コラム/エッセイ

ヤングオンコロジースペシャリストの声

Essay: Voice of Young Specialists

外来ケモチームづくり物語 ~看護師にもできること~

看護師:入江佳子

入江 佳子 Yoshiko Irie

看護師

筑波大学附属病院 University of Tsukuba Hospital

緩和ケア認定看護師・がん看護専門看護師として、外来化学療法を中心に活動中です。Missionは患者さん&医療者にやさしい安全な治療を目指すことです。座右の銘は「何事も楽しまなくちゃ」のお笑い系看護師です。
雑多なケモ室からの脱却

6年前、現職に就いた頃、あまりの混沌とした状況に恐怖心を抱きました。医師によって投与方法の違うレジメン、指示箋は手書きミミズの行列で解読不能。さらには患者さんの場所取り合戦やクレームの嵐・・・。ある医師の「うちのケモ室は公衆トイレと一緒。あるから勝手に使うだけ」とのつぶやきに妙に納得してしまう自分がいました。

ケモ室(外来化学療法室)の管理人としての役目を果たすために、まずはルール作りからはじめようと考え、わかってくれそうな医師に声をかけ、話し合いから始めていきました。これが発展して、現在の運営委員会の形になりました。

ハードルはエンドレス

医師、看護師数人での話し合いを重ねて、徐々に薬剤師、事務など仲間を増やしていき、ルール作りをしたものの、次のハードルは関係者に周知徹底することでした。ミキシングに携わる薬剤師や投与に関わる看護師にとっては最低限の決め事でも、外来診療や手術・検査に追われる医師にとっては細かすぎるルールと認識されるようで、「そんなのムリムリ」と一蹴される日々。

それに加え、大学病院特有の診療科の壁を超えた話し合いの難しさ、関わる医師の多さ、医師の入れ替わりの激しさなど、次々に高いハードルが現れ、会議のたびにガックリ肩を落とすばかりでしたが、チームメンバーと協力しながら、およそ1年かけて軌道に乗せることができました。

チーム医療? 看護師の役割って?

医師にルールについて説明すると、「自分たちがやらなきゃならないのに、なんでうるさく小言を言われるんだ?」と、心の声が聞こえる感じがしました。看護師も、情報を伝えるだけで自信を持って意見を言えず、判断は医師にお任せ、という風潮が強く、看護師に対する信頼が低い状況でした。治療は医師が主体、他のメディカルスタッフはお手伝い、という構図がいろいろなことのバリアになっていると思いました。

一方で、患者さんの待ち時間問題は、さらに悪化する現状もありました。当時、点滴準備が整ってから医師に連絡し、各科医師が穿刺・投与を行っていました。診察の合間に呼ばれた医師は、走ってきても「遅い、こんなに待たされた」という、患者・看護師からの冷たい視線を浴び、あせって穿刺するとうまくいかなかったり、血管外漏出も多い、という悪循環でした。

患者さんの安全担保と待ち時間短縮、医師の負担軽減・・・。当院の抱える問題の解決方法を考えていたところに、チーム医療について学ぶ機会を得ることができました。チームメンバーの役割の均衡化や、看護師の役割拡大・専門性の向上が信頼や問題解決につながるのでは、と考えはじめました。

当院(うち)のウリになる、ケモ室を目指して

患者さん・医師・看護師にとってメリットが高いと考えて取り組んだ、看護師の抗がん剤静脈注射の院内認定制度。ここにも高いハードルは多々ありましたが、構想・準備期間3年を経て、2011年から実践を開始し、現在5名体制で活動しています。

目に見えることでは、血管外漏出の減少・待ち時間の短縮など、患者さんのメリットにつながっていると思います。また、看護師が主体的に投与方法の検討や有害事象対策に参画できるようになったことや、看護師の判断に医師から信頼が得られるようになったことから、看護師の専門性向上につながっているかな、と自負しています。

チームの質向上には、チームメンバーそれぞれが専門性を向上させていくことが必要だと思います。看護師のチカラを引き出し、専門性の高い仲間を増やして、ドリームチームに近づけるといいな、と思います。 うちのウリになるような、快適なケモ室を目指して…。

(2014年 1月執筆)

ちょこっと写真、ちょこっとコメント

癒し系お笑い系のうちのわんこたち(右の写真)。

ミニチュアシュナウザーの女の子(白)と男の子(黒)です。

5歳になりますが、まだまだ甘えん坊で食いしん坊全開です。

(2014年 1月執筆)

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