掲示板「チームオンコロジー」

Bulletin board

治療とその選択
全摘出後 切除断端陽性 治療方法について
K(岡山県) 2018/10/02
いつも勉強させて頂いております。本当にありがとうございます。
妻が細胞診にて左乳房及びリンパ節に悪性腫瘍と診断され全摘手術をした者です。
病理検査結果(主治医のお話をメモしました)ですが、浸潤癌(乳頭腺管がん)、浸潤径2.5cm、波及度g+f、リンパ管侵襲+ly1、血管侵襲+v1、ER+、PGR+、組織学的悪性度グレード3、Her2+2/+3、リンパ節転移13個(切除)中1個(転移)、ステージ2b、サブタイプ:トリプルポジティブとのことでした。
今後の治療ですが、AC療法(2週毎×4回)+ハーセイプチン&タキソール(1週毎×12回)+ハーセプチン(3週毎×14回)+ホルモン治療とのことです。
その後、自分で調べたところ、おそらく標準治療であり、全て納得なのですが、
気になることが一つ。切除断端が陽性であったとおっしゃったことです。。。
ネットで調べましたが、切除断端陽性の方は部分切除の方達ばかりで、全摘出で切除断端陽性と判定された方の情報が拾えません。
主治医からは、しっかりと取り切ったので、局部再発の可能性は低い。追加切除も放射線治療も必要ないと思う。万が一、局所再発したらその際に処置すれば良い。また、どうしても気になるようであれば、放射線治療はやるとしても追加切除はやらないで大丈夫とのことでした。
どうしても、そこの部分が気になり、スッキリしません。
一般的な治療はいかがなものでしょうか?

どうぞ、よろしくお願い致します。

追伸:10/10に抗がん剤の説明等で再診予定です。それまでにコメントいただけましたら助かります。

Re:全摘出後 切除断端陽性 治療方法について
y(千葉県) 2018/10/09
K様
ご相談ありがとうございます。
看護師をしておりますyです。

奥様が乳がんで全摘手術を受け、断端陽性と主治医から言われ、気になってらっしゃるとのことですね。
奥様のためにいろいろとお調べになり、スッキリしないところを追求する姿勢は素晴らしいと思います。

こちらのチームメンバーで話し合いました。

K様が具体的に気になるのはどのような点でしょうか。
断端陽性という結果に対する「しっかりと切り取ったので局所再発の可能性は低い」という主治医の説明についてでしょうか。
あとは、今後の治療方針について、断端陽性に対して追加切除をしない点、もしくは、放射線治療をするか迷われる点でしょうか。

まず、前者についてですが、
一口に断端陽性と言っても、がんの性質や広がり、今後の治療方針など様々な状況があります。
部分切除であっても、全摘であっても、それらを、患者さんご本人の意向も踏まえて総合的に判断することが重要となります。
その重要性は、乳がんの治療を科学的根拠に基づいて行うために作られているガイドライン(日本乳癌学会 乳がん診療ガイドライン)でも指摘されています。

奥様ご自身、そしてK様ご自身が納得いくまで、気になる点をしっかり主治医と話し合うことが重要です。

次に、今後の治療方針についてですが、上記のように「断端陽性の状況に合わせた」考え方が必要になると思います。
奥様とK様にとっての最善の治療を選択するために、主治医の考える医学的見解(奥様の状況について、それぞれの治療選択におけるメリットやリスクについて)と、奥様、K様の優先したいことを、ぜひ話し合ってください。

「〇〇について気になっています。(もしくは、色々調べてみたら、私としては〇〇なので〇〇の方が良いと思っています。)納得して先生と治療に取り組みたいので、お考えについてもう少し詳しく説明してもらえませんか?」
など、聞いてみてはいかがでしょうか。

奥様とK様が納得して最善の治療に取り組めることを願っています。
Re:全摘出後 切除断端陽性 治療方法について
K(岡山県) 2018/10/10
y様

この度はコメントを頂きまして、ありがとうございます。

本日、今後の抗がん剤治療の説明と主治医の診察がありました。
断端陽性の件がどうしても気になっており、内容と程度を詳しく説明して欲しいことを伝えました。病理の先生もなかなか忙しくてすぐにとはいかないが、内容を確認してから後日お話ししますとのことでした。

10/15から抗がん剤治療(AC治療)が予定通り始まります。もしも追加切除が必要となった場合、後からでも大丈夫なものでしょうか?
先生はがん細胞自体の悪性度が高いので薬物療法を優先し、追加切除や放射線治療は後で大丈夫というお考えのようです。
Re:全摘出後 切除断端陽性 治療方法について
三浦 裕司 (東京都) 2018/10/12
Kさま

yと一緒に今月のチームを担当している者です。
断端陽性について主治医の先生にご質問できたとのことで、安心しました。

日常生活でもそうですが、コミュニケーションを積み重ねることで徐々に良い関係が構築され、さらにコミュニケーションが取りやすくなるのは、医療者ー患者さん間でも同じだと思います。ぜひ、下記のサイクルを繰り返してみて下さい。

疑問なこと不安なことを溜め込まずに適切に伝えること
→主治医がどのように考えているかを聴くこと
→繰り返し

今回の質問をきっかけにして、これからさらに主治医とのコミュニケーションがうまく行くことを願ってます。

さて、薬物療法、放射線治療(もしくは追加切除)の順番についてのご質問ですね。
これについても是非主治医にもう一歩突っ込んで聞いてみるといいかもしれません。
質問する際に、ご自身の理解を整理するために、少しだけアドバイスをさせてもらおうと思います。

一般的に治療選択肢にはメリットとデメリットがあります。
これらのメリットとデメリットを、以下の3つの要素を総合的に換算して、最もメリットが大きいと考えられる選択肢を選ぶ作業を我々医療者は行います。
①いわゆるエビデンスと呼ばれる科学的な根拠
②患者さんの価値観
③専門家としての個々の患者さんの状況に対する判断

今回の場合だと、薬物療法→局所療法(放射線もしくは追加切除)という選択肢と、局所療法→薬物療法という二つの選択肢についてそれぞれのメリット、デメリットは何ですか?という質問をするといいと思います。

その中で一つ考え方のヒントとして知っておいた方が良い知識として、薬物療法と局所療法それぞれの治療法の目的が違うということがあります。
薬物療法は全身治療となりますので、(もちろん局所にも効果を出しますが)一般的に遠隔再発を予防するというのが治療の目的になります。
局所療法は局所にだけ働きますので、局所再発を予防することが目的の治療になります。
奥さんの今の状態で、どちらの治療目的を先行した方がメリット/デメリットのバランスが良いと主治医が考えているのかお尋ねになると良いと思います。

主治医へのご質問の際にご参考になりましたら幸いです。

記事内容を変更することはできません。記述を修正したい場合はコメント欄を使って補足・訂正を行ってください。