掲示板「チームオンコロジー」

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治療とその選択
化学療法で副作用が少しでも軽いのは?
素人(茨城県) 2016/06/15
左 浸潤性乳管癌 18mm T1N0M0
リンパ節転移なし リンパ管侵襲あり軽度 静脈侵襲なし
トリプルナガティブ グレード3 閉経前
術後1ヶ月ほどでFECを開始
初日から吐き気、眼の裏に圧力を感じる
5日目辺りから猛烈な寒気や風邪の初期に似た症状で毎日数時間寝込みます
足裏や舌のしびれ・動悸・めまい・少し階段を上っただけで息切れ、猛烈な虚脱感 心臓が苦しい時も
点滴を打って、まだ一週間
これを3ヵ月続けタキサン系も3ヵ月
副作用は蓄積するのですよね?

FECは副作用が強いのになぜやるのですか?と主治医に訊いたらみんなやってるからとの答え
ネットで調べるとECとFECは効果はあまり差はない
副作用が強いのはFECとありました
素人なので正しい検索かは判断できません
患者ごときが主治医の方針に口出ししていいのか?と思いもあります
田舎で他の乳腺専門医がおらず患者が殺到してるので主治医の時間を取ることを遠慮せざるを得ない状況です

都会の病院ではチーム医療が増えつつあると聞きます
田舎なので乳腺外科の先生が化学療法も選択します
腫瘍専門医ならどんな選択をすると思いますか
以前、違う所に住みマンモで石灰化がある、半年毎に経過観察と言われていました
引っ越し今の病院でマンモ
今の先生に「半年ごと~。1年毎でいい」と笑い飛ばされ石灰化も心配ないと言われた3ヵ月後しこりに気が付き、飛んで行った際も「水」と笑い飛ばされ1年後まで検査を待ったらやっぱり癌だったという経緯があります
ステージ1とはいえ本人が気が付いて1年も放置
リンパ節転移はないとはいえ、リンパ管侵襲は軽度でもあった

1 途中から副作用の軽いものに変える事は可能か
2 放置された1年は他への転移にどれ位影響があると思われますか
3 Adjuvantを使い抗がん剤治療を受けた、受けないの生存率を調べて頂く事は可能ですか

よろしくお願いします

   
Re:化学療法で副作用が少しでも軽いのは?
K(東京都) 2016/06/18
はじめまして。東京で腫瘍内科医をしているKと申します。
乳がんをご自身で疑ってから現在の治療開始に至るまでのご苦労やお気持ちのつらさを素直に綴っておられ、何かお手伝いできることはないかと思いお返事させていただきます。

掲示板の性質上、個人的な細かい対応は難しく可能な範囲での回答となることをご容赦ください。ご質問のうち、1はこのあとの内容を参照してください。2は現時点でリンパ節転移がないとのことなので、過去1年間の転移についてはあまりご心配されなくてもよいかと思います。3はがんの詳細情報によりお答えする内容が異なりますが掲示板でお答えするべき内容ではないと思いますので、ぜひ主治医の先生に一度ご相談されることをおすすめします。

一般にトリプルネガティブ乳がんは、増殖する力が強く進行が速いといわれています。その分、細胞に直接ダメージを与える「抗がん剤」のパワーは最も伝わるがんともいえます。正常な細胞にもダメージがでてしまう抗がん剤ですが、がん細胞が少ない時期は完全にがんを治すために手術とともに用いられ、がん細胞が多い時期はがんとつきあいつつ長生きするために用いられます。素人さまの投稿内容を拝見すると前者の時期ではないかとお察しします。
抗がん剤の副作用が、投与されて間もない時期にたくさん出てしまった場合、どんな原因でその症状が出たのか、症状を軽くするには①ほかに薬を使えばよいのか、②生活環境を工夫するのがよいのか、あるいは③抗がん剤を減らしたり変更したりしないといけないのか、と考えます。解決策の①は薬剤師さんが得意な分野で、②は看護師さん、③は医師に判断が求められる分野です。医師は、まわりの看護師さんや薬剤師さんの意見も聞いたうえで、患者さんの本当の希望をかなえるために必要な判断をしますが、患者さんとゆっくり話して決定するための時間がないのが難点です。そんなとき多職種の「チーム」があると解決しやすいと思いますが、このチームが患者さんにもわかるように院内に明示されていることはあまりなく、患者さんを中心として多くの職種の人が協力し合うという実態の病院がほとんどです。

素人様の主治医の先生がおすすめされたFEC療法は、「標準治療」と呼ばれるものです。標準治療とは、ある条件の患者さんに一番適した方法(ひとつとは限りません)として世界共通で認識されている、再発をへらし、命を延ばし、副作用が強すぎない(十分な副作用対策を行うことが前提です)、最適な治療の条件を満たしたものです。ひとはそれぞれ個性があるので、副作用の出方や感じ方、生活スタイル、人生の考え方を考慮して、標準治療のなかからさらにその人に最適なものを選ぶことができれば、もっともよいかと思います。ただ、最初から副作用の出方を予測するのは困難ですので、「主治医の決めた治療」とあきらめるのではなく、「主治医とわたしが決めた治療」になるよう、状況や希望をつたえ修正していく必要があります。FEC療法とEC療法の効果の違いがあまりないということは、最近わかってきた最新情報でEC療法も標準治療のひとつです。しかし、現在でている副作用がそれで解決するとは限りませんので、吐き気どめの見直しや生活スタイルの工夫を含めた対策をすることも同時に必要になるかもしれません。一部の副作用には蓄積があり回復にとても時間がかかるものもありますが、治療が終われば改善していく副作用のほうが多いです。また治療期間内に波のように悪化と軽快を繰り返すものもあります。そしてFECの副作用とタキサンの副作用はまた少し違ったものになる方が多いです。

私も素人さまに返答をするにあたり、看護師、薬剤師、乳腺外科医、ほかの腫瘍内科医にも相談をしました。ぜひ素人さまの病院でも相談窓口になってくれる看護師さんや薬剤師さんを見つけられることをおすすめします。外来の看護師さんや点滴治療のお部屋の看護師さんに声をかけてみるか、「患者相談窓口」といった院内の窓口で悩みを相談されると先が開けると思います。院内で解決できない難しい問題のときや、素人さまがお気持ちを汲んでくれないと思われたときは、セカンドオピニオンといって院外の医師の意見をきくことができます。これには、主治医から紹介状を作成してもらう必要があります。

日本乳癌学会から「患者さんのための乳がん診療ガイドライン」http://jbcsfpguideline.jp/が発刊されており、ホームページや本で、乳がん治療に大切な考え方を知ることができます。もしおからだに少し余裕がありましたら、参考にしてみてください。素人さまが十分納得して適切な治療をうけられるよう、J-TOPメンバー一同、心より応援しております。

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