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治療とその選択
トラスツズマブと抗癌剤の組み合わせについて
mimi(東京都) 2016/12/04
HER2陽性乳がんの術後薬物療法についてご教示いただければ幸いです。

術式:乳房全摘(乳房温存手術8年経過後に再発)
リンパ節:陰性(2回目のセンチネルリンパ節生検、摘出リンパ数8)
組織型:浸潤性乳管癌(初回乳がんと類似)
大きさ(浸潤型):1.3cm
範囲:3.2cm
核異型度・組織異型度:2
リンパ管・脈管侵襲:なし
Ki67:15.8%
ホルモン感受性:なし
HER2/meu:あり
断端:陰性

日本乳癌学会のホームページを拝見したところ、「HER2陽性乳がんに対する術後化学療法+トラスツズマブは強く勧めれらる(推奨グレードA)」となっております。
記述には、アンスラサイクリン系とタキサン系薬剤にトラスツズマブを追加することで推奨グレードAと掲載されております。

①たとえば、化学療法をAC療法のみ+トラスツズマブとし、タキサン系を略称した場合、推奨グレードは変わってしまうのでしょうか。

②HER2陽性でトラスツズマブの治療を検討している場合、リンパ節などへの転移が陰性の場合でも、やはりタキサン系の化学療法も含めて治療を行った方がよいでしょうか。

③また、薬物療法は同じ薬を2回使うことができないと聞いておりますが、現状でリンパ節転移が陰性の場合、この時点でハーセプチンを行うべきなのか、または今後再発・転移したときのための治療として残しておくべきなのか。

ご教示いただければ幸いです。

   
Re:トラスツズマブと抗癌剤の組み合わせについて
ME(新潟県) 2016/12/13
mimiさま

薬剤師のMEと申します。

お返事が遅くなり、大変申し訳ありません。
J-TOPのメンバーで話し合った内容を代表してお話させていただきます。


①、②の質問について
まず、乳がんの化学療法についてですが、
初発乳がんに対する術後化学療法の場合は、タキサンを追加することにより治療効果の向上が期待されます。また、HER2陽性の場合はハーセプチンの上乗せが推奨されます。

局所再発切除後の場合でも、術後化学療法の有用性は示されていますが、推奨される化学療法は決まっていません。よってお勧めする化学療法は、初回術後治療で使用した薬の種類、患者さんの状態(再発リスクや持病)と希望によって各施設で決めていることが多いと思います。

mimiさまの場合、局所再発のようですので、上述の通り、推奨される化学療法は以前に行った治療によって変わると思います。
術後化学療法に対するハーセプチンの上乗せを検証した研究は、アンスラサイクリン+タキサンへの上乗せが多いですが、タキサンを含まない化学療法への上乗せ、パクリタキセルのみなどアンスラサイクリンを含まない化学療法への上乗せなどのデータもあります。

ガイドラインの推奨グレードについてですが、研究結果のレベルや十分な臨床データなどを総合的に判断して決定されます。アンスラサイクリン+タキサン+ハーセプチンからタキサンを減らすことが有用かどうかを検討した研究結果が十分でないため、ガイドラインの推奨グレードは「変わる」のではなく、グレーディングできないと言えます。

③についてですが、実際には同じ薬を2回以上使うこともあります。HER2陽性乳がんでは、初期治療時でも再発時でも化学療法にハーセプチンを加えることが推奨されるため、後に残しておく必要はありません。

ご質問の内容から、少しでも使用する抗がん剤の種類を減らし、治療を縮小させたいというように思っていらっしゃるようにうかがえます。実際にどういった治療法が選択肢になるのか、主治医の先生にもう一度ご相談されてはいかがでしょうか。直接主治医に聞きにくいときは、外来の看護師や薬剤師に相談してみることもお勧めします。
Re:トラスツズマブと抗癌剤の組み合わせについて
mimi(東京都) 2016/12/13
MEさま

ご丁寧にご返信を頂きましてありがとうございました。

8年前の初発乳がんの際は、ほぼ浸潤性乳管癌(微小浸潤癌)との診断であったため、部分切除手術および放射線治療のみとし、薬物療法は行いませんでした。

そろそろ通院も卒業出来る、と思っていた矢先にまさかの再発となり、様々な不安はございましたが今回は完治をめざして真剣に治療に向き合って参ります

主治医と相談をした結果、来週よりAC療法(3カ月)+トラスツズマブ(1年間)の治療を開始する予定です。

アドバイスを頂けましたことに深く感謝いたします。
Re:トラスツズマブと抗癌剤の組み合わせについて
S(東京都) 2016/12/16
mimiさま。東京で腫瘍内科医をしているSと申します。
治療法が決まり、新たな一歩を踏み出されたとのこと、嬉しく思います。
ところで、主治医の先生とは今回の病気と8年前の病気との比較についてはお話しされましたでしょうか? 組織は8年前の病気と類似しているとのことですが、ホルモン受容体の状態やHER2の状態も同じだったでしょうか? 同じであれば再発の可能性が高くなると思いますし、異なっていれば別の乳がん(異時同側乳がんといいます)が新たに出来た可能性が高まります。もちろん、どちらであるかを100%と確定することは出来ないのですが、病気の経過と病理診断とを総合して判断します。
再発か新しい病気かによって、リスクの判断は異なるため、治療法の選び方が変わってきます。もし、上記の点についてお話しされていないようであれば、一度主治医の先生とご相談いただくことをお勧めいたします。
mimiさまの治療が順調に進むことを祈っております。
Re:トラスツズマブと抗癌剤の組み合わせについて
mimi(東京都) 2016/12/17
S先生

アドバイスをいただきまして有難うございました。
初発時(8年前)と今回の比較は下記になります。
※8年前→今回で記載しております。

術式:左乳房温存手術→左乳房全摘(+エキスパンダー)
リンパ節:陰性(センチネル生検、摘出リンパ数2)→陰性(センチネル生検、摘出リンパ数8)
組織型:浸潤性乳管癌、非浸潤癌主体→浸潤性乳管癌
大きさ(浸潤型):0.1cm以下→1.3cm
範囲:1.3cm→3.2cm
核異型度・組織異型度:3+→2
リンパ管・脈管侵襲:陰性→なし
Ki67:初発時の結果説明なし→15.8%
ホルモン感受性:なし→なし
HER2/meu:あり→あり
断端:陰性→陰性
術後治療:放射線25回→AC療法+(タキサン系)+ハーセプチン
術前治療:なし→なし

①核異型度が3+→2になっていることに初めて気づきました。再発時の方が顔つきが良くなっているように思いますが、このようなことはよくあることなのでしょうか。

来週より、AC(3カ月)後、ハーセプチン(1年)を行う予定でおりますが、ハーセプチンと重ねてタキサン系の化学療法(3カ月)を行うべきなのかとても悩んでおります。主治医より、AC+ハーセプチンで充分な標準治療となる旨の説明を受けている一方で、タキサン系を行うことにより、再発リスクが減少するかも、との説明もございました。行うか行わないかは、本人が決めるべきことは重々承知しておりますが、今後の治療につきまして、何かアドバイスを頂ければ幸いです。
Re:トラスツズマブと抗癌剤の組み合わせについて
S(東京都) 2016/12/22
mimiさま
お返事をいただきありがとうございます。核異型度については、初回と今回で浸潤の大きさが異なりますのでそう言った影響も考えられると思います。
お示しいただいた病理検査の結果を拝見すると、初回の乳癌とホルモン受容体やHER2は同じなのですね。まだ治療法について迷いがあるようにお見受けいたしますので、まずは主治医の先生と、再発として治療をしているのか、異時同側乳癌として治療しているのかについて、よく話し合われてはいかがでしょうか? 病理検査などを含めた、その根拠についても聞いてみると良いと思います。その上で、再発の場合に主治医がどのような治療が良いと考えているのか、異時同側乳癌であればどのような治療を勧めたいと考えているのか、について質問されてはいかがでしょうか。
ご自身の病気の状態をよく理解されて、選択肢についても十分話し合われた上で、納得して治療方針を選択されるのが良いと思います。
末筆ながら、mimiさまの治療が順調に進むことを願っております。

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