コラム/エッセイ

ヤングオンコロジースペシャリストの声

Essay: Voice of Young Specialists

Academic Research Organizationのデータマネージャーとして ~夢はプロジェクトマネージャー!~

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堀江 奈穂 Naho Horie
薬剤師
北海道大学病院 高度先進医療支援センター
北海道大学病院 高度先進医療支援センターにてデータマネージャーとして勤務しています。臨床研究や治験のデータを、正確にかつ早く収集し、それらが研究や治験の結果に反映できるようなプロセス構築はどうあるべきかを考えつつ、日々、邁進しています。

エッセイをお読みのみなさま、はじめまして。このようなエッセイ執筆という機会を頂きまして、ありがたく思っております。

私のバックグラウンドは薬剤師ですが、現在、薬剤師として勤務していません。Academic Research Organization(ARO)機能を持っている北海道大学病院 高度先進医療支援センター データ管理部門にて、データマネージャー(Data Manager:DM)として勤務しています。当部門は、アカデミアにおける自主臨床研究を支援する組織として2009年に設立されました。

薬剤師免許を持っているのに、なぜ病院勤務でよくわからない横文字の仕事に就いているのか、AROにおけるDM業務とはどのようなものかなどについて、私見を述べさせていただければと思います。

病院薬剤師からCRCへ

現在の職場、北海道大学病院 高度先進医療支援センターに勤務する前は、病院薬剤師として働いていました。

病院薬剤師の業務のひとつに服薬指導があります。その仕事で、特に、癌の患者さんに言われたことが、「私の病気が治るよう、新しい薬をもってきて」という言葉でした。科学技術が発展しても完治できない病があり、そのための薬剤や治療はないものか、また癌患者さんのように困っている患者さんの声に応えることはできないものだろうかと考え、医薬品開発に関わる仕事を探しはじめました。

医薬品開発を調べていくと、臨床研究コーディネーター(Clinical Research Coordinator:CRC)という職種があることを知り、製薬会社と医療機関、治験責任医師、分担医師、そして患者の間に入って、臨床研究を円滑に進めていく、その仕事内容に興味を持ちました。そこで、現職場に転職し、はれてCRCになることができました。

CRCからデータマネージャーへ

CRCとして充実した仕事をしていましたが、統計や研究デザインについて興味を持つようになり、独自に勉強していたところ、センター長であります佐藤典宏教授より配置転換の打診があり、2011年よりデータマネージャー(DM)となりました。まさに青天の霹靂(へきれき)でした。

CRCは、患者さんとの接点が多く、医療現場にも近いため、DMとはまったく業務内容が異なります。最初DMになった頃は、「患者さんから遠くなったなあ。CRCは試験の成果がわかるのが早い」と思うようになりました。また、DM業務はデータチェックなど、こつこつ積み重ねが必要な業務も多く、根気が必要な仕事だと思いました。

しかし、DMには、試験実施計画書や症例報告書の原案作成など、研究立ち上げから関われる楽しさもあります。主任研究者が目指すゴール(治療法確立やQOL改善など)がわかると、ゴールは遠いが、その分得られるものが大きいと思うようになりました。現在はその充実感を感じながら仕事をしています。

AROにおけるデータマネージャーの展望

AROにおけるデータマネジメント業務については、「科学的、倫理的に行い、信頼性のあるデータを収集し、正しく結論を導くための技術体系」であり、そして「いまだ発展途上の分野」であると考えています。また、AROにおけるDMと企業におけるDMの業務は異なっていて、AROにおけるデータマネジメント業務プロセスについては体系化する必要があると思っています。

そしてDMを教育するシステムはあまり存在していません。しかし、データマネジメント業務にも医学から統計まで幅広い専門知識が必要ですし、自分が実施している業務がどういう意味なのか、わかるDMを育てないといけません。

また、臨床研究の活性化のためには、実務にあたる人材の教育が必要と考えます。さらにDMは医療免許を必要としないので、医療免許のない人材への教育体制つくりも必要です。日々試行錯誤しながら教育にあたっている毎日です。

今後の臨床研究や医師主導治験の発展のために

臨床研究や医師主導治験を実施するためには、一人の力ではできません。医師・看護師・薬剤師・臨床検査技師・CRC・統計家・DM・モニター・監査など、さまざまな職種・プロが臨床研究・治験を動かす役割を担っています。また、臨床研究という大きなプロジェクトは、「新治療の開発」「標準治療の確立」「薬事承認」など、ビジョンが明確である必要があります。すなわち、臨床研究を円滑に実施するためにはチーム力とゴールが必要です。

しかし、ゴールやビジョンが不明確な場合、プロの力が発揮できず、プロジェクトが成功しないこともあるでしょう。そこで、主任研究者やDMでも医師でもない、全体を把握し、調整することができる調整役「プロジェクトマネージャー」が必要になると考えます。そのマネジメントにより、臨床研究にかかわるプロたちが同じビジョンを目指すことで、ゴールに近づくことができます。

今後の目標としては、AROにおけるDM業務とそのプロセスの確立、そしてDMの教育体制の確立です。そしてさらに、それらを確立しつつ、臨床研究を円滑にマネジメントできるプロジェクトマネージャーになることです。

より効果的な治療や新薬を患者さんのもとに届けられる、そんな人材の一人となれるよう、これからも研鑽していきたいと思います。

(2014年 2月執筆)

ちょこっと写真、ちょこっとコメント

趣味はアウトドア全般で、テレマークスキー、ダイビングなど、はては動物写真撮影までするようになりました。特に、登山は大好きで、毎年夏になると、北海道の屋根・大雪山にいきます。

大雪山は、かつてアイヌの人々からカムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)と呼ばれ、日本一広い国立公園 (226,763.56ヘクタール、これは神奈川県の面積に匹敵する広さ)で、高山植物の宝庫です。カムイミンタラでリフレッシュし、パワーをいただいています。

写真は、昨年縦走した大雪山系南部のトムラウシ山(標高2,141m)とそのお花畑です。

(2014年 2月執筆)

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