コラム/エッセイ
チーム医療が全国の医療施設で実施され
メディカルスタッフが
「顔の見える職種」になるために
Effective communication makes for a good team and good results for patients.
Vol.17
臨床心理士: 気持ちに寄り添う ― 心理面から身体への支援
1.チーム医療における臨床心理士
臨床心理士は、財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定した心理専門職であり、現在、全国に約23,000人います。仕事の分野は、多岐にわたりますが、医療・保健領域で働いている臨床心理士も多数(約9,900人)となっています。臨床心理士というと、患者さんと1対1で面接をしているイメージが強いかもしれませんが、近年、チーム医療の必要性が強く謳われるようになり、さまざまな疾患に関する医療チームにメンバーとして参加することが多くなってきました。
私は、総合病院の常勤臨床心理士として普段は個人カウンセリング、心理検査、グループ活動などを行っていますが、緩和ケアチームの一員としても活動しています。毎週金曜日の午後に行われる緩和ケアチーム回診に加わり、多職種カンファレンスで意見交換を行い、がん患者さんやご家族のお話をうかがいにベッドサイドに出向きます。
2.「その方らしく」あるために、気持ちの面から支えるお手伝いをします
現場で受けるご相談には、様々なものがあります。たとえば、ご本人から「がんの告知を受けたが、気持ちが乱れて、今後のことを考えられない」といった相談、ご家族から「妻が末期がんで入院中だが、妻亡き後、子どもの面倒はどうしていったらよいだろうか」といった相談があります。一番お辛いのはその患者さんやご家族ですから、私たちは治療に取り組んでおられる方、それを支えておられるご家族に敬意をもって寄り添いながら、お話を丁寧にうかがいます。そのことにより、患者さんやご家族が気持ちを整理でき、自己回復力を高めて下さればと願っています。
また、お話をうかがいながら、その患者さんにとって今一番大切な課題は何かをキャッチし、話し合い、臨床心理士の立場から心理面のアドバイスをし、課題の内容によっては適切な関係専門職につなぐというコーディネートも大切な仕事です。「トータルペイン」という考え方がありますが、いろいろな痛みや困難が複合的に絡み合って現在の苦悩があるとすれば、その苦悩への対応は臨床心理士だけで担うものではありません。多くの専門職の力をひとつのチームとして結集し発揮することで、はじめて心のケアが成り立つと考えています。
3.患者さんのグループに加わることもあります
臨床心理士が、がん患者さんやご家族、ご遺族のグループのファシリテーターとして加わることもあります。自主的に当事者の方がグループを立ち上げた場合などには、お手伝いに入ることもあります。私も患者会のお手伝いに加わっています。先輩患者さんの一言が、新規に告知を受けた方の支えや励みになる場面を見るにつけ、体験者同士の会の重要性を感じます。
4.ぜひ、臨床心理士にお声をかけて下さい
「臨床心理士と話せてよかった」と実感して頂き、他のメディカルスタッフが「うちには臨床心理士がいますよ。話してみたらどうですか」と患者さんやご家族に自信をもって勧められるようなチーム医療の一職種でありたいと願いつつ、日々の仕事に励んでいます。
(2012年5月執筆)
病院で働く職能団体16職種、患者会、メディアで構成されている。メディカルスタッフが連携・協働することで、入院や外来通院中の患者の生活の質(QOL)の維持・向上や、それぞれの人生観を尊重した療養の実現を目指しています。