掲示板「チームオンコロジー」

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治療とその選択
タキサン系
色々悩み中(神奈川県) 2018/08/10
ドセタキセル、パクリタキセル、ナブパクリタキセルの違い、また、投与方法(3週間ごと、1週間ごと)の違いによる効果と副作用はどのようなものでしょうか?

ナブパクリタキセルというのは、あまり掲示板でもヒットしないのですが、あまり使われないのでしょうか?どこの病院でも扱っている訳ではないのでしょうか?

また、抗がん剤は術後いつまでに始めなければならないという期限はあるのでしょうか?

   
Re:タキサン系
Y(栃木県) 2018/08/16
色々悩み中さん

初めまして。病院薬剤師のYと申します。
いただいた質問の中から、私からはお薬の特徴に関わる部分について、
お答えしたいと思います。

回答をお読みいただく前にお伝えしたいのですが、
がんの種類に関わらない、一般的ながん治療で使用する薬剤についての
説明になっていますので、色々悩み中さんが知りたいと思っていることに
応えられていないかもしれません。

その場合、差し支えなければ、がんの種類(乳がん、肺がん、胃がんなど)や、
現在の状況(手術前・手術後・進行・再発)についてもお聞かせいただけると
もう少し具体的にお返事できるのではないかと思います。

それでは、いただいた質問について、順にお答えいたします。

◆ドセタキセル、パクリタキセル、ナブパクリタキセルの違いについて

いずれも構造中にタキサン環を有する、タキサン系と呼ばれる薬です。
ドセタキセルとパクリタキセルは、ヨーロッパイチイの針葉抽出物から半合成された
製剤です。
これらは水に溶けにくい性質を持っているため、無水エタノール(アルコール)を
含んだ液体に溶かして治療に使用しています。
ドセタキセルはアルコールを使用せずに溶かす方法もあるので、アルコール
過敏の方も使用できます。パクリタキセルはアルコール過敏の方には使用できません。
パクリタキセルでは薬のアレルギーを起こすことがあるので、あらかじめ
アレルギーを予防する薬も使用します。
ナブパクリタキセルは人血清アルブミンにパクリタキセルを結合させた製剤です。
生理食塩液での懸濁が可能になり、アルコールは使っていません。アレルギー
予防のための薬は必須ではなくなりました。

◆投与方法(3週間ごと、1週間ごと)の違いによる効果と副作用はどのようなもの
でしょうか?

がんの種類によって、薬剤の使用方法が異なるため、一概に3週間ごと、1週間
ごとのどちらが効果が高いと言うことは難しいです。
タキサン系の薬剤に見られる副作用として、白血球減少などの骨髄抑制、脱毛、
しびれ等が挙げられます。
ドセタキセルは浮腫が見られることがあります。
また、投与方法により現れやすい副作用は異なります。1週間ごとのパクリタキセル
投与では末梢神経障害が起きやすい、3週間ごとのドセタキセル投与では
好中球減少が強く出てくる傾向があります。
これらの副作用には個人差があります。生じた場合、副作用の症状を和らげる治療を
行う、原因となる薬剤を減量・休薬する等の対応を取ります。

◆ナブパクリタキセルというのは、あまり掲示板でもヒットしないのですが、
あまり使われないのでしょうか?

抗がん剤には、がんの種類によって使用できるものとできないものがあります。
ドセタキセルやパクリタキセルと比べると、ナブパクリタキセルは使用できる
がんの種類が少ないです。
しかし、進行・再発した膵臓がんの治療では広くナブパクリタキセルを使用されて
います。


もし、わかりにくい部分や、あらたに質問したいと思うことがありましたら、
遠慮なくお聞かせください。

色々悩み中さんの、手助けになれば幸いです。
Re:タキサン系
K(東京都) 2018/08/22
いろいろ悩み中 さん

術後の治療をいつから始めようか、とお悩みのようですね。
東京都内の病院で働いている医師のKと申します。
掲示板にご相談くださりどうもありがとうございます。
ご自身のご病気のことか、ご家族やご友人のことか、勘違いがあったら申し訳ありませんが、私のわかる範囲でお答えさせていただきます。

がんは原発巣(もともとできた場所)から広がろうとする性質や、血管やリンパ管に乗って転移しようとする性質があります。
手術療法は、少なくとも目に見えている範囲+αの範囲を除去するという治療法です。
術後に行う薬物療法は、目に見えないレベルの小さな転移や浸潤を始めているがんがあるかもしれないと考えて、再発するリスクを減らすために行います。
その再発の危険性は、手術後の組織を顕微鏡で詳しく見て判断することが多いのですが、これも患者さん個人個人の状況で解釈が異なってきます。

抗がん剤を術後に行うときの問題点として、副作用で、細菌と戦う白血球が少なくなったり、血液を固まらせる役割のある血小板が少なくなると、手術の傷口が開いてしまったり感染が重症化しないかということが気がかりです。
ですので、抗がん剤を始めるタイミングとしては、傷口がしっかり治ったことを確認して始めるとよいでしょう、とお答えすることになります。
いつまでに始めたらよいかは、がんの種類によっても異なりますが、先にお伝えした薬物療法の役割から考えると、あまり遅くなりすぎないほうがよい、と考えた方がよいと思います。状況により2か月遅れても行った方がよい場合もあれば、6か月遅れるくらいなら行わないのと同じではないか、と考える場合もあります。

いろいろ悩み中さんの個人的な状況を一番ご存じなのは、ご担当の先生ですので、率直にご質問されてもよいかと思います。
手術後、どうしてもすぐに治療が始められない事情のある患者さんに相談されることは私もよくあります。
ご担当の先生とぜひご相談されて、ベストなタイミングを決めていかれると、ご納得のいくお答えをいただけるのではないかと思います。
外来の看護師さんなどの医療スタッフも、同じような状況の方の対応をされたことがある場合はアドバイスをくれたり、医師との面談をセッティングしてくれたり…などのサポートをしてくださることもありますので、ぜひこの掲示板でご相談してくださったことを、お話してみてください。

お悩みが解決に向かい、納得のいくお答えが得られますことを心より願っております。
このたびはご質問くださりどうもありがとうございました。

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