掲示板「チームオンコロジー」

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治療とその選択
MIB-1 の値について
まりー(東京都) 2015/06/01
43歳、閉経前、乳がん初発です。
4月末の術後、病理の結果がでて抗ガン剤をするかどうか考えるよう言われましたが、先に放射線治療を始め、その後までに結論出す事になりました。
しかし、放射線治療のみお世話になってる病院では放射線治療後の抗ガン剤を勧められました。前者の病院ではMIB-1 25%(30%以下)は中程度なので患者次第、後者の病院では、14%以上なのでやるべきとのことです。個人的にはホルモン治療のみを希望しておりますが、MIB-1の高中低と抗がん剤使用の判断との関係について教えて頂きたく宜しくお願い致します。
以下病理の結果です。

浸潤癌 12x11x10mm
腫瘍の大きさ 40x22x12mm
組織異型度 2 細胞核異型度 2
浸潤度 f
EIC ?positive
脈管侵襲 v- ly-
Sentinel node 0/1
Sampling nodes 0/3
ER 95% PgR50% Her2- MIB-1 25%

   
Re:MIB-1 の値について
ひろ (茨城県) 2015/06/02
まりー様
手術後の体調はいかがでしょうか。抗癌剤治療を行うべきかどうか、悩んでいらっしゃるのですね。
乳腺外科医です。この掲示板では、個々の治療方針の相談に応じることはできませんが、MIB-1の評価に関する一般論について記しますね。

2011年ごろより、ER陽性HER2陰性のいわゆるLuminalタイプ乳癌をMIB-1の発現状況(もしくはKi-67 index)から、術後化学療法の必要性が低いLuminal Aサブ タイプ(MIB-1発現が低いタイプ)と、必要性が高いLuminal Bサブタイプ(MIB-1発現が高いタイプ)に分類することが提唱されています。しかしながら日常の臨床では、何パーセントで高いとするのか決定的な決めてはないのが現状です。研究でも15%を基準としているもの、20%を基準としているもの、30%を基準とするものなど様々です。

MIB-1は乳癌の細胞の増殖能、悪性度を示す指標の一つです。癌の組織に特殊な染色をして、顕微鏡で見て何パーセントのがん細胞が染まる(陽性となる)かを評価します。陽性となった細胞が多いほど、がん細胞の増殖能は高く、再発の危険性が高いため、抗癌剤の適応となりやすいと判断されます。しかし、何パーセント以上が”高い”のか、何パーセント上は”抗がん剤が必須”なのかは厳密には確立されていません。

その理由として、がん細胞を染色する手法が施設により異なること、染まっているかどうかを評価する方法が確立されていないため、検査を行う施設や見る人によって陽性率が微妙に変化しうることがあげられます。また個人の再発のリスクや抗癌剤の必要性はそもそも絶対的ではなく、相対的評価であることも重要です。特に抗癌剤の効果は、抗癌剤治療をすれば100%再発をしないというものではなく、抗癌剤をすることにより再発率を何パーセントか下げることができる、というものになります。抗癌剤の”必要性”というよりも、副作用と照らし合わせて抗癌剤が“有用である可能性”を評価する必要があります。

国際的な会議における専門家達の意見でも、MIB-1発現が10%以下であれば“再発リスクは低い”と判断でき抗癌剤は不要となる可能性が高く、30%以上であれば再発リスクは”高い”ため抗癌剤をより積極的に推奨することは、ある程度コンセンサスが得られています。しかし10-30%の陽性率である場合には、この値だけで抗癌剤の適応を決めることは困難とされます。あくまでも参考にして、他の因子や、予想される副作用も評価して、化学療法を実施するかどうかを決めることになります。他の因子と同様にMIB-1発現は再発リスクや抗癌剤の治療適応を決定づける絶対的な因子ではなく、高い・低いの評価はファジーな領域があることをご理解いただければと思います。
欧米ではまりーさんの様に悩ましい状況の場合、さらにオンコタイプDxやマンマプリントといった多遺伝子発現解析を行う場合もありますが、本邦では保険承認は得られておりません。

MIB-1とKi67はほぼ同義語として使用されていますが、その意義については過去の掲示板でも“乳癌のKi-67値”というスレッドでも語られていますので、参考にしていただければと存じます。

まりーさんのご判断の一助になればと思います。
Re:MIB-1 の値について
まりー(東京都) 2015/06/03
ひろ先生、ご返答ありがとうございます。教えて頂いた前スレと共に非常に参考になりました。
色々な指標と数字の根拠を理解する事で、自分の選択に責任を持てる気がしています。
術後も放射線治療も順調で、忙しい毎日の一部のプロセスとなっており、今だに病気の実感が全く湧きませんが、今回の選択をするにあたってもう少し病気と向き合って見ようと思います。

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