コラム/エッセイ
チーム医療が全国の医療施設で実施され
メディカルスタッフが
「顔の見える職種」になるために
Effective communication makes for a good team and good results for patients.
Vol.14
病院薬剤師: 薬の専門家として
1.病院薬剤師の仕事とは
病院薬剤師は主に以下の業務を行っております。
(1)病院内における様々な業務
調剤、薬の説明、薬の管理を行って、患者さんに使用するお薬を提供しております。さらに、より安心できる薬物療法を提供するために薬歴の確認、注射薬の調剤、チーム医療の推進、薬学的ケアおよび医師と協力して種々の業務を行っております。
また、医療安全を守るために繰り返し鑑査を行うとともに、薬歴を確認して重い副作用を未然に防止したり、薬の飲み合わせによる中毒の防止等に努めております。
(2)在宅医療への関与
入院患者さんばかりでなく、居宅における患者さんについても薬の正しい使い方をとおして、患者さんご自身とご家族のQOLを高めるように努めております。
(3)放射線医薬品の取扱い
放射線医薬品取り扱いガイドラインが定められ、医師、診療放射線技師とともに放射性医薬品の調剤・管理を薬剤師が担うことで三者が協働して放射性医薬品の安全管理・安全使用の体制確保を図り、良質な医療を提供する体制作りが急務になっております(*1)。
特に、がん医療においては、放射性医薬品を診断だけでなく治療にも使用することから、薬剤師が積極的に関与して放射性医薬品の調製・管理を行っております。
2.チーム医療の一員として
私の勤務するがん専門病院では、医師、薬剤師、看護師等と連携・協働して以下の業務も行っております。
(1)外来化学療法ホットライン
いままで、外来化学療法を行っている患者さんからの副作用等に対する電話による問い合わせに対して医師が自ら対応しておりました。しかし、外来診療に影響が出はじめたことから専用の問い合わせ回線を設置すると共に、まずは薬剤師と看護師が電話対応することで医師が電話対応する件数が減少し、その結果として医師の業務負担軽減と患者さんが安心して治療を受けられるような環境を整備しております。
(2)薬剤師外来
患者さんが医師の診察を受ける前に薬剤師が外来ブースで患者さんから直接問診をして、服薬状況や副作用等を調べ、その状況を医師に還元することで医師の診察時間の効率化と患者さんのアドヒアランスの向上、手術・検査の延期の防止を図っております。
具体的には、内科の患者さんのなかで、経口抗がん剤の初回治療時の服薬指導およびその後の継続的な介入、医療用麻薬を服用している患者さんで疼痛および副作用のコントロールが不十分な症例、外科の患者さんでは周術期管理の一環として、初診時に、常用している薬剤の確認を行い、手術や検査時に注意を要する抗凝固薬等およびメトホルミン系薬剤の休薬の指示を薬剤師が患者さんに行っております。
「説明を聞いて安心して抗がん剤治療を受けることができました」という声も聞かれるようになりました。
(3)口腔ケアチーム
従来、薬剤師が化学放射線療法中の服薬指導時に行っていた口腔ケア指導について、その方法の確立を目指して、さらに医師、歯科医師、看護師等を入れた口腔ケアチームを発足させて、化学放射線療法を行う頭頸部癌患者さんに適切な口腔ケアを行うことで、重篤な口腔粘膜炎の発現を抑制し治療完遂を目指しております。
3.病棟における常駐化
薬剤師が病棟に常駐化することで、勤務医と看護職員の負担軽減につながるだけでなく、医療安全および薬物療法の質の向上、薬剤費の節減等が図られること(*2)からも、今後は薬剤師のOP・ICU・NICU等を含めた病棟常駐化を一層推進して行きたいと考えております。
4.病院薬剤師のこれから
6年制薬剤師の輩出とともに、薬の専門家として薬あるところ薬剤師が関与し、他の医療職と連携・協働しながら薬学的ケアを実践して、医療の質の向上に寄与して行きたいと思っております。
【参考資料】
*1: 放射性医薬品取り扱いガイドライン(H23.6.10)
*2: 中央社会保険医療協議会総会資料(H23.12.7)
(2012年3月執筆)
病院で働く職能団体16職種、患者会、メディアで構成されている。メディカルスタッフが連携・協働することで、入院や外来通院中の患者の生活の質(QOL)の維持・向上や、それぞれの人生観を尊重した療養の実現を目指しています。