掲示板「チームオンコロジー」

Bulletin board

治療とその選択
乳がんの抗がん剤治療開始時期の遅れに対するリスク
りんご(青森県) 2019/08/31
はじめまして。閉経前の48才です。今年4月に乳がんと診断されてから、情報収集と病気への理解を深めるためこの掲示板を拝見させていただいています。内容が難しくよくわからないことも多いのですが、先生方の思いやりに満ちた誠実な回答を見るたびに、勇気づけられています。
さて本題ですが、6月に右乳房を全摘(乳頭乳輪温存)、7月に病理結果が出ました。
浸潤がん(硬がん)   浸潤径8mm
センチネル生検 陰性  脈管侵襲なし
グレード2   ER95% PgR95%  
HER2 0    ki67 25.5%
主治医からは抗がん剤治療を勧められましたが、ホルモン受容体陽性率が高いのでオンコタイプDX検査を希望しました。ところが県内ではその検査を実施している医療機関がないので、すぐには受けられないとのことでした。
他院での検査は私の負担が大きくなるので、自院で検査を受けられるように準備を進めていただいておりますが、数か月かかるそうです。(年内を目処)
もし、抗がん剤治療が必要となった場合、治療開始時期の遅れが再発リスクをどの程度高めることになるのでしょうか?
ちなみに7月よりタモキシフェンを服用しております。このままホルモン療法で済めば無用な心配ですが、時間が経過するにつれ不安が募り、気持ちが揺れ動いています。

   
Re:乳がんの抗がん剤治療開始時期の遅れに対するリスク
NS(東京都) 2019/09/03
りんごさん、

こんにちは。乳がん診療に携わっていた者です。
掲示板を情報収集のためにご利用いただいているとのこと、ありがとうございます。

6月に手術を受け、7月に判明した病理結果をもとに、主治医の先生からは抗がん剤をすすめられているが、本当に必要かどうかを判断するためにオンコタイプDX検査を希望されているのですね。

検査をご希望された理由は、きっとお調べになっていると思いますが、従来の指標で化学療法が必要と思われていた方の中に、オンコタイプDX検査をすると、化学療法が不要と判断される人が多くいらっしゃることから、その情報を見極めたうえで治療を選択なさりたい、ということと理解しています。

しかし、おかかりの病院では検査が出せる環境が整っておらず、検査ができるまで数か月かかると言われているとのこと。

ホルモン療法を始めているものの、その選択自体が再発のリスクを高めていないかとご不安になるお気持ちをお聞かせいただいてありがとうございます。

まず、

「現在術後2か月目で、ホルモン療法を始めているが、抗がん剤治療が必要となった場合、治療開始時期の遅れが再発リスクをどの程度高めることになるのか?」

という点について、調べました。

現在、手術後の化学療法を何週以内にうけるべき、という明確な基準があるわけではありませんが、下記の報告をはじめ、一般的には術後90日以内に抗がん剤を始めた人と、91日よりあとに始めた人では、90日以内の人の方が全生存が良い、といわれています。

乳がん患者で化学療法の開始が遅れると全生存が低下―トリプルネガティブ乳がんで顕著に
https://www.cancerit.jp/37454.html

上記は、米国で2005年から2010年の間に治療された、ステージ1から3の浸潤性乳がん患者さんのうち、化学療法を受けた2万4千人以上を後ろ向きに解析した、集団ベースの研究です。また、再発リスクではなく、最終的に乳がんで死亡する可能性についての情報になります。

「手術後91日以降に化学療法を開始した患者は、今回の分析対象者の9.8%を占めた。これらの患者は、手術後30日以内に化学療法を開始した患者と比べると、分析を行った時点では、5年以内に死亡する可能性が34%上昇し、乳がんによって死亡する可能性は27%上昇した。」

とあり、穏やかではないですね。
一方、

「トリプルネガティブ患者では、治療開始が遅延(術後91日以降に開始)すると死亡リスクが53%上昇した。ホルモン受容体陽性患者あるいはHER2陽性患者では、治療開始遅延による有意な影響はみられなかった。」

という記述もあり、サブタイプによって、抗がん剤遅延の影響が異なることも示唆されています。

もう一点、2006年から2008年に日本で診断された乳がん患者さんの5年生存率(相対生存率)は91.1%です。(がん情報サービスの最新がん統計 4.生存率よりhttps://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html。なお、これはすべてのステージの患者さんが含まれた数値なので、早期乳がんの方はもう少し数値が良いと思われます。)
仮に、死亡リスクを9%とすると、”死亡する可能性が27%上がる”というのは、9 x 0.27=2.43%上がることを意味しますので、”27%”に惑わされないようにして頂ければと思います。

また、りんごさんのように、先に内分泌治療を始めている方についての、このようなデータはまだありません。

ただ、現在ある情報を総合すると、化学療法が必要な方には、治療はあまり遅れないほうが良い(特にトリプルネガティブ乳がん)、ということは言えるかと思います。

りんごさんにとって重要なのは、検査を受けられる環境が早く整うことだと思います。
主治医の先生も、病院から検査が出せるようにするお手続きにご尽力頂いていることと思います。
進捗をご確認頂いた上で、どうしてもあと数か月はかかる、というのであれば、ご負担は大きくなってしまうかもしれませんが、現在オンコタイプDX検査を受けられる病院で検査を受けることを選択肢に入れられても良いかもしれません。

2019年9月現在、青森県内で検査を受けられる施設はあると思います。検査を扱っている会社へ問い合わせてみるのはいかがでしょうか。

ジェノミックヘルス株式会社
https://www.genomichealth.com/ja-JP/who_we_are/contact_us

その場合は、主治医の先生に紹介状を書いて頂いたり、りんごさんの乳がんの組織を、検査のできる病院へ貸し出して頂いたりする必要があり、それにもある程度は時間がかかってしまうことは予想されますので、慌てずに、順番に整理して、先生とご相談されると良いと思います。

また、どのような結果だったら、抗がん剤を受けるのか、またはホルモン療法だけで行くのかについても、主治医の先生と、事前によくご相談されることをお勧めします。

りんごさんが、ご不安と向き合い、この掲示板へ投稿してくださった勇気を尊敬しています。
そのご不安を、主治医の先生や周囲の方々とも共有し、一緒に解決へ向けて進んでいけることを、私たちも、応援しています。

この回答が少しでもお役にたてば幸いです。
Re:乳がんの抗がん剤治療開始時期の遅れに対するリスク
りんご(青森県) 2019/09/08
NS様
お忙しい中、いろいろ調べていただきありがとうございました。
抗がん剤治療開始が、術後90日を過ぎると死亡リスクが数%高まるというデータがあるとのことですが、私の場合はすでにホルモン療法を開始しているので、その数値よりはリスクが下がると前向きに捉え、なるべく早く安心して治療に取り組めるよう、主治医と話し合いたいと思います。
Re:乳がんの抗がん剤治療開始時期の遅れに対するリスク
菊池(埼玉県) 2019/09/11
ki67が低くて羨ましいです
私は83%です。
絶望的です。
ルミナルAとか陰性の人kiが低い人
治療も楽なんだろうと本当に羨ましいです。
私は未だに乳がんになったこと受け止められない。受け入れられません。
医師も信用出来ない。

先が真っ暗です。
Re:乳がんの抗がん剤治療開始時期の遅れに対するリスク
NS(東京都) 2019/09/11
りんごさん

お返事ありがとうございます。
前向きにとらえて頂いてほっとしています。

治療の選択には、悩んだり、迷ったりされることも多いと思います。
一人で抱え込まず、主治医の先生とも良いコミュニケーションを取られて下さいね。

また何かありましたらこちらの掲示板をご活用下さい。
Re:乳がんの抗がん剤治療開始時期の遅れに対するリスク
NS(東京都) 2019/09/11
菊池さん

正直なお気持ちを投稿くださり、ありがとうございます。

Ki67が高い値であったことで、ショックを受けられていることに、私たちも心を痛めています。

乳がんになったことを受け止められないお気持ちを、まずはそのまま受け止めてもらえる場所はありますか?

辛いお気持ちがひしひしと伝わってきて、
医師も信用できない、と書かれていたので、気になっています。

よかったら、もう少しお気持ちをお聞かせいただけないでしょうか。
Re:乳がんの抗がん剤治療開始時期の遅れに対するリスク
りんご(青森県) 2019/09/12
菊池さんへ

りんごです。
あなたから、つらくて苦しい気持ちが伝わってきました。
とにかく早く何か言葉をかけてあげたくて、書き込みしました。

私ががんになって学んだことは、つらい時は「つらい」、助けてほしい時は「助けて」と、言ってよいのだということです。
その声は必ず誰かに届き、自分が浮上するきっかけをもたらしてくれる事を私自身、強く実感しています。

今はとてもつらく、そんな風には考えられないかもしれませんが、菊池さんはもうすでにこの掲示板を通じて、その声を伝えたのですから…。

そして、誰かとつながっていると思えるだけで、勇気になったりするのです。

記事内容を変更することはできません。記述を修正したい場合はコメント欄を使って補足・訂正を行ってください。