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治療とその選択
日本人に対するフェマーラ投与について
コタママ(海外在住) 2008/06/12
閉経乳がんホルモン療法剤レトロゾール(フェマーラ)について伺います。アメリカ在住50歳。昨年8月に右乳房温存術を受けました。

今年6月から術後補助療法としてレトロゾールを飲み始めましたが、レトロゾールは日本人と白人(Caucasian)で効き方が違う、という記事を目にしました。日本人と白人の遺伝子の違いが関係しているようなのですが、理解しにくい点がいくつかありましたので、教えていただけたらと思い投稿しました。私自身、タモキシフェン--タモキシフェンの代謝に必要なチトクロム(CYP)2D6不全/欠損が判明--タモキシフェン中止--卵巣摘出--アリミデックス--回転性めまい(一日だけですが)のためフェマーラに変更、という経緯を辿っていますので、非常に興味があります。

記事:
・「遅れていたレトロゾール(フェマーラ)が発売」 (瀬戸山先生)
http://blog.goo.ne.jp/clinicalscience/e/5c32a8e69a77a45239aa55548e9d7c32
・「アロマターゼ阻害剤についての提言」 (富永先生)
http://blog.so-net.ne.jp/b-c-support_soreiyu/2006-12-05

日本でのフェマーラ承認の背景:
欧米での治験の結果をふまえて2.5mgが標準となっているフェマーラですが、日本人における試験では、まず1.0mgで行われ、その後厚生労働省の要望で欧米と同じ2.5mgで試験されました。その結果、2006年に2.5mgのみ承認されました。日本人への投与で懸念されるのは、レトロゾールの代謝に必要なチトクロム(CYP)2A6の欠損が白人に比べ日本人に多く(日本人約20%、白人約1%)、欧米の標準の2.5mgをそのまま日本人に当てはめると過剰投与になるのではないか、ということです。

質問:
1.瀬戸山先生の記事中、「日本人では少ない投与量で効果がみられる例が多いと考えられます」とあるのですが、この「効果」というのは、酵素の欠損がない場合と同様の効果なのでしょうか。必要な酵素が欠如していると薬物は代謝されにくいのだから、投与量の多少にかかわらず、正常な場合と同様の効果は得られないのではないか、と素人としては考えてしまうのですが。

2.CYP2A6の欠損が日本人に多いといっても、それが20%なのであれば残りの80%は欠損がないわけで、その80%に対しては2.5mgでも過剰にはならない、と解釈してよいでしょうか。最終的には個々のもつ遺伝子の違いの問題と捉えていいでしょうか。

3.記事を読むと、少なくとも日本人には1.0mgの方が2.5mgよりよい、という印象を受けるのですが、そういう結論は試験の結果からはっきり導き出せるのでしょうか。1.0mgと2.5mgを直接比較した試験はあるのでしょうか。

4.上の記事は日本でフェマーラが承認された2006年のものですが、新しい見解はありますか。

タモキシフェンの効果とCYP2D6欠損の関係はアメリカで広く話題になり、私の場合ホットフラッシュがまったくなかったため主治医に遺伝子検査をすすめられ、CYP2D6欠損が見つかりました。レトロゾールとCYP2A6は、欠損が白人にあまりみられないためか、私の周辺では話題になっていないように思います。次回の主治医のフォローアップの時にCYP2A6について触れてみようかと思っています。

長文になってしまい、申し訳ありません。よろしくお願いいたします。

   
Re:日本人に対するフェマーラ投与について
瀬戸山(宮城県) 2008/06/13
コタママさん
 急に小生の名前が出てびっくりしました。爽秋会クリニカルサイエンス研究所の瀬戸山です。

 ご心配をおかけするような情報をお伝えして申し訳ありません。
 ご心配しているフェマーラの代謝酵素であるCYP2A6の影響について,まず,小生の知っている限りでお答えします。
 フェマーラはCYP3A4,CYP2A6で代謝されます。そのため,CYP3A4やCYP2A6の活性が低下させる薬剤との併用やこれらの酵素の活性が低下している方では,代謝が遅くなり,副作用が出現する危険性があると考えられます。
 ご承知のようにCYP2A6の活性低下している人は日本人が欧米の方より多いとの報告がありますので,日本人に副作用がおおいのではと考える方もおられます。しかし,少数例の検討ですが,実際には,CYP2A6の活性低下している人でも,正常な人でも,副作用の程度や頻度には変わらないということが示されています(製薬企業インタビューフォーム)。
 すなわち,CYP2A6活性低下している方は,副作用が出現する可能性がありますが,その可能性は低いかもしれないということになります。しかし,副作用が出現しないとは言えませんので,注意は必要となります。

 効果に関しては,代謝物には効果に関連するものがないようですので,代謝酵素の機能低下には,影響は少ないかもしれません。

 投与量については,1日2.5mg投与群と0.5mg投与群を比較した試験がありますが,一つの試験(AR/BC2試験)は,2.5mg投与群が優れている結果を示し,一つの試験(AR/BC3試験)では,奏効率や無増悪期間には差が認められませんでしたが,多変量解析で検討すると2.5mg投与群の生存期間が良好であることが認められています。この点から,欧米では2.5mg投与が勧められていると思います。
 一方,日本の開発臨床試験では,日本人に対する投与量設定試験で,1日1mg投与群の比較試験が行われて,効果があるという結論がでました。
 小生は,日本人における2.5mg投与群に関して詳細には知らないのですが,富永先生は,効果に関しては少なくても同等,副作用は2.5mgが多いと指摘しています。
 直接比較の成績をみたことがありませんんが,日本の方では1mgで効果が期待できるというエビデンスがあります。日本人での2.5mgの比較試験成績があるかどうかわかりません。これらから日本人には1mgでも効果が期待できるのではないかと思っています。1mgでも効果が期待できるのに,2.5mgを投与する必要があるのかという疑問からあのような記事を書きました。不必要な投与を避けると副作用が少ないと思われますので・・

 ちなみに,CYP2D6の活性低下している方は,欧米人の方に比較して,日本の方は少ないことが知られています。CYP2D6が活性低下しているとCYP2D6により代謝を受ける薬剤の副作用が出現する可能性があります。乳がんのホルモン治療薬と知られるタモキシフェンはCYP2D6に代謝され,エンドキシフェンという活性代謝物に変換して効果を発現することも知られています。そのため,CYP2D6が活性低下した方には,タモキシフェンの効果が認められない方もおられるようです。

 小生のわかる範囲でお答えさせていただきました。お役に立てれば嬉しいのですが。
Re:日本人に対するフェマーラ投与について
コタママ(海外在住) 2008/06/14
コタママです。

瀬戸山先生、早速お返事いただきありがとうございます。そして、びっくりさせてしまってすみません。最初に目にした記事が上の二つの記事だったので、記載させていただきました。瀬戸山先生、ならびに、レトロゾールに関する情報をおもちの方のご意見や、現場での感触、そして、私のような患者の立場からの質問など、幅広く声を聞けたらと思い、投稿しました。

CYP2A6多型が白人に少なく日本人に多い、ということで、次回の主治医のフォローアップでは、日本人である私がイニシアティブをとらなくては、と張り切ってしまいました(笑)。


私の理解に間違いがないかどうか、確認させてください。

「効果に関しては、代謝物には効果に関連するものがないようですので、代謝酵素の機能低下には、影響は少ないかもしれません。」

つまり、レトロゾールにおいては、CYP3A4の代謝物に効果に関連するものがあり、CYP2A6の代謝物にはそれがないので、CYP2A6活性低下があっても、副作用が強くなる可能性があるだけで効果には変りはない、ということなのでしょうか。CYP2D6はタモキシフェンの効果に重要な役割を果たしているようなので、私は、すべての酵素がそのように働くものと理解してしまっていました。

そして、もうひとつ。CYP3A4には心配しなければいけない多型があるのでしょうか。


「CYP2A6活性低下している方は、副作用が出現する可能性がありますが、その可能性は低いかもしれないということになります。しかし、副作用が出現しないとは言えませんので、注意は必要となります。」

ということは、CYP2A6活性低下があっても副作用が出現しないこともあり、つまり、その場合は活性低下がないケースと結果的には同じことになり、心配する材料はない、と考えていいでしょうか。


現時点での関心事は、CYP2A6の遺伝子検査を打診してみるべきなのか、または、いずれにしても効果に変りがないのだったら、副作用にさえ注意すればそこまでする必要はないのか、です。CYP2D6の検査は私の保険でカバーできましたが、CYP2A6の方は、そのような検査を一般的に行っているのかどうかもまだ調べていません。

あまり神経質になるのはよくありませんが、タモキシフェンの一件以来、あらためて個々の人間は遺伝子レベルで違うのだ、ということを、入門編ではありますが実感しています。

Re:日本人に対するフェマーラ投与について
瀬戸山(宮城県) 2008/06/14
コタタマさん
 おはようございます。
 今朝,宮城県で大きな地震がありました。仙台は大きな被害がないようですが・・

 質問にお答えさせていただきます。

1.「レトロゾールにおいては、CYP3A4の代謝物に効果に関連するものがあり、CYP2A6の代謝物にはそれがないので、CYP2A6活性低下があっても、副作用が強くなる可能性があるだけで効果には変りはない、ということなのでしょうか。」

 レトロゾールには,効果に関連する代謝物がなさそうです。
 CYP2A6活性低下があれば,レトロゾールが身体に長く留まることになります。ということは,効果も少し強くでる可能性もありますが,副作用も出現する可能性もあると思いますので,副作用を注意した方がよいとお伝えしました。
 製薬企業の資料では,CYP2A6が活性がない方でも,副作用にはそれほどの影響はないと記載されていますので,副作用の可能性は大きくはないと考えられますが,注意しておいた方が賢明と思います。
  
2.「そして、もうひとつ。CYP3A4には心配しなければいけない多型があるのでしょうか。」
 CYP3A4に関しても研究されているようですが,CYP2A4やCYP2D6のように人種差があるのかどうか不明です。
 ただ,CYP3A4を低下する薬剤やCYP3A4を活性化する薬剤がありますので,それらの薬剤と併用する場合には,影響が出る可能性があります。例えば,低下させる薬剤の併用では,代謝が遅くなりますので,CYP2A6活性低下と同じように効果や副作用が強くなる可能性がありますが,逆にCYP3A4を活性化する薬剤との併用では,効果や副作用が減弱する可能性があります。
 すなわち,CYP3A4の場合には,併用薬剤の性質を確かめることが必要になると思います。幾つかの薬を使う場合には,併用する薬の相性を確かめることも必要かもしれません。

 



Re:日本人に対するフェマーラ投与について
コタママ(海外在住) 2008/06/15
瀬戸山先生、お忙しいなか辛抱強く説明していただきありがとうございます。宮城内陸地震は犠牲者の方も多く、余震も続いて生活にもかなりの影響が出ていると聞きました。お見舞い申し上げます。。。瀬戸山先生の方はだいじょうぶでしょうか。

地震でこの掲示板も見るどころではない、ということもあり得るということも承知ですが、私がこのトピックの言いだしっぺですので、理解できたことを一応掲示板に載せておこうと思います。


やっと、私が非常に大きな勘違いをしていたことに気づきました。タモキシフェンのことがあったので、私は、薬物の効果というのは代謝物が仕事をすることによって得られるのだ、と思い込んでいました。必ずしもそうではないのですね。

以下の理解で大体いいでしょうか。


タモキシフェンの場合は、CYP2D6によってできた代謝物エンドキシフェンがエストロゲンレセプターと結合するという大事な仕事をする。が、レトロゾールはCYP3A4やCYP2A6によってできた代謝物は、アロマターゼと結合するという仕事には関与していなくて、その大事な仕事をしているのは代謝されずに体内に残ったレトロゾールそのもの(?)。そして、CYP2A6活性低下があってレトロゾールが代謝されにくい場合は、(CYP2A6活性低下がない場合より)レトロゾールが多く体内に残り、体内に残ったレトロゾールはそれなりに仕事もするが、多く残っているがために副作用も大きい。

そこで、1mgで効果が認められたというデータもあることだし、日本人の20%にCYP2A6活性低下が認められることも鑑み、一律、副作用の少ない1mgでいいではないか。


。。。いかがでしょうか? これもまた勘違いでしたら、お手数ですがご指摘いただければ、と思います。


タモキシフェンの時には、CYP2D6活性低下と再発率等の関係を示唆するデータが出始めていたので、私のCYP2D6不全/欠損は私にとって一大事でした。その影響で、今回も、「え、日本人にCYP2A6活性低下が多い! どうすればいいの?」と、なったわけです。主治医にとって、私が初めての日本人患者であることも、自分である程度調べてみようと思った理由のひとつです。

このような質問のできるこの掲示板の存在にも感謝しております。
Re:日本人に対するフェマーラ投与について
瀬戸山(宮城県) 2008/06/15
コタママさん
 当方は地震の影響は殆どありませんでした。
 宮城県北部の山間や岩手県南部の山間の被害は大きいようですが,
 
 コタタマさんのご理解で問題はないと思います。

 長い療養生活と思いますが,強く,健康的に,そして,ご自分の人生を楽しんでください。心から応援しています。
Re:日本人に対するフェマーラ投与について
上野 直人(海外在住) 2008/06/15
日本人(アジア)と白人のちがいがあるかに関してはとても難しい問題です。残念ながら大規模試験の多くのデーターは白人主体になります。問題は日本でどのように今後患者中心の個別化医療を行うかが大きな医療のテーマになると思います。

それには、日本全体の医療がエビデンスと臨床試験の構築を多くの医療従事者が受け入れる必要があるのかもしれません。一部の優秀なもののみが受け入れるだけでは、まずいです。

その上で、さらに日本の基礎医学の強さをどのように臨床試験にいかし、世界的に耐えることの出来るエビデンスが構築できるかですね。

でも、このままでは、あくまでracial demographicが偏ったままの結果を日本は受け入れ続けることがおこることが懸念されます。

Re:日本人に対するフェマーラ投与について
瀬戸山(宮城県) 2008/06/15
上野先生
 コメントありがとうございました。
 先生のご意見の通りと思います。

 日本人で評価された日本人のエビデンスを使えるようになりたいものです。
Re:日本人に対するフェマーラ投与について
コタママ(海外在住) 2008/06/16
コタママです。

瀬戸山先生、丁寧にお答えいただき本当にありがとうございました。すっきりしました。

上野先生、コメントありがとうございます。

さて、その「日本人で評価された日本人のエビデンス」なのですが、日本国内外の医療関係者の方々に伺います。

・実際問題として、「日本人で評価された日本人のエビデンス」は、日本国内、及び、国外でどのように捉えられているのでしょうか?

話が大きくなってしまいましたが、具体的には、次回の主治医の診察にどのように臨むか、です。私の方から1mgを提案するか否かは別としても、日本での1mgの試験のことには触れたいと思っています。その際の心構えについてのご相談です。

・「レトロゾールは日本での1mgを用いた試験で効果があった」という情報は、私の主治医も既にエビデンスとして捉えていると考えて診察に臨んでよいのでしょうか。それとも、私の方から、CYP2A6のことも含めて、話をしなければいけない性格のものなのでしょうか。

私は現在、アメリカ中西部の大都市の大学病院で治療を受けており、主治医にとっては私が初の日本人患者です。日本に帰国する可能性も無きにしもあらずですので、日本国外の事情だけでなく、国内の事情なども教えていただければ、と思います。
Re:日本人に対するフェマーラ投与について
Shige(TMKH)(東京都) 2008/06/19
コタママさん こんにちわ
"「日本人で評価された日本人のエビデンス」は、日本国内、及び、国外でどのように捉えられているのでしょうか? "
たしかにはたと考えてしまうテーマです。

どちらかというと、海外のエビデンスをできるだけそのまま日本人でも検証するという方法が、特に最近の新規承認薬の治験では重視されてきていたと思います。会社にとっても国ごとで用量や用法が異なるのは、広報するほうにも、検証するにも複雑になります。また同じ用法のほうが、国内の結果を逆に海外に利用することも可能になっていきます。これはHERA試験が乳癌領域でははじめて本格的に貢献した試験となるように思います。

もちろん人種差で、用量が変わることもあります。アジア人どうしでも日本人と中国のかたで副作用の発現率が違う項目もあります。試験をとおして日本人にあわせた設定用量を決めることは大事です。

ただし、個人的には人種差というより、個体差の分布の偏りが違うために生じているずれなのだと思っています。CYP2D6などはその一番わかりやすい例かもしれません。

残念ながら、現時点では日本人のデータは日本人のエビデンスとされてしまうことが多いようです。胃癌の手術のD3 vs D2というのも技術や体格の差で、特有のものとされていますし、術後のUFTもあれだけのデータがあっても、海外でのstandard choiceにいれてもらえないようです。

今後の試験や治験は、個体差(Snip, 代謝酵素のみならず他の要因も入ってくるかもしれません)を本格的に導入して検証していくことが不可欠になるようにおもいます。これが最終的には国別の差をならして、協力いただいた患者さんの貢献をより広く生かせる方向になると思います。
この部分を強力にすすめている製薬会社もあります。
日本はなぜか遺伝子アレルギーがあって、なかなかこの方法がとりずらいようですが。。社会保険番号の導入と同じレベルの
議論がでてしまうからかもしれません。

以上私見でした。





Re:日本人に対するフェマーラ投与について
コタママ(海外在住) 2008/06/20
Shige先生、コメントありがとうございます。

日本人のエビデンス、といっても、それが日本人でない「個」に通用する状況も存在すると考えていいのでしょうか。そうならば、日本内外の日本人や、日本人でなくてもそのエビデンスの恩恵にあずかれるような「個」のためにも、発信し続けていただければ、と、素人は簡単に言ってしまうのですが、簡単な話ではないのですね。。。

レトロゾールに戻って、少し状況が変りましたのでまた質問させてください。

きのう、主治医から電話がありました。レトロゾールのフォローアップでした。いい機会だと思い、「レトロゾールとCYP2A6と日本人」のことを持ち出してみたところ、「読んでみたいので記事をもっていたら次回の診察の時にもってきてほしい」と言われました。

主治医に読んでもらうためには英語の文献が必要なのですが、検索の結果、日本での試験については、以下の3つの要旨が見つかりました。

[CGS 20267 (Letrozole), a new aromatase inhibitor: early phase II study for postmenopausal women with advanced breast cancer]

[CGS20267 (Letrozole), a new aromatase inhibitor: late phase II study in postmenopausal women with advanced or recurrent breast cancer (no. 2)--evaluation of efficacy and safety at the recommended clinical dose CGS20267 Study Group]

CGS20267 (Letrozole), a new aromatase inhibitor: late phase II study for postmenopausal women with advanced or recurrent breast cancer (no. 1)--investigation of recommended clinical dose CGS20267 Study Group]

・上記はすべて2002年の「癌と化学療法」に掲載されていて、要旨のみが英語で本文は日本語のようなのですが、日本の1mgの試験関係、或いは1mgと2.5mgの比較に関して、英語の文献はあるでしょうか。

・CYP2A6の欠損・活性低下が日本人に多く見られることについての文献はどのようなものがあるでしょうか。

・レトロゾールとCYP2A6については、(薬物の説明以外は)検索しても出てこなかったのですが。

診察は6月27日です。せっかく主治医が興味を示してくれていますので、患者の私としてもできるだけのことはしたいと思っています。

アドバイスをいただければ幸いです。よろしくお願い致します。

Re:日本人に対するフェマーラ投与について
瀬戸山(宮城県) 2008/06/20
レトロゾールの1mg投与と2.5mg投与の比較試験は見つかりませんでした。
 レトロゾール1mgの日本人における比較試験成績が英語のものがありました。
 また,レトロゾールとCYPの影響について記載してある総説もありました。
 これら2つの論文は,下記のURLにアクセスしていただくと,論文がPDFで入手可能です。

・日本人における1日1mg投与の成績
Tominaga et al. Annals of Oncology 14:62-70, 2003
http://annonc.oxfordjournals.org/cgi/content/full/14/1/62
・レトロゾールがCYP2A6で代謝されることが記載された総説
Buzdar AU et al. Clinical Cancer Reserch 9, 468S-472s, 2003
http://clincancerres.aacrjournals.org/cgi/content/full/9/1/468S

日本人と白人のCYPの遺伝子多型に関する総説が見つかりましたが,抄録だけでした。
Mizutani T. 2003 May-Aug;35(2-3):99-106.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12959412?ordinalpos=9&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_RVDocSum

 参考になればよいのですが・・・
Re:日本人に対するフェマーラ投与について
コタママ(海外在住) 2008/06/20
瀬戸山先生、文献情報どうもありがとうございます。本当に助かりました。

上野先生、Shige先生、漠然とした疑問にコメントをいただいてありがとうございました。この掲示板を利用させていただいて本当によかったです。いろいろな面ですっきりしました。またお邪魔させていただくこともあるかと思います。

これからもいろいろな方の投稿、参考にさせていただきます。

P.S.
今日本は梅雨でしょうか。こちらは蚊のシーズンに突入です。こちらの蚊は強いです。。。
Re:日本人に対するフェマーラ投与について
コタママ(海外在住) 2008/07/03
先日主治医の診察がありましたので、報告させていただきます。

主治医の考えは以下のとおりです。

・レトロゾール1mgと2.5mgの比較は、現時点では確信をもって判断するのは非常に難しい。
・CYP2D6と違い、CYP2A6の検査は日常的には行われておらず、私がCYP2A6のPoor Metabolizerかどうかは現時点ではわからない。
・以上を考えると、今は1mgを選択しない方がよいと思う。
・副作用があるとすれば、心疾患が気になる副作用のひとつだが、私は今まで心疾患及び他の重大な疾患に罹患したことがなく、現在の状態もよいので、心疾患等の症状が出ていないかモニターしていけば2.5mgでよいと考える。
・2.5mgのレトロゾールの効果と、重篤な副作用が私に起こる可能性、を天秤にかけた場合、レトロゾールの効果の方がかなり上回ると考えられる。

こちらで教えていただいたことも聞いてもらい、論文にも(ざっとですが)目をとおしてもらいました。

今回は、日本人に多いCYP2A6活性低下と、日本で行われた1mgの試験のことを主治医に知ってもらい、主治医の考えを聞く、というのが主な目的でした。その目的は達成できたと思いますし、主治医の言うことも納得できました。

いろいろ教えていただき、ありがとうございました。
Re:日本人に対するフェマーラ投与について
shige(TMKH)(東京都) 2008/07/03
コタママさん
経過を教えていただきありがとうございました。
主治医の先生も、患者さんも得られる情報のなかで極めて論理的に理解と判断をされており、驚きを感じてしまうほどでした。決定のための過程の大切さの経験として記憶しておきたいと思います。
それでは、これからもお元気でお過ごしください。

Re:日本人に対するフェマーラ投与について
上野 直人(海外在住) 2008/07/05
主治医とこのようなコミュニケーションがとれたことにおめでとうございます。
情報は色々とあります、そのなかで標準を明確にしそして、それとともに歩むことの出来る医療従事者になることが医療従事者には求められています。

また、患者も一杯勉強することが大切で、足りていないことがわかると臨床試験に対する参加意欲が増加します。米国における患者の力は患者団体の医学への進歩に対する、臨書試験への参加意欲に差が日本と感じることが多いですね。

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