コラム/エッセイ

チームオンコロジーへの道

Essay: Road to TeamOncology

乳腺外科の専任薬剤師として

薬剤師:奥山裕美

奥山 裕美 Hiromi Okuyama

薬剤師

昭和大学医学部外科学講座 乳腺外科学部門 Division of Breast Surgical Oncology, Department of Surgery Showa University School of Medicine

私は2002年から始まりましたM.D.アンダーソン留学研修第1期生の薬剤師です。当時は駒込病院の乳腺外科に所属していました。薬剤師で乳腺外科所属とはどのような仕事?と思われる方が多いのではないでしょうか。

CRC(治験コーディネーター)を経て、乳腺外科の専任薬剤師として仕事をするきっかけとなったのは、患者さんから、治験が終わった後も、治療薬の相談がしたいとの要望を頂いたことです。自分自身も乳腺外科の中で専門的な知識を身に付け、臨床で患者さんに係りたいという希望を強く持っていたため、乳腺外科の専任の薬剤師として、薬の説明等に係る仕事と臨床試験業務を受け持つこととなりました。

その当時は、治験以外の医師主導型の臨床試験の実施に専門のスタッフがつくことはめずらしく、ましてや医師以外の他専門職種間でのチーム医療という概念も浸透していませんでした。仕事をしていく中で痛切に感じたのは、チームの中で仕事をしていくためには、今までの薬剤師やCRCのカテゴリーにとらわれていては対応できないということです。専門知識の習得はもちろんのこと、乳腺チームの中で、自分の役割をどのように拡大していくべきか暗中模索の日々が続いていました。そんななか参加したのが、京都でのM.D.アンダーソンの教育セミナーでした。

その後、Medical Exchange Programで、M.D.アンダーソンがんセンターで学ばせていただくチャンスに恵まれ、その教育システムとmid-level practitionerと呼ばれるコメディカル(専門性の高い看護師など)の仕事内容に衝撃を受けました。日本とアメリカとの医療事情や教育システムの大きな違いはありますが、目指し進んで行きたい道が、そこではっきりと目の前に開けたのです。

現在、日本でもチーム医療という言葉が定着してきた感があります。チーム医療の目的は、患者を包括的に治療していくことと同時に、新しい治療法の研究を進めることだと思います。そのためには、患者に係る各種専門医師間およびコメディカルとのチーム医療を融合させ実施していく必要があるのですが、具体的な取り組みを行っている医療機関はまだまだ少数派です。そして、多職種間が協力していくチーム医療では、自分の職種の専門性を追求すると同時に、一定レベルの専門知識の習得が不可欠となります。

私は、病院薬剤師業務の仕事としてではなく、乳腺外科チームの中での仕事に携わってきましたが、チーム医療という箱ができあがっていたところに参加したのではありません。医師の中に薬剤師ひとりという孤独感もありましたが、チームとして共通の認識をもつことが、患者のための医療に繋がることを実感しました。同じ志を持つ仲間と共に、職種の殻に閉じこもらずに協力していくことが、とても重要なことなのです。

M.D.アンダーソンのチーム医療は、よりよい治療を患者に提供し続けることを目的とし、そのことが結果として患者の高い満足度につながっていました。私達も、日本の社会や国民性にあったチーム医療を模索し、努力し続けることで、患者、医療者双方に大きな実りとなる日本型チーム医療の形を作り上げることができると信じています。

(2006年執筆)

ちょこっと写真、ちょこっとコメントMy interest at a glance:

ひどい肩こりに悩まされていた私は、4年程前のある日、鏡に映った肩の位置が並行ではないことに気がつきました。背中を壁につけようとしても、両肩同時につけることが出来ないほど、肩の位置がゆがんでいたのです。このままではマズイと危機感を覚えた時期に出会ったのが、ヨガでした。

ヨガは、肩こりを解消してくれただけではなく、普段ほとんど無意識に繰り返している呼吸の大切さ、ありがたさに気づかせてくれました。人間の鼻は1つですが、鼻腔は2つ。右と左では、大きさも微妙に違い、ヨガでは右は行動的なエネルギー、左は消極的なエネルギーを取り込むと考えるそうです。

そして、呼吸のバランスを自分でコントロールすることで、感情もコントロールできるようになるそうです。皆さんも丹田(おへその下3~4cm奥)を意識し、「吸って」、「吐いて」を繰り返してみてください。心が軽くなる気がしませんか?

(2007年 3月執筆)

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