掲示板「チームオンコロジー」

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治療とその選択
センチネルリンパ節生検診断がくつがえる時
ハコ(東京都) 2014/07/16
5月にHER2陽性乳がんと診断されまして、調べていくうちに、こちらのサイトにたどりつきました。6月下旬に右乳頭乳輪切除乳房切除術+センチネルリンバ節生検を受けました。その際、センチネルリンパ節生検の結果が陰性だったため、リンパ節郭清を行わずに手術を終わり、退院しました。
ところが、3週間後の病理診断結果で陽性だったと告げられました。
かなり微小のため、リスクは低く、リンパ節郭清は行わない、放射線治療も必要ないと伝えられました。主治医からは、今後の治療法として、分子標的療法ハーセプチンと抗がん剤治療タキサン系と提案をされました。

病理組織レポートをもらいましたが、何をあらわしているのか?読み方もわからない状態で、本当に提案をされた治療で進んでよいのか不安になりました。
1)病理組織レポートから最も適切な治療法を選びたいので、詳しく教えて頂けないでしょうか?
2)また本当に、放射線療法を受けなくて、良いのでしょうか?

病理組織レポート:
検体:右乳腺、乳癌病巣:1病巣
切除術:Bt+SNB 22.0 x 20.0 x 3.0cm
占拠部位:右upper-outer(C)E領域
腫瘍径:4.00 x 3.00 x 1.00cm
腫瘍径 in situ ca含む:7.50 x 6.00 x 1.70cm
組織分類:invasive ductal carcinoma, solid-tubular carcinoma
核異型スコア:3, 核分裂スコア:3(11/10HPF), 核グレード:3
ER:Allred PS0 IS0 TS0, PgR:Allred PS0 IS0 TS0
HER2 :score 3, 強陽性:80%, 中等度陽性:10%, 弱陽性:10%
波及度:g f, リンパ管侵襲:ly1, 静脈侵襲:v0
断端:皮膚側:-, 10.0mm, 深部側:-, 4.0mm, 側方:-, 71mm
in situ ca++, EIC+, 娘結節-, comedo++, 石灰化+, リンパ球浸潤+++,
前治療:なし, 区分:初発
リンパ節転移:合計(0/6, i+)
SNB(0/6)
UICC 7版:pT2 pN0 Stage ⅡA, 規約17版:pT2 pN0 pM0 Stage ⅡA
提出検体は、右乳腺全摘出検体です。
組織学的には、C領域に充実胞巣状、シート状構造を呈する癌細胞が浸潤・増殖
しています。周囲には、solid-comedo typeのductal coponentを認め、乳頭部乳管までみられます。浸潤性乳管癌(充実線管癌)です。
癌胞巣周囲には、顕著なリンパ球浸潤が見られます。

3)また再発率は、どのくらいかを教えてください。

以上、お手数ですが、よろしくお願いいたします。

   
Re:センチネルリンパ節生検診断がくつがえる時
S(東京都) 2014/07/17
ハコさん、こんにちは。毎日暑いですが、いかがお過ごしでしょうか。術後の外来にて病理検査が陽性と診断されたことで非常に驚かれ、不安になられたかと思います。

最適な治療法の選択には、病理組織結果とともに、患者さんの全身状態や社会的状況など、いろんな情報が必要です。そのためには、治療法や病気の状態について、ハコさんご自身が主治医の先生としっかりとお話しされて、納得して治療を選択することが必要になります。病理結果の不明な点についても、主治医の先生に質問してみてはいかがでしょうか?

あくまでもご参考にしかなりませんが、ご質問にお答えいたします。
1. 病理結果にはたくさんの情報が含まれていますが、すべてを参考にするわけではありません。治療法の選択には、大きく分けて「生物学的特徴」と「解剖学的特徴」の2つの情報を利用します。

  生物学的特徴:ホルモン受容体(ER、PgR)、HER2、核(および組織学)グレード、Ki67
  解剖学的特徴:腫瘍の大きさ、リンパ節転移の有無、遠隔転移の有無 = 病期

  ハコさんの病理検査結果を要約しますと、
   ホルモン受容体陰性(ホルモン治療は効果がない)、HER2陽性(ハーセプチンと化学療法が効果あり)、グレード3(癌の顔つきが悪いと言う意味ですが、HER2陽性はほとんどがグレード3になります)で、Ki67は測定されず(HER2陽性ではKi67を治療選択の参考にしないため、測定していないと考えられます)
   腫瘍(浸潤部)の大きさ4cm、リンパ節転移なし(孤立性がん細胞あり、孤立性がん細胞はリンパ節転移なしとして取り扱います)、遠隔転移なし = StageIIA

  この病理結果から、ハコさんのご病気は、ホルモン受容体陰性HER2陽性(HER2タイプ、と呼びます)のStageIIAの乳がん、となります。ハーセプチン1年間と抗がん剤の併用(併用にはいくつかのパターンがあり、施設ごとに異なります)が標準治療と言えます。

2. 乳房全摘の際の放射線治療(胸壁照射)の基準は、腫瘍の大きさが5cm以上、またはリンパ節転移が4個以上、です。それ以外の場合には、メリットがあると言うデータはありません。

3. StageII、IIIの術後抗がん剤治療を行う患者さんへのハーセプチンの有効性を調べたHERA試験と言う臨床試験のデータによると、1年間のハーセプチン投与を受けた人たちでは、5年間で約19%、8年間で約24%の再発率です。ただし、これはStageIIとIIIがどちらも入っているため(StageIIIの方が再発リスクが高い)、ハコさんの場合は再発リスクはもっと低いと考えられます。

文字ではどうしても伝えられる情報やニュアンスに限りがあります。ぜひ、疑問点を主治医にぶつけてみてください。追加で聞いてみたい情報などは、答えられる範囲でお答えいたしますので、掲示板で質問してくださいね。
Re:センチネルリンパ節生検診断がくつがえる時
ハコ(東京都) 2014/07/17
投稿させて頂きましたハコです。
S様、お忙しいところ丁寧なご回答と温かいお言葉を有り難うございます。不安でいっぱいでしたが、病理検査結果を要約いただいて、自分の状況について、理解できましたし、不安を解消することができました。
病理診断結果を聞いた時は、内容がくつがえってしまい、動揺と不安で頭がいっぱいになってしまいました。
また実際、担当医より頂いた病理診断レポートも情報が多く、とまどい、質問が正しくできていなかったと反省しております。

治療は、はじまったばかりで、不安は増すばかりですが、
疑問点など、どんどん担当医にぶつけてみます!

ご指導、有り難うございました。
Re:センチネルリンパ節生検診断がくつがえる時
YF(群馬県) 2014/07/19
ハコさん、こんにちは。
治療が始まったばかり、とのことで、よく分からないことも多く、不安なお気持ちもありますよね。

ハコさんが仰るように、担当の先生に質問をぶつけてみるのが良いと思います。その際、質問をメモして持っていかれることをおすすめします。私は薬剤師として患者さんとお話をしますが、「えーと、あと何か聞こうと思っていたことがあるんですけど、なんだっけ・・」という方が少なくありません。私自身も何かの病気で医者にかかった後、なんで聞かなかったんだろう?と思うことがあります。他の患者さんもいるし、早くしなきゃ、と意外と緊張してしまっているのだと思います。
もうやられているかもしれませんが、メモしていけば手短に聞くこともできますので、お勧めです。

ハコさんが、担当の先生といろいろお話をしながら治療を上手くすすめられることを祈念しております。

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