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治療とその選択
ホルモン陽性乳がんの術後抗がん剤治療
I.M(千葉県) 2014/07/06
46歳閉経前。先月乳房部分切除とセンチネルリンパ生検(リンパ節郭清なし)を実施。
術後の病理結果が以下でした。
腫瘍径in situ caを含む:2.50×3.30×1.20cm
核異型スコア:2、核分裂スコア:1(1/10HPF)、核グレード:1
ER:8、PgR:8、HER2:0
波及度:gf、リンパ管侵襲:ly2、静脈侵襲:v0
断端:皮膚側-、2.0mm inv #24、深部側-、速報-、乳頭側-
In situ ca++、EIC+、娘結節-、comedo+、石灰化+、リンパ球浸潤+
リンパ節転移:合計1/3、SNB(1/3)
T2、N1mi、M0 ステージⅡB
Ki-67は術前のデータですが20%でした。

術後の病理がでたところで抗がん剤(タキソールまたはタキソテール3ヶ月とFEC3ヶ月)を勧められました。

そして以下が、疑問です。
ホルモン陽性で核グレード1、ki-67の20%はやや微妙ですが、この場合はホルモン剤が効果があるのは間違いないと思いますが、抗がん剤の効果があまりないのではないか?ホルモン剤の開始を半年遅らせて抗がん剤をする効果は副作用のデメリットを上回るのか?ということです。効くか効かないかはわからないことだと思いますが、抗がん剤を使用した場合としない場合の再発の差等のデータを主治医に尋ねましたが、リンパ節転移ありだとオンコタイプDXも対象外なので特にないとのことでした。判断の材料となるご経験やデータをお持ちではないでしょうか?

   
Re:ホルモン陽性乳がんの術後抗がん剤治療
I.M(千葉県) 2014/07/07
追加です。
抗がん剤の選択としてTC療法についてのご意見もお聞かせいただけると幸甚です。
Re:ホルモン陽性乳がんの術後抗がん剤治療
S(東京都) 2014/07/09
I.Mさん、こんにちは。
無事に手術が終わってほっとしているところだと思いますが、新しい悩みに直面されて、休まる暇もないことと思います。

病理結果を拝見する限り、私たちも日常臨床で化学療法を行うかどうか、非常に悩むケースです。化学療法に一定のメリットがあることは間違いありませんが、副作用のデメリットを上回るかは悩ましいところです。このようにすっきりとした答えが出ない問題の場合、I.Mさんご自身がどれだけ納得して治療に取り組めるかが重要です。主治医の先生と、化学療法のメリット、デメリットについてもう一度(必要があれば何度でも)話し合い、納得して答えを出すことをお勧めいたします。具体的に、どのような副作用についてご心配されていますか?

Adjuvant Online!を使うと、化学療法、ホルモン療法でどれだけ再発リスクを減らせるかを視覚的に見ることが出来ます。ただし、Ki67の値などは加味されていないため、あくまでも一つの参考です。治療選択の情報の一つにはなり得ると思いますので、主治医に相談して、見てみるのも一つの方法だと思います。
https://www.adjuvantonline.com/index.jsp

TC療法についてですが、乳がんに対して抗がん剤を使用する場合は、アンスラサイクリン系、タキサン系の2種類を使うのが標準となっています。ただ、タキサンを追加することのメリットは数%~10%程度のため、再発リスクの小さい場合には省略も考慮します。その場合、アンスラサイクリン(ACやFEC)だけを行います。2009年に、AC療法のみよりもTC療法の方が再発が抑えられたと言う臨床試験の結果が発表されています。そのため、アンスラサイクリンだけを行う場合にはTC療法もオプションの一つになると考えられています。
Re:ホルモン陽性乳がんの術後抗がん剤治療
I,M(千葉県) 2014/07/10
早速のご回答と温かいお言葉ありがとうございます。

その後、治療を受けている病院の先生にもう一度抗がん剤を勧める理由を聞きに行きました。ポイントは微小とといえ転移があることと、年齢、ly2とのことでした。アジュバントオンラインで、抗がん剤使用の10年無再発率の上乗せが12%、抗がん剤の種類はアンスラサイクリン+タキサンが最強だが、ホルモン剤が聞くのでTCでも差はわずかとの説明でしたので、やはり抗がん剤を追加、しかし3ヶ月のTCの方がよいか・・・と思い始めていました。

ところが、セカンドオピニオンを受けたところ、ER、PgRとも強陽性であり、ki67も高くない、またセンチネルへの転移は微小転移でリンパの流れが変わるわけではなく、影響は少ない、等の理由で、ホルモン剤(LH-RHアゴニスト+タモキシフェン)のみで抗がん剤不要というご意見でした。

セカンドオピニオンの先生の説明の方が、私としては納得感はあるのですが、主治医の先生の勧める治療法(最終的には自分で選ぶことですが)を翻すことは、それはそれで勇気のいることで、依然として迷い中です。
ただ、最初に抗がん剤が必要と言われたときより、頭の中はだいぶ整理できてきました。

センチネルリンパ節への「微小転移」をどう考えたらよいのでしょうか?
Re:ホルモン陽性乳がんの術後抗がん剤治療
S(東京都) 2014/07/13
I.Mさん、おはようございます。

セカンドオピニオンに行かれたのですね。いろんな専門家の意見を聞くことは、今後の治療を決めて行く上で重要です。

拝見する限り、主治医の先生の意見も、セカンドオピニオンの先生の意見も、どちらも正しいと思います。答えのでない領域だからこそ、専門家の意見であっても異なるし、主治医の先生と十分相談して、しっかりと考えて治療を選択することが重要と思います。

微小転移については、郭清をしてもしなくても予後が変わらないと言う臨床試験の結果があります。通常、郭清しないことが多いですが、施設によっては郭清しているようです。微小転移のみでは、薬物療法の選択の参考にはしないことが多いです。
Re:ホルモン陽性乳がんの術後抗がん剤治療
I.M(千葉県) 2014/07/13
本当に親身のおことばありがとうございます。

センチネルの微小転移については追加郭清は行わなくても問題ないと主治医に説明されました。私も、郭清の意味は局所治療の意味合いなので不要なのだろうと理解しました。

「微小転移のみでは薬物療法の選択の参考にしないことが多い」のですね。主治医は抗がん剤の追加を勧める上で「微小とはいえ転移がある」ということは大きなファクターであるという言い方でした。。。

結局、落ち着いて考えてみると、私がいまだにどうするか決めかねているのは、
①手術前は「ホルモン剤がよくきくおとなしいタイプ」と聞き、自分では「低リスク」と思っていた。
②ところが手術後に抗がん剤(それも、最強と思われるタキサン+FEC)を勧められた(=「高リスク」の治療)。
③術前と術後で変わったり、追加された情報は、「リンパ節転移なし→センチネルへの微小転移」「腫瘍径:約2cm→in situ caを含み3.3cm」「ly3」であり、ホルモンやHER2への感受性は変わっていない。
ということから、これらの追加情報がどれほどリスク度合を押し上げるものなのかに頭がついていけていない、ということのように思います。

また、いろいろお聞きすると、私の場合抗がん剤の上乗せ効果はなくはないが、そう大きくはないように思います。あとは、副作用との天秤ですが、これはやってみなくてはわからない。私が一番懸念する副作用は、とにかく「後々に残るもの」です。特に手足のしびれ等は後々に残りやすいようですし、脱毛も数は少ないかもしれませんが長らくウィッグを手放せない方もいらっしゃるとか。

医師の先生や看護師の方は、投与が終われば次第に治るとおっしゃいますが、ここは医療者の方の患者とは温度差があるだろうと思っています。

長くなってしまいましたが、
①結局のところ、私の場合の転移・再発リスクは「高リスク」「中間リスク」「低リスク」でいうとどこにあたるとお考えですか。
②タキサン+FECとTCのを使い分ける基準はどのような要素ですか。(今のところ、抗がん剤を受けるとしてもTCを第1候補に考えています。)
③FECとTCの副作用の面で違いはいかがでしょうか。
Re:ホルモン陽性乳がんの術後抗がん剤治療
S(東京都) 2014/07/15
I.Mさま、おはようございます。

私たちが患者さんとともに治療を考えるとき、病理ももちろんのことながら、患者さんを診察したときの所見や印象など、様々な情報を総合して、患者さんにベストな治療の提案をしています。患者さんご本人の社会的な立場、価値等、治療を選択することに影響するものも考慮しなければなりません。
ですので、I.Mさんが今まとめられた疑問点を、主治医の先生と再度ゆっくり相談されることが、納得して治療選択できる一番の方法ではないかと思います。
その上で、ご質問にお答えいたします。

1. いただいている病理結果だけから判断すると、低~中間リスクに当たると思います。この判断には、in situを含まない浸潤部の径も重要です。
2. 現在の標準治療はあくまでも、アンスラサイクリン(ACやFECなど)→タキサン(パクリタキセルまたはドセタキセル)です。化学療法を追加する場合、標準治療を選択すること基本で、リスクが高いから「最強」と表現された治療を勧められたという意味ではないと思います。再発リスクが低めでアンスラサイクリン単独が許容されると考えられる場合には、TC療法はオプションとなり得ますが、明確な使い分けの基準はありません(医師によって異なることが多いと思います)。また、3で説明いたしますが、TC療法は決してFEC療法に比べて楽な治療ではありません。
3. 両者に共通の副作用としては、脱毛、白血球減少などがあります。白血球減少に伴う発熱はTC療法の方が多いと言われています。FEC療法では吐き気が問題になることが多いですが、ここ数年で吐き気対策の治療は相当進歩しました。うまくコントロールしながら治療できることがほとんどだと思います。TC療法に特徴的な副作用としては、(ドセタキセルによる)浮腫や指先のしびれがあります。

I.Mさんは、治療決定する上でご自身が気になる疑問点を上手に挙げられる方だと感じます。ですので、挙げていただいた疑問点を紙に書いて持って行くなどして、主治医と十分にお話しされてはいかがでしょうか。
また主治医とご相談した上で、帰宅後に主治医に確認したいことがあった時の相談先や対応についても確認してみてはいかがでしょうか。治療施設によっては、そのような相談窓口を設置していたり、医療情報へのアクセス支援を行っている所もあります。
Re:ホルモン陽性乳がんの術後抗がん剤治療
I.M(千葉県) 2014/07/19
こちらでいろいろとご相談させていただき、もう一度担当医と話して抗がん剤治療を受けることにしました。返事をするまで迷いましたが、一歩前進だと思っています。この後は自分でもできる副作用対策をして、無事に治療をクリアし、自分の生活を取り戻したいと思います。ありがとうございました。
Re:ホルモン陽性乳がんの術後抗がん剤治療
S(東京都) 2014/07/20
I.Mさん。

主治医の先生とご相談されて、治療方針を決定されたのですね。大きな一歩だと思います。今後とも、主治医の先生と相談しながら安心して治療を続けられることを願っております。

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