますが、主治医はこの状態では患者に
対して利益になるかは判らないとのコメント。

この状態から積極的な治療を模索するにはどの様な方法がありますか?
下手に副作用の大きな抗がん剤を選択して効かなかった場合、更に
状態を悪化させる可能性が高いと思われます。

・Second-Line で最も可能性の高い(GEM+L-OXP ?)ものを標準量から…。
・極低容量でカットアンドトライの投与、効果が確認出来れば次のステップへ。
・現在のGEM+TS1プラスαと、言う形からの移行。

   
Re:PS低下時の抗がん剤治療継続について
上野直人(海外在住) 2007/09/18
PS低下時にどのようにアプローチをするか。とても患者と家族そして医療従事者にとっても重要な質問ですね。大変な状況が伝わってきます。さて、「医師」が利益がないと言ってるみたいですが。その利益とは何でしょうか。また、お母様は今の状況をどのように理解されているのでしょうか。

腫瘍内科の原則として、PS低下時における全身療法は基本的には禁忌です。多くの臨床試験と経験によって、PS低下時における全身療法は副作用が強くなり逆に命を縮める可能性があります。
ただし、PS低下時における全身療法にも例外の状況があります。すでに治療が確立されており、明らかにPSを改善する可能性が高い場合は治療を行うこともあります。
また、超低量化学療法はいかがでしょうか、この手の話はインターネットでごろついていますが、臨床試験を行わないと何ともいえない状況です。確かに成功例ばかりが目立っていますが、現実には効かないのが多くの状況です。

このように納得できる治療には単に科学的根拠だけでなく、お母様の人生観をどのよるにとらえるかがとても大切です。また、お母様と医療従事者との人間関係も大きく左右していきます。
Re:PS低下時の抗がん剤治療継続について
T・T(石川県) 2007/09/20
上野先生、ご返答ありがとうございます。

利益というのは、多少化粧した言い回しで、
「この状態できつい治療をやったらもっと悪くなると思います」
と、言う端的なもので、県のがん拠点病院での相談でも、
「プラチナ系がフッ化ピリミジンより副作用軽いって事はありません」
と、同様の意見でした。

幸い、主治医によると腹水は腹膜播種ではなく門脈圧の亢進によるもの、
との事、GEM/7w~GEM/TS-1の比率変更と出来るだけ保険の範囲で無理の
ない試行錯誤を行ってもらってはいますが、GEM/TS-1で増悪している
現状を考えると残念ながらすでに耐性化していると考えるべきだと思っています。

母のスタンスは「先生に全部お委せしています」と言う年配の方に
ありがちなもの、口には出しませんが自分の状態は理解している模様。

自分の方は「可能性がある限り諦めたくはない」と、言うこれも患者の
家族としてありがちなもので、自分の理解としては
「すでにエビデンスのある治療を選択出来る時期は過ぎた」
「現在は母の体力の枠の中でしか治療を続ける事は出来ない」

変化を求めるとすれば、副作用の出にくい(かわり効果も…)
と、言うレベルからそろそろと増量して”枠”を
探っていくしかないだろう、と思うのですが。

個人的な理想を言えば(反応が有れば)
GEM+Erlotinib(少量短期)→GEM+L-OXP(極少量から)→***
~因みにどちらも長期に続けられる程、財布に余裕はありませんが~(苦笑
Re:PS低下時の抗がん剤治療継続について
井沢 (兵庫県) 2007/09/21
臨床で看護師をしている者の立場からコメントさせていただきます。お母様のご病状について、ご家族が大変悩んでおられ、治療を模索されていることがよくわかりました。

当院でも、Tさんのように悩んでおられるご家族が多数相談に来られます。

上野先生がコメントされていますが、PSが3~4と悪い状態であり、かつ確立された標準治療がそれ以上望めない場合、今後の方針をどうするかということをお母様も含めて、医師と話合うことが大切かと思います。

お母様のスタンスは「医師に全部お委せしています」といっておられるとのことですが、ご自身の状況はどのように理解されているのでしょう。理解している模様、との推測はあるかと思いますが、やはりお母様の意志を言葉でお聞きになったほうがよいでは、と思います。
このような状況になってくると、なかなか核心に迫るようなことを本人に聞けないご家族は多く、ご家族と医師間で方針が決まる、、ことが多いのが日本の現状です。しかし、ご本人の人生ですし、残された時間をどのように過ごしたいのか、最後まで超低用量化学療法を望むのか、十分に苦痛を取り除く治療のみを行い、QOL(生活の質)を考慮した時間を送りたいのか、などのお母様の希望を聞くことと、それを尊重することが大切なのではないかと思います。

ただ、ご家族としては何とか治療を続け、諦めたくないと思う気持ちも自然なことかと思います。ご家族間やあるいはTさんの親しい友人などには、気持ちを話し合うことは出来ていますか。がん診療連携拠点病院にはがん相談支援センターが設置されていますので、ご家族がもつ悩みに対する相談も受け付けています。
Re:PS低下時の抗がん剤治療継続について
上田 宏(兵庫県) 2007/09/22
T・Tさんの書き込みを拝見しました。
薬剤師の立場から、少しコメントさせていただきます。
とてもよく勉強されておられますね。これからの患者学には大切なことだと思います。
現在のお母様の状況で、抗がん剤治療を行うことは逆にQOLを損なう可能性が高いことも、重々承知されていることと存じます。
きっと多くの医師は積極的な化学療法を薦めないであろうと思います。しかしT・Tさんのように「可能性がある限り諦めたくはない」という気持ちは、私も含めて「諦めがちな医療者」は肝に銘じておかないといけないと考えます。

今のお母様の状態においては、治療法の選択も重要ですが、同時につらい、苦しいといったQOLを損ねる様々な症状に対するケアがとても重要な時期と考えます。特に胆管がんでは、黄疸や腹水、倦怠感などが出やすく、積極的なケアが必要なケースが多いのですが、お母様は如何でしょうか?お母様がつらいと感じている症状についても、症状緩和に関する知識を深め、主治医とともにケアに当たっていただけたらと思います。
Re:PS低下時の抗がん剤治療継続について
T・T(石川県) 2007/09/23
井沢様、上田様、
共に温かい励ましのお言葉をいただきありがとうございます。

とりあえず、当方としては出来る可能性のある事を後悔の無い様に
やっていくしかないだろう、と考えています。
~もし…たら、は、再入院の時に使い果たしましたので~

現在、最優先にするべきは母の状態のケアであろう、と言うのは
上田さんに同意です。お言葉に甘えまして質問させていただければ
血圧低下というのは鎮痛に対してかなり問題になる事柄なのでしょうか?
現在、痛み止めとしてボルタレン12.5mg*2で対応しています、先日までは
それで行けていたのですが、ここ10日ばかりで効きが悪くなってきた
様で、よく眠れないとの事。
 看護士側は、血圧がかなり下がっていて(上が90~100、下が50~60と
言ったライン)現在のままでは痛み止めをあまり強くしたくないとの事。
 確かに、薬の薬効と副作用などを確認するとこの手の薬には
「血圧を下げる」ものが多い様に思われます~個人的には問題がなけれ
ば弱オピオイド(コディン?)当たりへ移行しても良いのではないかと
思っているのですが~

また、現状での腹水対策の一環としてアルブミン製剤や、経口アミノ酸製剤
等の投与は有でしょうか、現在アルブミン値2.3~2.4程度が続いています。

・・・こちらは思いつきのメモ
GEM投与はウィークリーが基準ですが、コレを2回/週乃至3回/2週等に
してのメトロノーム投与はどこかで実施された事があるかな…とか?
添付文書にはGEMの抗腫瘍効果はスケジュール依存で1回/日では抗腫瘍効果無
で毒性増加、1回/3~4日で効果が認められた、と、あるので。
Re:PS低下時の抗がん剤治療継続について
上田(兵庫県) 2007/09/23
眠れないほど痛みがある状態では、積極的に徐痛を行っていったほうがよいと考えます。
お母様の詳しい状態がわからないので、一般的な見解ですが、コデインもしくは低用量の医療用麻薬を検討する時期かと思います。
ボルタレン等の非ステロイド性消炎鎮痛剤については、血圧を上げることがよく言われていますが、血圧を下げることもあります。用量に依存するとの報告もありますので、やはり弱オピオイドの併用が望ましいかと考えます。
また腹水についてですが、門脈圧亢進によるものであればスピロノラクトン等の利尿剤が使われていると思います。アルブミンについて、ALB値2.3~2.4に対する有効性わかりませんが、あまり使われていないと思います。アルブミンを使うのは腹水穿刺で血圧を維持するときなど限られた状況に用いるといわれています。
日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団から「がん緩和ケアに関するマニュアル」が公開されていますので、そちらも参考にしてみてください。
http://www.hospat.org/manual.html
取り急ぎ、お返事まで
Re:PS低下時の抗がん剤治療継続について
田口 (大阪府) 2007/09/23
T.T.さま
メール拝見しました。緩和ケアチームに所属し、かつ、肝胆膵のがんの患者さんのケアをしている看護師としてお力になれるかと考え、情報提供させていただきます。
 痛みのある状態では食欲低下や日常生活の制限を受け、治療自体の妨げのもなるので、痛みは積極的に緩和するのが今のお母様にとって第1選択ではないか考えます。概ね、お母様の年代の方は痛みを我慢される傾向にありますし、痛みで眠れない状態ということはかなり痛みによる苦痛が大きいと判断します。
 現在、ボルタレンを使用されているとのことですが、定期的に使用されているのでしょうか?それとも、痛みが強くなったときに使用されているのでしょうか?
徐痛ラダーの1段階目の非オピオイド鎮痛剤は、時間を決め定期的に使用します。また、非オピオイド鎮痛剤はオピオイドを使用するときも併用しますので、胃腸障害が少なく長期使用が可能なものを選択してください。プロドラッグであるロキソニン(これは、消化管から吸収された後に活性化しますので胃腸障害が少ないです)、COX-2選択的非オピオイド鎮痛剤であるハイペンやモービック、アセトアミノフェンであるカロナールなどから選択されるのがよいかと思います。
 徐痛ラダーの2段階目を考慮されているようですが、弱オピオイドであるコデインは、強オピオイドが入手できない国を配慮した段階であり、非オピオイド鎮痛剤を定期投与しても痛みが取りきれない場合や強くなるときは第2段階をとばして第3段階であるオピオイドを用います。私の所属する施設でも、非オピオイド鎮痛剤を定期投与しても痛みが取りきれない場合はコデインを使用せず、中程度の痛みにも選択されるオキシコドンを開始することが多いですし、緩和ケアチームでもそのように推奨しています。オキシコドン(商品名:オキシコンチン)は腎機能障害がある場合でも使用でき、20mg×12時間毎から開始しますが、高齢の方や全身状態の悪い方では10mg×12時間毎で開始されるのがよいかと思います。
 お母様の入院されている病院にも、疼痛緩和に明るい医師、看護師、薬剤師がいらっしゃると思いますので、相談され、是非早急に痛みを緩和してあげてください。
Re:PS低下時の抗がん剤治療継続について
T・T(石川県) 2007/09/24
上田様、田口様、ケアについてのご忠告ありがとうございます。

早速、主治医に相談(する為、担当の看護士に話)して見ようと思います。
微妙にテンション低いですが、何処の病院でも医師は非常に忙しいという事で~。
ありがとうございました。


・・・素人そのものの質問でお恥ずかしいのですが、
抗がん剤は1回の使用で1packを使い切る様に使用されるものでしょうか?
輸入して使う事を考えるなら、何回かに分けて使えるならリーズナブルだな、
と、思ってしまっただけなのですが…。
Re:PS低下時の抗がん剤治療継続について
上野 直人(海外在住) 2007/09/26
Tutorの先生方、レスポンスをしていただき有難うございます。
T. T. 様、主治医あるいは看護師、薬剤師とのやりとりの様子をまた教えてください。

ちなみに抗ガン剤の複数に分けての使用はあまり、sterility(日本語がわかりません)関係上よくないですね。
Re:PS低下時の抗がん剤治療継続について
T・T(石川県) 2007/10/28
ご無沙汰をしております、
その際は皆さん方にご相談に乗っていただきありがとうございました。
母、10/22、肝不全による肝性脳症と言う形で亡くなりました。

その後の経過は対処に変更無し、腹水を抜いた時にアルブミン製剤投与追加。
10月初旬、自力介助不可、食欲無、抗がん剤(TS-1)停止、
このころから麻痺が進んでいた様で最後まで鋭い痛みはなかった模様です。
 医師のコメントでは肝機能の状態が悪すぎて、抗がん剤の追加、変更、
オピオイド等は怖くて使えなかった、と、言う事。

 個人的には肝機能障害を起こし易いTS-1が使えるのであれば、再入院の
時点で少量のタルセバ+GEM、タルセバ+セレブレックスという選択肢が
あればもう少し粘れたかもしれない、と、言うのが少々の心残りですが~。

最善の選択ではなかったかもしれませんが、
患者の尊厳を保った最後として、望みうる最良の結果であったと思っています。
Re:PS低下時の抗がん剤治療継続について
上田(兵庫県) 2007/10/31
心よりお悔やみ申し上げます。

T.Tさんが最後まで支えてくださったことで,
お母様も心安らかに旅立たれたと思います。

T.Tさんご自身も、心疲れのないようご自愛ください。

記事内容を変更することはできません。記述を修正したい場合はコメント欄を使って補足・訂正を行ってください。