コラム/エッセイ

チームオンコロジーへの道

Essay: Road to TeamOncology

看護師として、状況的リーダーシップをめざして

看護師:田口賀子

田口 賀子 Yoshiko Taguchi

看護師

大阪府立成人病センター Osaka International Cancer Institute

2007年にM.D.アンダーソンがんセンター(以下MDAと呼びます)で研修する機会を得ました。それに先立つ2006年秋の京都のセミナーでMDAにおけるチーム医療のエッセンスを学んだ私は、自施設では外来に所属し、医師の診察に同席するなど特定の医師と連携して、外来患者に対する情報提供や治療選択の支援を始めていました。しかし、がん看護専門看護師として外来の患者さんにどうかかわっていけばよいのかを模索している最中で、MDAでは外来診療においてどのようにチーム医療が行われているのかについて、とても関心がありました。

M.D.アンダーソンでの留学研修によって影響を受けたこと

MDAでの3週間の研修では見るもの聞くものすべてが刺激となりましたが、現在の自分の看護に大きく影響しているのは大きく次の2点です。

1. 専門看護師としての自分の方向性を見出す

1点目は、Nurse Practitioner(NP)がどのようにチーム医療にかかわっているのかを学んだことです。上級実践看護師はClinical Nurse Specialist(CNS)とNPに分かれます。CNSは伝統的に臨床をベースにして患者・医療者の相談・教育をしています。NPは、上野直人先生の言葉にもあるように、まさに「医師と患者を共有して」います。独自に処方ができる上級実践看護師の裁量権を含めた医療制度や診療体制が日本のものとは大きく異なるにせよ、MDAのクリニックでNPの活動を見学し、話を聞くことにより専門看護師としての自分の方向性を見出すことができました。

研修終了後の2007年の秋に、自施設で看護部や診療部門のバックアップもあり、看護外来を開設しました。現在、認定看護師らとともにそれぞれの専門性を活かして看護外来を行っています。通常の看護相談と異なる点は、患者さんからの直接依頼ではなく、医師からの依頼で看護介入することです。医師が他科の医師に意見を求め相談するのと同じように、それぞれの看護師の専門性を理解して、この部分のサポートを看護師に依頼したいということを明確にしたうえで看護師が関わります。

看護師は介入前に医師と情報を共有し、ディスカッションし、介入後は医師にフィードバックしていきます。このことからもわかるように、ただ単にそれぞれが患者さんをみるのではなくチームとしての多面的なかかわりを大切にしています。専門看護師や認定看護師が医師とは異なる視点で患者さんを看てアセスメントすることは、患者さんの利益につながるだけではなく、看護師や医師自身の利益にもつながると考えています。

2. 「状況的リーダーシップ」という考え方を学ぶ

2点目の学びは、「状況的リーダーシップ」という考え方です。リーダーシップといえば、つい職位や権限によって支えられている「立場的リーダーシップ」を考えてしまいがちです。しかし、状況的リーダーシップとは、状況によって、どのような職種や職位であっても、それぞれの専門性を踏まえて誰もがリーダーシップを取り得るというもので、チーム医療における根本をなす考え方です。

そのような考えにより、「この状況で自分はどのようにリーダーシップをとれるのか」をいつも考えて行動するようになりました。また、他職種の専門性を理解しようと努力し、他の人の意見を能動的に聞くようになりました。

そして、さらにMDAでの学びと留学研修後の格闘をもっと紹介したいところではありますが、紙面の関係上、これくらいにしておきたいと思います。

(2009年 6月執筆)

ちょこっと写真、ちょこっとコメントMy interest at a glance:

私を知る人からは意外に思われることが多いのですが、気分転換したいときや気持ちが滅入ったときにテディベアをつくります。

テディベアづくりを始めたきっかけは、10年程前に高齢の男性がテディベアを趣味でつくられている番組を見たことです。ぬいぐるみが好きなうえ、洋裁をしていた母の影響で子供の頃からよく手芸をしていましたので、自分でもつくれるのではないかと思い独学で始めました。写真のベアJOJOはお気に入りの子です。

(2009年 6月執筆)

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