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治療とその選択
タモキシフェンとCYP2D6の関係
sumomo(海外在住) 2020/09/29
タモキシフェンがCYP2D6活性型次第で効果がないかもしれないと聞き不安になり、いろいろと調べています。処方前のテストが一般的に普及していないようで、その理由を知りたくて過去ログを拝見したのですが、以下のページの神戸大学 腫瘍・血液内科の向原先生のご回答がとてもわかりやすかったです。
https://www.teamoncology.com/bbs/theme?coid=1&tid=3099#res_3107

しかし、日付が2011/06/23なので、2020年の現在も同じ状況なのか、その後、CYP2D6とタモキシフェンの関係性の研究により具体的な成果が見られたのか、どなたか教えていただけたらと思い、投稿させていただきました。何卒よろしくお願いいたします。

Re:タモキシフェンとCYP2D6の関係
S(東京都) 2020/09/29
Sumomo様、ご相談ありがとうございます。東京で腫瘍内科医をしているSと申します。現在の治療に効果がない可能性があるとの情報があると、不安になりますよね。
向原先生の投稿後、CYP2D6の型によってタモキシフェンの効果に違いがあるか(変異型の場合にタモキシフェン2倍量飲むことで効果の違いが現れるか)を調べる研究が実施されました。結果は、変異型の場合に増量しても治療効果が変わらず、遺伝子の型の変異がない場合とある場合でも効果の違いは認めませんでした。したがって、現時点でCYP2D6の型を調べても治療効果の予測はできない(どの型でも同様の効果が期待できる)ため、調べることは推奨されていません。
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2020/0310/index.html
Re:タモキシフェンとCYP2D6の関係
sumomo(海外在住) 2020/09/30
S様、

ご丁寧にご返事くださり、最新の情報をお知らせいただいて、誠にありがとうございました。とても参考になりました。お陰様で、20㎎と40mgの処方で効果に差がないことがわかり、少し安心しました。

ただ、この研究はCYP2D6の代謝活性が低い人だけが対象のようで、低いからといって40㎎に増やしても無意味(20㎎で十分)ということは判りましたが、代謝活性が高い人と比べていない点が気にかかりました。20㎎群と40㎎群でほぼ同じであった6か月PFSの結果が、はたして良い数値なのかどうかが判りませんでした。もし代謝活性が高い人の20㎎群と比べてもPFSがほぼ同じならば、タモキシフェンの効果はCYP2D6の遺伝子型と関係がないと結論付けられますが、この研究結果が示しているのは、タモキシフェンの効果がCYP2D6遺伝子型と関係ないということではなく、不利な遺伝子型の人に対する効果は用量と関係ない、ということだと思います。

しかし、40㎎の人たちの血清中のエンドキシフェン濃度が代謝活性が高い遺伝子型の人20㎎群と比べても多かったという記述が英語版にあるので、タモキシフェンの効果とエンドキシフェン血中濃度の相関関係も薄いということが仄めかされているようです。ということは「エンドキシフェン濃度は高ければ高いほど良いというわけではない」ということになり、CYP2D6遺伝子型の有利不利もタモキシフェンの効果と関係ないことにはなる気はします。それならば、自分のCYP2D6の活性型が何であろうと、毎日20㎎飲み続ければよいと安心できますが、その解釈であっていますでしょうか?

せっかく最新の研究結果の情報を教えてくださったのに、重箱の隅をつつくようで申し訳ありません。私が誤解しているだけで、実際に「タモキシフェンの効果はCYP2D6と関係ない」という結論であればよいと願います。ご指導いただけましたら幸いです。
Re:タモキシフェンとCYP2D6の関係
S(東京都) 2020/10/07

sumomo様、お返事が遅くなり失礼いたしました(すでにお返事をしたと思いこんでいました)。この研究では代謝活性を測定して代謝活性の低い人を20mgと40mgに振り分けていますが、代謝活性の高い人もそのまま研究に参加して20mgを内服しています。代謝活性が低く20mgを内服していた人と、代謝活性が高くて20mgを内服していた人で、6ヶ月時点のPFSは違いがありませんでした。
したがって、この研究結果の解釈としては、
1. 代謝活性の低い人で20mgと40mgのタモキシフェン内服では効果に違いがなかった
2. 20mgを内服した代謝活性の低い人と高い人で効果に違いがなかった
となります。したがって、実臨床ではタモキシフェンを内服する前にCYP2D6を測定する意義はない、と言うことになります。
研究なので限界はあり、いろいろとツッコミどころがないわけではないのですが、臨床医としては20mgをそのまま飲み続けることを患者さんにおすすめしています。

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