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治療とその選択
トリプルネガティブ乳癌と術前化学療法
ひろとこ(京都府) 2008/07/08
はじめまして。妻(39才)の乳癌治療について相談いたしたく、よろしくお願いします。
 1月にしこりを感じて受診、乳癌と診断されました。
 トリプルネガティブ、グレード3、3.1㎝径、化学療法前センチネルリンパ生検1/1(4ミリの転移)、遠隔転移なし
といった診断で、2月下旬から術前化学療法を開始しました。
 医師の判断でTC×4→FEC×4の順で行い、現在、FEC3回目まで済んでいます。
 幸い、副作用はそれほどでなく、しこりもかなり小さくなりました。しかしトリプルネガティブの場合、病理学的完全奏功(PCR)になるかならないかで予後について極めて大きな差があると聞いています。特に妻の場合には悪性度も高く、再発・転移への不安が大きいです。
 医師からは、4回目終了後、8月上旬には手術を予定していると聞かされていますが、仮に4回目が終わった段階でCCRでない場合、追加的に化学療法をする選択肢はないかどうかが気になっています。
 1)それなりに奏功したタキソテールかFECを追加投与する
 2)日本では乳癌に保険適用のないシスプラチンがトリプルネガティブに有効という情報があるので、保険外であってもシスプラチンの追加投与を希望する
といった選択で、あくまでCCRを目指す方が予後はよいのではないでしょうか。アメリカで治療にあたられている立場からお考えを教えていただければ幸いです。
 また、センチネルが転移ありだったので、リンパ廓清をすることになりそうですが、妻はリンパ浮腫を恐れてリンパ廓清に躊躇しています。妻のような場合、リンパ廓清をしなければどの程度再発リスクが上がるかのデータはあるのでしょうか。
 いろいろお尋ねして申し訳ありませんが、トリプルネガティブに関して情報を集めるほど不安感がつのっています。アドバイスいただければ幸いです。

   
Re:トリプルネガティブ乳癌と術前化学療法
上野 直人(海外在住) 2008/07/09
再発・転移への不安が大きい気持ちは理解できます。いくつか教えてください。

1)奥様はこの件でこのサイトで相談していることを知っていますか?

2)誰からトリプルネガティブの場合、病理学的完全奏功(PCR)になるかならないかで予後について極めて大きな差があると聞きました。

3)トリプルネガティブに関して情報はどのようにして集めているのでしょうか?

Re:トリプルネガティブ乳癌と術前化学療法
ひろとこ(京都府) 2008/07/10
上野先生

 早速お返事いただきありがとうございました。

1)奥様はこの件でこのサイトで相談していることを知っていますか?
 いいえ、まだ伝えておりません。これまでも他の掲示板で相談するなどしてきましたが、内容によって本人に伝えたり伝えなかったりしています。隠している訳ではないのですが、治療中の本人の不安を高めたくないので。

2)誰からトリプルネガティブの場合、病理学的完全奏功(PCR)になるかならないかで予後について極めて大きな差があると聞きました。
3)トリプルネガティブに関して情報はどのようにして集めているのでしょうか?
 2)と3)は一連のお尋ねかと思います。2)の内容を含めて、トリプルネガティブ関連の情報はインターネットを中心に集めています。英語の研究論文の要約を伝えてくれる日本語サイトが主要なところです。2)の件を含め、重要と考える情報については主治医にも尋ね、意見を聞いています。シスプラチンについては主治医も、「日本でも利用可能になるよう厚労省に訴えているがなかなか変わらない」というお返事でした。

 簡単ですがご参考になりますでしょうか。よろしくお願いします。
Re:トリプルネガティブ乳癌と術前化学療法
上野 直人(海外在住) 2008/07/13

何の不安を高めると思うので奥様に伝えないのかがみえないのですが。本人に伝える部分と伝えない部分が多くなると必ずそのずれが大きくなっていき、かえってコミュニケーション状況が悪くなる可能性が高くなります。情報をいかに共有するかを努力してください。情報のかいつまみは患者以外の勝手な行動です。


ちなみにトリプルネガティブですが
??????????ですね。
論文の要約を読むことの危険性がここにあります。主治医も勉強不足?。ごめんなさい。

1. 病理学的完全奏功(PCR)が生存率に影響があることはレベル1エビデンスです。
2. トリプルネガティブの場合、病理学的完全奏功(PCR)になるかならないかで予後について極めて大きな差がある。これはレベル3か4レベルです。2008年7月時点で。
3. シスプラチンがトリプルネガティブいいとおもう。これもレベル3か4です。2008年7月時点で。

論文にはいろいろな科学的根拠レベルの高さがあります。1が一番いいのですが、このレベルと医療界のコンセンサスによってガイドラインが作られています。あるいは標準療法が明確になります。

論文の要約はとても危険です。本質をみないままの情報提供か、バイアスが入っている可能性大。たとえば、まとめた本人がいいと信じて書くの信じないで書くのでは要約の雰囲気が大きく変わります。
それだけに、論文の要約をもとに情報を話しをするなら、主治医とコミュニケーションをとるのが大切です。医療従事者の人は論文を元から読んで判断することが大切です。医療従事者でないなら、偏見があると思って読む必要があると思います。

さて、この場合は、主治医がさらに理解していない?シスプラチンをどの観点から話しているのかここではわからないですが。トリプルネガティブのためにシスプラチンを押してるなら、かなりいい加減です。

つまり、いかに患者と医療従事者のコミュニケーションが難しいかという一例になります。医療従事者が勉強不足あるいは論文を日々読んでないととんでもないことになります。

それだけに、マスコミ関係あるいはインターネットにでている内容を鵜呑みにする危険性はとても高いのです。奥様と一緒にすべてのことを一緒に進めるのが本人への一番サポートです。知らないことも時にはいいことで、一緒に学ぶことがサポートになるんですよ。

Re:トリプルネガティブ乳癌と術前化学療法
ひろとこ(京都府) 2008/07/13
上野先生
 お忙しい中、ご返事ありがとうございました。
 更にお時間をとって恐縮ですが、もう少しお教え下さい。

 妻との情報共有についてご指摘を受けて改めてなぜ私が情報を全て共有することに消極的なのかを考えてみました。理由は大要二つだと思います。一つは私も妻も模範的ながん患者とその家族ではないこと。妻は客観的な情報(たとえば、トリプルネガティブでpCRにならなかった患者の術後再発率が30%なり、40%なり)と聞いて冷静に受け止めることができるよりも、取り乱すタイプです。私もそうした妻の気持ちを支えたいと思いながら十分に対応できていません。たとえば妻は、インターネットでトリプルネガティブの発症にはストレスが影響している可能性との記事を読んで、姑(つまり私の母-故人)にいやなことを言われたことが原因だと思うと私をなじるようなこともありました。子供も小さいため、副作用が比較的軽いとは言え、化学療法を受けながら子供の世話を交代で見て、私のストレスもかなりたまっています。理想的ではないことは分かっていますが、ともかく現実の中でベストを尽くそうと考えています。第二に、まさに先生も言われるとおり、インターネット上の情報は玉石混淆(石が多いのでしょうが)なので、今日はこれ、明日はあれ、と情報に振り回されかねないと私自身感じています。先生がお答え下さったように、レベル1なりレベル2なりといった情報の確度が高いと分かれば共有したいと思いますが、残念ながら当方にはそこまで分かりません。

 インターネットに頼ることの危険性を承知しながらも、インターネットはハイリスクで有効な治療法がないトリプルネガティブの患者にとって最新の情報や少しでも可能性の高い方法を探る不可欠の手段だと思っています。インターネット情報を主治医と常に共有し、主治医の正確な判断をあおぐのが理想なのも分かりますが、それこそレベル3か4かも分からない情報で主治医の時間をとることには、患者として躊躇する気持ちが大きいです。なお、シスプラチンの効果に関する主治医の話は私の要約が不適切だったかも知れません。シスプラチンの効果云々よりも、日本では乳癌の適用になっていないので保険外診療となるという文脈で、厚労省に要望しているといった話でした。

 それから情報ソースですが、
2)の「2. トリプルネガティブの場合、病理学的完全奏功(PCR)になるかならないかで予後について極めて大きな差がある」 について改めて私の記録を確認したところ、貴研究所でなされた調査に基づく論文の要約の日本語での翻訳を目にしていたことが分かりました。英文の要約は
http://jco.ascopubs.org/cgi/content/abstract/JCO.2007.14.4147v1
にあります。
この要約の結論は、
Conclusion: Patients with TNBC have increased pCR rates compared with non-TNBC, and those with pCR have excellent survival. However, patients with RD after neoadjuvant chemotherapy have significantly worse survival if they have TNBC compared with non-TNBC, particularly in the first 3 years.

とあるので、上記2)のように考えた次第ですが、私の理解が間違っているでしょうか。それともこの論文が現状ではレベル3ないし4と判断される内容であるということでしょうか。

 シスプラチンのトリプルネガティブへの効果がまだ標準療法として確立されていないことは承知しています。むしろ患者としての精神的納得(最善の治療を尽くした)を得るために、FEC後にシスプラチンを追加する効果をお尋ねしました。つまり、これでダメだったらやむを得ないが、アメリカでは試みられている治療を日本での制度的理由のために見送って、後で再発したときに後悔が大きいだろう、と考えた次第です。

 これに関して、恐縮ながら最初にお尋ねした問いにご回答を頂ければ幸いです。

第4回FEC終了時点でガン細胞の残存が検査で見られる場合、手術に踏み切るべきか、あくまでpCRを目指して追加的に化学療法を継続することを主治医に依頼してみるべきか、後者の場合、
1)それなりに奏功したタキソテールかFECを追加投与する
2)日本では乳癌に保険適用のないシスプラチンがトリプルネガティブに有効という情報があるので、保険外であってもシスプラチンの追加投与を希望する
のいずれがよいでしょうか。

 また、センチネルが転移ありだったので、リンパ廓清をすることになりそうですが、妻はリンパ浮腫を恐れてリンパ廓清に躊躇しています。妻のような場合、リンパ廓清をしなければどの程度再発リスクが上がるかのデータはあるのでしょうか。

 たびたびで恐縮ですがよろしくお願いします。
Re:トリプルネガティブ乳癌と術前化学療法
上野 直人(海外在住) 2008/07/14
トリプルネガティブの場合、病理学的完全奏功(PCR)になるかならないかで予後について極めて大きな差がある?

確かに上記の論文は私たちが関わっています。でも、もっと大きないろんな論文がでないと確信できないです。しかも、前向きに検証したものがたくさんひつようなのです。考慮はする必要がありますが、確信がもてないということで情報、共有することで患者には話しなあいます。つまり、この時点ではあくまで、情報で治療を受けている人の気持ちをこの情報で不安にさせる必要がありません。

また、トリプル・ネガティブで治療をシスプラチンに変更するのはとんでもないです。臨床試験でもない限りすすめられません。トリプル・ネガティブでどうしてもユニークをもとめるなら、臨床試験をさだされたらどですか。でも、これも患者本人がもとめないといけないことで。夫のあなたが押すべき問題ではありません。

基本的には、現時点で、
第4回FEC終了時点でガン細胞の残存が検査で見られる場合、といってますが。
どのようにそれを判定されるのですか。
奥様はどう考えているのでしょうか?
Re:リンパ廓清, 乳ガン
上野 直人(海外在住) 2008/07/14
リンパ廓清に躊躇といってますが?
なんで、そんな風におもってるですか。奥様はどれぐらいの危険度と理解しているのでしょうか?
Re 情報共有の問題
上野 直人(海外在住) 2008/07/14
https://www.teamoncology.com/bbs/thread_dtl.php4?coid=1&cid=9&tid=764

この件に関しては、あらたなthreadを作りましたので、上記のリンクに行ってください。

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