コラム/エッセイ

チーム医療が全国の医療施設で実施され
メディカルスタッフが
「顔の見える職種」になるために

Effective communication makes for a good team and good results for patients.

Vol.15

診療放射線技師: 放射線を扱うプロとして

佐藤 久弥(診療放射線技師)
佐藤 久弥(診療放射線技師)
昭和大学病院放射線部係長
日本血管撮影・インターベンション専門診療放射線技師認定技師
昭和大学病院の放射線部に所属し、IVR血管造影検査室を担当しています。血管撮影部門は、チーム力が要求される部門であり、医師、看護師、臨床工学技士と共に、常に向上心を持って検査・治療にあたっています。

1.医療の現場で扱う放射線とは

現在、福島第一原発による放射能汚染が大きな問題になっている。この放射能汚染は、体内被ばくの原因となる放射性物質のセシウムが水素爆発によって飛散し、人の生活環境に大きな影響をおよぼしている。その問題は、生活の場を失うほどの影響と、家畜、農作物が放射能汚染され、市場の混乱をまねくほどである。

それに比べ、医療で用いられる放射線の質と量は、診療放射線技師により管理されている。医療で用いる放射線は、X線、γ線、中性子線、重粒子線などがある。福島第一原発の放射能汚染の一原因となっている、セシウム線源を使用した放射線治療もあり、線量管理をしっかりと行うことで、がん治療に有効利用している。

放射線の管理は、放射線を人体に照射した際に起こるリスクと、疾患に対する確定診断や治療といった放射線を用いることで患者さんが得られる利益を比較し、常に有利な状態となるように線量を管理している。その他、X線が環境的に有害な状況を引き起こさないために、X線の漏洩を管理し、放射線に対する院内の環境を常に監視している。

2.診療放射線技師の仕事とは

病院内における診療放射線技師の仕事は、風邪の症状や腹痛などで撮る胸部・腹部のX線撮影や、骨折の診断を行うための一般撮影をはじめ、体を輪切りにして、体内の変化を描出し、診断するCT検査やMRI検査、血管の病気を診断し、病気に対して治療を行うInterventional Radiology、胃透視や注腸といった消化管における検査、放射性同位元素を静注し、体内から放出される放射線を利用して診断に用いる核医学検査、放射線を利用しがん治療を行う放射線治療がある。

またその他、乳房撮影のマンモグラフィーや超音波、眼底カメラなども、診療放射線技師業務の範疇である。病院外における診療放射線技師の仕事は、検診車における、胸部X線撮影や胃透視検査がある。

病院内外の仕事の他、診療放射線技師が行っている活動として、日本放射線技師会を中心に、乳がん検診の相談はじめ、福島原発で被ばくした人の、放射線サーベイ(放射線被ばく測定)など、放射線を扱うプロとして、幅広く社会貢献に積極的に関与させて頂いている。

3.チーム医療の一員として

診療放射線技師は、チーム医療の一員として、撮影した画像について一次読影を行い、X線画像はもちろん、一次読影における画像情報を提供し、医師の診断に対する補助的な役割を果たしている。

さらに、我々診療放射線技師が携わる検査・治療で、特にチーム医療が要求されるものとして、狭心症や急性心筋梗塞の治療で行う心臓カテーテルや血管損傷における血管の治療術がある。これらの治療では、治療が安全かつ短時間で終了するために、治療に携わるメディカルスタッフ間の情報共有が最も大切である。その中で診療放射線技師は、カテーテル前情報として、治療に有効な撮影(方向)に関する情報、治療で用いる使用器具の選択に関する情報を提供している。

さらにまた、必要不可欠な情報として、放射線被ばくによる情報がある。これは、治療後患者さんの背部に放射線における皮膚障害が発生しないことを目的とし、治療中施行医師に、放射線被ばく線量を伝え、検査の継続を検討してもらうように心がけている。また、メディカルスタッフの被ばく管理として、治療時にX線被ばくを極力受けないよう、各スタッフに治療中随時声をかけ、被ばく低減対策を行い、患者さんおよびメディカルスタッフのX線に対する被ばく管理を行っている。

私たち診療放射線技師の日常の業務における患者さんとのかかわりは、自己紹介から始まる。私はその自己紹介を大切にしている。それは、初対面の患者さんが私に話しかけやすい(検査に対する質問)環境を整えることであり、自己紹介後に続けて行う検査説明をできるだけ理解してもらうためである。

検査説明は、専門用語はできるだけ使用しないようにしている。患者さんは、私の検査説明を理解されると不安な顔つきが穏やかになる。検査終了後、患者さんにお疲れさまでした等の癒しの言葉をかけさせていただくと、患者さんが笑みを浮かべ「ありがとう」と言って頂けることがある。私はその瞬間がとても嬉しい。

(2012年3月執筆)

チーム医療推進協議会
チーム医療推進協議会
2009年、チーム医療を推進するとともに、メディカルスタッフの相互交流と社会的認知を高めるために設立された協議会。
病院で働く職能団体16職種、患者会、メディアで構成されている。メディカルスタッフが連携・協働することで、入院や外来通院中の患者の生活の質(QOL)の維持・向上や、それぞれの人生観を尊重した療養の実現を目指しています。